第2章 全ての子供・若者の健やかな育成(第1節)

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第1節 自己形成のための支援

1 日常生活能力の習得

(1)基本的な生活習慣の形成

子供の心身の健康や意欲は、正しい生活習慣の下での充足感のある生活が基盤となる。生活習慣づくりは、自己管理能力を身に付けていく基礎になることも期待される。

ア 学校教育における取組(文部科学省)

学校教育では、道徳や特別活動をはじめ学校の教育活動全体を通じて、基本的な生活習慣の形成を図るための指導が行われており、特に小学校低学年において、挨拶などの基本的な生活習慣や社会生活上のきまりを身に付け、善悪を判断し、人としてしてはならないことに関する指導を重視している。

イ 社会全体で取り組む子供の生活習慣づくり(文部科学省)

文部科学省は、早寝早起きや朝食をとるといった子供の基本的な生活習慣を育成し、生活リズムを向上させるため、「早寝早起き朝ごはん」全国協議会や民間団体と連携して、平成18(2006)年から「早寝早起き朝ごはん」国民運動を推進している(第2-1図)。同運動ではPTAをはじめ、経済界、メディア、有識者、市民活動団体、教育・スポーツ・文化関係団体、読書・食育推進団体、行政などの参加を得て、子供の基本的な生活習慣の確立や生活リズムの向上につながる運動、ウェブサイトによる情報提供などを展開している。

第2-1図 早寝早起き朝ごはんに関する小学校低学年とその保護者向けリーフレット

また、平成29(2017)年度から、独立行政法人国立青少年教育振興機構と連携し、「早寝早起き朝ごはん」国民運動を促進するための「早寝早起き朝ごはん」フォーラム事業や、「早寝早起き朝ごはん」推進校事業を実施している。

ウ 青少年教育施設における取組(文部科学省)

青少年教育施設は、集団宿泊体験を通じて規律ある生活をする態度を養うこと等を目的に、学校や青少年団体に対して広く体験活動の機会と場を提供している。

独立行政法人国立青少年教育振興機構は、学校や青少年団体などが全国の国立青少年教育施設を利用して行う活動に対して、必要な助言・指導などの支援を行っている。

エ 食育活動の推進(内閣府、文部科学省、厚生労働省、農林水産省)

子供に対する食育は、心身の成長と人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培い、豊かな人間性を育んでいく基礎となるものである。近年、特に20代の若者において、朝食欠食率の高さや偏った栄養摂取といった食生活の乱れが見られる(第2-2図)が、子供の頃から食に対する基本的な知識や習慣を身に付け、意識を高め、心身の健康を増進する健全な食生活を実践することができるようになるためには、家庭や学校、地域において取り組むことが重要である。

平成28(2016)年度からの5か年計画である「第3次食育推進基本計画」(平成28年3月18日食育推進会議決定)においては、従来の取組を継続しつつ、食育に関する知識、意識、実践について課題が多い若い世代を中心とした食育の推進を重点課題の一つとし、栄養バランスに配慮した食生活を実践する若い世代を増やす等、若い世代に関する目標も新たに設けて、子供や若者の食育の推進に一層取り組むこととしている。

学校教育では、幼稚園教育要領や学習指導要領に食育の推進に係る記述が盛り込まれており、その内容の充実が図られている。文部科学省は、食育の推進に中核的な役割を担う栄養教諭の配置を促進しており、令和元(2019)年5月1日現在、全国の公立小中学校等で6,488名が配置されている。また文部科学省では、平成29(2017)年度から、栄養教諭を中核として家庭を巻き込んだ取組を推進し、子供の食に関する自己管理能力を育成することを目的とした「学校給食・食育総合推進事業(つながる食育推進事業)」を実施している。

厚生労働省は、妊娠中から適切な食生活を支援し、乳幼児期からの望ましい食習慣の定着を図るため、妊産婦や子育て家庭を対象とした食に関する学習機会や情報の提供を推進している。

農林水産省は、健全な食生活の実現に当たり、「食育ガイド」や「食事バランスガイド」の活用を促進するほか、ごはんを中心に多様な副食を組み合わせ栄養バランスに優れた「日本型食生活」の実践や、食や農林水産業への理解を深めるための教育ファーム1の実施などの食育を推進している(第2-3図)。

