第1章 子供・若者育成支援施策の総合的な推進(第2節)
第2節 「子ども・若者育成支援推進法」の制定と同法に基づく取組
1 「子ども・若者育成支援推進法」の成立・施行
「青少年育成施策大綱」策定後も、ニートやひきこもりなど若者の自立をめぐる問題の深刻化や、児童虐待、いじめ、少年による重大事件、有害情報の氾濫など、子供や若者をめぐる状況は厳しい状態が続いていた。次代の社会を担う子供や若者の健やかな成長が我が国社会の発展の基礎をなすものであることに鑑みれば、関連分野における知見を総合して諸課題に対応していくことが必要であると考えられた。このため、平成21(2009)年の通常国会(第171回国会)に政府提出法案として「青少年総合対策推進法案」が提出された。そして、衆議院における修正を経て、同年7月、
- 国における本部の設置、子供・若者育成支援施策の推進を図るための大綱(以下「大綱」という。)の作成、地域における子供・若者育成支援についての計画の作成、ワンストップ相談窓口の整備といった枠組みの整備
- 社会生活を円滑に営む上で困難を有する子供や若者を支援するための地域ネットワークの整備
を主な内容とする「子ども・若者育成支援推進法」(平21法71)(以下この節において「法」という。)が、全会一致で可決、成立し、平成22(2010)年4月1日に施行された(第1-1図)。

2 「子ども・若者育成支援推進法」に基づく大綱の策定
(1)「子ども・若者ビジョン」の策定
平成22(2010)年4月1日の法施行に伴い、内閣府に、法第26条に基づく特別の機関として、子ども・若者育成支援推進本部(以下「本部」という。)が設置された。本部の所掌事務は、大綱を作成し、その実施を推進することなどである。本部長は内閣総理大臣、副本部長は内閣官房長官と青少年育成を担当する内閣府特命担当大臣、本部員は国家公安委員会委員長、総務大臣、法務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣とそれら以外の国務大臣のうちから内閣総理大臣が指定する者とされており、全ての国務大臣が本部員として指定された。本部において、同年7月23日、法第8条に基づく大綱として「子ども・若者ビジョン」が決定された。
「子ども・若者ビジョン」の実施を推進するとともに、同ビジョンに基づく施策の実施状況について点検・評価を行うため、平成23(2011)年7月、有識者からなる「子ども・若者育成支援推進点検・評価会議」を開催することが、本部長により決定された。同会議では、18回にわたる検討を行い、平成26(2014)年7月、大綱の見直しに向け、「子ども・若者育成支援推進大綱(「子ども・若者ビジョン」)の総点検報告書」を取りまとめ、また、平成27(2015)年11月、新たな大綱の策定に向け、「新たな大綱に盛り込むべき事項について(意見の整理)」を取りまとめた。
(2)「子供・若者育成支援推進大綱」の策定
「子ども・若者ビジョン」の策定から5年を経過したことを受け、政府においては、新たな大綱を策定すべく、子ども・若者育成支援推進点検・評価会議における指摘を踏まえつつ、総合的な見地から検討を行った。検討に当たっては、全国から募集した中学生以上30歳未満の若者(ユース特命報告員)に対する意見募集やパブリックコメントを実施し、若者を含む国民から幅広い意見を募った。これらの意見も参考として、平成28(2016)年2月9日、本部において新たな「子供・若者育成支援推進大綱」(第1-2図)を決定した。

新大綱では、①全ての子供・若者の健やかな育成、②困難を有する子供・若者やその家族の支援、③子供・若者の成長のための社会環境の整備、④子供・若者の成長を支える担い手の養成、⑤創造的な未来を切り拓く子供・若者の応援、という5つの課題について重点的に取り組むことを基本的な方針とするとともに、同大綱に基づく施策の実施状況について、有識者や子供・若者の意見を聴きながら点検・評価を行うことなどが盛り込まれた。
平成31(2019)年4月、大綱に掲げられている施策の実施状況や対策の効果等を点検・評価し、子供・若者育成支援施策についての検討を行うため、新たに「子供・若者育成支援推進のための有識者会議」を開催することが本部長決定され、同月に第1回会議が開催された。今後、同会議において大綱の点検・評価を行っていくこととしている。
次章以降では、大綱の掲げる5つの重点課題に則して、政府が講じた子供・若者育成支援施策の実施状況を記述する。
COLUMN NO.1
子供・若者の声を行政に届ける!
内閣府では、子供・若者が積極的に意見を述べることができる機会を作り、その社会参加意識を高めるとともに、子供・若者育成支援施策の企画・立案の参考にすることを目的として、「青少年意見募集事業」を実施している。
この事業では、インターネットを利用して、全国から中学生以上30歳未満の「ユース特命報告員」を募集し、この報告員に特定の課題に対する意見を求めることとしている。
平成30(2018)年度は、関係府省の協力の下、「子供の性被害防止対策」(警察庁)、「子供や若者へ向けた、食品安全に係る情報発信」(農水省)、「若い世代の困りごとの相談先と法テラス」(法務省)、「子供・若者の生活文化や国民娯楽に対する意識」(文化庁)、「子どもの人権SOSミニレター」(法務省)の5つのテーマで、意見募集を実施した。
毎回、それぞれのテーマに対する子供・若者ならではの率直な意見が出されており、寄せられた意見は有識者会議の資料として活用されることなどを通して、関係府省の政策の企画・立案にいかされている。
また、インターネットを利用した意見募集のみならず、ユース特命報告員と国の施策担当者が対面で意見交換を行う「ユース・ラウンド・テーブル」も開催している。平成30年度は、「子供の性被害防止対策」(警察庁)、「次代を担う女性の科学技術人材育成」(内閣府)、「子供・若者の生活文化や国民娯楽に対する意識」(文化庁)をテーマとして開催した。
第2回の「次代を担う女子の科学技術人材育成」では、大学の准教授による講演も行われ、女子生徒等の理工系分野への進路選択を支援する取組や広報の方法等について活発な意見交換が行われた。
この事業で集められた主な意見は、内閣府ホームページ1に掲載されている。

