第7章 施策の推進体制等(第2節)
第2節 広報啓発等
1 広報啓発・情報提供等
(1)子供・若者育成支援強調月間(内閣府)
内閣府は、子供・若者育成支援に関する国民運動の一層の充実や定着を図ることを目的として、昭和53(1978)年から、毎年11月を「子供・若者育成支援強調月間」3と定め、関係府省、地方公共団体、関係団体とともに、諸事業、諸活動を集中的に実施している(第7-1図)。平成30(2018)年度は、「支えよう 輝くひとの 夢みらい」をスローガンに掲げ、以下の5点を重要事項として取り組んだ。

- 若者の社会的自立支援の促進
- 子供を犯罪や有害環境等から守るための取組の推進
- 児童虐待の予防と対応
- 子供の貧困対策の推進
- 生活習慣の見直しと家庭への支援
月間中、関係府省や地方公共団体、関係団体において、各種行事や広報啓発活動が行われた。
(2)子供と家族・若者応援団表彰、未来をつくる若者・オブ・ザ・イヤー等(内閣府)
内閣府は、子供や若者を育成支援する活動などにおいて顕著な功績があった個人、団体、企業に対し「子供と家族・若者応援団表彰」を、社会貢献活動において顕著な功績があった青少年(団体を含む。)に対し「未来をつくる若者・オブ・ザ・イヤー」を実施している4。また、子供や若者を育成支援する優れた活動などを広く社会に紹介する「子供と家族・若者応援団活動事例紹介事業」を実施している。「未来をつくる若者・オブ・ザ・イヤー」は、平成26(2014)年度まで「社会貢献青少年表彰(内閣府特命担当大臣表彰)」として実施していたが、平成28(2016)年2月に決定した「子供・若者育成支援推進大綱」に基づき、内閣総理大臣表彰等として創設したものである。平成30(2018)年度には、
- 「子供と家族・若者応援団表彰」(子供・若者育成支援部門)では、内閣総理大臣表彰として3団体を、内閣府特命担当大臣表彰として2名、8団体をそれぞれ表彰
- 「未来をつくる若者・オブ・ザ・イヤー」では内閣総理大臣表彰として2団体を、内閣府特命担当大臣表彰として1名、10団体をそれぞれ表彰
- 「子供と家族・若者応援団活動事例紹介事業」(子供・若者育成支援部門)では、1名、9団体の活動をそれぞれ紹介
を行った。
COLUMN NO.8
「子供と家族・若者応援団表彰」、「未来をつくる若者・オブ・ザ・イヤー」
平成30(2018)年度「子供と家族・若者応援団表彰」において子供・若者を育成支援する活動で内閣総理大臣表彰を受賞した3団体、「未来をつくる若者・オブ・ザ・イヤー」において内閣総理大臣表彰を受賞した2団体を紹介する。


「子供と家族・若者応援団表彰」(内閣総理大臣表彰)
(1)いいづか人材育成グループ『ユリシス』(福岡県)
福岡県飯塚市教育委員会主催の「飯塚市中学生海外研修事業」に参加した研修生のOB・OGが中核メンバーとなり、平成21(2009)年11月に設立された福岡県飯塚市を中心に活動するボランティアグループである。
「地域貢献」「異世代間交流」「国際交流」を活動のテーマとし様々なことに参加・協力・チャレンジして、その活動の中で出会う方々との交流を通じて、「自ら学び、感じ、成長していくこと」をモットーに、来日間もない外国人を対象とした日本語教室の支援、乳幼児、小学生、高齢者等との異世代間交流を目的とした地域での公民館事業へ協力、成人式における運営支援等を約10年間にわたり継続して実施してきている。


(2)釧路鳥取(くしろとっとり)てらこや(北海道)
町内会やPTAの役員、民生委員や保護司などにより、「地育」(地域全体で子供を育む)にあふれる社会づくりを目指して、平成24(2012)年に北海道釧路市で立ち上げられた団体である。毎週土曜日に学習のサポートや遊びをすることなどを通して、多世代交流、子供たちの居場所づくり等に取り組んでいる。平成29(2017)年度には延べ約1,200人の子供たちが参加した。また、釧路市立鳥取小学校を核とした地域創生を目指す一環として、PTA行事や学校行事のサポートを行うとともに、平成25(2013)年度から毎年市内の児童が参加する全国的な算数の検定試験の実施に取り組み、学力の向上に寄与している。


