第4章 子供・若者の成長のための社会環境の整備(第2節)
第2節 子育て支援等の充実
1 子供と子育てを応援する社会の実現に向けた取組
(1)少子化対策の総合的な推進(内閣府)
政府では、「少子化社会対策基本法」(平15法133)第7条に基づく大綱等に基づき、子育て支援施策の一層の充実や結婚・出産の希望が実現できる環境の整備など総合的な少子化対策を推進している。また、平成24(2012)年8月に公布された子ども・子育て関連3法19に基づく子ども・子育て支援新制度20について、子ども・子育て会議での具体的な検討を進め、平成27(2015)年4月に施行された。新しい制度では、「保護者が子育てについての第一義的責任を有する」という基本的な認識の下に、
- 認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付(「施設型給付」)と小規模保育などへの給付(「地域型保育給付」)の創設
- 認定こども園制度の改善
- 地域の実情に応じた子ども・子育て支援の充実
により、幼児期の学校教育・保育、地域の子ども・子育て支援を総合的に推進している。
(2)保育の充実(内閣府、厚生労働省)
子ども・子育て支援新制度では、質の高い保育・教育の提供を行うこととしている。「待機児童解消加速化プラン」に基づく、平成25(2013)年度から平成29(2017)年度末までの5年間の保育の受け皿量拡大の実績は約53.5万人となり、政府目標である50万人を達成した。
平成30(2018)年4月1日時点の待機児童数は19,895人で、前年度と比較して約6,000人の減少となり、10年ぶりに2万人を下回る結果となった。
平成28(2016)年通常国会においては、子ども・子育て支援の提供体制の充実を図るため、事業所内保育業務を目的とする施設の設置者に対する助成及び援助を行う事業(以下「企業主導型保育事業」という。)等を創設するとともに、一般事業主から徴収する拠出金の率の上限を引き上げる等の「子ども・子育て支援法」(平24法65)の改正を行った。平成28年4月から開始したこの企業主導型保育事業により、平成30年度末までに9万人分の受け皿整備を進め、子ども・子育て支援の提供体制の充実を図っている。
一方、依然として、約2万人の待機児童が存在しており、現在、政府においては、平成29年6月に公表した「子育て安心プラン」に基づき、令和2(2020)年度末までに待機児童の解消を図るとともに、女性(25歳から44歳)の就業率80%に対応できるよう、32万人分の保育の受け皿を整備することとしている。また、保育の受け皿整備に対応した保育人材の確保を進めるため、処遇改善などの総合的な確保策を実施している。
(3)地域における子育て支援(内閣府、文部科学省、厚生労働省)
少子化や核家族化の進行、地域のつながりの希薄化など、社会環境が変化する中で、身近な地域に相談できる相手がいないなど、子育てが孤立化することにより、その負担感が増大している。とりわけ、3歳未満の子供を持つ女性の約6割~7割は家庭で育児をしており、社会からの孤立感や疎外感を持つ者も少なくない。
文部科学省は、保護者に対する子育て講座などの学習機会の提供や相談対応などの家庭教育支援を推進している(家庭教育支援については、第4章第1節1「家庭教育支援」を参照)。
厚生労働省は、身近な場所に子育て親子が気軽に集まって相談や交流を行う「地域子育て支援拠点」(平成29年度:7,259か所21)を整備し、子育て親子の交流の場の提供と交流の促進、子育てに関する相談・援助の実施、地域の子育て関連情報の提供、子育てと子育て支援に関する講習などを推進している。また、送迎や放課後の預かり等の援助を受けることを希望する者と当該援助を行うことを希望する者を会員とし、その相互援助活動に関する連絡、調整を行う「ファミリー・サポート・センター事業」(平成29年度:863か所)の推進を図っている。さらに、子供やその保護者、妊娠している人が地域子育て支援拠点等の身近な場所で教育・保育・保健その他の子育て支援事業を適切に選択し円滑に利用できるよう、情報収集と提供、必要に応じた相談・助言などを行うとともに、関係機関との連絡調整などを行う「利用者支援事業」(平成29年度:1,897か所)(基本型・特定型・母子保健型)を推進している。
(4)認定こども園制度の普及促進(内閣府、文部科学省、厚生労働省)
内閣府、文部科学省、厚生労働省は、認定こども園が親の就労状況にかかわらず施設利用が可能であるなど、保護者や地域の多様なニーズに柔軟に対応しうる施設であることから、引き続き地域のニーズや事業者の希望に応じて、その普及を図ることとしている(平成30年4月1日現在、全国で6,160件)。
(5)幼稚園における子育ての支援(文部科学省)
文部科学省は、幼稚園が地域における幼児期の教育のセンターとしての役割を果たせるよう、「親と子が共に育つ」という観点から、子育て相談、情報提供、未就園児の親子登園、保護者同士の交流の機会の提供といった子育ての支援の実施を推進している。また、地域の実態や保護者の要請に応じて通常の教育時間の前後に行う預かり保育を推進するため財政措置などの支援を行っている。
さらに、今般の待機児童の状況を踏まえ、幼稚園においても関係事業の要件の柔軟化や補助の増額により、地域の状況に応じた待機児童の積極的な受け入れを促進している。平成30(2018)年度からは、「子育て安心プラン」に基づき、幼稚園において保育を必要とする2歳児を定期的に預かる仕組みを創設するなど、引き続き推進を図っている。
(6)児童手当制度(内閣府)
児童手当は、家庭における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを目的とし、中学校修了前の児童を養育している者に支給される。支給額は、所得制限額(例:夫婦・児童2人世帯の場合は年収960万円)未満の者に対して、3歳未満と、3歳から小学生の第3子以降については児童1人当たり月額15,000円、3歳から小学生の第1子・第2子と、中学生については児童1人当たり月額10,000円、所得制限額以上の者に対しては、特例給付として児童1人当たり月額5,000円である。
(7)幼児教育・保育の無償化(内閣府、文部科学省、厚生労働省)
政府は、「新しい経済政策パッケージ」等に基づき、令和元(2019)年10月から、3歳から5歳までの子供及び0歳から2歳までの住民税非課税世帯の子供についての幼稚園、保育所、認定こども園等の費用を無償化することとしている。少子高齢化という国難に正面から取り組むため、令和元年10月に予定される消費税率の引上げによる財源を活用し、子育て世代、子供たちに大胆に政策資源を投入し、お年寄りも若者も安心できる全世代型の社会保障制度へと大きく転換する。
20代や30代の若い世代が理想の子供数を持たない理由は、「子育てや教育にお金がかかり過ぎるから」が最大の理由となっており、幼児教育・保育の無償化をはじめとする負担軽減措置を講じることは、重要な少子化対策の1つである。また、幼児教育は生涯にわたる人格形成の基礎を培うものであり、子供たちに質の高い幼児教育の機会を保障することは極めて重要である。
このような背景を踏まえ、政府は、これまで段階的に推進してきた取組を一気に加速することとし、幼児教育・保育の無償化を実現するため、平成31(2019)年2月に子ども・子育て支援法の改正法案を第198回国会に提出し、同国会において成立した。
また、就学前の障害児の発達支援についても、併せて無償化を進めていく。