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アメリカ・ドイツにおける青少年のインターネット環境整備状況等調査報告書

第II部 調査の結果

第1章 アメリカにおける調査

1.3 青少年のインターネット利用環境に関する制度、法及び政策とその背景

1.3.1 青少年、その保護者及びその他一般に対する教育・啓発

連邦取引委員会のプライバシー・イニシアチブ75
 連邦取引委員会 (Federal Trade Commission、FTC(以下、FTC))のプライバシー・イニシアチブでは、児童オンライン・プライバシー保護法76も含め、教育・啓発に向けての多くの情報を提供している。
 また、FTCでは、消費者を対象とした「ソーシャル・ネットワーキング・サイト: 保護者へのガイド77」を作成し、一般消費者に対して、安全性なインターネットの利用についての教育・啓発をしている。
 今日、ソーシャル・ネットワーキング・サイトは、5〜6歳の低学年の子どもも含む10代の青少年に人気がある。各ソーシャル・ネットワーキング・サイトでは、10代の子どもの利用に対して、大人の利用の場合と区別し、コミュニケーションにおける制限を設けている。FTCでは、それでも、保護者が子どもの交流に関しての安全面での教育をすることは必要だとして、インターネット上での子どもの情報を保護者が管理できるよう、児童オンライン・プライバシー保護法の詳細が紹介されている。


司法省の青少年司法・非行防止事務局のICACタスク・フォース・プログラム78
 米国司法省の青少年司法・非行防止事務局(Office of Juvenile Justice and Delinquency Prevention、OJJDP)では、1998 年より、インターネット上における青少年に対する犯罪防止を目的に、Internet Crimes Against Children (以下、ICAC) タスク・フォース・プログラム(ICAC Task Force Program)を立ち上げている。同プログラムは、州と自治体の警察機関が共同で、誘惑行為や児童ポルノに対して迅速に対応できるようにすることを目的として、関係者へのトレーニングや技術支援(Training and Technical Assistance Program)などを行っている。
 ICACのTraining and Technical Assistance Programには、非営利団体のGirls Educational and Mentoring Services (以下、GEMS)79」と協力したプログラムなどが含まれ、同団体は、特に女性や少女の商業的な性的搾取に関する問題を扱っている。GEMSは、ICACのタスク・フォースがビジネスとして子どもの性的搾取を行う犯罪ケースに対する取組を更に強化できるように、関係者へのトレーニングと技術支援を行っている。


米国司法省のComputer Crimes and Intellectual Property Section80
 米国司法省のComputer Crimes and Intellectual Property Section(以下、CCIPS)は、コンピューター犯罪や知的所有権を扱う部署であるが、その業務の一環として、連邦、州、警察、検察官、他の政府関係者などへのトレーニングを行っており、場合によっては他国の依頼にも応じてトレーニングを提供している。また、同部署の弁護士は、民間の弁護士やシステムオペレーター、情報セキュリティーの専門家等、コンピューター犯罪や知的所有権の侵害に関心のある団体に対して、講演などを通じて情報の提供を行っている。
 その他、保護者・教育者向けのウェブサイトや子ども向けのウェブサイトを設けて、教育・啓発活動を行っている。青少年に対しては、インターネット上での道徳を教えるCyberethics for kids81、保護者や教育者などにはコンピューターに関しての防犯レッスンプラン(Computer Crime: A Lesson Plan Outline for Teachers of Elementary and Middle School Children)を提供している。


司法省連邦捜査局の「安全なインターネットの利用への保護者のガイド」
 また、米国司法省では、保護者や他の大人がインターネット上の危険性から子どもを保護する方法を、連邦捜査局のウェブサイトで紹介している(安全なインターネットの利用への保護者のガイド、Parent's Guide to Internet Safety82)。


カリフォルニア州
カリフォルニア州教育省の教育規約
 カリフォルニア州では、教育規約51870-51874条により、カリフォルニア技術支援計画83 (The California Technology Assistance Project、CTAP)が定められており、各学区は同州教育省より技術補助金を受ける条件として、教育技術計画を設けることが義務付けられている。同計画においては、「教室における安全、適切、倫理的なインターネットの使用、盗作を回避し著作権を尊重する姿勢」を、生徒と教師に教育することが活動内容に含まれている84
 また、同州では2006年に、教育規約51871.5条が制定され、学校側が同計画書を作成するに当たり、その内容について、安全なインターネットの利用を学生と教師に指導することを義務付けている。