第2-3図 農業体験活動

内閣府食品安全委員会は、食品の安全に関する情報について、小学校高学年を対象とした「キッズボックス」のコーナーをホームページに設けてイラストを用いて分かりやすく解説している。また、地方公共団体と共催で、大学生や学校教育関係者を対象とした意見交換会を実施している。

(2)規範意識等の育成(警察庁、総務省、文部科学省)

近年、いじめの社会問題化や重大事件の続発など、子供の問題行動は教育上の大きな課題となっており、善悪の判断といった規範意識や倫理観の育成を図ることが、これまで以上に求められている。このため、学校・家庭・地域が十分連携を図り、子供の豊かな人間性や社会性を育む取組を進める必要がある。

学校教育では、道徳、特別活動をはじめ学校の教育活動全体を通じて、誰に対しても思いやりの心を持つことや広い心で自分と異なる意見や立場を大切にすることに関する指導が行われている。また、国語科を要とする各教科等において、伝え合う力の育成を重視し、発表・討論を積極的に取り入れた学習活動が行われている。

青少年教育施設では、社会性や協調性を育むため、自然体験や集団宿泊体験といった様々な体験活動の機会と場が提供されている。

警察は、職員の学校への派遣や少年警察ボランティアなどの協力により、非行防止教室を開催している。具体的な非行事例を題材にして直接子供に語り掛けることにより、子供自身の規範意識の向上を図り、非行防止に取り組んでいる。また、教育委員会などの関係機関と連携し、中学生や高校生を対象とした犯罪被害者などによる講演会である「命の大切さを学ぶ教室」を開催したり、大学生を対象とした犯罪被害者支援に関する講義を実施したりすることなどを通じて犯罪被害者などへの配慮や協力に関する意識のかん養に努めている。

総務省は、子供のメディアリテラシー2を向上させるため、小学生・中学生・高校生用の教材を開発し、広く貸出しを行っている。また、ホームページ3にこの教材や小学校・中学校教員を対象とした授業実践パッケージを掲載し、提供している。

(3)体験活動の推進(文部科学省)

子供の「生きる力」を育む上で、自然体験をはじめ文化・芸術や科学に直接触れる体験的な活動が重要である。社会で求められるコミュニケーション能力や自立心、主体性、協調性、チャレンジ精神、責任感、創造力、変化に対応する力、多様な他者と協働する能力を育むためには、様々な体験活動が不可欠である。

近年、学校以外の団体が行う自然体験活動への参加率は50%程度にとどまっているが(第2-4図、第2-5図)、自然体験を多く行った子供の方が、自己肯定感や道徳観・正義感が高い傾向が見られ、自然体験・生活体験を多く行った子供の方が、自立的行動習慣が身についているという傾向が見られる(第2-6図、第2-7図)。このことから、国や地方公共団体、地域、学校、家庭、民間団体、民間企業などがそれぞれの立場で自らの役割を適切に果たし連携して、人づくりの“原点”である体験活動の機会を社会総ぐるみで意図的・計画的に創出していくことが必要である。また、NPOや子供会、青年団、青年会議所といった多くの民間団体が、様々な体験活動プログラムを企画・実施しており、これらの団体の活性化も求められている4

文部科学省は、家庭や企業などへ体験活動に対する理解を求めていくための普及啓発を推進するとともに、体験活動に関する調査研究や体験活動を推進する企業の表彰に取り組んでいる(第2-8図)。また、青少年が自信をもって成長し、より良い社会の担い手となるためには、自己肯定感をバランスよく育むことが必要であることから、自己肯定感を育むために有効な体験活動について、効果的な取組を支援している。

第2-8図 青少年の体験活動推進企業

独立行政法人国立青少年教育振興機構は、社会全体で体験活動を推進する気運を高めるため、青少年団体と連携して、「体験の風をおこそう」運動を推進している(第2-9図)。毎年10月を「体験の風をおこそう推進月間」として、全国各地で体験活動に関する様々なイベントや全国的なフォーラムを実施し、子供の健やかな成長にとって、体験がいかに大切であるかを、広く家庭や社会に発信している。また、「子どもゆめ基金」事業により、民間団体が実施する特色ある取組や裾野を広げるような活動を中心に様々な体験活動へ助成を行っている。

