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アメリカ・ドイツにおける青少年のインターネット環境整備状況等調査報告書

第II部 調査の結果

第1章 アメリカにおける調査

1.3 青少年のインターネット利用環境に関する制度、法及び政策とその背景

1.3.7 児童買春等の青少年を性的に誘引する行為に対する取組

 第1章の1-1で述べたとおり、ICEのサイバー犯罪センター(C3)では、児童搾取取締り課(CES)121 を設け、米国合衆国法典に基づき、青少年を性的に誘引する行為の取り締まりを行っている。
 CESでは、インターネットを利用した青少年への性的犯罪について、他の機関やICACと連携して、証拠の収集や犯罪活動の追跡などを実施している。
 またCESは、児童買春を目的とした海外旅行の取り締まりも行っており、また、わいせつ物の州間搬送を取り締まることを目的に、子どもの虐待画像の国際的取引をしている大規模な製造者や配布業者の調査を行っている。
 こういった捜査では、まずCESが最新の技術を用いて、ウェブサイト、チャット・ルーム、ニュースグループ、P2P取引などを利用した組織犯罪や個人の活動を追及し証拠を固め、下記に挙げている児童買春法などに基づき、違反者の検挙に取り組んでいる。これらの調査活動はCESが管理している虐待犯罪者捜査(Operation Predator)というプログラムで実施される。またCESは、定期的に地域の捜査機関の補佐的役割を担う機関として大規模な調査を行うことで犯罪の抑制を行っている。また、青少年の搾取犯罪は世界的にも重要な問題となってきているため、CESは各国の警察機関とも緊密な協力体制を敷いている。


児童オンライン保護法
 児童オンライン保護法 (Child Online Protection Act、COPA) は、未成年に有害な情報を営利目的でインターネット上において配布することを禁止する法律だが、言論の自由を侵害するものとして提訴され、合憲性が最終的に判断されるまで施行が停止となっている。2004年6月、最高裁は違憲の可能性があるとの判断を示し、現在、同法に関する審議は下級審に差し戻しされている122


児童買春 (米国合衆国法典18 編U.S.C.1591条)123
 児童買春の条件は、18歳未満の未成年者に対して、詐欺や性的強要に関与しうることである。14歳未満に対する性的な詐欺・強要を行った場合は、長期または終身刑の実刑が科せられ、被害者が14〜18歳の場合は、それが40年の懲役となる124。なお、児童買春については、以下の合衆国法典がある125
 子どものインターネット上での誘惑に対する性的行為 (米国合衆国法典18 編U.S.C. 2422(b)条)
 児童買春など性目的の旅行に関して (合衆国法典18 U.S.C. 2423条)
 家族外での子どもの性的虐待に関して(合衆国法典18 U.S.C. 2423条)
 子ども宛に送られた迷惑わいせつ文書に関して(合衆国法典18 U.S.C. 1470条)
 虚偽的ドメイン名に関して(合衆国法典18 U.S.C. 2252B(b) 条)
 インターネット上の誤解を与える言葉やデジタル画像に関して(合衆国法典18 U.S.C. 2252C条)


 連邦捜査局「イノセント・イメージ国家イニシアチブ」で捜査される中で、最も一般的な犯罪は以下の合衆国法典(USC)18編に違反しているものである126
   § 1462条 わいせつ物の輸入や輸送
   § 1465条 販売や配給目的でのわいせつ物の輸送
   § 1466条 わいせつ物販売や譲渡に関するビジネスの従事
   § 1467条 刑事法の没収
   § 1470条 未成年者へのわいせつ物の譲渡
   § 2241(a)(b)(c)条 悪質な性的虐待
   § 2251(a)(b)(c)条 子どもへの性的搾取
   § 2251A(a)(b)条 子どもの売買
   § 2252条 未成年者の性的搾取が関与している素材に関連する行為
   § 2252A条 児童ポルノで構成されているか含まれている素材に関する行為
   § 2253条 刑事法の没収
   § 2254条 民事法の没収
   § 2257条 記録保持の義務
   § 2260(a)(b)条 米国への輸入の目的での未成年者の性表現が露骨な描写の生産
   § 2421条 一般的な輸送
   § 2422条 強制と誘惑
   § 2423(a)条 犯罪的な性行為の従事の意思がある目的での未成年の輸送
   § 2423(b)条 青少年との性行為従事の意志での各州間や外国への移動
   § 2425条 未成年者に関する情報を伝える目的での各州間の施設の使用
   § 13032条. 電子通信サービス・プロバイダによる児童ポルノについて報告


