第3章 困難を有する子供・若者やその家族の支援(第3節)
第3節 子供・若者の被害防止・保護
1 児童虐待防止対策(厚生労働省、警察庁、法務省、文部科学省)
児童虐待の防止については、これまで、「児童虐待の防止等に関する法律」(平12法82)(以下「児童虐待防止法」という。)や「児童福祉法」(昭22法164)の累次の改正、「民法」などの改正により、制度的な充実が図られてきた。一方で、全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は一貫して増加し、平成29(2017)年度には児童虐待防止法制定直前の約11.5倍に当たる133,778件となっている(第3-40図)。特に心理的虐待が増加しており、この要因としては、児童が同居する家庭における配偶者などに対する暴力がある事案(面前DV)について警察からの通告が増加していることや、児童相談所全国共通ダイヤルの3桁化(189)の広報、マスコミによる児童虐待の事件報道等により、国民や関係機関の児童虐待に対する意識が高まったことに伴う通告が増加していることが考えられる。子供の生命が奪われるなど重大な児童虐待事件も後を絶たず、平成29年に警察が検挙した児童虐待事件の被害児童数1,168人のうち、58人が死亡に至っている。検挙された児童虐待事件のうち、41.5%が実父による虐待となっているが、児童が死亡に至った事件では、実母による虐待が最も高く60%に上っている(第3-41図)。
児童虐待は、子供の心身の発達及び人格の形成に重大な影響を与えるとともに、将来の世代の育成にも懸念を及ぼすため、その防止は、社会全体で取り組むべき重要な課題である。
このような課題に対処するため、児童福祉法等の改正が2年連続で行われ、児童虐待について、発生予防から自立支援までの一連の対策の更なる強化を図っている。平成28(2016)年5月に成立し、平成29(2017)年4月に全面施行された「児童福祉法等の一部を改正する法律」(平28法63)では、初めて子供を権利の主体として法律に位置付けるなど児童福祉法の理念を明確化するとともに、子育て世代包括支援センターの設置、市町村及び児童相談所の体制の強化、里親委託の推進等の所要の措置を講ずることとされた。さらに、平成29年6月に成立し、平成30(2018)年4月に施行された「児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律」(平29法69)では、虐待を受けている児童等の保護を図るため、家庭裁判所が都道府県等に対して保護者への指導を勧告することができることとする等、司法関与を強化する等の措置を講ずることとされた。
また、平成30年7月に「児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議」において「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」(以下「緊急総合対策」という。)(第3-42図)を決定し、子供の安全確認ができない場合の立入調査の実施等全ての子供を守るためのルールの徹底等に取り組んでいる。さらに、緊急総合対策を受け、平成30年12月に「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」(以下「新プラン」という。)(第3-43図)を策定し、令和元(2019)年度からの4年間で、児童相談所の児童福祉司を平成29年度の約3,240人から2,020人程度増員するとともに、子ども家庭総合支援拠点を全市町村に設置することとするなど児童相談所と市町村の体制と専門性の強化を図っている。


平成31(2019)年2月には、千葉県野田市で発生した事案を受けて、関係閣僚会議を開催し、通告元の秘匿や関係機関の連携等に関する新ルールを設定することを内容とする「「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」の更なる強化・徹底について」を決定した。
平成31年3月には、体罰禁止の法定化、躊躇なく一時保護に踏み切れるよう、一時保護等を行う「介入」の担当者と「保護者支援」の担当者の分離、児童相談所における弁護士等の配置促進、DV対策との連携強化を内容とする「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律案」を国会に提出した。あわせて、関係閣僚会議において「児童虐待防止対策の抜本的強化について」を決定した。
