第2章 全ての子供・若者の健やかな育成(第3節)

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第3節 若者の職業的自立、就労等支援

1 職業能力・意欲の習得

若者が将来、自立し、活躍するためには、就業し、経済的基盤を築くことが大切である。各学校段階を通じて、社会的・職業的自立に必要とされる能力・態度を育てるキャリア教育に取り組むとともに、学校以外でも職業能力開発の機会の充実を図ることが重要である。

(1)キャリア教育・職業教育の推進

ア キャリア教育・職業教育の推進(文部科学省、厚生労働省、経済産業省)

非正規雇用率の高さや雇用のミスマッチ、若年無業者の存在など「学校から社会・職業への移行」が円滑に行われていないことが、課題として挙げられる。また、職業意識・職業観が未熟なこと、進路意識・目的意識が希薄なまま進学する者の増加など、若者の「社会的・職業的自立」に向けた課題がみられる。これらの原因・背景には、産業構造や就業構造の変化など社会全体を通じた構造的問題が存在しており、社会が一体となった対応が必要である。このような中で、学校教育においては、キャリア教育・職業教育を充実していくことが重要である40

文部科学省、厚生労働省、経済産業省の3省は、学校、地域、産業界が一体となって社会全体でキャリア教育を推進する気運を高めるため、「キャリア教育推進連携シンポジウム」を実施している41。平成30(2018)年度は、「キャリア教育優良教育委員会、学校及びPTA団体等文部科学大臣表彰」「キャリア教育アワード」「キャリア教育推進連携表彰」の各受賞団体12団体による先進事例の発表(ポスターセッション)等を行った(第2-33図)。

第2-33図 キャリア教育推進連携シンポジウム

文部科学省と経済産業省は、学校関係者や地域社会、産業界といった関係者の連携・協働による取組を表彰する「キャリア教育推進連携表彰」を実施している。平成30年度は、多数の応募の中から、最優秀賞1件、優秀賞1件、奨励賞2件を選定した(第2-34図)。

第2-34図 第8回キャリア教育推進連携表彰

このほか、文部科学省は、次の取組を行っている42

  • 児童生徒が自らの学習活動等の学びのプロセスを記述し振り返ることのできるポートフォリオ的な教材「キャリア・パスポート」の導入に向けた、その活用方法等についての調査研究(「キャリア・パスポート(仮称)」普及・定着事業)
  • 他者と協働しながら新しい価値を創造する力など、これからの時代を生きていくために必要な力を小学校段階から育成するための取組を実施(小・中学校等における起業体験推進事業)
  • 小学校での進路選択等のキャリア教育の在り方等についての調査研究(小学校における進路指導に関する調査研究)
  • 地元企業等と連携した職場体験、インターンシップ及び地元への愛着を深めるキャリア教育の推進(地域を担う人材育成のためのキャリアプランニング推進事業)
  • キャリア教育の趣旨の周知と指導内容の充実を図るため、小学校・中学校・高校において、学校の特色を生かしたキャリア教育の年間指導計画を作成する際に参考となるパンフレットを作成・配布し、文部科学省ホームページにも掲載43
  • 学校や教育委員会におけるキャリア教育に関する研修のための動画コンテンツと資料を文部科学省ホームページで配信44
  • 学校が望む支援と地域・社会や産業界などが提供できる支援をマッチングさせる特設サイト「子どもと社会の架け橋となるポータルサイト」45の運用(第2-35図)
    第2-35図 子どもと社会の架け橋となるポータルサイト

また、社会の変化や産業の動向などに対応した高度な知識・技能を身に付け、社会の第一線で活躍できる専門的職業人を育成するため、先進的な卓越した取組を行う専門高校を「スーパー・プロフェッショナル・ハイスクール」として指定し、調査研究を全国10校で行っており、平成27(2015)年度には、指定校を20校に増加し、さらに取組を充実させた。

厚生労働省は、企業で働く者などを講師として中学校や高校に派遣し、職業や産業の実態、働くことの意義、職業生活を子供に理解させ、考えさせる「キャリア探索プログラム」を実施している。平成29(2017)年度は、3,107校において、約27.4万人の生徒が参加した。

