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アメリカ・ドイツにおける青少年のインターネット環境整備状況等調査報告書

第II部 調査の結果

第1章 アメリカにおける調査

1.2 青少年のインターネット利用環境に関する世論62

 米国におけるインターネットの利用に関する世論については、以下のとおり、プライバシー擁護派とインターネット規制派の意見が見られた。以下、この2つの意見について説明したのち、有害コンテンツの取り締まりや子どもの保護についての世論について説明する。


プライバシー擁護派の意見
 プライバシーの保護や表現の自由、インターネットへアクセスする権利を擁護するために設立された電子フロンティア財団63では、青少年には限定はしてはしていないが、インターネット上におけるプライバシーや言論の自由を保護するキャンペーンを展開している。
 例えば、通信品位法(Communications Decency Act、CDA)に対する、ブルー・リボン・キャンペーン(Blue Ribbon Campaign64)などがある。このキャンペーンでは、ブログ等に匿名で記事を投稿する権利や、個人情報の保護を主張している。
 また、米国商務省の電気通信情報局の「インターネット上での生活における青少年の安全性:オンラインの安全と技術に関する専門部会による報告書65」によると、プライバシー擁護派は(特に青少年のインターネット環境に対しての意見ではないが)、新聞等のメディアがウェブサイトを訪れたユーザーのIPアドレスを収集し、ユーザーのインターネットの利用に関して、何らかの影響を及ぼしている、といった懸念を示している。
 確かに、現在、サイト運営者によるIPアドレスの収集は、広く一般化しており、今日では、ほとんどのウェブサイトが、マーケティングと技術の向上を目的として、定期的にこの種の情報を収集している66


 他方、前述したとおり、児童インターネット保護法の施行に伴い、E-料金の利用条件には、ポルノなどのコンテンツを排除するフィルタリング規則が追加された。こういった規制は図書館における自由な研究が制限されるとして、児童インターネット保護法を支持せず、E-料金を利用しない図書館などもあるが、多くの学区・学校ではフィルタリングを取り入れ、E-料金を利用している67


インターネット規制派の意見
 米国の非営利団体Enough Is Enough(以下、EIE)68は、違法なポルノや性的搾取など、インターネット上の有害情報の氾濫を懸念した女性のグループによって1992年11月に結成された組織で、その創設以来、インターネットの規制について活発な活動を続けている。
 特に主宰のドナ・ライス・ヒュー女史(Donna Rice Hughes)自身が児童オンライン保護法(COPA)69の制定に関わるなど、インターネット上での青少年の保護を強く求めており、特に青少年の性的虐待や児童ポルノの防止を強く訴えている。児童ポルノに対しては、絶対に許してはならないという強い姿勢での「Zero Tolerance」政策を打ち出し、政府に訴えるなどの活動を行っている。


有害コンテンツの取り締まりについての世論
 コンサルティング会社のWirthlin Worldwide(以下、Wirthlin)が実施した2002年の調査(Wirthlin Survey70)では、有害コンテンツの取り締まりについて、以下の調査結果が報告されている。


子どもの保護に関する世論
 他方、子どもの健康に関する全米世論調査 (CHEAR - National Poll on Children's Health71)によると、子どもにとってのインターネットの安全性は、他の健康問題と関連して、重要な問題(10項目中7番目)であると認識されている。特に女性(32%)は、男性(21%)よりも、子どものインターネットの利用における安全性について重要であると考えている。
 最近は、子どものための安全なインターネットの利用に関する社会的関心が高まり、これに対応して州や連邦の議員の中には、新しい法律の制定に向けた動きも見られる。例えば、後述する72、カリフォルニア州選出の民主党議員のリンダ・サンチェス下院議員が、2009年4月に下院に提出した「メーガン・マイヤー・ネットいじめ防止条例法案73」は、インターネット上におけるいじめに対して、罰金刑と最長2年の禁固刑を定めるものである。


 しかし、この法案に対しては、多くの言論の自由の支持者からは、同法案の「いじめ」の定義が広範囲すぎて犯罪を限定しにくいことや、単に「2009年の検閲条例」だと非難する意見が挙がっている。また専門家の中からは、自殺したメーガン・マイヤーは、元々、性的に病んでおり、精神治療の薬を服用していたなど、一般的な「いじめ」とは異なるため、典型的なインターネット上でのいじめの犠牲者として扱うには危険であるとの見解も聞かれる。


カリフォルニア州
 また、カリフォルニア州サイバー安全サミットにおけるインターネットの利用に関する意識調査74では、インターネット上における青少年の保護について、以下の結果が出ている。
 約5人に1人の子どもが性的勧誘をインターネット上でされている中で、青少年保護が十分機能しているか、という質問に対して69.59%(135人)の保護者が十分ではないと回答している。

図表 14 子どものインターネット活動
質問6 5人に1人の子どもがインターネット上で性的に虐待を受けている事実に対し、子どもを十分に保護できていると思うか?
 比率 (%)
はい
いいえ
59
135
30.41
69.59
合計194100
出所:「カリフォルニア・サイバー安全サミット」での意識調査

 また、インターネットの利用について、どのグループが責任を持つべきかという質問では、92.05%(220人)が保護者と家族が責任を持つべきだと回答している。

図表 15 インターネット利用の責任
質問7 安全で責任を持ったインターネットの利用に関して、どのグループに一番の責任があると思うか?
 比率 (%)
保護者と家族
関連産業
学校
同級生
220
14
2
3
92.05
5.86
0.84
1.26
合計239100
出所:「カリフォルニア・サイバー安全サミット」での意識調査

 他方、85.45%(235人)の保護者は子どもの方がインターネットに精通していると感じており、93.07%(255人)は子どもが安全にインターネットを体験できると信じている。

図表 16 インターネットとテクノロジーへの理解
質問8 本当のエキスパートは誰だと思いますか?
 比率 (%)
子ども
保護者
235
40
85.45
14.55
合計275100
質問9 子どものために安全なインタラクティブテクノロジーが実現できると思いますか?
 比率 (%)
はい
いいえ
255
19
93.07
6.93
合計274100
出所:「カリフォルニア・サイバー安全サミット」での意識調査

 他方、85.45%(235人)の保護者は子どもの方がインターネットに精通していると感じており、93.07%(255人)は子どもが安全にインターネットを体験できると信じている。

図表 17 インターネットの知識
質問10 子どもが他の子どもか大人のどちらから学ぶ事ができると思いますか?
 比率 (%)
子ども
大人
247
31
88.85
11.15
合計278100
出所:「カリフォルニア・サイバー安全サミット」での意識調査

 また、インターネットを安全に利用できる簡単なプログラムがある場合、使ってみると思うかという質問に対しては、93.51%(245人)が試してみたいと回答している。

図表 18 インターネットの安全な利用
質問12 もし安全なインターネットの利用に関しての簡単に利用できるプログラムがあれば実際に使ってみますか?
 比率 (%)
はい
いいえ
245
17
93.51
6.49
合計262100
出所:「カリフォルニア・サイバー安全サミット」での意識調査

 インターネット上における子どもの安全を守るために、政府規制が言論の自由を制限するとしても、同規制を支持すると回答したのは66.82%(141人)であった。


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