平成28年4月より、「児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議」を設置、開催するなど、関係府省庁(内閣府、警察庁、総務省、法務省、文部科学省及び厚生労働省)が緊密に連携し、総合的な児童虐待防止対策について、政府全体で強化を図り、一層効果的に推進している。
ア 発生予防(文部科学省、厚生労働省)
文部科学省は、保護者の子育て不安の軽減や孤立感の解消のため、地域における就学時健診の機会を活用した子育て講座や、家庭教育に関する学習機会の提供、家庭教育支援チームによる相談対応等の取組を支援している(家庭教育支援については、第4章第1節1「家庭教育支援」を参照)。
厚生労働省では、平成28(2016)年の児童福祉法等の一部改正を踏まえ、法定化された子育て世代包括支援センターを核として、産婦人科・小児科の医療機関等の地域の関係機関と連携しながら、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援を提供する仕組みの全国展開を図ることとしている。また、同改正において、保護者の養育を支援することが特に必要と認められる子供等(以下「要支援児童等」という。)と思われる者に日頃から接する機会の多い病院、診療所、児童福祉施設、学校等が、要支援児童等と思われる者を把握した場合には、当該者の情報を現在地の市町村に提供するよう努めることとされ、また、これらの機関等は、児童相談所等から児童虐待の防止等に関する資料等の提供を求められたときは、当該資料等を提供することができることとされた。
さらに、不安定な生活など、様々な事情により地域社会から孤立している子育て家庭に対するアウトリーチ支援を強化するため、乳児家庭全戸訪問事業及び養育支援訪問事業について、全ての市町村において実施することを目指しており、平成29(2017)年4月1日現在、全1,741市町村中、乳児家庭全戸訪問事業は1,734市町村(99.6%)、養育支援訪問事業は1,476市町村(84.8)で実施している。
イ 早期発見・早期対応、保護(警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省)
虐待を受けている子供や支援を必要としている家庭を早期に発見し、適切な保護や支援を行うためには、関係機関の間で情報や考え方を共有し、適切な連携の下で対応していくことが重要である。
文部科学省では、緊急総合対策を踏まえ、①各学校における児童虐待の早期発見に向けた取組及び通告、②関係機関との連携強化のための情報共有、③児童虐待防止に係る研修の実施などの積極的な対応等について通知した。
また、千葉県野田市における小学4年生死亡事案を受け、平成31(2019)年2月には、文部科学副大臣を主査とする省内タスクフォースを設置し、再発防止策を検討するとともに、前述の関係閣僚会議決定を受け、児童虐待事案に係る情報の管理及び関係機関間の連携に関する新たなルールを各都道府県教育委員会等に通知した。加えて、同年3月には、全国の児童生徒に対し、虐待をはじめ、いじめなど困ったことがあれば周りの大人に何でも相談してほしいと呼びかけることを目的として、大臣メッセージを発表した。
さらに、学校へのスクールソーシャルワーカー及びスクールカウンセラーの配置の充実や、教職員に対する児童相談所職員との合同研修への参加促進など、児童虐待を早期に発見し迅速かつ的確に対応できる体制の整備を進めている。
厚生労働省では、児童福祉法に基づき、地方公共団体が設置する要保護児童対策地域協議会(第3-44図、第3-45図)において、児童相談所、学校・教育委員会、警察等の関係機関と要保護児童やその保護者等に関する情報共有や、支援内容の協議を行うこととしており、関係機関が適切な連携の下で対応している。同協議会は、平成29(2017)年4月現在、99.7%の市町村で設置されている。また、平成28(2016)年の児童福祉法等の一部改正に伴い、市町村は、子供の最も身近な場所における子供及び妊産婦の福祉に関する支援業務を適切に行わなければならないことが明確化され、市町村は、子供とその家庭及び妊産婦等を対象に、実情の把握、子供等に関する相談全般から通所・在宅支援を中心としたより専門的な相談対応や必要な調査、訪問等による継続的なソーシャルワーク業務までを行う機能を担う拠点(市区町村子ども家庭総合支援拠点)の整備に努めなければならないとされた。