(3)特定非営利活動法人セカンドチャンス!(法務省)
我が国初めての少年院出院者の自助グループである。少年院出院後、当事者が直面しがちな悩みや困難、またその先にある希望を共に分かち合い、成長し合うことを目指し、全国各地で当事者間の交流会活動や、少年院での講演活動を行っている。また、書籍の出版やシンポジウムの開催を通じて、少年院出院者の立ち直りのための啓発活動も行っている。


「未来をつくる若者・オブ・ザ・イヤー」(内閣総理大臣表彰)
(1)特定非営利活動法人ezorock(エゾロック)(北海道)
野外ロックフェスのごみ問題を解決する取組を契機として、平成13(2001)年に活動を開始した団体である。その後、ごみ問題に限らず、都市交通、子供の体験活動、自然保護、エネルギー、防災など多岐に渡る活動を展開してきた。現在の団体構成員は254名で、これまでに延べ2万人を超える若者が道内各地の現場で活動に参加している。道内各地のNPO、市町村、企業などと連携しながら、地域が抱える課題に対して、若者が自ら考え行動できる仕組みを構築し、次の世代に繋がる社会づくりに貢献している。


(2)長野県飯田OIDE(オーアイデイーイー)長姫(おさひめ)高等学校 コンピュータ制御部 高校戦隊テックレンジャー(長野県)
平成22(2010)年に活動を開始し、子ども工作教室、CM制作、テックレンジャーを主な活動としている高校在校生の団体であり、団体構成員は約10名である。
子ども工作教室では、子供との交流を大切にしながらものづくりの楽しさや科学の面白さを教えており、CM制作では、高校で学ぶ専門分野の技術を活用して、「交通安全CM」や「ふるさとCM」・「防災番組」を撮影・制作している。
また、「テックレンジャー」とは高校生によって作り出された架空のローカルヒーローであり、仮面と衣装をまとった「正義の戦士」である。現在社会問題になっている事象を取り上げ、子供たちに夢と希望を与えるストーリーのショーを毎年20回程度実施している。また、テックレンジャーの活動は、ショータイム以外にも、「ゴミのポイ捨て防止PR」や、保育所への訪問など、多岐にわたる。


(3)青少年の非行・被害防止全国強調月間(内閣府、警察庁)
内閣府は、昭和54(1979)年から、学校が夏休みに入る毎年7月を「青少年の非行・被害防止全国強調月間」として定め、幅広い関係府省の参加と関係団体の協力・協賛を得て、青少年の非行・被害防止について国民の意識の高揚を図るため、広報啓発などの活動を集中的に実施している。平成30(2018)年度は、次に掲げる7項目を重点課題とし、このうち、特にインターネット利用に係る犯罪被害等の防止を最重点として各種取組を推進した。
- インターネット利用に係る犯罪被害等の防止
- 子供の性被害の防止
- 有害環境への適切な対応
- 薬物乱用対策の推進
- 不良行為及び初発型非行(犯罪)等の防止
- 再非行(犯罪)の防止
- いじめ・暴力行為等の問題行動への対応
月間中は、関係府省や地方公共団体等において、各種イベントや広報啓発、有害環境浄化活動等が行われた。
内閣府では、平成30年7月、「インターネットの危険から青少年を守るために」をテーマとして「青少年の非行・被害防止対策公開シンポジウム」を開催した。同シンポジウムでは、「スマホ時代の子どもたちのために」と題した基調講演のほか、有識者によるパネルディスカッションを行った(第7-2図)。

