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アメリカ・ドイツにおける青少年のインターネット環境整備状況等調査報告書

第II部 調査の結果

第1章 アメリカにおける調査

1.3 青少年のインターネット利用環境に関する制度、法及び政策とその背景

1.3.6 ネットいじめ

 以下、まず、ネットいじめに関する連邦及び各州の法律の整備状況一般について概観した後、連邦、カリフォルニア州及びテキサス州における状況について述べる。
 下の図表20は、ネットいじめリサーチセンター (Cyberbullying Research Center) による、各州のネットいじめ法 (State Cyberbullying Laws) の整備状況を整理したものである。


図表 20 州レベルにおけるネットいじめ法の整備状況
 カリフォルニア州テキサス州連邦合計
いじめ法有り有り無し44州
更新した法が提案されている無し有り提案された12州
いじめ法にネットいじめが含まれている。有り無し提案された5州
いじめ法に電子媒体上でのハラスメントが含まれている。有る無し提案された30州
刑事制裁無し有り提案された7州
学校制裁有り有り無し37州
学校側での施策を義務付けている有り無し無し42州
出所:Sameer Hinduja, Ph.D. and Justin W. Patchin, Ph.D.による「州のネットいじめ法と政策 (A Brief Review of State Cyberbullying Laws and Policies)」より、2010年7月現在の状況をまとめたものである。なお、右列の合計は法律の規定等がある州の数である。

 同センターは、フロリダ州のアトランティック大学准教授Sameer Hinduja博士とウィスコンシン州のウィスコンシン・エアウクレア大学准教授Justin W. Patchin博士により運営されており、青少年におけるネットいじめに関して、幅広い情報をウェブサイトで提供している。同時に、保護者、指導者、カウンセラー、精神医学の専門家、警察関係、青少年等に対して全国的に講演を行い、オンラインでのネットいじめなどの防止を教示している。
 連邦レベルには、脅威や恐喝に対する法律はあるが、いじめそのものを取り締まる法律は存在しない。カリフォルニア州及びテキサス州においては、いじめ法が存在するが、その中には、インターネット上で発生するネットいじめに関しての規定は無い。ただし、カリフォルニア州では、電子媒体上でのハラスメントに関しての規定がある。


メーガン・マイヤー・ネットいじめ防止保護法・下院法案1966114
 メーガン・マイヤー・ネットいじめ防止保護法・下院法案1966(Megan Meier Cyberbullying Prevention Act: H.R. 1966)の法案名は、ミズーリ州の13歳の少女、メーガン・マイヤー(Megan Meier)に由来している。メーガンの級友の母親であるロリー・ドリュー(Lori Drew)が、SNSサイトのMySpaceにおいて、10代の少年に扮して彼女に接近し、彼女に苦痛を与えたことが原因でメーガンは、2006年に自宅で首を吊って自殺したとされ、同年11月に連邦裁判所において、ドリューは3つの軽犯罪法違反で起訴され、現在、判決が下されるのを待っている。検察の求刑によると、最長3年の禁固刑に科せられる可能性が高い。
 この法案は、元々2008年5月に、ミズーリ州とカリフォルニア州選出の下院議員により提案されていたが、結局は、連邦議会の司法委員会において却下された。そこで、2009年4月2日、カリフォルニア州選出の下院議員リンダ・サンチェス氏(Rep Sanchez, Linda T.)ら17名の議員により再提出され、下院司法委員会の犯罪・テロ・国土安全保障小委員会において、公聴会審査が行われたが、現在、未だ採決は取られていない。
 同法案は、既存の脅威や恐喝に関する法律「合衆国法典19条の41章(Chapter 41 of title 18 of the U.S. Code)」を修正する法案であるが、電子媒体を通じた通信において、他人に対して故意に継続して、いじめをしたり、脅したりすることによって、被害者が明確な精神的な苦痛を受けたという事実が認められる場合に、加害者に対して罰金や2年以下の禁固刑、もしくはその両方の形を科すという内容の法案である。ただ、何をもって精神的な苦痛と判断するのか、その定義が広範囲になることなどから、現在も、公聴会審査の段階からは進んでいない。


