第3章 困難を有する子供・若者やその家族の支援(第2節)

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第2節 困難な状況ごとの取組

1 若年無業者、ひきこもり、不登校の子供・若者の支援等

15~39歳の若年無業者の数は、令和元(2019)年で74万人であり、15~39歳人口に占める割合は2.3%であった(第3-3図)。総務省が平成29(2017)年10月に実施した調査では、就業希望の若年無業者が求職活動をしていない理由として、病気・けがや勉強中の者を除くと、「知識・能力に自信がない」、「探したが見つからなかった」、「希望する仕事がありそうにない」といった回答が見られる(第3-4図)。

また、15歳~39歳のひきこもりの状態にある者(「自室からほとんど出ない」、「自室からは出るが、家からは出ない」、「ふだんは家にいるが、近所のコンビニなどには出かける」、「ふだんは家にいるが、自分の趣味に関する用事のときだけ外出する」に該当する者)の推計数は、平成27(2015)年度の調査では54.1万人であった。

小・中学生の不登校児童生徒数は、平成25(2013)年度から平成30(2018)年度にかけて、6年続けて前年を上回っている(第3-5図)。不登校の要因をみると、小・中学生では、家庭に係る状況、いじめを除く友人関係をめぐる問題、学業の不振等が多くみられる(第3-6表)。

第3-6表 不登校の要因

高校中途退学者は、平成30年度は約4万9,000人、中退率は1.4%となっている(第3-7図)。中退事由としては、進路変更、学校生活・学業不適応が多くみられる(第3-8表)。

第3-8表 高校中退者の事由別構成比

このように、依然として困難を抱えた子供・若者が多く存在しており、それぞれが置かれている状況も様々である。困難な状況が長引くことのないように、関係機関の連携した支援が必要である。

(1)若年無業者等の支援(厚生労働省)

厚生労働省は、若年無業者等が充実した職業生活を送り、我が国の将来を支える人材となるよう「地域若者サポートステーション」(以下「サポステ」という。)において、地方公共団体と協働し、職業的自立に向けた専門的相談支援、就職後の定着・ステップアップ支援、若年無業者等集中訓練プログラムを実施している(15~49歳対象)(第3-9図)。サポステでは、以下のようなサービスの多くを無料で受けることができる。

第3-9図 地域若者サポートステーション事業
  • キャリアコンサルタントなどによる個別相談、支援計画の作成
  • 個別・グループによる就労に向け踏み出すためのプログラム
  • 就職した者への定着・ステップアップ相談
  • 集中訓練プログラム(合宿形式を含むサポート、自信回復、職場で必要な基礎的能力付与、就職活動に向けた基礎知識獲得などを集中的に実施)
  • 職場見学や職場体験
  • 高校中退者等のニーズに応じたアウトリーチ型の相談支援
  • 保護者を対象としたセミナーや個別相談

(2)ひきこもりの支援(厚生労働省)

厚生労働省は、平成21(2009)年度から、保健・医療・福祉・教育・雇用といった分野の関係機関と連携の下でひきこもり専門相談窓口としての機能を担う「ひきこもり地域支援センター」の整備を進めてきた。その結果、平成30(2018)年4月に全ての都道府県及び指定都市(67自治体)に「ひきこもり地域支援センター」が設置されるに至った(第3-10図)。また、平成25(2013)年度から、本人や家族に対する早期対応を目的として、継続的な訪問支援などを行う「ひきこもりサポーター」を都道府県又は市町村が養成し、市町村が家族や本人へサポーターを派遣する事業を行っており、加えて、平成30年度からはひきこもり支援に携わる人材の育成・資質の向上や市町村における支援の拠点(居場所、相談窓口)づくり等を推進する事業も実施している。

第3-10図 ひきこもり支援施策の全体像

令和2(2020)年度においては、生活困窮者自立支援制度の自立相談支援機関の窓口にアウトリーチ支援員を新たに配置し、同行相談や信頼関係の構築といったアウトリーチ支援等を実施するとともに、ひきこもり地域支援センターに医療、法律、心理、福祉、就労等の多職種から構成されるチームを新たに設置し、自立相談支援機関等に対する専門的なアドバイスや、当該支援機関と連携した当事者への直接支援を行い、適切な支援ができる相談支援体制の充実を図ることとしている。

(3)不登校の子供・若者の支援(文部科学省、法務省)

不登校への対応については、未然防止や早期発見・早期対応の取組や、学校が家庭・地域・関係機関と連携した取組に加え、子供の悩みや不安を受け止めて相談に当たる相談体制の整備が重要である(第2章第2節2(3)「学校における相談体制の充実」を参照)。

文部科学省は、平成28(2016)年12月に成立した、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(平28法105)を踏まえ、不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進するための基本的な指針を、平成29(2017)年3月に定めた。

不登校児童生徒への支援に係る施策として、令和元(2019)年度は学校以外の場における教育機会の確保等に関する調査研究を実施した。令和2(2020)年度においては、関係機関間の連携体制の整備等により不登校児童生徒に対する総合的な支援体制を構築する「不登校児童生徒に対する支援推進事業」を新たに実施する。

そのほか、スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーの配置の充実など、教育相談体制の充実を図っている。

法務省の人権擁護機関においては、「インターネット人権相談受付窓口(子どもの人権SOS-eメール)」、「子どもの人権110番」の開設及び「子どもの人権SOSミニレター」の配布などを行い、いじめを始めとする子供の人権問題について相談に応じている。

(4)高等学校中途退学者及び進路未決定卒業者の支援(文部科学省、厚生労働省)

文部科学省は、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の中で、高校中退の状況を把握し、公表している(第3-7図、第3-8表)。

また、平成29(2017)年度から、学力格差の解消及び高校中退者等の進学・就労に資するよう、高校中退者等を対象に、高等学校卒業程度の学力を身に付けさせるための学習相談及び学習支援のモデルとなる地方公共団体等の取組について実践研究を行うとともに、その研究成果の全国展開を図るための事業を実施している。

厚生労働省は、平成29年度から、「若年無業者等アウトリーチ支援事業」として、高校等とサポステ等との連携により、高校中退者等のニーズに応じたアウトリーチ(訪問)型等による切れ目ない就労支援を行っている。

2 障害等のある子供・若者の支援

(1)障害のある子供・若者の支援(文部科学省)

ア 特別支援教育の推進

障害のある子供については、その能力や可能性を最大限に伸ばし、自立と社会参加に必要な力を培うため、一人一人の教育的ニーズに応じ、多様な学びの場において適切な指導及び必要な支援を行う必要がある。現在、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級、通常の学級における障害に応じた特別の指導(いわゆる「通級による指導」2)においては、特別の教育課程の下、個別の教育支援計画や個別の指導計画が作成され、特別な配慮により作成された教科書、専門的な知識・経験のある教職員、障害に配慮した施設・設備などを活用して、指導が行われている。

文部科学省等では、特別支援教育を推進するため、以下のような取組を行っている。

  • 学習指導要領等改訂における特別支援教育の充実や特別支援教育に関わる教師の資質向上のための事業の実施
  • 小・中学校、高等学校等における発達障害の可能性のある子供に対する支援に当たって、1 特別支援教育の視点を踏まえた学校経営構築の方法、2 学習上のつまずきなどに対する教科指導の方向性の在り方、3 通級による指導の担当教師等に対する研修体制の在り方や必要な指導方法、4 学校における児童生徒の多様な特性に応じた合理的配慮の在り方に関する研究
  • 障害のある子供の学校における日常生活上・学習活動上のサポートを行う「特別支援教育支援員」の配置に関する地方財政措置や、私立学校が障害に応じた教育を実施する上で必要とする設備を整備する経費の一部補助

イ 障害のある子供たちへの就学支援

文部科学省と地方公共団体は、障害のある子供の特別支援学校や小・中学校への就学の特殊事情に鑑み、これらの学校に就学する子供の保護者等の経済的負担を軽減するため、保護者等の経済的負担能力に応じて就学奨励費を支給している。

ウ 障害のある子供と障害のない子供や地域の人々との交流及び共同学習

障害のある子供と障害のない子供の交流及び共同学習は、障害のある子供にとっても、障害のない子供にとっても、経験を深め、社会性を養い、豊かな人間性を育むとともに、お互いを尊重し合う大切さを学ぶ機会となるなど、大きな意義を有する。

文部科学省は、こうした学習活動が一層推進されるよう、新学習指導要領においても障害のある子供と障害のない子供との交流及び共同学習の機会を設けることを規定するとともに、教育委員会が主体となり、学校において、各教科やスポーツ、文化・芸術活動等を通じた交流及び共同学習の機会を設けることにより、障害者理解の一層の推進を図る取組等を行っている。また、「ユニバーサルデザイン2020行動計画」に基づき、平成29(2017)年7月に「心のバリアフリー学習推進会議」を開催し、平成30(2018)年2月に交流及び共同学習の一層の推進に向けた方策について提言を取りまとめた。同提言を踏まえ、「交流及び共同学習ガイド」を改訂し、実践事例を周知するなど、障害者理解の促進を図るとともに、教育委員会や学校等に対して積極的な取組を促している。

独立行政法人国立特別支援教育総合研究所は、都道府県で交流及び共同学習を推進する立場にある教職員を対象に「交流及び共同学習推進指導者研究協議会」を開催し、交流・共同学習の理解促進と具体的な方策の普及を図っている。

エ 障害者の生涯学習の推進

平成30(2018)年3月に策定された「第4次障害者基本計画」や同年6月に策定された「第3期教育振興基本計画」において、障害者の生涯学習について明記されたことに基づき、文部科学省では、学校卒業後における障害者の学びに関する有識者会議の報告(平成31年3月)や「障害者活躍推進プラン」(平成31年4月)をとりまとめた。これらの成果を踏まえ、令和元(2019)年度は、学校卒業後の障害者の学びについて、効果的な学習プログラムや実施体制等に関する実践研究等を実施するほか、学びの場の担い手育成等を目指すコンファレンスや共生社会の実現に向けたフォーラムを開催している。また、障害者の生涯学習支援活動を行う個人・団体を表彰する「障害者の生涯学習支援活動」に係る文部科学大臣表彰の実施等を通じ、障害者が、一生涯を通じ、本人の希望する学習を主体的・継続的に行うことができるようにするための環境整備と、障害の有無にかかわらず、共に学ぶ場づくり、障害に関する理解促進等に取り組んでいる。

オ スポーツ活動

文部科学省においては、スポーツ関係者と障害福祉関係者が連携・協働体制を構築し、地域において一体的に障害者スポーツを推進するとともに、身近な場所でスポーツを実施できる環境を整備する取組を支援している。また、2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会3(以下「東京2020大会」という。)のレガシーとして共生社会を実現するため、令和2(2020)年に全国の特別支援学校でスポーツ・文化・教育の全国的な祭典を開催する「Special プロジェクト2020」を推進するとともに、障害児を含めた障害者の日常的なスポーツ活動を推進するため、特別支援学校等を活用した障害者のスポーツ活動の拠点づくりを推進するための支援を実施している。さらに、令和元(2019)年度から、地域の障害者スポーツ用具(スポーツ車いす、スポーツ義足等)の保有資源を有効活用し、個人利用を容易にする事業モデルの構築支援を実施している。