経済産業省は、先進的な教育支援活動を行っている企業・団体を表彰する「キャリア教育アワード」を実施している46。平成30年度は、応募のあった36件の中から、最優秀賞2件(内1件大賞)、優秀賞6件、奨励賞4件を選定した(第2-36図)。

第2-36図 第9回キャリア教育アワード

なお、経済産業省の実施事業により、平成23(2011)年3月に設立された一般社団法人キャリア教育コーディネーターネットワーク協議会では、キャリア教育コーディネーターの育成・研修や認定を行っており、平成30年8月時点で約325名のキャリア教育コーディネーターが全国で活動を行っている(第2-37図)。

第2-37図 キャリア教育コーディネーター

また、職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力を「社会人基礎力」47として整理し、大学教育を通した育成や評価の取組の普及を図っている(第2-38図)。平成30年度は平成29年度に提唱した「人生100年時代の社会人基礎力」を踏まえて、「人生100年時代の社会人基礎力育成グランプリ」を開催し、45校(58チーム)が参加し、人生100年時代の社会人基礎力の成長が最も大きく見られたチームを経済産業大臣賞として表彰している。

第2-38図 人生100年時代の社会人基礎力

イ インターンシップ(就業体験)の推進(文部科学省、厚生労働省、経済産業省)

職場体験やインターンシップ(就業体験)は、子供や若者が教員や保護者以外の大人と接する貴重な機会となる。異世代とのコミュニケーション能力の向上が期待されること、子供や若者が自己の職業適性や将来設計について考える機会となり主体的な職業選択の能力や高い職業意識の醸成が促進されること、学校における学習と職業との関係について子供や若者の理解を促進し学習意欲を喚起すること、職業の現場における実際的な知識や技術・技能に触れることが可能となることから、極めて高い教育効果が期待される。

中学校における職場体験実施率は、おおむね高水準で推移しており、実施期間として5日以上設けている学校もある(第2-39図)。また、公立高校におけるインターンシップの実施率は、平成27(2015)年度から3年続けて、前年を上回ったが、普通科における体験者数の割合は約2割にとどまっている(第2-40図)。さらに、大学・大学院におけるインターンシップの実施率は増加している(第2-41図)。

文部科学省、厚生労働省、経済産業省では、「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(平成9年文部省、通商産業省、労働省)を平成27年12月に一部改正し、各大学・産業界に周知を行い、インターンシップの普及・促進に努めている。さらに、学生の能力伸長に寄与するなどの高い教育的効果を発揮しており、他の大学や企業等に普及するのに相応しいモデルとなり得るインターンシップを、グッドプラクティスとして文部科学大臣が表彰し、その成果を広く普及することを目的として「大学等におけるインターンシップの届出・表彰制度」を創設し、平成30(2018)年12月に初めて表彰式を開催した。

また、文部科学省では、前述の「子どもと社会の架け橋となるポータルサイト」などにより、キャリア教育の中核的な取組の一つとして、学校における職場体験やインターンシップの普及・促進に努めている。

経済産業省は、地域における起業や中堅中小企業の中核的な人材の育成に教育的な効果が高い長期インターンシップを推進するため、受入促進に向けたツール・メソッドの整備や産学をつなぐ専門人材のための活用ガイドを策定してホームページで公開している48

ウ 女性若年層に対する啓発(内閣府、厚生労働省、文部科学省、経済産業省)

内閣府は、女性若年層に対して、女性の進出が遅れている理工系などの分野に関する情報提供等を行っている。ウェブサイト「理工チャレンジ(リコチャレ)」による、イベントやロールモデル情報の発信のほか、文部科学省・一般社団法人日本経済団体連合会との共催で、夏休み期間中に、主に女子生徒等を対象とした理工系の職場見学、仕事体験、施設見学など多彩なイベントを取りまとめた「夏のリコチャレ2018~理工系のお仕事体感しよう!~」を開催した。また、平成30(2018)年には、女子生徒等が理工系分野への興味・関心を高めるためのシンポジウムを開催した。さらに、女子生徒等の理工系進路選択を社会全体で応援する気運醸成を図ることを目的として、新たに「STEM Girls Ambassadors(理工系女子応援大使)」を委嘱し、情報発信を行った。