警察庁は、平成30年7月の「青少年の非行・被害防止全国強調月間」に合わせ、「目で見る非行・被害防止運動」として、非行・被害防止を訴えるポスター約7万枚を作成して全国各地に掲示を依頼した。また、全国の主要なプロ野球場とプロサッカー競技場に対し、試合開催時の電光掲示板などを活用した広報への協力を依頼した。
(4)児童虐待防止推進月間(厚生労働省)
平成16(2004)年から、毎年11月を「児童虐待防止推進月間」と位置付け、児童虐待問題に対する社会的関心の喚起を図っている(第7-3図)。厚生労働省では、月間中、関係府省庁や地方公共団体、関係団体等と連携した集中的な広報啓発活動を実施している。平成30(2018)年度は、「未来へと 命を繋ぐ 189(いちはやく)」を月間標語として決定し、広報用ポスター、リーフレット等に掲載して配布したほか、「子どもの虐待防止推進全国フォーラムinみやぎ」の開催(10月28日)、政府広報の活用等により、児童虐待は社会全体で解決すべき問題であることの周知・啓発を実施した。また、児童虐待防止の啓発を図ることを目的に民間団体(認定NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク)が中心となって実施している「オレンジリボン運動」を後援している5。

(5)“社会を明るくする運動”~犯罪や非行を防止し、立ち直りを支える地域のチカラ~(法務省)
法務省は、犯罪や非行のない明るい社会を実現するため、昭和26(1951)年から、“社会を明るくする運動”6(第7-4図)を主唱し、毎年7月を強調月間として、全国各地で世論の啓発、社会環境の改善、犯罪の予防を目的とする地域住民の活動の促進などに努めている。この運動の実施に当たっては、保護司会、更生保護女性会、BBS会をはじめとする民間協力組織や地方自治体をはじめとする関係機関・団体の約3万団体の協力を得て、地域における更生保護への理解促進と犯罪予防のための広報啓発活動の強化に努めている。強調月間中は、全国各地で、犯罪予防活動、子育て相談活動、地域で非行問題や非行に陥った少年の立ち直り支援を話し合うシンポジウム、ミニ集会活動、各種広報活動のほか、ワークショップ、親子触れ合い行事といった子供の主体的参加を得た行事が積極的に実施されている。平成30(2018)年の本運動(第68回)では、「出所者等の事情を理解した上で雇用する企業の数を増やすこと」、「帰るべき場所がないまま、刑務所から社会に戻る人の数を減らすこと」、「薬物依存からの回復と社会復帰を長期的に支える地域の環境を作ること」、「犯罪をした高齢者・障害者等が、社会復帰に必要な支援を受けられる環境を作ること」、「非行少年等が学びを継続できる環境を作ること」を重点事項として、全国各地で各種行事が行われた。また、次代を担う小中学生を対象に、平成5(1993)年の第43回から実施している「“社会を明るくする運動”作文コンテスト」では、小中学校合わせて10,396校から約34万点の応募があった。