第2-9図 「体験の風をおこそう」運動

(4)読書活動の推進(文部科学省)

読書は、子供にとって、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きるための力を身に付けていく上で欠くことができないものである。

文部科学省は、「子どもの読書活動の推進に関する法律」(平13法154)と「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画(第4次)」(平成30年4月閣議決定)に基づき、子供の読書活動を推進している。具体的には、

  • 家庭、学校、地域等の連携の下、子供の生活や環境の変化に対応し、特に中学生・高校生期の読書習慣の形成に向けて、発達段階に応じた取組を推進する事業についての検証を行うとともに、貧困問題等様々な困難を抱える子供を支援する取組を行っている。
  • 国民の間に広く子供の読書活動についての関心と理解を深めるため、「子ども読書の日」(4月23日)(第2-10図)に「子どもの読書活動推進フォーラム」を開催し、著名人による記念講演や、優れた読書活動を行っている学校や図書館、ボランティア活動団体への文部科学大臣表彰の授与を行うとともに、子供の読書に関してホームページなどによる情報提供を行っている。
  • 学校図書館の機能の一層の向上を図るため、「第5次学校図書館図書整備等5か年計画(平成29年度~令和3年度)」を策定し、学校図書館図書の整備及び新聞配備に加え、新たに学校司書の配置についても計画に位置付け、これらの配置に要する経費について地方財政措置が講じられている。
  • 「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」なども踏まえ、公立図書館における読書環境の整備に努めている。
第2-10図 子ども読書の日

平成26(2014)年6月に「学校図書館法」(昭28法185)が改正され、学校司書が法的に位置付けられた。これを踏まえ、文部科学省は学校図書館の整備充実に関する調査研究協力者会議を開催し、学校図書館の運営に係る基本的な視点や学校司書の資格の在り方、その養成等の在り方に関する検討を行い、平成28(2016)年10月に報告書を取りまとめた。この報告書を踏まえ、文部科学省では、学校図書館の運営上の重要な事項について、その望ましい在り方を示した「学校図書館ガイドライン」や「学校司書のモデルカリキュラム」を作成し、教育委員会や大学等に対して普及・啓発活動を行った。令和元(2019)年9月には学校図書館担当指導主事連絡協議会において、「第5次学校図書館図書整備等5か年計画」及び「学校図書館ガイドライン」、「学校司書のモデルカリキュラム」の普及・啓発を図った。

図書館は、読書会等を通じて子供が読書の楽しみを知ることのできる、子供の読書活動の推進にとって重要な社会教育施設である。また、公民館は、地域の身近な学習拠点であり、図書室等が設置されている公民館では、読み聞かせ等を行う民間団体やボランティアの活動の場となっており、子供の読書活動の推進に資する教育活動が行われている。

文部科学省は、図書館及び公民館が子供をはじめとした住民にとってより身近で利用しやすい施設となるよう、環境整備を推進している。

(5)体力の向上(文部科学省)

体力は、人間の健全な発達・成長を支え、より豊かで充実した生活を送る上で大変重要なものであり、子供の時期に活発な身体活動を行うことは、成長・発達に必要な体力を高めることはもとより、運動・スポーツに親しむ身体的能力の基礎を養い、病気から身体を守る体力を強化し、より健康な状態をつくっていくことにつながる。

平成10(1998)年から始まった新体力テストの合計点は、全体的に向上傾向にあり、子供の体力は低下傾向に歯止めがかかってきている(第2-11図)が、子供の体力水準の高かった昭和60(1985)年頃と比較すると、依然として低い水準にある。また、運動をする子供とそうでない子供の二極化が見られ、特に中学2年生女子の約2割が1週間の総運動時間(保健体育の時間を除く)が60分未満となっている(第2-12図)。子供の体力低下は将来的に国民全体の体力低下につながり、ひいては社会全体の活力が失われる事態が危惧される。

第2-12図 1週間の総運動時間(小学校5年生、中学校2年生)

ア 地域社会での体力向上の取組の推進

スポーツ庁は、子供の体力向上に向けた総合的な施策を推進しており、幼児期の外遊びの頻度が小学校入学後の運動習慣・体力と関連性があるという調査結果もみられることから(第2-13図)、令和元(2019)年度は、幼稚園教諭・保育士・指導員等の類型ごとのプレイリーダー育成実証事業を実施した。令和2(2020)年度も子供が日常的に運動する習慣の獲得を引き続き支援していく。

