第4章 子供・若者の成長のための社会環境の整備(第3節)
第3節 子供・若者を取り巻く有害環境等への対応
1 「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画(第4次)」の決定(内閣府)
フィルタリングの利用促進を目的として「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(以下「青少年インターネット環境整備法」という。)が改正され、平成30(2018)年2月1日に施行された。(第4-11図)

また、この法律に基づき定められている「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするための施策に関する基本的な計画」(以下「青少年インターネット環境整備基本計画」という。)についても、所要の見直しを行い、平成30年7月27日、子ども・若者育成支援推進本部において「第4次青少年インターネット環境整備基本計画」が決定された(第4-12図、第4-13図)。


同計画では、
- 法改正を踏まえたフィルタリングの更なる利用促進
- 子供の低年齢期からの保護者・家庭への支援
- SNS等に起因するトラブル・いじめや被害の抑止対策の推進
を施策の3本柱としたほか、平成29(2017)年12月19日に決定された「座間市における事件の再発防止策について」を踏まえ、関連する施策を反映させている。
(1)実態の把握(内閣府)
内閣府は、青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備を推進するため、青少年インターネット環境整備法の実施状況を検証するとともに、青少年のインターネット利用環境整備に関する基礎データを得ることを目的として、青少年及びその保護者を対象とした「青少年のインターネット利用環境実態調査」(第4-14図、第4-15図、第4-16図、第4-17図、第4-18図)を実施している22。





(2)子供や保護者に対する啓発(内閣府、警察庁、総務省、法務省、文部科学省)
内閣府は関係省庁と連携し、インターネット利用におけるフィルタリングの普及や適切な利用を推進するため、リーフレットの作成、公表、配付などによる啓発活動に取り組んでいる。
平成30(2018)年度は、インターネット利用の低年齢化を踏まえ、低年齢層の子供の保護者向けの啓発リーフレットを作成し、関係機関・団体に周知・配付した(第4-19図)。

また、地域が自立的・継続的に青少年のインターネット利用環境づくりに関する取組を実施できるようにするための連携体制構築の支援を目的として、「青少年のインターネット利用環境づくりフォーラム」を開催した(平成30年度は神奈川県、群馬県、香川県で開催)(第4-20図)。

加えて、内閣府をはじめ関係省庁では、地方公共団体、関係団体、関係事業者などと連携し、毎年、2月から5月にかけて、スマートフォンやソーシャルメディアの安全・安心な利用のための啓発活動を集中的に実施する、「春のあんしんネット・新学期一斉行動」を展開している。なお、平成29(2017)年10月に発覚した座間市における事件の再発防止策として、例年の取組を前倒しし、フィルタリングの利用促進及びインターネットリテラシーの向上に重点を置いた啓発活動等の取組を一層強力に推進する「あんしんネット 冬休み・新学期一斉緊急行動」を実施した(平成29年12月から平成30年5月まで)。
内閣府をはじめ関係省庁では、期間中、ラジオ・BSテレビ・インターネット等の様々な広報媒体を通じた啓発活動等の取組を集中的に展開した。
警察は、出会い系サイトやSNSの利用に起因する犯罪による被害やインターネット上の違法情報・有害情報の影響から子供を守るための広報啓発を推進している。平成31(2019)年2月の広報重点を「サイバー空間の脅威に立ち向かう社会全体のセキュリティ意識の向上」として、全国の小学校や中学校などにおいて情報セキュリティに関する講習を開催した。この講習では、子供や保護者、学校の教職員などに対し、インターネット上の違法情報・有害情報に起因した犯罪、子供を被害者とするサイバー犯罪の具体的事例や対応策を紹介するとともに、フィルタリングの導入などを進めている。
総務省は、地方の各総合通信局が地域の核としてコーディネーター役を務め、関係者を巻き込んだリテラシー向上の枠組み整備とこれを活用した周知啓発活動を推進している。具体的には、文部科学省や情報通信分野などの企業・団体と連携し、子供のインターネットの安心・安全な利用に向けて、主に保護者・教職員や子供を対象とした啓発講座を全国規模で行う「e-ネットキャラバン」の活動を全国で実施している。また、インターネットリテラシー指標に関する開発、実施を通じた全国的な啓発活動を行っている。
法務省の人権擁護機関では、「インターネットを悪用した人権侵害をなくそう」を啓発活動の強調事項の一つとして掲げ、講演会の開催、啓発冊子の配布等、各種啓発活動を実施している。その一環として、人権啓発ビデオ「インターネットと人権~加害者にも被害者にもならないために~」の各法務局における貸出しやインターネットによる配信を行っているほか、ブログサイトやSNSサイトに、人権に関する正しい理解を深めることや相談先及び救済手続を案内することを目的としたインターネット広告を掲載するなど、各種啓発活動を実施している(第4-21図)。