さらに、児童相談所の体制強化として、平成28年の児童福祉法等の一部改正において、弁護士や児童心理司等の専門職を配置することや、児童福祉司は、国が定める基準に適合する研修を受けなければならないことが規定された。
当該改正及び新プランに基づき、市区町村子ども家庭総合支援拠点の全市町村への設置促進、要保護児童対策調整機関調整担当者、児童福祉司等の専門職の増員や資質の向上、関係機関との連携強化等児童虐待の早期発見・早期対応、保護のための体制強化を図っている。
また、入所措置等の解除時に保護者に対する十分なアセスメントがなされぬまま家庭復帰した後、虐待が再発したことにより子供が死亡した事例が発生していること等を踏まえ、平成28年の児童福祉法等の一部改正により、都道府県(児童相談所)は、子供の入所措置等を解除する際に、保護者への助言・カウンセリングや、地域の関係機関と連携した定期的な子供の安全確認等を実施することとされた。
さらに、児童虐待を受けたと思われる子供を見つけた時などに、ためらわずに児童相談所に通告・相談ができるよう、児童相談所全国共通ダイヤル「189(いちはやく)」を運用しており(第3-46図)、児童相談所につながるまでの時間短縮を進めるため、平成28年4月に、音声ガイダンスの短縮や、平成30(2018)年2月に携帯電話等からの着信についてコールセンター方式を導入するなどの改善を進めている。

警察では、街頭補導や相談活動、通報、事件捜査・調査を通じて、児童虐待事案の早期発見・被害児童の早期保護に努めている。「警察官職務執行法」(昭23法136)に基づく犯罪の制止、立入などの権限行使、厳正な捜査、被害を受けた子供の支援、児童相談所の行う立入調査などに対する援助要請への的確な対応など、関係機関との連携を強化しながら子供の安全の確認及び安全の確保を最優先とした対応を行っている。
法務省の人権擁護機関は、専用相談電話「子どもの人権110番」や全国の小中学生を対象とした「子どもの人権SOSミニレター」を始めとする人権相談を、相談した子供本人のみならず、その兄弟姉妹等の近親者に対する児童虐待事案等を発見するための手段としても活用している。また、児童虐待事案等の情報を認知した場合は、事案に応じて、児童相談所などと連携し、子供を一時保護させたりするなど適切な対応をとり、被害を受けた子供の救済に努めている。
少年鑑別所においては、「法務少年支援センター」として、心理学等を学ぶなどした専門の職員が、少年や保護者などの個人からの相談に応じており、同センターにおいて、関係機関と連携し、児童虐待事案等の発見に努めているほか、子どもの非行や問題行動等に悩む保護者に対して、カウンセリング等を行い、虐待の未然防止等を図るための体制強化に努めている。
ウ 社会的養護の現状と課題(厚生労働省)
社会的養護は、保護者のない子供や被虐待児といった家庭環境上養護を必要とする子供、生活指導を必要とする子供に対し、公的な責任として、施設などで社会的に養護を行う制度であり、約44,000人の子供が社会的養護の対象となっている(第3-47図)。

児童養護施設に入所している子供のうち半数以上が虐待を受けた子供である(第3-48図)ほか、障害のある児童が増加している。このため、児童虐待防止対策の一層の強化とともに、社会的養護の質・量ともに拡充が必要となっている。

現在、日本の社会的養護は、約80%が乳児院や児童養護施設、約20%が里親・ファミリーホーム30での受入となっている。
家庭と同様の環境における養育の推進のため、各自治体(都道府県、指定都市、児童相談所設置市)において、「都道府県推進計画」を策定し、計画に基づいた取組を実施することとしている。
エ 里親委託・里親支援の推進(厚生労働省)
里親制度31は、様々な事情により家庭での養育が困難になったり受けられなくなったりした子供を、温かい愛情と正しい理解を持った家庭環境の下で養育する制度である。家庭での生活を通じて、子供が成長する上で極めて重要な特定の大人との愛着関係の中で養育を行うことにより、子供の健全な育成を図るものである(第3-49図)。