第2-13図 幼児期の外遊びと小学生の運動習慣・体力との関係

イ 学校における体育・運動部活動の振興

学校の体育・保健体育は、体育や保健の見方・考え方を働かせ、課題を発見し、合理的な解決に向けた学習過程を通して、心と体を一体として捉え、生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力を育成することをねらいとしている。

スポーツ庁は、体育・保健体育の授業の充実を図るために、平成29(2017)年度から、現場で抱えている諸課題を解決するプログラムを開発し、普及する取組を実施している。また、中学校で必修とされている「武道」において、平成27(2015)年度から、外部指導者の活用及び体育を担当する教員の資質向上や指導力の強化、複数の武道種目の指導など多様な武道指導の実践研究を行うことにより、体育における武道を含めた領域の指導の充実を図る取組を実施している。

また、体力向上に係る検証改善サイクルを確立するため、「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」を実施している。

運動部活動については、平成29年度に生徒にとって望ましいスポーツ環境を構築するため、スポーツ医・科学の観点等を踏まえ、生徒のスポーツ活動が地域・学校等に応じて多様な形で最適に実施されるよう「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を策定した。平成30(2018)年度から、このガイドラインを踏まえて、各学校において持続可能な運動部活動が行われるよう、実践・調査研究を実施し、その結果を周知・普及させるための取組を実施している。

(6)生涯学習への対応(文部科学省)

社会経済の大きな変化の中で、生涯を通じて、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切にいかすことのできる社会を実現することが求められている。特に、出産・育児のために仕事を離れる者が多いなど、安定した雇用を得にくい女性にとって、生涯にわたる学習機会の充実は重要である。

ア 高等教育機関における学修機会の充実に関する取組

大学などの高等教育機関は、生涯学習機関としての機能を社会一般に積極的に提供するよう期待されている。昨今、技術革新や産業構造の変化に伴い、社会人が高等教育機関で教育(再教育)を受ける必要性が高まるなど、その一層の充実が求められている。このため、公開講座の実施や、夜間の学部・学科の設置、昼夜開講制の実施、通信教育課程の設置といった対応5が進められている。また、社会人の職業に必要な能力の向上を図る機会の拡大を目的として、大学や専門学校等における社会人や企業等のニーズに応じた実践的・専門的プログラムを、職業実践力育成プログラム(BP)やキャリア形成促進プログラムとして文部科学大臣が認定している。

独立行政法人日本学生支援機構は、平成26(2014)年度から、学び直しを支援するため、奨学金制度の弾力的運用(同学種間での再貸与の制限の緩和(例えば、在学中に無利子奨学金の貸与を受けて学部を卒業した後、別の学部で学び直す場合にも再度無利子奨学金の貸与を受けられるようにする))を行っている。

イ 学習した成果の適切な評価

生涯学習の成果を適切にいかすことのできる社会を実現するためには、学習成果の評価の社会的通用性を向上させることが必要である。平成28年(2016)年5月に中央教育審議会において、「個人の能力と可能性を開花させ、全員参加による課題解決社会を実現するための教育の多様化と質保証の在り方について(答申)」が取りまとめられた。その中では、検定試験について、評価の仕組みの確立や情報公開の促進による、質の保証・社会的活用の促進や、学習成果を活用し新たな学習機会や様々な活動に結びつけるためのICTを活用した生涯学習に関する基盤の構想について提言されている。本答申を受け、文部科学省では、平成29年(2017)年10月に策定した「検定事業者による自己評価・情報公開・第三者評価ガイドライン」を踏まえた、検定試験の自己評価や第三者評価の普及・定着を図るとともに、第三者評価に関する調査研究を実施し、第三者評価の本格実施に向けたより詳細な評価の実施方法について検討を行った。

ウ 女性の生涯学習

文部科学省は、平成29(2017)年度から、「男女共同参画推進のための学び・キャリア形成支援事業」において、大学等、地方公共団体及び男女共同参画センター等の関係機関が連携し、子育て等により離職した女性の学びと再就職・社会参画支援を地域の中で一体的に行う仕組みづくりに関するモデルを構築するため、実証事業を行った。また、取組の普及啓発を図るための研究協議会を開催し、女性の学びを通じた社会参画を推進した。