また、平成31年1月には、「インターネット人権フォーラム」を開催し、子供をインターネット上における人権侵害の加害者とさせないための利用方法等について学ぶ機会を提供した。
文部科学省は、保護者や学校関係者、地方公共団体、事業者の効果的な取組を推進するため、平成31年2月、インターネットの使用等に関する「ネット安全安心全国推進フォーラム」を開催した。有識者による講演やカンファレンスなどを行い、青少年を取り巻く現状や取組の紹介などを通じて、インターネット社会を生きていく青少年のために社会全体でどう取り組んでいくべきか考える機会を提供した。
(3)フィルタリングの普及啓発(内閣府、警察庁、総務省、文部科学省、経済産業省)
青少年インターネット環境整備法では、国などがフィルタリングについて広報啓発活動を行うことが規定されており、関係府省庁が民間団体などと連携して、フィルタリングの普及啓発を推進している。
警察は、違法情報に対する取締りを推進するとともに、有害情報から子供を守るためのフィルタリングの普及、プロバイダの自主的措置の促進に努めている。また、子供にもスマートフォンが普及し、その利用に係る福祉犯被害などが増加していることから、関係府省などと連携して、スマートフォンに対応したフィルタリング、家庭のルールづくりの必要性などについての広報啓発や、関係事業者に対する要請を行っている(第4-22図)。

総務省は、インターネット上の有害な情報から子供を保護するため、携帯電話事業者によるフィルタリングサービスの見直しを進めるとともに、学校関係者や保護者のフィルタリングへの理解の向上に努めている。
文部科学省は、有識者等による「ネットモラルキャラバン隊」を結成し、フィルタリングやインターネット利用のルールに関する学習・参加型のシンポジウムを保護者等を対象に全国で実施するとともに、さらに携帯電話等をめぐるトラブルや犯罪被害の事例、対処方法のアドバイスなどを盛り込んだ児童生徒向けの普及啓発資料を作成し、全国の小中高等学校等へ配付している。
経済産業省は、警察庁及び都道府県警察の協力の下、全国各地のNPOや関係省庁等と連携し、「インターネット安全教室」を開催し、フィルタリングの普及啓発を図ることなどを通じて、関係者全体のインターネットリテラシーの向上と青少年及びその保護者などによる実効的な自主的対策を促進している。また、平成30(2018)年度には、教育委員会への講師派遣も実施した。
(4)悪質な違法行為の取締りなど(警察庁、法務省)
警察庁は、一般のインターネット利用者などからの違法情報等に関する通報を受理し、警察への通報やプロバイダ、サイト管理者などへの削除依頼を行うインターネット・ホットラインセンターを運用している(第4-23図)。同センターでは、平成29(2017)年には597,570件の通報を受理しており、プロバイダなどに対して2,187件の違法情報の削除依頼を行い、そのうち1,778件(81.3%)が削除された。同センターでは、外国のウェブサーバに蔵置された児童ポルノ情報についても、当該外国の同種の機関に対し削除に向けた取組を依頼している。