(2)発達障害のある子供・若者の支援

ア 「発達障害者支援センター」4を核とした地域支援体制の強化(厚生労働省)

厚生労働省は、「発達障害者支援法」(平16法167)に基づき、地域において医療、保健、福祉、教育及び労働分野の関係者と連携し、発達障害者やその家族に対する相談支援を推進している。また、発達障害児者の支援をより一層充実させるための所要の処置を講じる「発達障害者支援法の一部を改正する法律」(平28法64)が平成28(2016)年5月25日に成立した。本改正により、国及び地方公共団体がライフステージを通じた切れ目のない支援を実施することや、家族なども含めたきめ細やかな支援を推進し、発達障害児者及びその家族が身近な場所で支援を受けられる体制を構築することなどが定められた。

これらの改正内容等を踏まえ、

  • 平成30(2018)年度から、従来から実施しているペアレントメンター5の養成やペアレントトレーニング6等の実施に加え、発達障害児者の家族同士の支援を推進するため、同じ悩みを持つ本人同士や発達障害児者の家族に対するピアサポート等の支援を行っている。なお、令和2(2020)年度からは、青年期の発達障害者等の居場所を作り、社会から孤立しない仕組み作りを行うための支援を新たに盛り込んだ。
  • 都道府県等においては、平成28年度から、発達障害の早期発見・早期支援の重要性に鑑み、最初に相談を受けること又は診療することの多い小児科医などのかかりつけ医等の医療従事者に対して、発達障害に対する対応力を向上させるための研修を実施し、どの地域においても一定水準の発達障害の診療及び対応が可能となるよう医療従事者の育成に取り組んでいる。

また、発達障害の診断に係る初診待機が長期化している状況を踏まえて、令和元(2019)年度から「発達障害診断待機解消事業」を創設し、都道府県・指定都市において、アセスメント機能を強化するため、アセスメントの対応について外部に委託することや医療機関にアセスメント対応職員を新たに配置すること、発達障害に関する医療機関のネットワークを構築し、発達障害の診療・支援等を行う医師を養成するための実地研修等を実施することを支援している。

さらに、「巡回支援専門員整備事業」において発達障害等に関する知識を有する専門員が、保育所や放課後児童クラブ等の子供やその親が集まる施設・場を巡回し、施設のスタッフや親に対し、障害の早期発見・早期対応のための助言等の支援を行っているが、令和2(2020)年度より発達の気になる子供など切れ目ない支援を継続的に実施するために戸別訪問等を実施し、より一層の早期対応に努めることとしている。

あわせて、「発達障害児者地域生活支援モデル事業」により、発達障害児者及びその家族が地域で安心して暮らしていけるよう、支援手法の開発、関係する分野との協働による支援や切れ目のない支援などを整備し、地域生活支援の向上を図っている。

このほか、国立障害者リハビリテーションセンターにおいては、全国の発達障害者支援センターの中央拠点としての役割を担う「発達障害情報・支援センター」を設置し情報発信や支援手法の普及を図っている(第3-11図)。平成28年度からは、専門家等と連携を図りつつ、自治体等に対して地域における支援体制構築に向けた指導・助言を、平成29年度からは発達障害分野の様々な課題に関する情報収集・分析・発信を行うことを目的とした発達障害情報分析会議の開催を、平成30年度からは、困難事例への対応等、多様化が見込まれる支援ニーズに全国各地で実効性のある取組が行われることを目指した発達障害者地域支援推進事業を実施している。また、令和元年度は新たに、家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクト報告書を受けて、国立特別支援教育総合研究所にある発達障害教育推進センターと連携して、「発達障害に係る教員や支援者の専門性の在り方等に関する検討会議」の中で発達障害者の支援に当たる人材が身につけるべき専門性を整理している。

第3-11図 発達障害情報・支援センター

イ 学校における支援体制の整備(文部科学省)

発達障害の可能性のある子供は通常の学級にも在籍しており、文部科学省は、発達障害を含む障害のある子供への学校における支援体制の整備を推進している(前項の「(1)障害のある子供・若者の支援」を参照)。

独立行政法人国立特別支援教育総合研究所において、以下の取組を行っている。

  • 「発達障害教育推進センター」において、学校の教職員や保護者等に対し、厚生労働省とも連携しながら、発達障害に関する正しい理解や支援に関する様々な教育情報、研修会等のイベント情報等をインターネットを通じて提供
  • 令和元(2019)年度は、全体テーマを「発達障害者支援における家庭と教育と福祉の連携を推進するための教員研修の在り方」とし、有識者による基調講演、パネルディスカッション及び実践紹介・研究協議を内容とした「発達障害教育実践セミナー」を開催

(3)障害者に対する就労支援等(文部科学省、厚生労働省)

「障害者の雇用の促進等に関する法律」は、民間企業などに対し、雇用する労働者の一定割合(障害者雇用率)に相当する数以上の障害者を雇用することを義務づけている(障害者雇用率制度)。平成30(2018)年4月からは、精神障害者が障害者雇用率の算定基礎に加わり、民間企業の障害者雇用率は、従来の2.0%から2.2%に引き上げられた(令和3年3月31日より前に、さらに0.1%引上げが行われる予定)。

厚生労働省は、障害者雇用率の達成に向け、ハローワークなどにおいて厳正な達成指導を実施しているほか、以下の取組を行っている。

  • ハローワークが中心となり、地域の福祉施設、特別支援学校、医療機関などの関係機関と連携し、就職から職場定着まで一貫した支援を行う「チーム支援」
  • 障害者本人やその保護者等の就労に対する不安や中小企業の障害者雇用に関する不安を解消するため、地域の福祉施設、特別支援学校、医療機関などの関係機関と連携し、職場実習、就労支援セミナー、事業所見学会などの実施(福祉、教育、医療から雇用への移行推進事業)
  • 「障害者総合支援法」に基づく、一般就労への移行を支援する「就労移行支援」、一般就労が困難な者に対して働く場を提供する「就労継続支援」、一般就労に伴う生活面の課題に対応できるよう関係機関との連絡調整等を行う「就労定着支援」
  • 精神障害や発達障害がある求職者に対する、障害特性に応じたきめ細かな就労支援
  • 発達障害などによりコミュニケーション能力や対人関係に困難を抱えている若者に対して、「若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」に基づいて、ハローワークに配置している専門の相談員によるきめ細かな個別相談や支援
  • 障害者職業能力開発校(全国19校)における、職業訓練上特別な支援を要する障害者に重点を置きつつ、障害の特性に応じた職業訓練
  • 企業、社会福祉法人、NPO法人、民間教育訓練機関といった地域の多様な委託先における、就職に必要な知識・技能を習得するための委託訓練

文部科学省では、特別支援学校高等部や高等学校等において、福祉や労働等の関係機関と連携しながらキャリア教育・就労支援が行われるよう、障害のある生徒の就労支援を行う就労支援コーディネーターの配置などに取り組んでいる。

(4)障害者に対する文化芸術活動の支援(文部科学省、厚生労働省)

障害の有無にかかわらず、全ての子供たちが文化芸術に親しみ、優れた才能を活かして活躍することのできる社会を築いていくことは重要である。文部科学省においては、全国の高校生が芸術文化活動の発表を行う祭典である全国高等学校総合文化祭において、特別支援学校の生徒による作品の展示や実演芸術の発表の場を提供するとともに、子供たちに質の高い文化芸術を鑑賞・体験する機会を確保することを目的として、小学校・中学校等に障害のある芸術家等を派遣し、車いすダンスの披露や車いすダンス体験等の機会等を提供している。また、障害者の優れた文化芸術活動の国内外での公演・展示の実施、助成対象として採択した映画作品や劇場・音楽堂等において公演される実演芸術のバリアフリー字幕、音声ガイド制作への支援等、障害者の文化芸術活動の充実に向けた支援に取り組んでいる。さらに「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」(平30法47)が平成30(2018)年6月に施行され、国は、同法に基づき、平成31(2019)年3月に国の基本計画を策定し、それに基づき、障害者による文化芸術活動の推進に関する施策を推進しているところである。

(5)慢性疾病を抱える児童等や難病患者の支援(厚生労働省)

慢性疾病を抱え、長期にわたり療養を必要とする児童等の健全な育成を図るとともに、難病患者に対する良質かつ適切な医療の確保や難病患者の療養生活の維持向上を図るため、平成27(2015)年1月から「児童福祉法」(昭22法164)及び「難病の患者に対する医療等に関する法律」(平26法50)(以下「難病法」という。)に基づき、小児慢性特定疾病を抱える児童等や難病患者に対する医療費助成及び小児慢性特定疾病児童等自立支援事業等が都道府県等において実施されている。

厚生労働省は、これらの法律や「小児慢性特定疾病その他の疾病にかかっていることにより長期にわたり療養を必要とする児童等の健全な育成に係る施策の推進を図るための基本的な方針」(平成27年10月策定)及び「難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針」(同年9月策定)に基づき、小児慢性特定疾病児童等や難病患者に対して、以下のような総合的な対策を推進していくこととしている。

  • 小児慢性特定疾病児童等及び難病患者の医療費の負担軽減を図るため都道府県等が実施する医療費助成について、その費用の2分の1を負担
  • 小児慢性特定疾病児童等の自立を支援するため、児童福祉法に基づき都道府県等が実施する相談支援事業、相互交流支援事業などの小児慢性特定疾病児童等自立支援事業について、その費用の2分の1を負担
  • 小児期から成人期への移行期の小児慢性特定疾病児童等が個々の疾病の状況に応じ適切な医療を受け、さらに自身の疾病等の理解を深めるなどの自律(自立)支援を受けられるような移行期医療支援体制の構築を図るために必要なガイドの作成・周知を行うことで移行期医療を推進
  • 症例数が少なく研究が進みにくい疾病について、データを集約し、治療に役立てるための調査研究を推進
  • 専門医療機関とかかりつけ医の連携などによる、できる限り早期に正しい診断や治療が行われるために、医療提供体制を確保
  • 日常生活での不安を解消していくため、難病相談支援センターなどを通じた相談支援体制を充実
  • ハローワークに難病患者就職サポーターを配置し、難病相談支援センターと連携した就労支援を推進

また、児童福祉法改正法附則及び難病法附則に基づく施行5年後の見直しについて、令和元年5月から、厚生科学審議会疾病対策部会難病対策委員会及び社会保障審議会児童部会小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会の合同委員会等において、検討を行っている。