厚生労働省は、里親支援事業や、児童養護施設と乳児院への里親支援専門相談員の配置(平成29年10月現在425か所)により、地方公共団体における里親委託推進に向けた取組を促しているほか、毎年10月を里親月間として定め、里親制度の普及促進に係る集中的な取組が地域の実情に応じてなされるよう要請している。
オ 施設退所児童等の自立支援策の推進(厚生労働省)
社会的養護の下で育った子供は、施設などを退所し自立するに当たって、保護者などから支援を受けられない場合が多く、その結果様々な困難に突き当たることが多い。このような子供が他の子供と公平なスタートが切れるように自立への支援を進めるとともに、自立した後も引き続き子供を受け止め、支えとなるような支援の充実を図ることが必要である。
厚生労働省は、こうした支援の充実を図るため、以下の取組を実施している。
- 家賃相当額や生活費の貸付を行う事で安定した生活基盤を築くための「児童養護施設退所者等に対する自立支援資金貸付事業」(平成28年度より)
- 平成28(2016)年通常国会において成立した児童福祉法一部改正法において、児童自立生活援助事業(自立援助ホーム)の対象者に、22歳の年度末までの間にある大学等就学中の者が追加されたことに伴い、20歳到達後から22歳の年度末までの間における支援に要する費用について補助を行う「就学者自立生活援助事業」(平成29年度より)
- 大学等就学中の者以外の自立援助ホーム入居者のうち、引き続き支援が必要な者、及び里親等への委託や、児童養護施設等への施設入所措置を受けていたが18歳(措置延長の場合は20歳)到達により措置解除された者について、原則22歳の年度末まで、引き続き必要な支援を受けることができる「社会的養護自立支援事業」32(平成29年度より)
カ 施設機能の充実(厚生労働省)
厚生労働省は、児童養護施設、乳児院、児童心理治療施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設の5つの施設運営指針、里親及びファミリーホーム養育指針、第三者評価の基準により、施設運営の質の向上を図っている。
また、民間児童養護施設職員等の人材確保と処遇改善を図るため、平成29(2017)年度より、児童養護施設職員等について2%の処遇改善を行うとともに、虐待や障害等のある子供への夜間を含む業務内容を評価した処遇改善に加え、職務分野別のリーダー的業務内容や支援部門を統括する業務内容を評価した処遇改善を実施している。
キ 被措置児童等に対する虐待の防止(厚生労働省)
施設入所や里親委託などの措置がとられた子供(以下「被措置児童等」という。)への虐待があった場合には、その子供を保護し、適切な養育環境を確保することが必要である。また、不適切な施設運営や事業運営が行われている場合には、施設や事業者を監督する立場から、「児童福祉法」に基づく適切な対応が必要となる。
このため、厚生労働省は、「被措置児童等虐待対応ガイドライン」33により、被措置児童等への虐待の防止を図っている。ガイドラインでは、都道府県の関係部局の連携体制や通告があった場合の具体的対応のための体制をあらかじめ定めること、都道府県児童福祉審議会の体制を整備すること、関係施設の協議会との連携・協議を強化し被措置児童等への周知や子供の権利についての学習機会の確保を図ることなどが具体的に示されている。
2 子供・若者の福祉を害する犯罪対策
(1)子供・若者の福祉を害する犯罪対策
「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(平11法52。平成26年6月一部改正。以下「児童買春・児童ポルノ禁止法」という。)違反や児童福祉法違反といった福祉犯は、被害者の心身に有害な影響を及ぼし、その健全な育成を著しく阻害する。
警察は、積極的な取締りと被害者の発見保護に努めている。平成29(2017)年の福祉犯の検挙人員は6,579人で、前年に比べ167人(2.6%)増加した(第3-50図)。このうち、暴力団などの関係者の検挙人員は164人で、福祉犯における検挙人員の2.5%を占めている(第3-51表)。


検察は、積極的に関係法令を適用し、厳正な科刑の実現に努めている。
ア 子供の性被害問題(内閣府、警察庁、総務省、法務省)
児童買春や児童ポルノの製造等の子供の性被害は、子供の権利を踏みにじる断じて許しがたいものである。児童ポルノがいったんインターネット上に流出すれば、その回収は事実上不可能であり、被害を受けた子供の苦しみは将来にわたって続くことになる。福祉犯の被害者となった20歳未満の者は、このところ減少しているが、児童買春事犯の被害者は増加傾向にあるなど、引き続き、こうした犯罪の撲滅に向けた取組が重要である(第3-52図)。