警察は、サイバーパトロールや、民間のサイバー防犯ボランティア、インターネット・ホットラインセンターからの通報により、インターネット上に流通する違法情報・有害情報の把握に努めるとともに、全国の警察が連携して、以下の取組を進めている。
- 出会い系サイトの利用に起因する犯罪から子供を保護するため、当該サイトを利用して子供を性交などの相手となるよう誘引する行為などの積極的な取締り
- 出会い系サイト以外のSNSの利用に起因する子供の被害が増加していることを受け、関係機関・団体と連携し、フィルタリングの普及促進といった各種対策
- これらのサイトの利用に起因する子供の被害を防止するための広報啓発
- インターネット利用者の規範意識を醸成するため、サイバー防犯ボランティアの育成・支援
法務省の人権擁護機関において、インターネット上の名誉毀損・プライバシー侵害などの人権侵害情報について相談を受けた場合、プロバイダなどに対する発信者情報の開示請求や当該情報の削除依頼の方法について助言しているほか、必要に応じプロバイダ等に当該情報の削除を要請するなど被害の救済に努めている。
(5)関係団体等の自主的な取組の促進(内閣府、総務省)
利用者・産業界・教育関係者などが相互に連携するために民間企業・各種団体・PTA等によって設立された安心ネットづくり促進協議会23では、広く国民一般を対象としたリテラシー向上の推進に取り組んでおり、インターネットや様々なメディアを活用し、リテラシー向上やフィルタリングの普及などの活動を全国各地で実施している。
また、青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにするため、関係業界や関係団体で様々な取組が行われている(第4-24表)。