2 学力の向上

(1)「確かな学力」の育成(文部科学省)

初等中等教育については、「学校教育法」(昭22法26)において、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力を育み、主体的に学習に取り組む態度を養うこととされている。

平成28(2016)年12月の中央教育審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」を踏まえ、平成29(2017)年3月に幼稚園教育要領、小・中学校学習指導要領を、平成30(2018)年3月に高等学校学習指導要領を改訂し、特別支援学校学習指導要領については、平成29年4月に特別支援学校幼稚部教育要領及び小学部・中学部学習指導要領を、平成31(2019)年2月に特別支援学校高等部学習指導要領を改訂した。新学習指導要領は、小学校では令和2(2020)年4月から、中学校では令和3(2021)年4月から、高等学校では令和4(2022)年4月から順次実施される。新学習指導要領では、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を共有し、社会と連携・協働しながら資質・能力を育む「社会に開かれた教育課程」の実現を図っている。その上で、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善やカリキュラム・マネジメントの充実を通して、これからの時代に求められる資質・能力を一層確実に育むことを目指して教育内容の改善を図っている(第2-14図)。

第2-14図 新学習指導要領の考え方

文部科学省は、学習指導要領の着実な実施のため、教職員定数の改善、理科教育設備の整備支援、理数教育や外国語教育その他の各教科や活動等の充実を支援しており、

  • 全国学力・学習状況調査による子供の学力や学習状況の把握・分析
  • 小学校・中学校等における理科の観察・実験活動の充実を図るため、観察実験アシスタントの配置支援や、「理科教育振興法」(昭28法186)に基づいた理科教育設備整備補助
  • 幅広い地域住民等の参画による、地域学校協働活動の推進(詳細は、第4章第1節2「地域と学校が連携・協働する体制の構築」を参照)

などを行っている。

(2)基礎学力の保障等(文部科学省)

文部科学省は、学校教育の水準の維持向上のため、学校数や学級数等に応じて算定される教職員の基礎定数に加え、基礎学力の保障のため、習熟度別少人数指導、ティーム・ティーチング、小学校の専科指導など指導方法の工夫・改善を行う学校や、特別な配慮が必要な学校などに対し、教職員の加配定数を措置している。令和元(2019)年度は、53,023人の加配定数を措置した。また、令和2(2020)年度は、新学習指導要領における小学校外国語教育の授業時数増に対応し、より質の高い小学校英語教育を実現するため、一定の英語力を有する専科指導教員を配置するための加配定数1,000人を含む3,726人の定数の改善(振替2,000人を除く改善は1,726人)を行う。また、補習や発展的な学習への対応などのため、退職教職員など多彩な人材22,800人をサポートスタッフとして学校に配置する「補習等のための指導員等派遣事業」を引き続き実施する。

(3)高校教育の質の保証(文部科学省)

文部科学省は、高校教育の質の確保と向上を促すため、学習指導要領の改訂などの多様な施策を実施している。平成30(2018)年3月に公示された新高等学校学習指導要領は、現行学習指導要領の基本的な枠組みや教育内容を維持した上で、知識の理解の質をさらに高め、確かな学力を育成することを目指している。具体的には、高等学校において育成を目指す資質・能力を踏まえつつ、教科・科目の構成を改善し、生涯にわたって探究を深める未来の創り手として社会に送り出していくため、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善を推進することとしているほか、言語能力の確実な育成や理数教育の充実などに関する改善を図っている。

さらに、平成30(2018)年度から、高等学校において、地理的要因等にとらわれず多様かつ高度な教育を可能とする遠隔教育の導入をはじめとした教育改革の優良事例の普及を図るとともに、定時制・通信制課程の特性をいかした効果的な学習プログラムのモデル構築・普及や、定時制・通信制課程における特別な支援を要する生徒等の学習ニーズに応じた指導方法等の確立・普及を図る取組を実施している。

また、高等学校通信教育については、一部で不適切な教育運営の実態が明らかとなったことを踏まえ、「高等学校通信教育の質の確保・向上のためのガイドライン」を策定した(平成28年9月策定。平成30年3月に一部改訂)。これに基づき、文部科学省として所轄庁に全面的に協力しつつ、広域通信制高等学校に対して、実地による点検調査等を実施している。