3 非行・犯罪に陥った子供・若者の支援等

刑法犯少年の検挙人員、触法少年(刑法)の補導人員は、いずれも減少傾向にあり、また、軽犯罪法違反といった特別法犯少年の検挙人員、触法少年(特別法)の補導人員も減少している。刑法犯少年の検挙人員について、少年の人口比においても減少しているが、刑法犯について成人の人口比と比較すると、依然として高い状態にある(第3-12図)。

年齢別にみると、触法少年(刑法)では、13歳が最も多いものの、12歳以下の占める割合が上昇傾向にあり、罪種別にみると、刑法犯少年、触法少年(刑法)ともに、窃盗が半数以上を占める。また、初発型非行(万引き、自転車盗、オートバイ盗、占有離脱物横領)の検挙人員は、減少傾向にある(第3-13図、第3-14図、第3-15図)。

刑法犯少年の非行については、14~20時の時間帯が41.0%、また、所有・消費目的によるものが56.7%となっている(第3-16図)。

第3-16図 刑法犯少年の非行時間帯と原因・動機(平成30年)

(1)総合的取組

ア 関係府省庁の連携(内閣府、警察庁、法務省、文部科学省)

刑法犯少年の検挙人員は減少傾向にあるものの、人口比では成人に比べると高い水準にある。

政府では、非行対策の推進について密接な連絡や情報交換、協議等を行うため、子ども・若者育成支援推進本部の下に少年非行対策課長会議を設置し、関係府省庁が連携して対策の充実強化を図っている。

イ 家庭、学校、地域の連携

非行は、家庭、学校、地域のそれぞれが抱えている問題が複雑に絡み合って発生している。このため、家庭、学校、地域のより一層の緊密な連携の下に、一体的な非行防止と立ち直り支援を推進していく必要がある。

1 「サポートチーム」(内閣府、警察庁、法務省、文部科学省)

「サポートチーム」は、多様化、深刻化している少年の問題行動の個々の状況に着目し、的確な支援を行うため、学校、警察、児童相談所、保護観察所といった関係機関がチームを構成し、適切な役割分担の下に連携して対処するものである。関係機関は、日常的なネットワークの構築などを通じて、「サポートチーム」の編成やその活動において緊密な連携を図っている。

警察庁と文部科学省は、サポートチームの効果的な運用を図るため、管区警察局との共催により問題行動に対する連携ブロック協議会を開催し、緊密な連携を図っている。

2 学校と警察の連携(警察庁、文部科学省)

子供の非行や校内暴力を防止するためには、学校と警察が密接に連携する必要がある。このため、警察署の管轄区域、市町村の区域等を単位に、全ての都道府県で学校警察連絡協議会が設置されている。平成31(2019)年4月1日現在、全国の小学校、中学校、高校の約98%の参加を得て、約2,400組織の学校警察連絡協議会が設置されている。

また、非行防止や健全育成を図るため、都道府県警察と都道府県教育委員会などとの間で締結した協定や申合せに基づき、非行少年、不良行為少年その他の健全育成上問題を有する子供に関する情報を警察・学校間で通知する「学校・警察連絡制度」が各地で構築されている。

3 スクールサポーター(警察庁)

警察は、退職した警察官などをスクールサポーターとして警察署などに配置し、学校からの要請に応じて派遣するなどしている。スクールサポーターは「警察と学校の橋渡し役」として、学校における子供の問題行動への対応や、巡回活動、相談活動、安全確保に関する助言を行っている。平成31(2019)年4月1日現在、44都道府県に約860人が配置されている。

4 更生保護サポートセンター(法務省)

処遇活動、犯罪予防活動をはじめとする更生保護の諸活動を一層促進するための拠点である「更生保護サポートセンター」が、全国に886か所存在している保護司会に設置されている。「更生保護サポートセンター」には、保護司が駐在し、教育委員会や学校、児童相談所、福祉事務所、社会福祉協議会、警察、ハローワークといった様々な関係機関・団体と協力し、保護観察を受けている人の立ち直り支援や、非行防止セミナー、住民からの非行相談等を行っている。

5 法務少年支援センター(法務省)

少年鑑別所7は、「法務少年支援センター」として、非行・犯罪に関する問題や、思春期の少年たちの行動理解等に関する知識・ノウハウを活用して、少年や保護者などの個人からの相談に応じて情報の提供・助言等を行っているほか、児童福祉機関、学校・教育関係機関、NPO等の民間団体等、青少年の健全育成に携わる関係機関・団体と連携を図りながら、地域における非行・犯罪の防止に関する活動や、健全育成に関する活動の支援を行っている。

(2)非行防止、相談活動等

ア 非行少年を生まない社会づくり(警察庁)

警察は、少年の規範意識の向上及び社会との絆の強化を図るため、「非行少年を生まない社会づくり」の取組を全国的に推進している。具体的には、問題を抱え非行に走る可能性がある少年に積極的に連絡し、地域の人々と連携した多様な活動機会の提供や居場所づくりのための取組などによってその立ち直りを図る「少年に手を差し伸べる立ち直り支援活動」を推進している。また、非行情勢等について、自治会等に対して幅広く情報発信するとともに、少年警察ボランティアなどと連携しながら、街頭補導や社会奉仕体験活動等を通じて大人と触れ合う機会の確保に努めるなど、少年を見守る社会気運の向上に向けた対策を推進している(第3-17図)。

第3-17図 非行少年を生まない社会づくりの推進

イ 非行防止教室(警察庁、文部科学省、法務省)

警察は、職員の学校への派遣や少年警察ボランティアなどの協力により、非行防止教室を開催している。具体的な非行事例などを題材にして直接少年に語り掛けることにより、少年自身の規範意識の向上を図っている。

文部科学省は、学校、家庭、地域が十分な連携を図り、子供の豊かな人間性や社会性などを育むため道徳教育の充実を図るとともに、関係機関と連携した非行防止教室の開催などにより規範意識を養い、子供の非行防止に努めている。

法務省は、非行問題に関する豊富な知識や保護観察対象者に対する処遇経験を有する保護司が、直接小・中学校へ赴き、非行問題や薬物問題をテーマにした非行防止教室を開催したり、問題を抱えた子供への指導方法などについて教師と協議などをしたりすることを通じて、小・中学生の犯罪・非行の未然防止と健全育成を図っている。

ウ 多様な活動機会・居場所づくりの推進(警察庁、文部科学省)

第2章第1節1(3)「体験活動の推進」第4章第1節3「地域全体で子供を育む環境づくり」を参照)

エ 相談活動(内閣府、警察庁、法務省、文部科学省)

地域住民に身近な市町村を中心に設立されている青少年センター(青少年の育成を図ることを目的とし、相談活動などを行う機関を指す。少年補導センターや青少年育成センターといった名称で活動)では、相談活動や街頭補導、有害環境の適正化に関する活動が行われている。青少年センターが扱う相談の内容は、非行に関するもののほか、いじめ、不登校、虐待の問題など様々である。

警察では、非行、家出及び自殺の未然防止や、犯罪、いじめ及び児童虐待などに係る被害少年の保護のための相談窓口を設け、心理学などの専門知識を有する少年補導職員や警察官などが、様々な悩みを持つ少年やその保護者からのSOSを受け止め、必要な指導や助言を行っている。また、電話相談窓口「ヤングテレホンコーナー」を設置しているほか、FAXや電子メールによる相談も受け付けるなど、相談者が利用しやすい環境の整備を行っている。平成30(2018)年に警察が受理した相談の件数は、72,523件で、前年に比べ2,591件(3.7%)増加した(第3-18表)。相談内容をみると、少年自身からの相談では、家庭、交友問題や犯罪被害に関する悩みが多く、保護者からの相談では、家庭や非行の問題に関する悩みが多い(第3-19図)。(学校における相談体制については、第2章第2節2(3)「学校における相談体制の充実」を参照)。

第3-18表 警察が受理した少年相談の状況(平成30年)
第3-19図 少年相談の内容(平成30年)

法務省は、子供の人権問題について、人権擁護委員や法務局・地方法務局の職員による相談対応を行っている。また、少年鑑別所でも、「法務少年支援センター」として子供の非行や問題行動に悩む保護者や学校関係者などからの相談に応じており、臨床心理学などを専門とする職員が助言や情報提供を行っている。「更生保護サポートセンター」でも、犯罪予防活動の一環として、保護司が子供の非行や問題行動で悩む親などからの相談に応じている。

オ 補導活動(内閣府、警察庁)

少年の非行を防止する上で、問題行動の初期段階での適切な対応が極めて重要である。

警察は、全国に設置された少年サポートセンター(第3-20図)を中心として、警察が委嘱する少年警察ボランティアなどと連携し、繁華街や公園といった非行が行われやすい場所に重点を置いて、家出少年などの発見・保護活動及び深夜はいかいなど不良行為少年に対する補導活動を推進し、問題行動を早期に発見して、少年及びその保護者に対する的確な助言・指導を行っている。

第3-20図 少年サポートセンター

市町村に置かれている青少年センターでも、市町村などから委嘱された少年補導委員による街頭補導や有害環境の適正化の活動が行われている。

不良行為による補導人員は減少傾向にある(第3-21図)。

カ 事件の捜査・調査

1 警察(警察庁)

警察は、非行少年を発見した場合は、必要な捜査や調査を行い、検察官や家庭裁判所、児童相談所といった関係機関へ送致または通告するほか、その少年の保護者に助言を与えるなど、非行少年に対して適切な指導がなされるよう措置している。

  • 犯罪少年(14歳以上20歳未満で罪を犯した者)

    「刑事訴訟法」(昭23法131)や「少年法」(昭23法168)に規定する手続に従って、必要な捜査を遂げた後、罰金以下の刑に当たる事件は家庭裁判所に、禁錮以上の刑に当たる事件は検察官に送致または送付する。

  • 触法少年(14歳未満で刑罰法令に触れる行為をした者)

    保護者がいないか保護者に監護させることが不適当と認められる場合には、児童相談所に通告する。その他の場合には、保護者に対して適切な助言を行うなどの措置を講じている。また、故意の犯罪行為により被害者を死亡させるなどの一定の罪に触れる行為をしたと考えられる場合や家庭裁判所の審判に付することが適当であると考えられる場合には、事件を児童相談所長に送致しなければならない。

  • ぐ犯少年(20歳未満で一定の事由があって、その性格や環境に照らして、将来、罪を犯し、または刑罰法令に触れる行為をするおそれのある者)

    18歳以上20歳未満の場合は、家庭裁判所に送致している。14歳以上18歳未満の場合は、事案の内容や家庭環境から判断して家庭裁判所か児童相談所のいずれかに送致または通告している。14歳未満の場合には、児童相談所に通告するか、その非行の防止を図るために特に必要と認められる場合には保護者の同意を得た上で補導を継続的に実施する。

2 検察庁(法務省)