平成26(2014)年6月、児童買春・児童ポルノ禁止法が一部改正され、自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノ又はその電磁的記録を所持、保管する行為や、ひそかに児童の姿態を描写することにより児童ポルノを製造する行為を処罰する罰則が新設された。この法律は、平成26年7月から施行され、自己の性的好奇心を満たす目的での所持・保管罪については、平成27(2015)年7月から適用が開始された。
政府では、児童買春、児童ポルノの製造等の子供の性被害の撲滅と被害児童の権利の擁護に総力を挙げて取り組むため、国家公安委員会による総合調整の下、平成29(2017)年4月に犯罪対策閣僚会議において策定された「子供の性被害防止プラン」(児童の性的搾取等に係る対策の基本計画)に基づき、児童買春、児童ポルノの製造等の子供の性被害を許さない国民意識の向上を図るとともに、児童に対する加害行為に使用されるツールに着目した対策などを総合的に推進している。さらに、官民一体となって、総合的な活動を推進するため、平成28(2016)年度より、関係する民間団体等及び行政機関から構成される「子供の性被害撲滅対策推進協議会」(事務局:警察庁)が開催されている。
内閣府では、平成30(2018)年7月、「青少年の非行・被害防止対策公開シンポジウム」を開催し、「インターネットの危険から青少年を守るために」をテーマとして、インターネット利用に係る子供の性被害等に関する現状と対策等について、基調講演やパネルディスカッションを行った(第3-53図)。

警察は、児童ポルノをめぐる情勢が深刻な状態にあることから、児童買春・児童ポルノ禁止法による積極的な取締りなどを行っている。平成29年には、2,413件、1,703人を検挙した。また、児童を組織的に支配し、SNSなどを利用して児童買春の周旋を行う事犯や、児童の性に着目した営業(いわゆる「JKビジネス」など)に従事させる事犯など、児童の心身に有害な影響を与える事犯が発生していることから、その実態把握の推進と情報の分析、積極的な取締りや、有害業務に従事する児童の補導と被害児童の立ち直り支援などを推進している。
いわゆる「JKビジネス」の営業実態については、無店舗型が全体の約45%を占めている。また、「JKビジネス」が特に集中している東京都においては、平成29年7月、特定異性接客営業等の規制に関する条例が施行され、同営業に対する規制が強化されている(第3-54図)。

なお、児童ポルノの流通・閲覧を防止するため、インターネット・サービス・プロバイダなどの関連事業者によるブロッキングが実施されている。
イ SNSの問題(警察庁)
SNSに起因する児童被害については増加傾向が続いている(第3-55図)。特に、面識のない相手と容易に出会えてしまうようなアプリの利用やSNSの不適切な利用による被害が増加している。警察では、福祉犯事件の取締りを強化し「児童買春・児童ポルノ禁止法」違反などを検挙している。また、援助交際を求めるなどのインターネット上の不適切な書き込みを行った子供に対し指導を行うなどの取組を推進している。
ウ 子供の犯罪被害の防止
① 学校における安全管理(文部科学省)
文部科学省は、「第2次学校安全の推進に関する計画」34(平成29年3月閣議決定)に基づき、学校における安全管理を推進している。また、「地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業」として、地域と学校の連携・協働を通じて、元警察官などからなるスクールガード・リーダーによる学校の巡回や学校安全ボランティアに対する警備のポイントの指導、学校安全ボランティアの養成、各地域における子供の見守り活動に対する支援を行っている。さらに、学校における防犯教室等の講師となる教職員等を対象とした都道府県教育委員会が実施する講習会を支援している。
② 関係機関・団体からの情報の活用(警察庁)
警察は、法務省から子供を対象とした暴力的な性犯罪に係る受刑者の出所情報の提供を受け、出所者の更生や社会復帰を妨げないように配慮しつつ、訪問による所在確認や同意を前提とした面談を取り入れるなど、再犯防止に向けた措置を講じている。