厚生労働省では、女子学生の進路指導やキャリア教育の参考とするための資料「進路指導等を行う教職員のみなさまへ 女子学生の進路指導やキャリア教育にあたって」を作成し、高校や大学へ配布している。また、学生が就職先を選択する際に、各企業の女性の活躍状況、女性の活躍推進や仕事と育児・介護の両立のための取組も考慮できるよう、「女性の活躍・両立支援総合サイト」を運営している49(第2-42図)。

第2-42図 女性の活躍・両立支援総合サイト

特に、「女性の活躍・両立支援総合サイト」内の「女性の活躍推進企業データベース」については、就活生がさらに便利に企業研究や情報収集を行えるよう、スマートフォン対応や検索機能の充実を図った(第2-43図)。

第2-43図 女性の活躍推進企業データベース(スマートフォン版)

経済産業省では、地域の中小企業・小規模事業者のニーズを把握し、地域内外の女性・シニア等の多様な人材とともに、一定のキャリアを積んだミドル人材等から地域の事業者が必要とする人材について発掘・確保・定着を一括支援する「地域中小企業人材確保支援等事業」を実施している。

独立行政法人国立女性教育会館50は、大学などと連携し、女子学生を対象に、就業も含めた女性としてのキャリア形成について学ぶ研修や支援サイトによる情報提供を行っている。

(2)能力開発施策の充実

ア ハロートレーニング(公的職業訓練)(厚生労働省)

厚生労働省は、都道府県とともに、職業に必要な知識・技能を習得させることにより若者の就職を支援するため、公共職業能力開発施設のほか、大学を含む多様な民間教育訓練機関なども活用しつつ、公共職業訓練を実施している。また、求職者支援制度51により、雇用保険を受給できない若者などに対して、職業訓練を実施しつつ、訓練受講を容易にするための給付金を支給し、ハローワークにおけるきめ細かな就職支援を行っている(第2-44図)。

第2-44図 ハロートレーニング(公的職業訓練)の概要

イ ジョブ・カード、若年技能者の人材育成(文部科学省、厚生労働省)

厚生労働省は、平成27(2015)年10月からジョブ・カード52を「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」のツールとして活用し、個人のキャリアアップや、多様な人材の円滑な就職などを促進しており、平成31(2019)年2月末現在、ジョブ・カード取得者数は約217万人に達している(第2-45図、第2-46図)。

第2-45図 ジョブ・カード制度
第2-46図 ジョブ・カード取得者数(累計)
  • 「生涯を通じたキャリア・プランニングのツール」としての活用
    個人の履歴や職業経験、職業生活設計等の情報を蓄積し、生涯におけるキャリア選択等の場面において活用する。
  • 「職業能力証明のツール」としての活用
    免許・資格、学習歴・訓練歴、職業経験、訓練成果の評価、職場での仕事振りの評価等に関する職業能力証明の情報を蓄積し、必要に応じて情報を抽出・編集し、求職活動の際の応募書類、キャリアコンサルティングの際の資料等として活用する。

また、工業高校や職業訓練校等で技能を学ぶ学生や訓練生等を主な対象に、若年技能者の人材育成を目的として3級技能検定を実施しているが、更なる受検機会の拡大を図るため、受検ニーズの高い職種について年2回の試験を実施するなど、若年者の技能離れの防止や若年技能者の職場への定着化に努めている。加えて、平成29年度から、「ものづくり分野」の技能検定の2級又は3級の実技試験を受検する35歳未満の者に対して、受検手数料を最大9,000円減額する措置を実施している。さらに、若年者のものづくり離れ・技能離れがみられる中で、技能の魅力・重要性を啓発し、若年ものづくり人材の確保・育成を促すため「若年技能者人材育成支援等事業」を実施しており、ものづくり体験など若者へのものづくり技能の魅力発信を図るとともに、「ものづくりマイスター」による実技指導を実施し、若者のものづくり技能分野への積極的な誘導に取り組んでいる。

こうした取組を通じて、若年者の技能修得意欲を向上させるとともに、教育訓練の成果を社会一般の評価として明確化するなど、能力を軸とした若年労働市場の基盤整備を図っている。