(6)インターネット以外のメディア等に係る環境の整備(内閣府、警察庁)
インターネット以外のメディアが提供する情報のうち、特に性・暴力表現に関する情報などについては子供に悪影響を及ぼす場合があると指摘されることがある。子供を取り巻く有害情報対策は、まず、関係業界自身が自主的に取り組むことが大切であり、マスコミをはじめ関係業界において様々な取組が自主的に行われている(第4-24表)。
これに加え、各都道府県においては、いわゆる青少年保護育成条例に基づき、子供・若者を取り巻く有害環境に対する規制が行われている。
内閣府では、ホームページに各都道府県の条例及び規制等の制定状況や有害図書類の指定状況等を掲載する24などして、有害環境対策に関する都道府県間の情報共有を図っている。
警察では、青少年保護育成条例により青少年への販売などが規制されている有害図書類について、条例違反行為の取締りを行っている。
2 ネット依存への対応(文部科学省)
近年、スマートフォン等をはじめとするインターネット接続機器の普及に伴い、長時間利用による生活リズムの乱れや有害サイト等を通じた被害などが深刻な問題となっている。
このような現状を踏まえ、文部科学省では、青少年を取り巻く有害環境対策の推進として次のような取組を実施している。
- 有識者等による「ネットモラルキャラバン隊」を結成し、フィルタリングやインターネット利用のルールに関する学習・参加型のシンポジウムを保護者等を対象に全国で実施
- インターネットの有効な活用方法などについて、青少年自ら研修し、学んだ成果を発信する「青少年安心ネット・ワークショップ」を実施
- 急速に普及していくインターネット環境に対応するため、地域の先進的な取組に対する支援を実施
- 携帯電話等をめぐるトラブルや犯罪被害の事例、対処方法のアドバイスなどを盛り込んだ児童生徒向けの普及啓発資料を作成し、全国の小中高等学校等へ配付(第4-25図)
- 保護者や学校関係者、地方公共団体、事業者の効果的な取組を推進するため、全国的なフォーラムを開催
- 青少年のスマートフォンを所有する割合や、スマートフォンなどを通じてインターネットを活用する割合及び平均的な利用時間が増加傾向にあり、いわゆるネット依存への対策が喫緊の課題となっているため、青少年教育施設を活用し、ネット依存傾向の青少年を対象とした自然体験や宿泊体験プログラムの実施を通じたネット依存対策を実施
3 性風俗関連特殊営業等の取締り等(警察庁)
警察は、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(昭23法122)に基づき、学校周辺等の営業禁止区域等において違法に営まれる性風俗関連特殊営業や、18歳未満の者に客の接待などをさせる違法な風俗営業などの取締りを積極的に進めている。
4 酒類、たばこの未成年者に対する販売等の禁止
(1)取締り・処分等(警察庁、法務省)
警察は、「未成年者喫煙禁止法」(明33法33)と「未成年者飲酒禁止法」(大11法20)に基づき、未成年者が酒類やたばこを容易に入手できないような環境を整備するため、指導取締りを徹底するとともに、年齢確認の徹底、従業員研修の実施、自動販売機の適切な管理などについて、関係業界が自主的な措置をとるよう働き掛けている。
検察は、「未成年者喫煙禁止法」や「未成年者飲酒禁止法」に違反する事案について、必要な捜査を行い、事案に応じた処分を行っている。
(2)飲酒防止(厚生労働省、国税庁)
国税庁25は、未成年者飲酒防止をはじめとする酒類の販売管理の徹底を図る観点から、「未成年者の飲酒は法律で禁止されている」旨を酒類の容器等に表示させることなどを内容とする「未成年者の飲酒防止に関する表示基準」(以下「表示基準」という。)の策定や、酒類小売販売場ごとに、酒類の販売業務に関する法令に係る研修を受講した者のうちから酒類販売管理者を選任させるなど、所要の措置を講じている。また、職員が酒類小売販売場に臨場の上、表示基準の遵守状況を確認し、違反のあった場合には是正指導を行っている。このほか、酒類業界に対して、未成年者飲酒防止に配意して販売、広告・宣伝を行うよう要請するとともに、購入者の年齢確認ができない従来型自動販売機の撤廃といった取組を支援している。
酒類に係る社会的規制等関係省庁等連絡協議会(内閣府、警察庁、公正取引委員会、総務省、文部科学省、厚生労働省、国税庁)は、毎年4月を未成年者飲酒防止強調月間と定め、啓発用ポスターの作成・配布による全国的な広報啓発活動を連携して行っている。また、全国小売酒販組合中央会が実施している「未成年者飲酒防止・飲酒運転撲滅全国統一キャンペーン」やビール酒造組合を中心に実施している「STOP!未成年者飲酒キャンペーン」等の取組を支援するなど、国民の未成年者飲酒防止に関する意識の高揚を図っている。
また、未成年者の飲酒を含む不適切な飲酒の影響による心身の健康障害の発生、進行及び再発の防止を図ること等を目的として、「アルコール健康障害対策基本法」(平25法109)が平成26(2014)年6月に施行され、同法に基づくアルコール健康障害対策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な計画である「アルコール健康障害対策推進基本計画」が平成28(2016)年5月31日に策定(閣議決定)されている。
厚生労働省では、「アルコール健康障害対策基本法」に基づくアルコール関連問題啓発週間(毎年11月10日~16日)に合わせて、ポスターの作成やアルコール関連問題啓発フォーラムを主催、都道府県との共催による同フォーラムを開催など、啓発に取り組んだ。
(3)喫煙防止(財務省)
財務省は、未成年者喫煙防止の観点から、自動販売機を設置する場合には成人識別自動販売機とすることをたばこ小売販売業の許可の条件としている26。また、インターネットによるたばこ販売については、販売時に購入希望者の年齢識別が適切に講じられるよう、あらかじめ公的な証明書により購入希望者の年齢確認などを行った上で販売することをたばこ小売販売業の許可の条件としている。これらの条件に対する違反のあった場合には、「たばこ事業法」(昭59法68)に基づく行政処分(許可の取消し・営業停止)の対象となる。