カリフォルニア州
 カリフォルニア州法「わいせつ法令(California Obscenity Law)」及び刑法311条では、わいせつ物の内容に関しては合衆国法典と同様に定義している。これらの犯罪対策として、カリフォルニア州のシュワルツネッガー州知事部局では、「Crime Victim Advocate(以下、CVA)127」を設立している。
 CVAは、同州の他の「犯罪犠牲者サービス・プログラム」と共同で、また、主要な投資者とも協力し、犯罪犠牲者に対する支援を行っている。また、同知事は、性的な犯罪者から子どもと家族の保護する立法の必要性を提唱している。
 また、同州では、性犯罪者管理委員会を創設して、仮釈放者の中で犯罪を繰り返す危険性のある者を追跡ために、GPS装置を使用した犯罪者のモニタリングを行っている。さらに、性犯罪者として登録された者の情報の公開なども行い、就職先の雇用主に注意を促し、子どものいたずらや痴漢の防止に取り組んでいる。


テキサス州
 テキサス州法「州性犯罪者の法律(Texas Sex Offender laws)」では、過去に有罪を受けた者が、SNSや写真共有サイトなどへアクセスしたり、自分のアカウントやウェブページの作成するために登録することは禁止していない128。その代わりに、犯罪歴を持ち州政府の監督下(執行猶予、仮釈放中の者)にある者は、インターネットへアクセスする際には、保護観察士に監視されるか、または、アクセスの制限を受ける場合があり、さらに、サイトの利用に関して具体的な報告を行う義務がある。仮に元犯罪者がこれらの規則に従わずに、報告を怠り勝手に同種のサイトにアクセスした場合には、仮釈放や執行猶予の撤回や、刑罰の延長等に科せられることもある。


 他方、テキサス州公安局 (Department of Public Safety、DPS) では、同州登録局に報告された性犯罪歴を持つ者に関して、同局のホームページで情報公開を行っており、SNSサイトへ登録する可能性のある性犯罪歴のある者を特定できるようにしている。これにより、性犯罪経歴のある者が、サイトに登録した場合には、本人から同局へその旨を報告する義務があり、その収集された情報がサイト運営者などの関係者に開示される。
 例えば、テキサス州性犯罪登録法(The Texas Sex Offender Registration law)において犯罪歴を持つ者は、あらゆる「オンライン識別名」を新規登録時から7日以内に登録局に通知する義務がある。ここで言うオンライン識別名とは、インスタント・メッセージやSNSでのコミュニケーション、または、同様のインターネット通信を行う際、また、チャットに参加する際の電子メールアドレスなどの呼称である。また、このオンライン識別名は、あらゆる仮名、ニックネーム、匿名、偽名、その他呼称を指す。これらの識別名がテキサス州の性犯罪者名簿に記録されている。
 この識別名は一般への公開は行っていないが、犯罪司法官や承認されたSNSサイトの管理者も閲覧することが可能である。サイト側は、オンライン識別名と同様に法令により定められている公共情報を公安局に要求することが可能であるが、同法令では、性犯罪歴を持つ者を特定する目的のみでこの情報が使えるようになっている。


ネット犯罪に関して129
 テキサス州司法省では2003年より、ネット犯罪部 (Cyber Crimes Unit)を設立し、インターネットのチャット・ルームやSNSにおいて、おとり捜査を行っている。
 同部は、一般市民、民間団体、ICACタスク・フォース、全米失踪・被搾取子どもセンター、連邦捜査局のヒューストン地域ネット犯罪タスク・フォース(the Houston Area Cyber Crime Task Force)などと協力して、インターネット上での児童虐待の発見と防止に取り組んでいる。


 また同州では、テキサス州ファミリー保護局(Texas Department of Family and Protective Services、DFPS)」の共同捜査ガイドライン(Joint Investigations Guidelines)において、ネット犯罪に関する各教育機関の対応を定めている。
 それによると、児童ポルノは、テキサス州刑法43.26条(Texas Penal Code, Section 43.26)で定義されており、児童ポルノやその他のネット犯罪は、通常、犯罪が発覚してから捜査をするが、(みこみ)捜査を実施している段階で犯罪が発覚する場合もあるという130
 同ガイドラインは、教育機関の集まりであるThe multidisciplinary team(MDT)のメンバーが共同捜査に関与する場合もあることから、そのメンバーに対しては、日頃より児童ポルノやインターネット上の犯罪の発見・追及に対応するよう求めている。このガイドラインに各分野の役割分担に沿って、各専門家がそれぞれ児童虐待や児童ポルノなどの防止活動に取り組んでいる。



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