企業内の人材育成に取り組む事業主などに対して訓練経費や賃金の一部等を助成する「人材開発支援助成金」について、「青少年の雇用の促進等に関する法律」(昭45法98)(以下「若者雇用促進法」という。)に基づく認定事業主が「特定訓練コース」の対象訓練を実施した場合に、より高い助成率とすることにより、企業内における若者への技能継承や中核人材の育成の推進を図っている。

文部科学省は、大学・専修学校等の教育機関が産業界等と協働し、地域や産業界の人材ニーズに対応した、社会人等が学びやすい教育プログラムを開発・実証する取組を推進している。

2 就労等支援の充実

ここ数年、高等学校卒業者の求人倍率は上昇しており(第2-47図)、学校卒業者の就職率も、中学校・高校卒業者・高等専門学校ではほぼ横ばい、短期大学・大学卒業者では上昇がみられる(第2-48図)。若者が充実した職業人生を歩んでいくためには、社会の入口である新規学校卒業段階における円滑な就職支援の充実はもちろん、新規学卒時に非正規雇用の職に就いた場合、あるいは進学も就職もしなかった場合においても、その後、社会において不安定な状況が長引くことのないよう、非正規雇用者の正社員転換・待遇改善等による若者の雇用の安定及び所得向上が図れるよう、大学や経済界と連携した支援が求められる(高校・大学卒業者の状況は第2-49図、第2-50図参照)。

(1)新卒者等に対する就職支援

ア 学生に対する就職支援(文部科学省、厚生労働省、経済産業省)

文部科学省は、関係府省と連携しつつ、大学などの就職相談員とハローワークのジョブサポーターとの連携の促進などにより、大学などにおける就職支援体制を強化している。また、教育課程内外にわたり就業力の育成を目指して各大学が行う取組などを総合的に支援している。

厚生労働省は、

  • 大学院・大学・短大・高専・専修学校などの学生や卒業後未就職の者を専門に支援する「新卒応援ハローワーク」53を全国に設置(平成30年12月1日現在、56か所)し、広域的な求人情報の提供や、職業紹介、中小企業とのマッチング、求人開拓、就職支援セミナー・面接会の実施を行っている。ジョブサポーター54による、就職活動から職場で定着するまでの一貫した担当者制による個別支援(求人情報の提供、就職活動の進め方、エントリーシートの添削、面接指導、職場定着支援など)や臨床心理士による心理的サポートを行っている。また、大学などへのジョブサポーターの相談窓口設置・出張相談を実施するなど、学校などとも連携を強化している。これらの新卒応援ハローワークの支援により、平成29(2017)年度は延べ約44.9万人が利用し、約10.3万人の就職が決定した。
  • 事業主に対して既卒3年以内新卒扱いについて周知を行うとともに、既卒者等の新規学卒枠での応募機会の拡大及び採用・定着の促進を図るため、平成28年2月より、既卒者及び中退者を対象とした助成金制度を創設し、当該助成金を活用した既卒者等の応募機会の拡大を推進した。

経済産業省では、地域の中小企業・小規模事業者のニーズを把握し、地域内外の女性・シニア等の多様な人材とともに、一定のキャリアを積んだミドル人材等から地域の事業者が必要とする人材について発掘・確保・定着を一括支援する「地域中小企業人材確保支援等事業」を実施している。

イ 秩序ある就職・採用活動への取組(文部科学省)

大学生等の就職・採用活動の開始時期については、①一般社団法人日本経済団体連合会(以下「経団連」という。)による「採用選考に関する指針」の策定、②就職問題懇談会(大学等卒業予定者の就職活動の在り方について検討、協議を行う、国公私立の大学、短期大学及び高等専門学校関係団体で構成される組織)による「申合せ」、③関係省庁(内閣官房、文部科学省、厚生労働省、経済産業省)による経済団体・業界団体等に対する遵守等の要請、というプロセスによって、毎年度決定されてきたところである。令和元(2019)年度の就職・採用活動については、広報活動開始:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降、採用選考活動開始:卒業・修了年度の6月1日以降と決定されており、平成28年(2016)年度以降、4年連続で同様の時期となっている。