検察官は、

  • 警察からの送致などを受けて必要な捜査を行い、犯罪の嫌疑があると認めたときは、事件を家庭裁判所に送致する。犯罪の嫌疑がなくとも、ぐ犯などの事由がある場合には、同様に事件を家庭裁判所に送致している。その際、少年に刑罰を科すのが相当か、保護観察や少年院送致といった保護処分に付すのが相当かなど、処遇に関する意見を付している。
  • 家庭裁判所から少年審判に関与すべき旨の決定があった場合に、これに関与し、裁判所の事実認定を補助している。
  • 家庭裁判所から刑事処分相当として検察官に送致された少年については、原則として公訴を提起している。

検察官が十分な捜査を行い事案を解明した上で適切な処理をすることは、少年犯罪に対する最も基本的で重要な対策であり、今後も一層充実させることとしている。

キ 非行集団対策(警察庁)

ひったくりや路上強盗といった街頭犯罪は、その検挙人員の34.8%が少年である(第3-22図)。20歳未満の暴走族の人員は減少傾向にあるものの、依然、暴走族や非行少年グループといった非行集団によって敢行される各種の犯罪は、我が国の治安にとって看過できないものとなっている(第3-23図)。非行集団は、暴走行為や集団的暴行事件などの集団的な違法行為を敢行するだけでなく、暴力団、準暴力団等の犯罪者グループと関わりを持ち、特殊詐欺に加担したり、大麻を乱用し又は周囲への乱用を助長したりするなど、非行集団を取り巻く情勢は、極めて憂慮する状況にある。

警察は、少年部門、交通部門及び刑事部門の相互の連携を強化して、非行集団の実態把握を徹底し、

  • 非行集団やその予備軍となる非行少年などを、各種法令を活用して徹底的に取り締まることによる、非行集団の弱体化と解体
  • 少年の非行集団及び暴力団への加入阻止や離脱支援
  • 関係機関と連携した車両の不正改造防止対策や道路交通環境の整備などの暴走族対策

などの取組を推進している。

(3)薬物乱用防止(内閣府、警察庁、文部科学省、厚生労働省、法務省)

令和元(2019)年中における覚醒剤事犯で検挙された30歳未満の者は1,135人で長期的に減少傾向にある。一方、大麻事犯で検挙された30歳未満の者は平成26(2014)年から増加に転じ、令和元年中の検挙人員は2,559人となり、覚醒剤事犯の検挙人員の約2.3倍となった。大麻については、検挙された者の59.2%が30歳未満の者である(第3-24図)。また、危険ドラッグについては、その乱用者の検挙人員に占める30歳未満の者の割合は、減少傾向にあるものの、令和元年は前年からわずかに増加し、16.3%であった。

子供や若者の覚醒剤や大麻等の乱用の実態を把握し、その乱用の危険性や有害性について、広報啓発、教育に取り組むことが重要である。

政府では、犯罪対策閣僚会議の下に設置された薬物乱用対策推進会議において策定された「第五次薬物乱用防止五か年戦略」(平成30年8月)に基づき、関係府省庁が連携して、薬物乱用の根絶に向けた総合的な対策を推進している。なお、「危険ドラッグの乱用の根絶のための緊急対策」については「第五次薬物乱用防止五か年戦略」に包含されることとなり、引き続き危険ドラッグ対策の推進を図っている。

内閣府は、薬物乱用の危険性や正しい知識を青少年に分かりやすく伝えるため、薬物乱用対策マンガを内閣府ホームページに掲載するなど、薬物依存の怖さを伝えるとともに、相談窓口の周知を図るなどの啓発活動を推進している。

警察は、最近の薬物犯罪情勢や政府全体の薬物対策の取組強化を踏まえ、薬物密輸・密売組織の実態解明及びその壊滅に向けた取締り、関係機関との連携による水際対策の強化などにより、薬物供給を遮断するとともに、薬物乱用者の徹底検挙、子供に対する薬物乱用防止教室、大学生や新社会人に対する薬物乱用防止講習会などを行い、薬物需要の根絶を図っている。

法務省は、少年院において、薬物に対する依存のある者を対象に、薬物非行防止指導8を実施している。刑事施設では、麻薬や覚醒剤などの薬物に対する依存がある受刑者を対象に、薬物依存離脱指導9を実施している。保護観察所では、保護観察に付されている者に対し、自発的意思に基づく簡易薬物検出検査を実施するとともに、一定の条件を満たした者に対して認知行動療法などに基づく薬物再乱用防止プログラムを実施している。また、再犯防止・社会復帰支援をより一層強化するため、厚生労働省と共同し、「薬物依存のある刑務所出所者等の支援に関する地域連携ガイドライン」を策定するなど、地域の医療・保健・福祉機関や民間支援団体との連携の強化、施設内処遇と社会内処遇との一貫性を考慮した処遇の充実に努めている。

文部科学省は、薬物乱用防止教育の充実を図るため、厚生労働省や警察庁と連携して、小学校、中学校、高等学校における薬物乱用防止教室の開催を推進している。また、厚生労働省と連携して、薬物についての危険性・有害性に関する正しい知識の周知に努めるとともに、小学生から大学生などに向けて、薬物乱用防止に係る啓発資料を作成し、その活用を促している。

厚生労働省は、以下の取組を行っている。

  • 若者の乱用薬物の入手先となっている、インターネットを利用した密売事犯や外国人による密売事犯などに対する取締りの強化
  • 関係機関・団体と連携した「「ダメ。ゼッタイ。」普及運動」や「麻薬・覚醒剤乱用防止運動」などの国民的啓発運動の実施
  • 薬物の有害性・違法性に関する正しい知識を周知するため、薬物乱用防止普及啓発読本等の薬物乱用防止に係る啓発資材の作成・配布
  • 要請のあった教育機関等に講師を派遣し、専門的な教材を基に効果的な普及啓発を図るとともに、FacebookTwitter、「あやしいヤクブツ連絡ネット」を活用した情報発信の実施
  • 危険ドラッグの指定薬物への迅速な指定
  • 指定薬物である疑いのある物品などについて、検査命令及び販売等停止命令の実施
  • 危険ドラッグのインターネット販売店について、プロバイダなどに対して削除要請の実施
  • 薬物依存症者等への医療提供体制の強化に向けた専門医療機関及び治療拠点機関の選定や医療従事者の育成
  • 地域社会における本人・家族等への支援体制の充実に向けた依存症相談拠点の設置、自助グループ等民間団体への支援の充実、相談・支援に携わる人材の育成
  • 薬物依存症者やその家族が適切な治療や支援に結びつく社会の実現に向けた薬物依存症に関する正しい知識と理解促進のための普及啓発の実施
  • 再乱用防止対策として、都道府県と協力した薬物依存症の正しい知識の普及や、保健所・精神保健福祉センターにおける薬物相談窓口における薬物依存症者やその家族に対する相談事業・家族教室の実施

(4)少年審判(最高裁判所)

家庭裁判所は、非行少年に対する調査・審判を行い、非行があると認めるときは、教育的な働き掛けも行いながら、少年が非行に至った原因などを検討し、その少年にとって最も適切と考えられる処分を決定する。保護処分には、保護観察、児童自立支援施設等送致及び少年院送致の3種類があり、審判を開いたり保護処分に付したりする必要がない場合などには、審判不開始や不処分にすることもある。犯行時に14歳以上の者に係る禁錮以上の刑に当たる罪の事件について刑事処分を相当と認めるときは、検察官に送致する(第3-25図)。

第3-25図 少年事件処理手続き概略図

ア 受理の状況

令和元(2019)年における少年保護事件の全国の家庭裁判所での新規受理人員は、56,408人であった。内訳をみると、窃盗(24.1%)、道路交通保護事件(23.7%)、過失運転致死傷等(19.6%)が多い。近年、少年保護事件の新規受理人員は減少傾向が続いており、令和元年は前年と比較して8,461人(13.0%減)減少した(第3-26図)。

第3-26図 家庭裁判所における少年保護事件の新規受理人員(非行別構成比 令和元年)

イ 処理の状況

令和元(2019)年における少年保護事件の既済人員(全人員(延べ人員)で全事件数と同数。以下同じ。)は56,959人で、このうち一般事件(交通関係事件を除く少年保護事件。以下同じ。)が32,254人(全体に占める割合56.6%)、交通関係事件((無免許)過失運転致死傷、(無免許)過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱、業務上(重)過失致死傷、(無免許)危険運転致死傷及び道路交通保護事件。以下同じ。)が24,705人(同43.4%)となっている。

終局決定別にみると、審判不開始が35.8%と最も多く、次いで保護処分が24.6%となっている(第3-27図)。

第3-27図 少年保護事件の既済人員(令和元年)

1 保護処分

保護処分に付された者は13,985人で、その内訳は、一般事件が7,980人(57.1%)、交通関係事件が6,005人(42.9%)である。前年と比較し、1,384人(9.0%減)減少している。

  • 保護観察

    保護観察に付された少年は12,004人で、その内訳は、一般事件が6,139人(51.1%)、交通関係事件が5,865人(48.9%)である。前年と比較し1,053人(8.1%減)減少している。交通関係事件のうち3,967人(67.6%)は交通短期保護観察に付されたものである。

  • 児童自立支援施設等送致10

    児童自立支援施設や児童養護施設に送致された者は143人である。

  • 少年院送致

    少年院送致となった者は1,838人で、その内訳は、一般事件が1,698人(92.4%)、交通関係事件が140人(7.6%)と、一般事件が多くを占める。前年と比較して、一般事件は285人(14.4%減)、交通関係事件は34人(19.5%減)減少している。

2 検察官送致

刑事処分が相当であるとして検察官送致となった者は1,985人で、その多くを交通関係事件が占める(1,882人(94.8%))。前年と比較して208人(9.5%減)減少している。

3 児童相談所長等送致11

知事や児童相談所長に送致された者は、116人である。

4 審判不開始、不処分12

裁判官や家庭裁判所調査官は、調査や審判の段階で、少年に対し、その問題性を見極めた上で、以下のような再非行防止に向けた働き掛けをしている。

  • 非行の内容を振り返らせ、被害の実情を伝えるなどする中で必要な助言・指導を行い、反省を深めさせる。
  • 学校などと連絡を取って生活態度や交友関係の改善に向けた協力態勢を築く。
  • 「犯罪被害を考える講習」や地域の清掃といった社会奉仕活動への参加を促す。

また、再非行を防止するために家族が果たす役割が大きいことから、少年の非行に家族関係が及ぼしている影響を見極めた上で、問題解決に向けて家族関係の調整を行ったり、少年と保護者に社会奉仕活動への参加を促したりするなどの働き掛けを行っている。ほかにも、保護者会を実施して保護者の気持ちや経験を語り合う場を設けることにより、保護者の少年に対する指導力を高めたり、保護者が自らの養育態度を見つめ直し、監護者としての責任を自覚するように働き掛けたりしている。このような働き掛けも行った上で、その少年について審判を開いたり保護処分に付したりする必要がないと考える場合には、審判不開始や不処分とすることがある。

(5)加害者に対するしょく罪指導と被害者への配慮

ア 被害者への情報提供などの様々な制度や取組(警察庁、法務省、最高裁判所)