安全なインターネットの利用
 カリフォルニア州では、「Cyber Safety for Children85」というサイトを設け、インターネットの安全な利用についての啓発活動を行っている。これは、カリフォルニア州の個人情報保護室 (the California Office of Privacy Protection) が行うプログラムの一環で、子どものインターネットの利用増加に対応して、2006年に開始された。
 このサイトの運営に当たって同室は、青少年の安全なインターネットの利用に関するカリフォルニア州同盟86 (the California Coalition on Children's Internet Safety) と協力体制を敷いている。同同盟のメンバーは、各分野の第一人者として活躍する専門家で、同サイト内では、保護者、教育者、地域社会の指導者に向けての一連の教育プログラムとして、子どもが安全にインターネットやSNSなどを利用したりできるように、家庭でのルールの設定などを指導している。


 Cyber Safety for Childrenの保護者のページでは、子どものインターネット利用についての家庭におけるルール例が掲載されており、例えば、Microsoftの「WiredKids」のサイトから提供されているルール例が紹介されている。その中には、例えば、青少年はリビングルームでコンピューターを利用すること、などといったルールがある。また、青少年がコンピューターを利用できる時間を制限するなどの、ペアレンタル・コントロールの必要性も強調している。
 また、Cyber Safety for Childrenでは、保護者は子どもに対して、インターネットの利用における基本的な姿勢を持つことが必要で、子どもがコンピューターを正しく利用できるように、お互いの話し合いを積み重ねることが重要であると指摘している。Cyber Safety for Childrenは、その話し合いの中で保護者は子どもに対して、個人的な住所やカード番号などの情報をインターネット上に提供することが犯罪に繋がりかねない、などを意識させることが必要となるとしている87


学校とPTAsへの講演事務局
 青少年の安全なインターネットの利用に関するカリフォルニア州同盟では、講演事務局 (Speaker Bureau for Schools and PTAs) を設け、幼小中高等学校の保護者と教師を対象とした会議に講演者を派遣している。各講演者はビジネス、政府、民間非営利組織から招請された専門家で、サイバー・スペースにおける危険性の早期発見や、子どもの保護の方法を伝授している。安全なSNSの利用、子どもとデジタル・メディア、ネットいじめ、コンピューターと家族の保護などのテーマで講演を行い、積極的な教育・啓発に取り組んでいる88


 テキサス州検事局では、ネット安全担当官 (Cyber Safety Officer) という部署を2003年に新たに設け、安全なインターネットの利用に関して、教育・啓発に取り組んでいる。例えば、担当官が、各警察機関や教師や学校のスタッフを実際に訪問し、インターネットに関しての講習を行ったり、各地域に赴き、保護者に対して講習なども行っている。時には、学校の生徒に対して、その年齢に相応しいカリキュラムを提供している。カリキュラムに関しては、全米規模の民間機関であるNetSmartzのサイトが提携している「Parents & Guidance」、「Educators」、「Law Enforcement」、「Teens」、「Kids」等のカリキュラムを利用している89


Computers for Learning
 Computers for Learningとは、学区内の恵まれない子ども及びその家族に対して、中古のコンピューターやインターネットのサービスを提供するために、2000年に設立された非営利団体(501-c-390)である。同団体では、民間企業、州政府、合衆国政府、非営利組織、学区等が寄贈した中古のコンピューターをボランティア技術者が修理し、ソフトウェアをインストールするなどして使用可能な状態に組み立て直し、対象となった各家庭に提供している。 テキサス州保健福祉局 (The Texas Health and Human Services Commission、HHSC) がこのプログラムの拡大のための援助を行っており、寄贈したコンピューターのプログラムのインストール、コンピューター在庫を保管する倉庫、メンテナンス・サポートなどを行っている91
 コンピューターを寄付する際には、受け取り側の各生徒と保護者に対して、コンピューターの維持の方法や、安全なインターネットの利用に関しての訓練を行っている。この訓練に参加して初めてコンピューターを自宅に持ち帰ることができる。なお、生徒が高校を卒業するまでは、コンピューターの修理などのアフターサービスも行っている。


iKeepSafe Internet Safety
 テキサス州の検事局(Texas Attorney General Office)では、同局のサイト内において、教育用ビデオの提供を行っている。その中には、青少年が賢明にインターネットを利用できる方法を、「ネット・スマートな青少年からの助言(Tips from Cyber-Smart Kids)」といったタイトルで紹介している。この中では、インターネットでのチャットなどで実名や個人情報を提供しないことを教えている。また、保護者が自分の子どもをインターネット上で保護するための方法「Tips for Parents on Protecting Your Children Online」では、青少年への助言と同様に、個人情報を提供しないように、自分の子どもへ教育を行うことや、コンピューターの設置場所やインターネット使用に関しての家庭のルールを設けることなどを、子どもとその保護者に対して教育と啓発を行っている92


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