こうした中、平成30(2018)年10月、経団連から、中長期的な観点から我が国の採用活動の在り方を議論すべき、大学の教育と企業の姿勢がどうあるべきかを議論すべきといった問題提起と併せて、経団連としては、令和2(2020)年度以降に卒業・修了予定の学生の就職・採用活動からは「採用選考に関する指針」を策定しない方針が示された。経団連の方針決定を受けて、就職問題懇談会座長が、学生・企業の双方に大きな混乱が生じることを大学側として強く危惧すること、令和2年度卒業・修了予定者については現行日程を維持するよう求めること、また事態の打開に向けて政府による対応を期待すること、こうした声明を公表した。このため、政府は「就職・採用活動日程に関する関係省庁連絡会議」を開催し、「2020年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方」をとりまとめ、令和2年度については現行の時期等を維持することとし、経済団体・業界団体を通じて各企業に対し要請した。

政府としては、引き続き、大学等と経済界と連携しながら、大学生等の就職・採用活動が円滑に実施されるよう、必要な取組を進めていくこととしている。

(2)職業的自立に向けての支援

ア わかものハローワーク等における支援(厚生労働省)

厚生労働省は、フリーター等の正社員就職の推進のため、全国のハローワークでのきめ細やかな職業相談・職業紹介、職業訓練の情報提供・相談などを実施している。また、支援拠点として、「わかものハローワーク」(平成30年4月1日現在、全国28か所)、「わかもの支援コーナー」、「わかもの支援窓口」を設置し、若者の就職支援を実施している。これらの支援拠点では、

  • 求職者の希望職種やスキルを基に、個人の状況に応じたプランの作成
  • 担当者制による個別の職業相談・照会
  • 求職者向け各種セミナー
  • 職場定着支援

などを実施している。

イ ジョブカフェにおける支援(厚生労働省)

厚生労働省は、都道府県が主体的に設置するジョブカフェ55(「若年者のためのワンストップサービスセンター」。平成30年4月現在、46都道府県に設置)において、企業説明会や各種セミナーを民間団体に委託して実施している。平成29(2017)年度のサービス利用者数は約150.7万人、就職者数は約11.5万人に上る。

ウ 若者の農林漁業への就業促進(農林水産省)

農林水産省は、若者が安心して農林漁業に就業していけるよう、資金(年間最大150万円)の交付、無利子融資、情報提供、就業相談会を実施するとともに、作業実態や就労条件を理解してもらうためのトライアル雇用、就業の場での研修を進めるための雇い主への助成、教育機関における研修を推進している。

(3)非正規雇用対策の推進(厚生労働省)

厚生労働省は、正社員を希望する人の正社員転換や非正規雇用を選択する人の待遇改善を進めるため、平成28(2016)年1月に策定した「正社員転換・待遇改善実現プラン」等に基づき、各都道府県と連携して、非正規雇用労働者の希望や意欲・能力に応じた正社員転換・待遇改善を強力に推進している。

(4)若者雇用促進法の施行による就職支援(厚生労働省)

平成27(2015)年度に成立した若者雇用促進法に基づく、①新卒者の募集を行う企業による職場情報の提供の仕組み、②ハローワークにおける一定の労働関係法令違反に係る求人者の求人不受理、③若者の雇用管理が優良な中小企業についての認定制度(ユースエール認定制度)等について、積極的な周知を図るとともに、その取組を促進している。

(5)若者の「使い捨て」が疑われる企業等への対策の推進(厚生労働省)

厚生労働省では、若者が安心して働くことができる環境づくりに向けて、過重労働や賃金不払残業など若者の「使い捨て」が疑われる企業等に対する取組を強化しており、平成29(2017)年11月に、7,635事業場に対して重点的な監督指導を行い、その結果、約66%に当たる5,029事業場で労働基準関係法令違反等を確認したため、是正・改善に向けた指導を行った。

学生アルバイト等の労働条件の確保については、「大学生等に対するアルバイトに関する意識等調査」(平成27年11月公表)及び「高校生に対するアルバイトに関する意識等調査」(平成28年5月公表)の調査結果を踏まえ、全国の大学生等を対象に、特に多くの新入学生がアルバイトを始める4月から7月までの間、労働条件の確認を促すことなどを目的とした「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンを実施している。