カリフォルニア州
 カリフォルニア州では、いじめ全般に関して以下の法律があり、その中に、インターネットで発生するネットいじめに関する規定も含まれる115


2003年度上院法案(S.B.) 719条 828章:Bullying Prevention for School Safety and Crime Reduction Act of 2003
 2003年度上院法案(S.B.) 719条 828章は、2003年に、学校でのいじめ対策と構内での犯罪防止のために制定された法律である。


2001年度カリフォルニア州下院法案(A.B.)79条 646章
 2001 Cal. Stats., A.B. 79, Chapter 646は、いじめ防止のためのモデル対策案を開発し、各学校での導入を州の教育省に義務付けるものである。


2001年度カリフォルニア州下院法案(A.B.)86条 32261章(g)一部改正する法案
 A.B.86, 2008 Code §32261 (g) Lieu.は、生徒の安全に関する規定を補足する条項であるが、この中で、インターネット上で電子メールなどを利用してのいじめを行った場合に、学校側がそのいじめを行った生徒に対して、停学処分や状況によっては退学処分を勧告することを可能にしている。ただし、これはネットいじめ自体を対象とした法律ではなく、電子媒体上でのハラスメントを対象にした規定である。


カリフォルニア州教育省の教育規約116
 この教育規約は、いじめ全般に関する規約であるが、最近では、ネットいじめに関しても、子どもによる通常のいじめの定義の項目として追加され、学校の職員は、インターネット上でいじめを行った生徒に対して、停学処分を課したり、退学を勧告できるようになった。


ネットいじめとデート暴力関連の州法規117
 2010年2月4日、カリフォルニア州下院議会の同時決議100号「10代のデート暴力に関する決議 (Assembly Concurrent Resolution、以下ACR No.100 - Relative to Teen Dating Violence118)」は、デート暴力(Dating Violence)の防止と被害者保護のキャンペーン「National Teen Dating Violence Awareness and Prevention Month(以下、TDVAPM)」を展開するために可決された法律である。
 このキャンペーンは、最近、10代の青少年によるデート時の暴力事件が増えていることを踏まえ、そのような事件があることを広く知らしめることで、こういった犯罪を未然に防ぐことを目的とした活動である。このキャンペーンの中には、新たに、インターネット上での虐待や、わいせつな画像やテキスト・メッセージによる嫌がらせなどの防止に関する啓発が追加された。


テキサス州
 テキサス州法には、ネットいじめに関する直接的な規定は無いが、下院法案(H.B.)283条:テキサス教育省のテキサス教育規約、法規25.0342、37.217、37.001、37.083条 (H.B.283; Tex. Educ. Code Ann 25.0342、37.217、37.001、37.083119) により、安全なインターネットの利用に関する規定に関連して、ネットいじめを防止するための問題の早期の発見や報告を、学校などの教育機関に義務付けている。また、同法規では安全なインターネットの利用を、各教育機関が指導できるよう、プログラムの開発を教育機関に義務付けている。
 また、教育規約第37章法規 (EDUCATION CODEACHAPTER 37. DISCIPLINE; LAW AND ORDER) では、「教育規約第37章217条:安全なインターネットの利用に関する地域教育 (Sec. 37.217.COMMUNITY EDUCATION RELATING TO INTERNET SAFETY.)」に関して、以下のように規定している。

(a) 学校など各種の教育機関は、検事長官と協力して、安全なインターネットの利用に関するプログラムを開発するものとする。又、以下に関する指示を一般市民に対して行うことが義務付けられる。
   (1)インターネット・ウェブサイトに個人情報が載せられる場合の潜在的な危険について
   (2)不当なインターネット上での勧誘を報告する方法について
   (3)ネットいじめや脅威の防止、発見、報告について
(b) 同プログラムの開発で、学校など各種の教育機関は以下を実行する:
   (1)関心のある利害関係者に協力を依頼する
   (2)実用的な範囲で既存の資源やプログラムの活用をする
(c) 教育センターは同プログラムを公立の学校で利用可能にする

 また教育規約第37章以下では、いじめに関する規約に多少触れているが、インターネット上で発生するネットいじめそのものに対してではなく、通常のいじめに関するものとなる120


 また同州議会では現在、州上院法案(Senate Bill、SB1) 1725が提出されているが、同法案では、電子媒体上でのいじめも教育規約に含むよう改正し、加害者には刑罰が与えられるように要請しているが、現在、同法案は未決のままである。



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