警察は、被疑少年の健やかな育成に留意しつつ、捜査上の支障のない範囲内で、被害者などの要望に応じて、捜査状況などに関する情報を可能な限り被害者などに提供するように努めている。

法務省は、

  • 全国の検察庁において、少年事件の被害者を含む全ての被害者やその親族の心情などに配慮するという観点から、被害者に、事件の処理結果などの情報を提供している。
  • 少年院、地方更生保護委員会、保護観察所において、加害少年の健全な育成に留意しつつ、被害者の希望に応じて、少年院送致処分や保護観察処分を受けた加害少年に関し、少年院での処遇状況に関する事項や仮退院審理に関する事項、保護観察の開始・終了や保護観察中の処遇状況に関する事項を通知している。
  • 検察庁、地方更生保護委員会、保護観察所において、被害者の希望に応じて、刑事処分となった加害少年に関し、事件の処理結果や、裁判結果、受刑中の処遇状況に関する事項、仮釈放審理に関する事項、保護観察の開始・終了や保護観察中の処遇状況に関する事項を通知している。
  • 「更生保護法」(平19法88)に基づき、地方更生保護委員会が、少年院からの仮退院の審理や刑事処分となった少年の仮釈放の審理において被害者の意見などを聴取する意見等聴取制度と、保護観察所が、被害者の心情などを保護観察中の加害少年に伝達する心情等伝達制度を実施している(第3-28図)。
    第3-28図 更生保護における被害者のための制度

家庭裁判所は、

  • 「少年法」に基づく、一定の重大事件の被害者による少年審判の傍聴や、被害者などに対する審判状況の説明といった被害者のための制度13の適切な運用に努めている。
  • 調査や審判の段階で、被害者の心情などに十分配慮しながら、被害者から話を聞くなどして被害の実情や被害感情の把握に努め、被害者の声を少年審判手続に反映するよう努めている。

イ 被害者の心情を踏まえた適切な加害者処遇(法務省)

近年、刑事司法の分野において、被害者やその親族の心情などについて、一層の配慮を行うことが求められるようになってきている。

少年院や少年刑務所等では、「被害者の視点を取り入れた教育」が意図的・計画的に実施されるよう、矯正教育や改善指導の充実に努めている。この教育により、自分の犯した罪と向き合い、犯した罪の大きさや被害者の心情などを認識し、被害者に誠意をもって対応していくとともに、再び罪を犯さない決意を固めさせるための働き掛けを行っている。

保護観察所でも、個々の事案の状況に応じ、その処遇過程において、少年が自らの犯罪と向き合い、犯した罪の大きさや被害者の心情などを認識し、被害者に対して誠意をもって対応していくことができるようになるための助言指導を行っている。また、特に、被害者を死亡させたり、その身体に重大な傷害を負わせたりした事件により保護観察に付された少年に対しては、被害者に対する謝罪の気持ちをかん養し、具体的なしょく罪計画を策定させる指導を実施している。

(6)施設内処遇を通じた取組等

ア 少年鑑別所(法務省)

少年鑑別所は、1家庭裁判所等の求めに応じ、鑑別対象者の鑑別14を行うこと、2観護の措置が執られて少年鑑別所に収容される者などに対し、必要な観護処遇を行うこと、3地域社会における非行及び犯罪の防止に関する援助を行うことを業務とする法務省所管の施設である。観護措置による収容期間は、原則として2週間以内であり、特に必要のあるときは、家庭裁判所の決定により、期間が更新(延長)されることがある(最長8週間)。鑑別の結果は、鑑別結果通知書として家庭裁判所に送付されて審判の資料となるほか、保護処分が決定された場合には、少年院、保護観察所に送付され、処遇の参考にされる。また、少年鑑別所の在所者については、心身の発達途上にあり、その健全な育成に配慮することが重要と考えられることから、在所者の自主性を尊重しつつ、情操を豊かにし、健全な社会生活を営むために必要な知識及び能力を向上させるための支援を実施している。

法務省は、少年鑑別所における鑑別・観護処遇の充実を図っている。特に、平成25(2013)年度から導入した、再非行の可能性及び教育上の必要性を定量的に把握する「法務省式ケースアセスメントツール(MJCA)」を効果的に活用し、再非行防止に資する鑑別の充実に取り組んでいる。

イ 少年院・少年刑務所等(法務省)

少年院は、家庭裁判所において少年院送致の保護処分に付された者と、16歳に達するまでの間に刑の執行を受ける者を収容し、矯正教育その他の在院者の健全な育成に資する処遇を行う施設である15。矯正教育は、少年の特性に応じ、生活指導、職業指導、教科指導、体育指導、特別活動指導を組み合わせて行うものであり、少年の特性に応じた矯正教育の目標、内容、期間や実施方法を具体的に定めた個人別矯正教育計画を作成し、きめ細かく行われている。

懲役や禁錮の実刑の言渡しを受けた少年は、刑執行のため、主に少年刑務所等に収容される。少年刑務所等は、一人一人に個別担任を指定して面接や日記指導といった個別的な指導を行うなど、心身が発達途上にあり可塑性に富む少年受刑者の特性に応じた矯正処遇を、各少年の資質と環境の調査の結果に基づいて実施している。

また、法務省は、少年院において、家族関係に葛藤を抱えた在院者も少なくないことから、家族関係調整のために、在院者の保護者その他相当と認められる者に対して、在院者の処遇に関する情報の提供、職員による面接の実施、教育活動への参加の促進、保護者会・講習会の積極的な開催に努めるとともに、必要に応じ、指導、助言その他の適当な措置をとっている。

ウ 児童自立支援施設(厚生労働省)

児童自立支援施設16は、不良行為を行った子供や行うおそれのある子供等に対して、その自立を支援することを目的として、一人一人の状況に応じ、生活指導、学習指導、職業指導、家庭環境の調整を行う施設である。

厚生労働省は、児童自立支援施設運営指針などにより、児童自立支援施設の質の確保と向上を図っている。

(7)社会内処遇を通じた取組等(法務省)

ア 少年院からの仮退院、少年刑務所等からの仮釈放

少年院からの仮退院と少年刑務所等からの仮釈放とは、収容されている者を、法律や判決、決定によって定められている収容期間の満了前に仮に釈放し、その円滑な社会復帰を促す措置である。少年院からの仮退院と少年刑務所等からの仮釈放を許された者は、収容期間が満了するまでの間、保護観察を受ける。平成30(2018)年における少年院仮退院者は、全出院者の99.5%に当たる2,146人であった。

保護観察所は、少年院からの仮退院と少年刑務所等からの仮釈放に先立って、出院・出所後の少年を取り巻く生活環境(家庭、職場、交友関係など)が、その改善更生を促す上で適切なものとなるよう、引受人などとの人間関係や出院・出所後の職業などについて調整を行い、受入体制の整備を図っている。

イ 保護観察

保護観察は、非行のある少年に、社会生活を営ませながら、その改善更生を図る上で必要な一定の事項(遵守事項と生活行動指針)を守って健全な生活をするよう指導監督するとともに、自助の責任を踏まえつつ、就学や就職などについて補導援護することにより、少年の改善更生を促すものである。保護観察官と民間ボランティアである保護司とが協働して、その実施に当たっている。平成30(2018)年に保護観察所が新たに開始した保護観察事件数の48.9%に当たる15,091件が、家庭裁判所の決定により保護観察に付された少年や地方更生保護委員会の決定により少年院からの仮退院を許された少年の事件であった。保護観察処分少年(交通短期保護観察の対象者を除く。)及び少年院仮退院者について、平成30年における保護観察開始人員の非行名別構成比を男女別にみると、保護観察処分少年は、男女共に、窃盗、道路交通法違反の順に高く、次いで、男子は傷害、女子は過失運転致死傷であった。少年院仮退院者は、男子は、窃盗、傷害、詐欺の順に高く、女子は、窃盗、傷害、覚せい剤取締法違反の順に高かった。

複雑かつ困難な問題を抱えた少年に対しては、保護観察官による直接的関与の程度を強めるなどにより、重点的な働き掛けを行っている。また、少年の持つ問題性やその他の特性を類型化し、各類型に焦点を当てた処遇を実施している。

北海道雨竜郡沼田町の「沼田町就業支援センター」では、主に少年院を仮退院した少年を対象とし、旭川保護観察所沼田駐在官事務所に附設された宿泊施設に居住させ、濃密な保護観察を実施するとともに、同町が運営する農場で農業実習を受けさせ、改善更生の促進を図っている(第3-29図)。

第3-29図 沼田町就業支援センター

また、保護観察所では、少年院に収容されている者の生活環境の調整や少年に対する保護観察処遇の中で、保護観察官や保護司が家族等と面接を行っている。家族関係や親の養育態度に問題が認められる場合には、子供の監護に関する責任を自覚させるために、保護者会を実施するなどして監護能力が向上するよう保護者に対し働き掛けるとともに、適切に監護に当たるよう指導や助言を行っている。さらに、家庭裁判所や少年院でなされた保護者への働き掛けとの連携に努め、それらと一貫性のある生活環境の調整や保護観察処遇を実施するなど、保護処分の効果が最大限のものとなるよう努めている。

ウ 処遇全般の充実・多様化

1 関係機関の連携

非行の深刻化に対処するため、少年のプライバシーなどとの調整を図りながら、関係機関が情報を共有し、各機関のなすべき役割を果たしていく必要がある。

法務省は、以下の取組により、保護処分の適正かつ円滑な執行を図っている。

  • 全国の少年院において、家庭裁判所、地方更生保護委員会、保護観察所、少年鑑別所といった関係機関の担当者が一堂に会し、在院者の少年院入院後の処遇経過や今後の処遇方針、保護関係調整について検討を行う処遇ケース検討会を実施
  • 家庭裁判所、少年鑑別所、少年院、地方更生保護委員会、保護観察所において、少年院や保護観察における効果的な処遇と連携の在り方を検討するため、定期的に協議会を開催
  • 処遇機関において、必要に応じ、学校、警察、福祉施設の職員とも個別事例の検討を実施

2 社会貢献活動や社会参加活動による改善更生の取組

平成25(2013)年6月に公布された「刑法等の一部を改正する法律」(平25法49)により、「更生保護法」に基づく保護観察の特別遵守事項の類型の一つに、社会貢献活動に関する規定が加えられ、平成27(2015)年6月に施行された。これは、少年や若者を中心とする保護観察対象者が、福祉施設での介護補助活動や公共の場所での清掃活動など社会に役立つ活動を行い、他人から感謝されることや周囲と協力しつつ任された役割をやり遂げることにより、自己有用感や社会性、規範意識の向上を図るためのものである。

また、保護観察所は、社会性に乏しい少年を社会体験的な活動に参加させることにより、その健全育成を図る社会参加活動を実施している。

(8)非行少年に対する就労支援等(法務省、厚生労働省)