(4)学校教育の情報化の推進(文部科学省、総務省)

社会の情報化が急速に進展する中で、子供たちが情報や情報手段を主体的に選択し活用していくための基礎的な資質としての情報活用能力を身に付け、情報社会に主体的に対応していく力を備えることがますます重要となっている。

平成29(2017)年3月に公示された小学校及び中学校、平成30(2018)年3月に公示された高等学校の学習指導要領では、情報活用能力を言語能力などと同様に「学習の基盤となる資質・能力」と位置付け、各学校におけるカリキュラム・マネジメントにより、教育課程全体で確実に育成することとしている。また、情報活用能力の育成を図るため、各学校において、コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え、これらを適切に活用した学習活動の充実を図ることに配慮するよう総則において明記している。とりわけプログラミング教育については、小学校において必修化するなど、小・中・高等学校の全ての学校段階を通じて実施することとしている。

これらの学習指導要領の下で、教育の情報化が一層進展するよう、教師による指導をはじめ、学校・教育委員会の具体的な取組の参考にしていただくため、新しい「教育の情報化に関する手引」を作成・公表した。

さらに、学習指導要領の円滑な実施のため、情報活用能力の育成に関する取組を進めており、平成29年度から情報活用能力を各教科等の学習に効果的に関連付けて育成するためのカリキュラム・マネジメントの在り方等に関する調査研究を行い、各推進校における取組をまとめ、公表している。

また、プログラミング教育を推進するため、小学校プログラミング教育については、学習指導要領や同解説で示している基本的な考え方等をわかりやすく解説した「小学校プログラミング教育の手引(第三版)」を公表するとともに、中学校・高等学校においては、「中学校技術・家庭科(技術分野)のプログラミングに関する実践事例集」や「高等学校情報科「情報I」教員研修用教材」等の作成・公表を行っており、引き続き、プログラミング教育に関する有益な情報提供等を行うこととしている。

また、昨今、スマートフォンやソーシャルネットワークサービス(SNS)などが児童生徒に急速に普及しており、児童生徒がSNS等の不適切な利用によるトラブルや犯罪に巻き込まれる事例が発生している。そのため、情報モラル教育の推進に係る児童生徒向け啓発資料の作成・配布や教師用指導資料の改善等により、学校における情報モラル教育の充実を図るとともに、セミナーの開催等を通じて、教師の指導力向上を図っている。

ICTを活用した遠隔教育は、多様性のある学習環境や専門性の高い授業の実現など、質の高い学習の実現に資することが期待されており、文部科学省では、児童生徒の学びの質の向上を目的とし、遠隔教育システムの様々な活用方法を追究する実証事業を平成30年度から行っている(遠隔教育システム導入実証事業)。

また、受信側の教員が当該免許状を有していない状況でも遠隔にて授業を行うことを可能とする遠隔教育特例校についての関係省令・告示を令和元(2019)年8月に公布・施行した。中学校等の管理機関が申請書を提出し、文部科学省にて審査の上、基準を満たしている場合、遠隔教育特例校に指定される。

なお、教育の質の向上に向け、教師を支援するツールとして、学校現場における先端技術の活用の促進が必要不可欠としており、文部科学省において、「公正に個別最適化された学び」の実現や、教師の指導の充実による教育の質の向上に向け、学校教育において効果的に活用できる先端技術の導入についての実証事業を令和元年度から実施している(新時代の学びにおける先端技術導入実証研究事業)。

一方、教師の長時間勤務の解消が喫緊の課題となっており、校務の情報化を進めることで、出席管理や成績処理等の事務業務が効率化されることから、統合型校務支援システムの普及促進が重要である。このため、平成30年度から、学校における校務の情報化を効率的に進めるため、都道府県単位での統合型校務支援システムの共同調達・運用の促進に係る実証を行っている(統合型校務支援システム導入実証研究事業)。