(6)人権に関する啓発活動(法務省)
法務省の人権擁護機関では、児童虐待、いじめ、児童の権利に関する条約等の子供の人権に関する講演会等の開催、啓発冊子の配布等の各種啓発活動を実施している。また、「子どもの人権を守ろう」を啓発活動の強調事項の一つとして掲げ、12月4日から10日までの人権週間をはじめ、一年を通して啓発活動を実施している。このほか、小学生や中学生を対象とした以下の啓発活動を実施している。
- 昭和57(1982)年から、「人権の花運動」を実施している。この運動は、子供が協力して花の種子などを育てることによって、優しさと思いやりの心を体得することなどを目的としたもので、平成30(2018)年度は、小学校を中心に3,794団体からの参加があった。あわせて、「いじめ」等について考える機会を与えることによって、子供たちが相手への思いやりの心や生命の尊さを体得すること等を目的とした「人権教室」も開催しており、平成30年度は1,108,404人の参加があった。
- 昭和56(1981)年から、「全国中学生人権作文コンテスト」を実施している。この事業は、中学生が作文を書くことを通じて、人権尊重の重要性、必要性について理解を深めるとともに、豊かな人権感覚を身に付けること等を目的としている。平成30年度に開催された第38回大会には、7,342校から、933,992編の作品の応募があった。
(7)国民運動としての「食育」の推進(農林水産省)
農林水産省は、毎年6月を「食育月間」と定め、全国的に、各種広報媒体や行事などを通じた広報啓発活動を重点的に実施するとともに、毎月19日を「食育の日」と定め、食育推進運動を継続的に展開し、地方公共団体、関係団体などによる食育の促進を図っている。平成30(2018)年度の食育月間では、食を通じたコミュニケーションの促進と子供の生活リズムの向上、健康寿命の延伸につながる健全な食生活の実践の促進、食の循環や環境への意識の醸成、伝統的な食文化に関する関心と理解の増進、食品の安全性に関する情報提供と食品情報に関する制度の普及・定着及び都道府県・市町村が作成する食育推進計画の普及の6つを重点事項として定めるとともに、全国規模の中核的な行事として、大分県などとの共催により「第13回食育推進全国大会inおおいた」を開催し(平成30年6月)、約3万4千人の来場を得た。令和元(2019)年度の食育月間では、山梨県及び甲府市などとの共催により、「第14回食育推進全国大会inやまなし」を開催する予定である。
また、平成30年度は、ボランティア活動、教育活動又は農林漁業、食品製造・販売等その他の事業活動を通じて食育を推進する優れた取組を表彰するため、「第2回食育活動表彰」を実施し、7団体に農林水産大臣賞、14団体に消費・安全局長賞を授与した。
さらに、政府広報では、ラジオやインターネットを活用し、食育に関する広報を行った。
(8)子供や若者向けの情報提供(各省庁)
各府省は、キッズページなどを活用し、各種の情報が子供や若者に届きやすく、かつ、分かりやすいものとなるよう努めている。政府広報オンラインでは、「キッズページリンク集」として、各府省のキッズページなどのリンク集を公開している7。
2 保護者を含む大人に対する啓発(警察庁)
警察は、社会全体で子供・若者を見守る社会気運の醸成を図り、健全な育成を支援するため、PTA団体や自治体、企業等に対して地域の非行情勢や非行要因等について、幅広く情報発信を行っている。また、少年警察ボランティアなどの協力の下、通学時などの声掛け・あいさつ運動、職場体験やスポーツ活動を通じて大人との触れ合いの機会を提供するなど、少年が地域に受け入れられ、身の回りに常に自分のことを気にかけている「大人の目」があることを実感できる取組を推進し、少年の規範意識の向上を図っている。さらには、少年とその保護者が参加できる非行防止教室や親子カウンセリングを開催するなどしている。
3 家族や地域の大切さ等についての理解促進(内閣府)
子供と子育てを応援する社会の実現のためには、子供を大切にし、社会全体で子育てを支え、個人の希望が叶えられるバランスの取れた総合的な子育て支援を推進し、多様な家庭や家族の形態があることを踏まえつつ、生命を次代に伝え育んでいくことや、子育てを支える家族と地域の大切さが国民一人一人に理解されることが必要である。
内閣府は、平成19(2007)年度から、11月の第3日曜日を「家族の日」、その前後1週間を「家族の週間」と定めて、この期間を中心に、関係府省や地方公共団体、関係団体と連携して、様々な啓発活動を展開し、家族や地域の大切さ等について理解の促進を図っている8(第7-5図)。具体的には、フォーラムの開催や作品コンクールの実施を通じて普及・啓発活動を実施している。フォーラムは、「家族の日」に、地方公共団体などの協力を得て、家族や地域の大切さを呼び掛けるために開催しており、平成30(2018)年度は、宮崎県宮崎市でフォーラムを開催した。フォーラムでは、有識者による基調講演やパネルディスカッションなど子育てを支える家族と地域の大切さに関する様々なプログラムが行われた。

また、作品コンクールについては、子育てを支える家族や地域の大切さの意識の高揚を図ることを目的として、家族や地域の大切さに関する「写真」と「手紙・メール」を公募し、優秀な作品を表彰している。平成30年度は、「写真」は、①子育て家族の力、②子育てを応援する地域の力、の2テーマを、「手紙・メール」は、小学生、中・高校生、一般の3区分で募集したところ、952作品の応募があり、厳正な審査を経て受賞者を決定し、最優秀賞受賞者の表彰式を、宮腰内閣府特命担当大臣室において行った(第7-6図)。