少年院や少年刑務所等は、処遇の一環として、就労に対する心構えを身に付けさせ、就労意欲を喚起し、各種の資格取得を奨励している。また、ハローワークなどとの連携による職業講話、職業相談、職業紹介、求人情報の提供といった就労支援を実施している(第3-30図)。

第3-30図 非行少年の処遇と社会復帰支援の概要

保護観察所は、矯正施設や家族、学校と協力し、出院・出所後の少年の就労先の調整・確保に努めている。保護観察中の無職少年に対しては、その処遇過程において、就労意欲がない原因や意欲があっても就労できない理由、就労しても継続しない理由など、不就労の原因となっている問題点の把握に努め、その解消を図るための助言指導を行っている。平成26(2014)年度から本格実施してきた「更生保護就労支援事業」(一部の保護観察所が民間法人に委託し、矯正施設在院・在所中から就労に至るまでの、専門家による継続したきめ細やかな支援を実施するもの)について、令和元(2019)年度は21庁で実施している(第3-31図)。さらに、協力雇用主17に対する支援の強化として、平成27(2015)年度から「就労・職場定着奨励金」及び「就労継続奨励金」の支給を実施しているほか、引き続き、出院・出所後の若者の雇用に理解を示すソーシャルファーム(労働市場で不利な立場にある人々のための雇用機会の創出・提供に主眼を置いてビジネス展開を図る企業・団体など)の開拓・確保に努めている。

第3-31図 更生保護就労支援事業の概要

ハローワークは、少年院や少年刑務所等、保護観察所と連携して、出院・出所予定者や保護観察に付された少年を対象とした職業相談、職業紹介、セミナー・事業所見学会、職場体験講習、トライアル雇用といった就労支援を推進している。また、就労後の相談、問題点の把握、問題解決のための助言など、就労継続のための支援を行っている。

厚生労働省は、施設を退所した若者などに対し、日常生活上の援助や就業支援を行う「自立援助ホーム」(児童自立生活援助事業)の充実に努めている(第3章第3節1カ「施設退所児童等の自立支援策の推進」も参照)。

4 子供の貧困問題への対応

子供の貧困率及び子供がいる現役世帯のうち大人が一人の貧困率の直近値は低下しているものの、特に、子供がいる現役世帯のうち大人が一人の貧困率は高い水準にある(第3-32図)。児童のいる世帯のうち、ひとり親家庭の世帯の割合に近年大きな変化はみられないが(第3-33図)、ひとり親家庭の平均所得は、他の世帯と比べて大きく下回っており、子供の大学進学率も低い状況にある(第3-34表)。家庭の経済状況等によって、子供や若者の将来の夢が断たれたり、進路の選択肢が狭まることのないように、教育、生活面、親の就労など、様々な支援が求められている。

第3-32図 子供の貧困率
第3-34表 ひとり親家庭の現状

子供の貧困問題への対応については、平成25(2013)年6月に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」(平25法64)が成立し、これを受け、政府において、子供の貧困対策に関する基本的な方針をはじめ、子供の貧困に関する指標、指標の改善に向けた当面の重点施策、子供の貧困に関する調査研究等及び施策の推進体制等を定めた「子供の貧困対策に関する大綱」を策定し、子供の貧困対策を総合的に推進してきた。

これらを踏まえ、令和元(2019)年6月、議員提出による「子どもの貧困対策の推進に関する法律の一部を改正する法律」(令元法41)が成立した。

法改正の趣旨や幅広く関係者から意見聴取を行った子供の貧困対策に関する有識者会議における提言等を踏まえ、政府は、令和元年11月に新たな「子供の貧困対策に関する大綱」を閣議決定した。(コラム5参照)

なお、「新しい経済政策パッケージ」(平成29年12月閣議決定)、「経済財政運営と改革の基本方針2018」(平成30年6月閣議決定)等で示された方針に基づき、第198回国会に提出された「大学等における修学の支援に関する法律」(令元法6)が令和元年5月に成立し公布された。

同法に基づき、令和2(2020)年4月から、住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯の学生を対象として、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校における授業料等減免制度の創設及び給付型奨学金の支給の拡充を行う、高等教育の修学支援新制度を実施している。

COLUMN NO.5
 新たな「子供の貧困対策に関する大綱」の策定について

1.新たな「子供の貧困対策に関する大綱」の策定の背景

1「子どもの貧困対策の推進に関する法律」の改正

令和元(2019)年6月、議員提出による「子どもの貧困対策の推進に関する法律の一部を改正する法律」が成立した。同法による改正後の法律では、目的として、児童の権利に関する条約の精神にのっとり、子供の「将来」だけでなく「現在」の生活等に向けても子供の貧困対策を総合的に推進することが明記されるとともに、基本理念として、子供の最善の利益が優先考慮されること、貧困の背景に様々な社会的要因があることを踏まえること等が明記された。また、市町村が子供の貧困対策についての計画を定めるよう努める旨が規定されるとともに、子供の貧困対策に関する大綱の記載事項として子供の貧困対策に関する施策の検証及び評価その他の施策の推進体制に関する事項が追加された。

「子どもの貧困対策の推進に関する法律」の概要

2子供の貧困対策に関する有識者会議における提言

政府においては、平成30(2018)年11月、内閣総理大臣を会長とする「子どもの貧困対策会議」を開催し、令和元年度内を目途に、新たな子供の貧困対策に関する大綱の案の作成を行うとともに、新たな大綱の案の作成に資するよう、子供の貧困対策に関する有識者会議において、諸施策の進捗状況を把握し、幅広く意見を聴取することを決定した。これを踏まえ、平成30年12月から、有識者会議において6回にわたり、貧困の状況にある子供及びその保護者を含め幅広く関係者から意見聴取を行いながら、様々な議論がなされた結果、令和元年8月に「今後の子供の貧困対策の在り方について」が提言された。提言においては、前大綱に基づき各種の支援が進捗したこと、子供の貧困率を始めとする多くの指標で改善が見られたことや子供の貧困に対する社会の認知が一部で進んできたこと等については評価された。

他方で、現場には今なお支援を必要とする子供やその家族が多く存在し、特にひとり親家庭の貧困率は高い水準にあるなど、その状況は依然として厳しいこと、各地域で子供の貧困対策として様々な取組が広がる一方で、地域による取組の格差が拡大してきたこと等について指摘がなされた。

2.新たな「子供の貧困対策に関する大綱」の策定

これらの、法改正の趣旨や有識者会議における提言を踏まえ、以下を主な内容とする新たな「子供の貧困対策に関する大綱」が令和元年11月に閣議決定された。

(1) 目的・理念

現在から将来にわたり、全ての子供たちが夢や希望を持てる社会を目指すとともに、子育てや貧困を家庭のみの責任とせず、子供を第一に考えた支援を包括的・早期に実施していくことを規定した。

(2) 基本的方針

  • 親の妊娠・出産期から子供の社会的自立までの切れ目のない支援体制の構築
  • 支援が届いていない、又は届きにくい子供・家庭に配慮した対策の推進
  • 地方公共団体による取組の充実

等を分野横断的な基本方針として定めた。

(3) 子供の貧困に関する指標

子供の貧困対策を総合的に推進するに当たり、関係施策の実施状況や対策の効果等を検証・評価するため、前大綱に定めた25の指標を39に拡充した。

(4) 指標の改善に向けた重点施策等

子供の貧困に関する指標の改善に向け、

  • 教育の支援として、高校中退の予防のための取組や、高校中退後の支援、大学等進学に対する教育機会の提供等
  • 生活の安定に資するための支援として、親の妊娠・出産期、子供の乳幼児期における支援や保護者の生活支援等
  • 保護者に対する職業生活の安定と向上に資するための就労の支援として、ひとり親に対する就労支援等
  • 経済的支援として、児童手当・児童扶養手当制度の着実な実施や養育費の確保の推進等

を進めることとしている。また、施策の推進体制として、地方公共団体における施策推進への支援や官公民の連携・協働プロジェクトである子供の未来応援国民運動を更に進めることとしている。

「子供の貧困対策に関する大綱」の概要
「子供の貧困対策に関する大綱」に記載された39の指標

ア 教育の支援(内閣府、文部科学省、厚生労働省)

文部科学省では、家庭の経済状況にかかわらず、学ぶ意欲と能力のある全ての子供が質の高い教育を受けられるよう、幼児期から高等教育段階まで切れ目のない形での教育費負担の軽減に取り組んでいる。

初等中等教育段階においては、次の取組を行っている。

  • 幼稚園児の保護者に対する経済的負担の軽減や、公私立幼稚園間における保護者負担の格差の是正を図るため、入園料や保育料を軽減する「就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対し、幼稚園就園奨励費補助金により所要経費の一部補助を行っていたが、幼児教育・保育の無償化が令和元(2019)年10月から施行したことに伴い、同補助事業は同年9月末をもって発展的に解消し、国立の幼稚園や特別支援学校幼稚部を含めた内閣府所管の新たな給付制度に一元化された。
  • 経済的理由により小学校・中学校への就学が困難と認められる子供の保護者に対して、各市町村が学用品の給与などの就学援助を行っている(第3-35図)。要保護児童生徒の保護者への援助については、令和元年度から「修学旅行費」及び「新入学児童生徒学用品費等」の国庫補助単価の引き上げを行うとともに、「卒業アルバム代等」の費目新設を行った。また、令和2(2020)年度においても、中学校の「新入学児童生徒学用品費等」の単価を引き上げる等、引き続き拡充を図っている。
  • 高校生等に対しては、高等学校等の授業料に充てるために高等学校等就学支援金を支給している。また、非課税世帯及び生活保護世帯の授業料以外の教育費負担を軽減するため、各都道府県が実施する高校生等奨学給付金事業の支援を行っており、令和元年度は非課税世帯への給付額の増額を行った。令和2年度においては、私立高等学校等に通う年収590万円未満の世帯の生徒を対象とした私立高等学校授業料の実質無償化を実現するとともに、高校等専攻科の生徒への修学支援制度を新たに創設した。

また、高等教育段階における取組としては、意欲と能力のある学生などが経済的理由により修学を断念することがないよう、独立行政法人日本学生支援機構が実施する大学等奨学金事業の充実や、各大学が実施する授業料減免への支援を行っている。特に大学等奨学金事業については、経済的理由により進学を断念せざるを得ない者の進学を後押しするため、平成29(2017)年度に給付型奨学金の創設・先行実施とともに、無利子奨学金の貸与基準を満たす希望者全員に対する貸与を実現した。令和元年度においては、平成30(2018)年度に本格実施した給付型奨学金制度と、無利子奨学金の貸与基準を満たす希望者全員への貸与を引き続き着実に実施した。

さらに、全ての子供が集う場である学校を貧困の連鎖を断ち切るためのプラットフォームとして位置付け、

  • 家庭環境等に左右されず学校に通う子供の学力が保障されるよう、教職員等の指導体制の充実
  • 福祉部局等との連携を図るスクールソーシャルワーカーの配置の充実や貧困対策のための重点配置(第2章第2節2(3)「学校における相談体制の充実」参照)