また、平成29年度から、文部科学省及び総務省が連携し、教職員が利用する「校務系システム」と、児童生徒も利用する「学習系システム」間を安全かつ効果的・効率的に連携させ、校務の情報と学習記録データ等をつなげて教育の質の向上を図る実証事業を行っている。文部科学省においては、主として学習指導・生徒指導や学級・学校運営の質の向上等に向けた校務の情報と学習記録データ等の活用モデルについての整理等を行っている(次世代学校支援モデル構築事業(平成29年度、平成30年度)、エビデンスに基づいた学校教育の改善に向けた実証事業(令和元年度))。

また、総務省においては、両システムの連携について、主に技術的な観点から、「スマートスクール・プラットフォーム」として実証し、標準仕様を作成することとしている(スマートスクール・プラットフォーム実証事業)。

こうした取組も踏まえつつ、未来の学び実現パッケージによる取組の一環として、データの利活用と情報セキュリティの確保の両立に向け、教育現場においてクラウド利用が可能となるよう、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を令和元年12月に改訂した。文部科学省では、新学習指導要領の実施を見据え、学校において最低限必要とされ、かつ優先的に整備すべきICT環境について明示するため、平成29年12月に「平成30(2018)年度以降の学校におけるICT環境の整備方針」を策定した。また、学校におけるICT環境の整備に必要な経費については、当該整備方針を踏まえた「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)」に基づき、単年度1,805億円の地方財政措置が講じられている。しかしながら、例えば平成31(2019)年3月現在、教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数は5.4人6に留まっているなど、目標水準には届いておらず、かつ、自治体間で大きな差があるなどの課題がある。

このため、文部科学省においては、「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」の主要な項目に関するデータについて、都道府県及び市区町村ごとの状況を見やすくグラフ化し、更に、学校のICT環境の整備状況の都道府県及び市区町村別順位を公表するなど「見える化」することにより、学校のICT環境整備の促進を図っている。

また、OECD生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)では、学校におけるICTの利活用の状況がOECD平均に比して軒並み低いという状況にある。

こうした事態を踏まえ、令和元年6月には、有志の関係議員から連名で提出された「学校教育の情報化の推進に関する法律」(令元法47)が成立した。同法においては、国において学校教育情報化推進計画を策定し、地方公共団体においても国の計画も参考に推進計画を策定するよう努力義務などが定められている。

また、令和元年12月5日に閣議決定された「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」において、学校における高速大容量のネットワーク環境(校内LAN)の整備を推進するとともに、特に、義務教育段階において、令和5(2023)年度までに、全学年の児童生徒一人一人がそれぞれ端末を持ち、十分に活用できる環境の実現を目指すこととしており、事業を実施する地方公共団体に対し、国として継続的に財源を確保し、必要な支援を講ずることが政府の方針として決定された。この決定に対応する施策として、令和元年度補正予算において、「GIGAスクール構想の実現」として2,318億円を計上している。

これらの取組に加え、ICT環境の整備・充実を図る自治体を支援するため、「ICT活用教育アドバイザー」の助言・支援を自治体のニーズに応じて行っている。

また、総務省では、学校外でも子供たちがプログラミングに慣れ親しむことができるように、地域で児童生徒と地域住民が一体となって、地域課題解決等をテーマにプログラミング等のICT活用スキルを学び合う地域ICTクラブに取り組み、令和元年度に全国17箇所で多世代交流や学校等連携、広域連携等の実証を行った。

3 大学教育等の充実(文部科学省)

(1)大学教育の充実

ア 教育機能の充実

大学教育では、個々の授業科目などを超えた大学教育全体としてのカリキュラム・マネジメントを3つの方針(卒業認定・学位授与の方針、教育課程編成・実施の方針、入学者受入れの方針)に基づき確立するとともに、主体性を持って多様な人々と協力して学ぶことのできるアクティブ・ラーニングへの質的転換が推進されている。また、各大学において、産業界と連携した実践的な教育やインターンシップを通じたキャリア教育などの学生の社会的・職業的自立に関する組織的な教育活動の展開、教育内容・方法の改善、教育情報の公表などの取組が積極的に行われている。

文部科学省は、このような大学の取組を促進するため、アクティブ・ラーニング、学修成果の可視化、高大接続改革、長期学外学修プログラム、卒業時における質保証など新たな教育改革の方向性に合致した先進的な取組を支援する「大学教育再生加速プログラム」事業の実施とともに、「大学等におけるインターンシップの届出・表彰制度」を行っている。

