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アメリカ・ドイツにおける青少年のインターネット環境整備状況等調査報告書

第II部 調査の結果

第1章 アメリカにおける調査

1.1 青少年のインターネット利用環境に関する実態

1.1.5 インターネット上のウェブサイトを利用して児童買春などの犯罪被害に遭った青少年の数・実態

 米国連邦捜査局 (Federal Bureau of Investigation、FBI)のInnocent Images National Initiative(以下、IINI42)では、犯罪被害にあった12〜17歳の青少年の数や実態を公表している。IINIとは、連邦捜査局のCyber Crimes Programの一部で、インターネット上における児童ポルノや児童性的搾取(CP/CSE)を取り締まる機関であり、そこでは全米及び世界の事例を収集し分析等も行っている。
 IINIが取り扱ったインターネット上における児童ポルノの処理件数は、1996〜2007年の間に年間113件から2,443件と、10年間で約21倍も増加し、累計で20,134件となっている。


図表 5 1996〜2007年の児童ポルノ事件の処理件数の推移
項目増加率増加数
処理されたケース20.62倍113→2,443に増加
情報と告発10.03倍99→1,092に増加
逮捕・場所の追跡・出頭命令25.01倍68→1,769に増加
有罪判決、公判前手続きの転用14.04倍68→1,023に増加
出所:FBI、 http://www2.fbi.gov/publications/innocent.htm

図表 6 1996〜2007年の児童ポルノ取締り件数(累計)
項目
処理されたケース数20,134
情報と告発の数6,844
逮捕・場所の追跡・出頭命令の数9,469
有罪判決、公判前手続きの数: 6,863
出所:FBI、 http://www2.fbi.gov/publications/innocent.htm

 なお、IINIが扱ったインターネット上における児童ポルノに関連する事件は、Cyber Crimes Programで扱われた全捜査の39%(2007年度)を占めている。

 また、1998年に合衆国法典によって設立された全米失踪・被搾取子どもセンターが運営するサイバー・チップラインでは、2001から2008年までに、児童ポルノと疑われる事例や、その他の児童搾取犯罪に関わるケースが650,000件も報告されている。その報告の84%は、児童ポルノの所有・制作・配布などが関連している。なお、サイバー・チップラインへの報告は、一般市民からのものと、米国を拠点とする電子サービス・プロバイダ(Electronic Service Providers、ESPs43)からの報告により構成される44


 米国商務省電気通信情報局が2010年6月に発表した「インターネット上での生活における青少年の安全性:オンラインの安全と技術に関する専門部会による報告書 (Youth Safety on a Living Internet: Report of the Online Safety and Technology Working Group、OSTWG45)」によると、サイバー・チップラインが2005年〜2010年までに受けた報告の44%は、プロバイダから提出されたものである。報告の過程では、児童ポルノと疑わしい画像やビデオが、電子サービス・プロバイダ(ESP)によってインターネット上から削除され、その内容がサイバー・チップラインに報告されている。


 また、サイバー・チップラインによる青少年のインターネット上での性的搾取の犠牲者調査46では、以下の実態が明らかになっている。


図表 7 ESPによりサイバー・チップラインに提出された画像やビデオの数
ESPにより提出された画像やビデオの数
2005501,587
20061,043,144
20071,830,961
2008609,206
2009700,939
2010※390,393
合計数6,571,627
※2010年は第1四半期のみ

出所:米国商務省、電気通信情報局の
Internet and reported to the CyberTipline along with details of the incident

図表 8 サイバー・チップラインに報告された件数
一般市民からサイバー・チップラインへの報告ESPからサイバー・チップラインへの報告サイバー・チップラインが受け取った報告の合計数
200539,11231,65670,768
200644,41932,16576,584
200769,41435,847105,261
200868,86933,160102,029
200958,49261,055119,547
2010※17,87527,14445,019
合計数456,434357,743814,177
※2010年は第1四半期のみ

出所:米国商務省、電気通信情報局の
Internet and reported to the CyberTipline along with details of the incident
図表 9 サイバー・チップラインに報告された2008年度の内容別報告件数
事件のタイプ
児童ポルノ (所持・製造・配布) 85,301
児童買春 1,117
子ども関連の性交目的の旅行392
子どもへの性的いたずら (家庭外) 1,945
インターネット上の子どもへの性的行為の誘惑8,787
子どもに送られた迷惑わいせつ物 1,306
虚偽的ドメイン名 2,456
インターネット上の虚偽的文書やデジタル画像※725
合計102,029
※2008年10月24日に追加された新しい報告カテゴリー

出所:CyberTipline: Annual Report Totals By Incident Type

 他方、ニューハンプシャー大学の「Crimes against Children Research Center」では、インターネットを利用した犯罪の逮捕者の数などをまとめている。インターネットを通じて被害者と知り合った児童虐待の検挙件数は、2006年に615件である。その他にもインターネットのチャット・ルームなどで警察が行ったおとり調査による検挙件数は2006年の1年間で3,100件であった。
 また、インターネットのチャット・ルームで警察官が13歳の少女になりすますなどのおとり捜査も行われている4748


 また、テキサス州の検事局事務所によれば、2003年に結成された同事務所のインターネット犯罪部(Cyber Crimes Unit)により検挙されたインターネットを利用した児童虐待犯罪者の数は118人に上る。同部署では、捜査官が、Yahoo!などのチャット・ルームで13歳の少女を装い、疑わしい者を発見するおとり捜査を日常的に行っており、犯罪被害を未然に食い止める努力を行っている。
 こうしたおとり捜査における犯罪者の典型的な行動パターンは、チャット中に相手が13歳の少女だと考えると、性的な内容の会話を始め、電話番号や性的な画像を要求しはじめ、最終的には、実際に会うことを強要するというものである。この場合は、刑法犯となるため、張り込み調査で逮捕される。また、実際に会うところまで行かない場合も、例えば、チャット内の会話で性的な内容を発言したり、画像の要求をしたり、電話番号を教えたりする行為だけでも、同様の刑法犯とみなされ逮捕される場合もある49


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