等に取り組んでいる。

さらに、地域の教育資源を活用した子供の貧困対策として、

等に取り組んでいる。

厚生労働省は、平成27(2015)年4月1日に施行された「生活困窮者自立支援法」(平25法105)に基づき、生活保護受給世帯の子供を含む生活困窮家庭の子供に対する学習支援事業を制度化し、貧困の連鎖の防止のための取組を強化してきた。この制度化により、学習面の支援はもちろんのこと、子供の居場所づくり・日常生活の支援や家庭訪問、進路相談、親への養育支援など、各自治体において地域の実情に応じ、創意工夫をこらした支援事業が実施されている。

さらに、「生活困窮者等の自立を促進するための生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律」(平30法44)により改正された「生活困窮者自立支援法」に基づき、平成31年(2019)4月1日から、生活習慣・育成環境の改善に関する助言や、教育及び就労(進路選択等)に関する相談に対する情報提供、助言、関係機関との連絡調整を加え、「子どもの学習・生活支援事業」として強化した。

イ 生活の安定に資するための支援(厚生労働省)

厚生労働省では、平成28(2016)年度から、支援を必要とするひとり親が行政の相談窓口に確実につながるよう、相談窓口に関する分かりやすい情報提供やスマートフォンで検索できる支援情報ポータルサイトの活用等による相談窓口への誘導の強化を行いつつ、ひとり親家庭の相談窓口において、子育て・生活に関する内容から就業に関する内容まで、ワンストップで寄り添い型支援を行うことができる体制を整備し、必要に応じて、他の機関につなげることにより、総合的・包括的な支援を行う体制をとっている。

また、「母子及び父子並びに寡婦福祉法」(昭39法129)等に基づき、ひとり親家庭等の実情に応じた自立支援策を総合的に展開するほか、放課後児童クラブ等終了後にひとり親家庭の子供の生活習慣の習得・学習支援や食事の提供等を行うことが可能な居場所づくり等を行っている。

さらに、生活困窮家庭の親に対し、上述した生活困窮者自立支援法に基づき、就労の前段階の支援や家計改善等の支援を実施している。令和2(2020)年度からは、若年妊婦へのアウトリーチやSNSを活用した相談支援等を実施する。

ウ 保護者に対する職業生活の安定と向上に資するための就労の支援(厚生労働省)

厚生労働省では、令和元(2019)年度において、自立支援教育訓練給付金について、看護師等の専門資格を取得するための講座を対象に追加するとともに、これらの養成課程を受講する者について、支給上限額を最大80万円に引き上げた。また、高等職業訓練促進給付金について、修学の最後の1年間は、月額4万円を加算して支給するとともに、資格取得のために4年の修学が必要となる者等について、支給期間の上限を3年から4年に拡充した。

エ 住宅の支援(国土交通省)

国土交通省は、ひとり親世帯・多子世帯等の子供を育成する家庭など住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定確保を図るため、低廉な家賃での公的賃貸住宅の供給の促進、公的賃貸住宅の建替えや改修と併せて子育て支援施設等を導入する取組への支援を実施している。また、民間賃貸住宅や空き家を活用した住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度等を内容とする新たな住宅セーフティネット制度において、セーフティネット住宅の登録推進を図るとともに、住宅の改修や入居者負担の軽減等の支援を実施している。さらに、令和元(2019)年度から、民間事業者による子育てや多世代交流等を考慮した先導的な住環境整備に係る取組に対しても支援を行っている。

オ 経済的支援(厚生労働省、法務省)

厚生労働省は、児童扶養手当の支払回数について、令和元(2019)年11月から、従来の年3回から年6回に増やしている。

また、ひとり親家庭等の自立を促進するため、子供の修学等に必要な資金の貸付けを行う母子父子寡婦福祉資金貸付金による経済的支援を行っている。

未婚のひとり親に対して、死別・離別のひとり親に対する税制上の控除と同様の措置を講ずることとした(令和2(2020)年分以後の所得税、令和3(2021)年度分以後の個人住民税について適用)。

令和元年の「民事執行法」(昭54法4)の改正により、債務名義を有する債権者等が強制執行の申立てをする準備として債務者の財産に関する情報を得やすくするため、現行の財産開示手続の申立権者の範囲が拡大され、債務者の不出頭等に対する罰則が強化されるとともに、債務者の有する不動産、給与債権、預貯金債権等に関する情報を債務者以外の第三者から取得する手続が新設された。この改正は、養育費の履行確保に資するものといえる。

カ 調査研究等(内閣府)

子供の貧困対策を総合的に推進するに当たり、子供の貧困の実態を適切に把握した上で、そうした実態を踏まえて施策を推進していく必要がある。令和元(2019)年11月に閣議決定した新たな「子供の貧困対策に関する大綱」においては、今後の対策推進に資するよう、子供の貧困の実態等を把握するための調査研究や、子供の貧困に関する指標に関する研究等を実施することとされている。令和元年度は、内閣府において、各地域において適切に実態を把握できるよう、子供の貧困に関する実態調査について、調査項目を共通化するなどにより比較可能なものとするとともに、全国的な実施に向けた検討を行った。

キ 官公民の連携した取組(内閣府、文部科学省、厚生労働省)

内閣府、文部科学省、厚生労働省及び独立行政法人福祉医療機構は、子供の貧困対策が国を挙げて推進されるよう、官公民の連携・協働プロジェクトとして「子供の未来応援国民運動」を推進している。主な事業としては、各種支援情報の発信や支援活動を行う団体とその活動をサポートする企業等とのマッチングの推進、民間資金を活用した「子供の未来応援基金」による草の根で支援を行うNPO等に対する支援等が挙げられる。

このうち、「子供の未来応援基金」については、企業や個人に子供の貧困に対する理解を求め、協力を呼び掛けてきた結果、令和元(2019)年度末時点で約12億3,700万円の寄付が寄せられ、これまで3回にわたり、子供たちに寄り添った活動を行う延べ236のNPO法人等に支援を行い、令和2(2020)年1月には第4回支援として、公募に申請のあった352団体から、基金事業審査委員会による審査等を経て、97団体を選定し、同年4月からの活動に支援金を交付することが決定された。

また、内閣府では、「地域子供の未来応援交付金」により、地方自治体が地域の実情に応じて子供の貧困対策を進めていくため、子供の貧困対策についての計画の策定、関係行政機関、企業、NPO等との地域ネットワークを形成するための取組を支援している。

COLUMN NO.6
 各地で広がる多様な草の根支援~「子供の未来応援基金」等を活用した民間団体の取組~

子供の貧困対策の推進に当たっては、対策に関わる当事者だけでなく、社会全体が子供の貧困に対する理解を深めることが欠かせないなか、政府は官公民の連携・協働プロジェクトを推進している。その一環として、民間資金を活用した「子供の未来応援基金」では、全国各地域において実施されている様々な取組を支援している。

本コラムでは、こうした地域における子供の貧困対策に取り組んでいる団体を紹介する。

(1)フードバンク福岡「未来を生きる子どもを応援するフードバンク活動」

「特定非営利活動法人フードバンク福岡」では、企業や農家、個人などから食品の提供を受け、食品を必要としている福祉施設や個人に届けることで、食品ロスの削減と生活困窮者の支援を行っている。

同法人の特徴的な取組として、小・中学生に対する朝食サポートや部活動後の補食支援が挙げられる。実施にあたっては学校と連携し、各学校のニーズに合わせて食品の種類・量を増やすなど柔軟に対応しており、学校長や食品提供団体などにアンケート調査を行うことでニーズや支援の効果を検証するなどして、より良い支援の在り方を模索している。

(常設拠点「下原ベース」)
(常設拠点「下原ベース」)

加えて、児童相談所と連携して活動するスクールソーシャルワーカーや、福岡市こども未来局、子供食堂・子供の居場所、無料学習塾などとも情報共有を行い、困難を有する子供に対する支援の架け橋の役割も担っている。

令和元(2019)年10月には、民間企業と協力し、福岡市東区にあるショッピングモール内に新たな食品受け渡し場所として「下原ベース」をオープンした。同法人の雪田千春理事長によれば「スーパーでの買い物という日常生活のすぐそばに常設拠点を整備したことでフードバンクの活動が見えやすくなり、市民の方の参加や行政・企業との連携が取りやすくなる」という。同地区は子供食堂の数が多いことから支援ニーズが高いということもあり、さらなる活動の広がりが期待される。

(2)学校教育開発研究所「子ども及び家族の心と学びの支援」

「公益社団法人学校教育開発研究所」が運営する「ほっとスペースAISES」では生活保護世帯等を対象に心理的援助を切り口にしたサービスを低額で展開している。例えば、学校にうまくなじめていない傾向が見られる子供・若者やその保護者を対象に低額でカウンセリングサービスを提供するとともに、学習支援においては「わかる」ことに重点をおいた学習カウンセリングと併せ適切な対人関係を形成するためのトレーニング(ソーシャル・スキル・トレーニング)を実施するなどしている。子供だけでなく、保護者からも「以前は“わからない=パニックもしくは放置”でしたが、今は(子供が)自分で落ち着いて考え次の行動を決めることができるようになっている」と肯定的な声が届いている。

(ほっとスペースAISESでの学習支援)
(ほっとスペースAISESでの学習支援)

また、同研究所では、母子生活支援施設等への訪問型学習支援などを通じて、福祉施設等と積極的に連携しながら「支援者の支援」にも力を入れている。同研究所によれば「困難を抱える子供との関わりには専門的な知識やスキルが求められ、施設職員の負担感が多大となっている状況の中、訪問型学習支援は職員の徒労感減少にも寄与している。」という。

ここでは特徴的な2つの取組を紹介したが、貧困の状況にある家庭では、様々な要因により子供が希望や意欲をそがれやすい。そうした中で、全ての子供が夢や希望を持てる社会を実現するためには、一人ひとりが問題に対して関心を持つきっかけが広がっていくことが重要である。今回紹介した取組以外にも様々な団体や個人が日々尽力しており、そういった関係者の努力に日頃から目を向けてもらえれば幸いである。

5 特に配慮が必要な子供・若者の支援

(1)自殺対策(文部科学省、厚生労働省)

30歳未満の若者の平成30(2018)年の死因をみると、10歳以上で自殺が一定の割合を占めるようになり、20歳代では約半数となっている(第3-36図)。また、自殺者について、厚生労働省・警察庁「令和元年中における自殺の状況」(令和2年3月)によると、令和元(2019)年、30歳未満の自殺者数は2,776人に上る。原因をみると「うつ病」などの健康問題が多く、19歳以下では「進路に関する悩み」、「学業不振」や「親子不和」が挙げられている(第3-37図)。近年、自殺者数は減少しているものの、若年層の自殺対策は依然として課題である。