イ 教育研究の質の維持・向上

文部科学省は、大学教育の国際的通用性の確保や学生保護の観点から、大学を設置するのに最低限必要な基準として大学設置基準を定めるとともに、大学等の設置や組織改編に当たっては、設置計画が大学設置基準等の法令等に適合しているかについての大学設置・学校法人審議会の審査を踏まえて認可を行っている。また、設置認可後は、設置計画の履行状況などを調査することにより、設置認可から完成年度までの質の保証を行っている。さらに、全ての国公私立大学が文部科学大臣から認証された評価機関による定期的な評価を受ける認証評価制度により、恒常的に大学の教育研究の質の維持・向上を図っている。

ウ 大学院教育の充実

文部科学省は、俯瞰力と独創力を備え、広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーを養成するため、産・学・官の参画を得つつ専門分野の枠を超えて博士課程前期・後期一貫した学位プログラムを構築・展開する「博士課程教育リーディングプログラム」事業を令和元(2019)年度まで実施し、大学院教育の抜本的改革の支援を行った。さらに、平成30(2018)年度から「卓越大学院プログラム」事業を開始し、各大学が自身の強みを核に、国内外の大学・研究機関・民間企業等と組織的な連携を行いつつ、世界最高水準の教育力・研究力を結集した博士課程前期・後期一貫の学位プログラムを構築することで、あらゆるセクターを牽引する卓越した博士人材を育成するとともに、人材育成・交流及び新たな共同研究の創出が持続的に展開される卓越した拠点を形成する取組を推進している。

エ 学修支援サービス

各大学では、アクティブ・ラーニングなどを行う際に、優秀な大学院生が教育的配慮の下に学部学生に対する助言や実験・実習の教育補助業務を行うティーチング・アシスタント制度や、学生の学修過程や学修成果を長期にわたって収集する学修ポートフォリオなど、多様化した学生の学修活動を支援する取組を行っている。

文部科学省は、大学の取組に関する調査の結果を発信することで、大学の取組を促進している。

(2)専修学校教育の充実

専修学校7は、職業や生活に必要な能力の育成や教養の向上を図ることを目的とし、社会の変化に即応した実践的な職業教育を行う機関として大きな役割を果たしている。専門的な職業知識・技術の習得のほか、職業観・勤労観のかん養や自己学習能力の育成において相当の成果を挙げており、若者の職業的自立にも寄与している。

文部科学省は、専修学校教育の振興を図るため、以下のような取組を行っている。

  • 企業などとの密接な連携を通じ、より実践的な職業教育の質の確保に組織的に取り組む専修学校の専門課程を文部科学大臣が「職業実践専門課程」として認定(認定学校数:994校、認定学科数:2,986学科(平成31年3月5日現在))
  • 「専修学校による地域産業中核的人材養成事業」において、中長期的な人材育成に向けた産官学の協議体制の構築を進めるとともに、地域や産業界の人材ニーズに対応した社会人等が学びやすい教育プログラムの開発・実証等を実施
  • 教育装置・情報処理関係の設備整備などに対する補助、教員研修事業などの実施

1 自然の恩恵や食に関わる人々の様々な活動への理解を深めること等を目的として、農業者団体等が生産現場に消費者を招き、一連の農作業等の機会を提供する取組。
2 次の3つを構成要素とする、複合的な能力のこと。
1メディアを主体的に読み解く能力、2メディアにアクセスし活用する能力、3メディアを通じコミュニケーションする能力。特に、情報の読み手との相互作用的(インタラクティブ)コミュニケーション能力
3 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/hoso/kyouzai.html
4 平成25年1月、中央教育審議会は、体験活動の意義や効果を整理するとともに、現在の課題や今後の推進方策について「今後の青少年の体験活動の推進について(答申)」で提言した。
5 このほか、科目等履修生制度の導入、履修証明制度の導入、大学・大学院入学資格の弾力化、高等学校卒業程度認定試験の実施、放送大学の充実など。
6 「平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査」
7 入学資格の違いにより3つの課程(専門課程、高等課程、一般課程)が設けられている。高等学校卒業程度を入学資格とする専修学校専門課程(専門学校)には、令和元年5月現在では18歳人口の23.8%が進学している。
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