警察は、子供が被害に遭った事案や、子供に対する犯罪の前兆と思われる声掛けやつきまといの発生に関する情報が、迅速かつ確実に保護者などに対して提供されるよう、警察署と学校・教育委員会との間で情報共有体制を整備している。これらの情報を、都道府県警察のウェブサイトで公開し、電子メールなどを活用した発信も行っている。
また、被害者本人からの申告が期待しにくく潜在化しやすい犯罪を早期に認知し、検挙や被害者の保護に結び付けるため、警察庁から委託を受けた民間団体が少年福祉犯罪や児童虐待事案、人身取引事犯などに関する通報を国民から電話やインターネットにより匿名で受け付け、事件検挙などへの貢献度に応じて情報料を支払う「匿名通報ダイヤル」を運用している。
③ 人身取引対策(内閣官房、内閣府、警察庁、法務省、外務省、経済産業省、農林水産省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省)
人身取引は重大な人権侵害であり、人道的観点からも迅速・的確な対応が求められている。これは、人身取引が、その被害者に対して深刻な精神的・肉体的苦痛をもたらし、その被害の回復は非常に困難だからである。
政府では、平成16(2004)年4月から「人身取引対策に関する関係省庁連絡会議」を開催するなどして関係行政機関が緊密な連携を図りつつ、「人身取引対策行動計画」(平成16年12月)、「人身取引対策行動計画2009」(平成21年12月)に基づき、人身取引の防止・撲滅と被害者の適切な保護を推進してきたところ、引き続き人身取引対策に係る情勢に適切に対処し、政府一体となってより強力に、総合的かつ包括的な人身取引対策に取り組んでいくため、平成26(2014)年12月、犯罪対策閣僚会議において「人身取引対策行動計画2014」35を策定するとともに、関係閣僚から成る「人身取引対策推進会議」を随時開催することとした。
令和元(2019)年5月、人身取引対策推進会議の第5回会合を開催し、我が国における人身取引による被害の状況や、関係省庁による人身取引対策の取組状況等をまとめた年次報告「人身取引対策に関する取組について」を決定・公表するとともに、引き続き、人身取引の根絶を目指し、「人身取引対策行動計画2014」に基づく取組を着実に進めていくことを確認した。
また、平成30(2018)年6月の「外国人労働者問題啓発月間」に合わせてバナー広告により、7月30日の「人身取引反対世界デー」及び11月の「女性に対する暴力をなくす運動」期間に合わせてSNSにより、我が国における人身取引の実態、人身取引の防止・撲滅及び被害者の保護に係る取組に関する広報を実施し、被害に遭っていると思われる者を把握した際の通報を呼びかけた。
我が国は、人身取引議定書の締約国として被害者保護のための国際協力に努めるとともに、人身取引撲滅に向けて諸外国政府との連携を進めている。
(2)犯罪被害に遭った子供・若者とその家族等への対応(警察庁、文部科学省)
人格形成の途上にある少年が犯罪などにより被害を受けた場合、その後の健やかな育成に与える影響が大きい。被害を受けた少年の心のケアに当たっては、その悩みや不安を受け止めて相談に当たることや、家庭・友人関係・地域・学校といった少年が置かれている環境に関する問題を解決すること、関係機関が連携して必要な支援をしていくことが大切である。
警察は、被害者の再被害を防止するとともに、その立ち直りを支援するため、少年補導職員等による指導助言や被害者に対するカウンセリング等の継続的な支援を行っている。臨床心理学や精神医学といった高度な知識・技能や豊富な経験を有する部外の専門家を「被害少年カウンセリングアドバイザー」として委嘱し、その適切な指導・助言を受けながら、支援を実施している。また、それぞれの地域において、保護者などとの緊密な連携の下に日常の少年を取り巻く環境の変化や生活状況を把握しつつ、支援を行うボランティアを「被害少年サポーター」として委嘱し、これらの者と連携した支援活動を推進している(第3-56図)。

文部科学省は、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、関係機関とのネットワークを活用するなど多様な支援方法を用いて、被害を受けた子供の心のケアを支援する活動を推進している。さらに、子供の心のケアに対する対応の充実を図るため、教職員などを対象とした研修会、教職員向けの指導参考資料の作成などを行っている。