政府では、「自殺対策基本法」(平18法85)に基づき、政府が推進すべき自殺対策の指針として「自殺総合対策大綱」を策定し、自殺総合対策大綱に基づき各種施策が実施されている。

平成29(2017)年に閣議決定した「自殺総合対策大綱」では、重点施策の一つとして、「子ども・若者の自殺対策を更に推進する」ことが掲げられた。具体的な対策として、「いじめを苦にした子どもの自殺の予防」、「学生・生徒等への支援の充実」、「SOSの出し方に関する教育の推進」などが挙げられている。特に若者は、自発的には相談や支援につながりにくい傾向がある一方で、インターネットやSNS上で自殺をほのめかしたり、自殺の手段等を検索したりする傾向もあると言われている。そのため、ICTを活用した若者へのアウトリーチ策の強化をはじめ、インターネット(スマートフォン、携帯電話等を含む。)を活用した支援策に係る情報提供の強化などにも取り組んでいる。

また、平成30年3月からは、広く若者一般を対象とするSNSを活用した相談事業を実施し、平成31(2019)年3月には、SNS相談の支援ノウハウを集約した「自殺対策におけるSNS相談事業(チャット・スマホアプリ等を活用した文字による相談事業)ガイドライン」を公表した。SNS相談については、相談の「入口」として有効であるものの、現実的な支援に向けて地域の社会資源へ円滑につないでいく必要があり、生活困窮者自立支援制度の自立相談支援機関などの地域の相談支援機関との連携を図っている。

児童生徒の自殺予防のための取組として、文部科学省では、児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議を開催し、自殺予防教育の在り方について調査研究を行っている。平成26(2014)年度には、学校における自殺予防教育導入の手引きである「子供に伝えたい自殺予防」、「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」の改訂版及び「子供の自殺等の実態分析」について審議のまとめを作成し、これらの審議のまとめについて、各教育委員会等の生徒指導担当者や校長・教頭などの管理職を対象に「児童生徒の自殺予防に関する普及啓発協議会」を開催し、周知を図っている。

また、長期休業(夏・冬・春休み)明けに児童生徒の自殺が多く発生していることを受け、長期休業前、期間中、終了前における見守り等を各学校に依頼している。

さらに、子供の悩みや不安を受け止めて相談に当たることが大切であることから、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置の充実など教育相談体制の充実を図っている(第2章第2節2(3)「学校における相談体制の充実」を参照)。

(2)外国人の子供や帰国児童生徒の教育の充実等(文部科学省)

帰国児童生徒の人数は、平成30(2018)年度、小・中・高等学校等合わせて11,635人であった(第3-38図)。また、日本語指導が必要な外国人の子供は、平成20(2008)年度を境に減少していたが、平成26(2014)年度以降再び増加しており、ポルトガル語や中国語を母語とする者が多くなっている(第3-39図)。このような子供たちが、就学の機会を逸することのないよう、就学支援が重要である。

外国人には就学義務が課されていないが、その保護する子を公立の義務教育諸学校に就学させることを希望する場合には、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)や児童の権利に関する条約に基づき、無償で受け入れている。これにより、教科書の無償配布や就学援助を含め、日本人と同一の教育を受ける機会を保障している。

文部科学省は、外国人の子供の公立学校への受入れや帰国児童生徒を含む日本語指導が必要な児童生徒の教育の充実に当たって、以下の取組を行っている。

  • 日本語能力に課題のある児童生徒への指導の充実のため、これまで都道府県からの申請に応じて、毎年度の予算の範囲内で措置していた教員の加配定数について、対象児童生徒の数に応じて教員数を算定できるよう、基礎定数化の実施(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律を一部改正、平成29年4月施行)
  • 独立行政法人教職員支援機構により、外国人児童生徒教育に携わる教員や校長・教頭などの管理職及び指導主事を対象として、学校全体での外国人児童生徒の受入れ体制の整備、関係機関との連携、日本語指導の方法等を主な内容とした指導者養成研修を実施
  • 増加する外国人児童生徒等に対する日本語指導や学習支援について、教育委員会へのアドバイスや教員研修の充実のため、「日本語指導アドバイザー」の派遣を実施
  • 教員を中心とする関係者が外国人児童生徒に対し適応指導や日本語指導を行える環境作りを支援するための、「日本語能力測定方法」の活用促進
  • 帰国・外国人児童生徒の受入促進や、日本語指導の充実、支援体制の整備に関する地方公共団体の取組を支援する補助事業の実施
  • 就学に課題を抱えている外国人の子供を対象に、公立学校や外国人学校などへの就学に必要な支援を学校外において実施する地方公共団体の取組を支援する補助事業の実施
  • 日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成・実施の促進(学校教育法施行規則を一部改正、平成26年4月施行)

(3)定住外国人の若者の就職の促進等(法務省、厚生労働省)

政府では、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策(改訂)」(令和元年12月20日外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議決定)に基づき、外国人材の適正・円滑な受入れの促進に向けた取組とともに、外国人との共生社会の実現に向けた環境整備を推進することを施策の基本的な考え方として、日本語教育の充実、外国人児童生徒の教育等の充実、地域での安定した就労の支援等に関して各種の施策を推進している。

日系人などの定住外国人等が多く集住する地域のハローワークを中心に、定住外国人等の就職を促進するため、専門相談員や通訳を活用した職業相談等を実施しているほか、職場におけるコミュニケーション能力の向上等を目的とした研修などの支援を行っている。

また、都道府県においては、訓練の受講に当たって一定の日本語能力を有する定住外国人を対象に、その日本語能力などに配慮した職業訓練が実施されている。

(4)性同一性障害者等に対する理解促進(文部科学省、法務省)

法務省の人権擁護機関では、「性的指向を理由とする偏見や差別をなくそう」、「性自認を理由とする偏見や差別をなくそう」などを啓発活動の強調事項として掲げ、啓発冊子の配布等のほか、人権啓発ビデオ「あなたが あなたらしく生きるために~性的マイノリティと人権~」の法務局・地方法務局等における貸出しやYouTube法務省チャンネルにおいて同ビデオや人権啓発ショートムービー「リンゴの色~LGBTを知っていますか?~」の配信を行うなど、各種人権啓発活動も実施している(第3-40図)。

第3-40図 人権啓発ビデオ

文部科学省は、性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒への対応について、学級担任や管理職をはじめ、養護教諭、スクールカウンセラー、教職員が協力して、実情を把握した上で相談に応じるとともに、必要に応じて関係医療機関とも連携するなど、子供の心情に十分配慮した教育相談の徹底を関係者に対して依頼している。平成28(2016)年4月には、性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に対するきめ細かな対応等の実施についての教職員向け資料を公表し、全国の教育委員会等に周知した。令和元(2019)年度においても、各都道府県・指定都市教育委員会の人権教育担当指導主事等を対象に、引き続き当該資料の周知を図った。また、大学等において、性的指向・性自認の多様な在り方に関する理解の増進や個別の事案に応じ学生個人の心情等に配慮したきめ細やかな対応の充実に資するよう、平成30(2018)年12月に、独立行政法人日本学生支援機構において、教職員向けの理解・啓発資料を公表し全国の大学等に周知した。令和元年度においても、学生支援担当の教職員を対象とした会議等を通じて、引き続き当該資料の周知を図った。


2 小・中学校の通常の学級に在籍している比較的障害の軽い子供が、ほとんどの授業を通常の学級で受けながら、障害の状態に応じた特別の指導を特別な場で受ける指導形態。言語障害、自閉症、情緒障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、弱視、難聴などのある子供が対象。平成28年12月に省令改正等を行い、平成30年度から高等学校においても通級による指導が制度化されることとなった。
3 令和2年3月30日に、東京オリンピックは令和3年7月23日から8月8日に、東京パラリンピックは同年8月24日から9月5日に開催されることが決定された。
4 全ての都道府県・指定都市に設置されている。
5 発達障害者の子供を持つ親であって、その経験をいかし、子供が発達障害の診断を受けて間もない親などに対して助言を行う者。
6 発達障害児者の親が自分の子供の行動を理解したり、発達障害の特性を踏まえた褒め方やしかり方を学ぶための支援。
7 1家庭裁判所などの求めに応じ、鑑別対象者の鑑別を行うこと、2観護の措置が執られて少年鑑別所に収容される者などに対し、必要な観護処遇を行うこと、3地域社会における非行及び犯罪の防止に関する援助を行うことを業務とする施設。
8 少年院法に基づく特定生活指導の一つであり、麻薬、覚醒剤その他の薬物に対する依存等がある在院者に対し、薬物の害と依存性を認識させるとともに、薬物依存に至った自己の問題性を理解させ、再び薬物を乱用しないことを目的に実施している。認知行動療法を基礎とするワークブック教材を用いて行うグループワーク又は個別での指導を中核とし、その指導効果を高めるために対人関係指導、民間自助グループによる講話、フォローアップ指導等を組み合わせ、包括的に実施する指導である。なお、重点的かつ集中的な指導が必要な在院者に対しては、重点指導施設において指導を実施している。また、薬物依存からの回復には、保護者の役割が重要であることから、重点指導施設では、薬物依存症に関する知識の付与、子供との良好なコミュニケーションの在り方等に関する保護者向けプログラムを実施している。
9 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に基づく特別改善指導の一つであり、薬物依存の認識及び薬物使用に係る自分の問題を理解させた上で、断薬への動機付けを図り、再使用に至らないための知識及びスキルを習得させるとともに、社会内においても継続的に薬物依存からの回復に向けた治療及び援助等を受けることの必要性を認識させることを目的に、対象者の刑期や再犯リスクなどに応じて、必修、専門及び選択の各プログラムを組み合わせて実施している。
10 児童自立支援施設(不良行為をなし、又はなすおそれのある子供を、入所又は保護者の下から通わせて、必要な指導を行い、自立を支援する施設)などに送致するもの。その対象のほとんどが15歳以下の少年である。
11 処遇を児童福祉機関の措置に委ねるもの。児童自立支援施設等送致と同様にその対象のほとんどが15歳以下の少年であるが、毎年その数は少ない。
12 調査(及び審判)の結果、審判を開いたり保護処分に付したりすることができず、又はその必要がないと認められる少年に対して行われる決定。
13 「少年法」では、被害者への配慮を充実するため、1被害者などによる記録の閲覧及び謄写、2被害者などの申出による意見の聴取、3一定の重大事件の被害者などによる少年審判の傍聴、4被害者などに対する審判状況の説明、5被害者などに対する審判結果などの通知、の制度が設けられている。
14 鑑別には、家庭裁判所の求めにより、事件の調査や審判を受ける者に対して行う鑑別(観護の措置が執られて少年鑑別所に収容されている者に対して行う鑑別とそれ以外の者に対して行う鑑別がある。)、処遇機関等の求めにより行う鑑別がある。
15 収容対象となる者の年齢、犯罪的傾向の進度、心身の故障の有無に応じて、第1種、第2種、第3種、第4種の4種類がある。
16 「児童福祉法」第44条に規定される施設。
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