また、文部科学省と連携し、高校生・大学生等のアルバイトが多い業界団体などに対し、労働基準関係法令の遵守のほか、シフト設定等の課題への配慮の要請を行っている。

また、厚生労働大臣を本部長とする「長時間労働削減推進本部」の決定に基づき、

  • ① 平成27(2015)年4月に、東京労働局及び大阪労働局に過重労働に係る事案等に対応する特別チーム(通称「かとく」)を設置し、平成28(2016)年4月に、全ての労働局において「過重労働特別監督管理官」を任命したことに加え、平成29年4月には、本省に設置していた「過重労働撲滅特別対策班」を再編し、省令組織として「過重労働特別対策室」を新設するなど、捜査・指導体制の強化を図るとともに、
  • ② 平成28年4月から、監督指導の対象を月100時間超から月80時間超の残業を把握した全ての事業場に拡大する

などの取組を実施している。

さらに同本部において、「『過労死等ゼロ』緊急対策」を決定(平成28年12月)し、同対策のうち、違法な長時間労働を許さない取組の強化として、

  • ① 労働時間の正確な把握を徹底するため、企業向けの労働時間の把握に対するガイドラインを新たに策定して広く周知
  • ② 長時間労働等の事案について、企業全体への指導を行う仕組みの整備
  • ③ 是正指導した段階での企業名公表制度の強化(平成27年5月より実施)

などの取組を平成29年1月から実施している。

また、平成30(2018)年4月から、全ての労働基準監督署に、労働時間に関する法制度の周知及び指導を集中的に行うための特別チーム「労働時間改善指導・援助チーム」を編成し、そのチームの業務の一環として、長時間労働の抑制と過重労働による健康障害防止のため、「労働時間改善特別対策監督官」として任命された労働基準監督官が監督指導を行っている。

さらに、平成30年6月に成立し、同年7月に公布された「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(平30法71)(以下「働き方改革関連法」という。)が平成31(2019)年4月より順次施行されることから、同法に盛り込まれた時間外労働の上限規制等に係る遵守徹底を図っていく。

3 「働き方改革」の実現

若者も高齢者も、女性も男性も、障害や難病のある人も、一度失敗を経験した人も、誰もが活躍できる「一億総活躍社会」の実現に向けた最大のチャレンジである「働き方改革」は、働く人の視点に立ち、働く方一人一人の意志や能力、置かれた事情に応じた多様な働き方の選択を可能とするための改革である。平成29(2017)年3月、内閣総理大臣を議長とする「働き方改革実現会議」において、「働き方改革実行計画」が取りまとめられた。

本実行計画には、長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現などによる非正規雇用の処遇改善のほか、子供・若者への支援・環境整備の推進として、給付型奨学金の創設など誰にでもチャンスのある教育環境の整備、高校中退者等に対する就労・自立支援、多様な選考機会の促進、若者の「使い捨て」が疑われる企業等への対応策の強化等が盛り込まれた。

本実行計画を受けて、罰則付きの時間外労働の上限規制や同一労働同一賃金の実現などの内容を盛り込んだ働き方改革関連法が平成30(2018)年6月に成立し、同年7月に公布された。

引き続き、「働き方改革実行計画」における子供・若者の支援についても、10年先を見据えたロードマップに沿って、着実に施策を進めていく。


40 平成23年1月の中央教育審議会の答申「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」でこのような指摘がなされている。この答申では、①幼児期の教育から高等教育に至るまでの体系的なキャリア教育の推進、②実践的な職業教育の重視と職業教育の意義の再評価、③生涯学習の観点に立ったキャリア形成支援(生涯学習機会の充実、中途退学者などの支援)という3つの基本的方向性に沿った具体的な方策が提言されている。
41 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/detail/1342369.htm
42 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/index.htm
43 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/detail/1312372.htm
44 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/detail/1315412.htm
45 https://kakehashi.mext.go.jp/
46 https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/career-education/index.html
47 https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/index.html
48 https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/intern/intern.html
49 http://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/
50 https://www.nwec.jp/
51 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyushokusha_shien/index.html
52 https://jobcard.mhlw.go.jp/
53 https://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/05.html
54 平成29年度は、1,539人を全国に配置し、ジョブサポーターの支援により高卒と大卒等を合わせて約19.7万人の就職が決定した。
55 https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/jakunensha/jobcafe.html
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