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アメリカ・ドイツにおける青少年のインターネット環境整備状況等調査報告書

第II部 調査の結果

第1章 アメリカにおける調査

1.4 青少年のインターネット利用環境に関する民間機関の取組154

1.4.1 青少年のリテラシー能力向上のための活動

 米国司法省や連邦捜査局のサイトでは、非営利団体や民間機関のインターネットの安全な利用に関する取組を参照リンクとして数多く紹介している。
 インターネットの利用環境の改善には、多くの民間機関が関係しており、ここではその一部を紹介する。なお、第1章1-3-3で述べているEIEの「Internet Safety101」もその1つである。


Enough is Enough (EIE)
 Internet Safety101中でEnough is Enough (EIE) は、インターネット上における児童ポルノや児童虐待などへの取組の最良の方法は、まず、社会や法的機関が互いに責任を持って行動することであるとして、特に以下の3点が重要であるとしている。
 第一は、青少年が危険な目にあわないように、保護者が自分達の子どもを守る必要がある。それには、保護者が子どもを保護できるように援助し、インターネットに関する教育・啓発を行い、ひいては、青少年自身がインターネットを正しく利用するために必要な知識を得られるよう、教育することが必要である。
 第二は、インターネット産業が法に従い、保護者が利用できる青少年保護のツールをさらに開発する必要がある。昨今では、AOL、MySpace、Google、 AT&Tや Verizon等の大手企業が、率先してインターネットに関連したツールを提供しており、EIEとも提携を取っている。
 第三は、法曹界(Legal Community)が、公共政策の抜け穴を見直し新たな公共政策の提言を行う必要がある。というのも、実際に議会において法案が通過しても、反対グループなどの抵抗に合い、実際の法律として施行されないケースが多い。もちろん、多くの児童ポルノや虐待者の取り締まりは行われているが、資金が十分に得られていないために、青少年をターゲットとした犯罪の撲滅までには至っておらず、既存の法律や規則についても、警察機関の取り締まりを強化するなどの処置が必要である155


ConnectSafely156
 ConnectSafelyは保護者、10代の青少年、教育者、擁護者等、ウェブに関心のある市民全てに対して、インターネットに関する教育普及活動を行っている団体である。
 青少年の生活の一部として、今や、ユーザー参加型サイトや、マルチ・プラットフォーム型や、PCやモバイルでのSNSなど、インターネット上にコミュニティサイトが氾濫している状況で、ユーザーがウェブ2.0を安全に共有できるように、情報提供が行われている。
 同サイトのフォーラムでは、10代の青少年と保護者が、青少年の安全なインターネットの利用について議論することで、お互いの理解促進を図っている。ConnectSafelyでは、10代の青少年と保護者に対して、あらゆる種類のSNSに対応した助言や、最新のテクノロジー・ニュース、その他のリソースを提供し一般市民のリテラシー向上に努めている。
 姉妹サイトにセイフ・キッズ(SafeKids.com)、セイフ・ティーンズ(SafeTeens.com)、「ネット・ファミリー・ニュース(NetFamilyNews.org)などがあり、子ども向け、10代の青少年向け、家族向けに分けて、メディア・リテラシーの向上を目指した情報提供を行っている。


SafeKids.com157
 ConnectSafelyの姉妹サイトSafeKids.comは、インターネットの安全な利用のための活動を行うサイトでの中でも、最も古く最も長く続いているサイトの一つである。創設者ラリー・マジッド氏(Larry Magid)は、「情報ハイウェイにおける子どもの安全 (Child Safety on the Information Highway)1994」の作者であり、技術ジャーナリストとして子どもの安全に関連した記事を紹介している。


I-Safe America158
 I-Safe Americaは、Internet Safety財団の活動の一環で、青少年が責任を持って安全にインターネットを体験ができるように、啓発活動を行っている。
 チャットのホストや、ルームの監視者、HTMLのコーダー、プログラマー、ライター、エディター、ユーザーなどが関わり、インターネットの安全な利用が一般に浸透するよう、あらゆる情報を提供している。


Net Safety-The NetSmartz Workshop159
 保護者と教育者のために5〜13歳用のインタラクティブなレッスン計画を提供している。


Net Literacy160
 Net Literacyは学生が管理する非営利団体で、地域の福祉プログラムを通じて青少年の慈善活動を促進する活動を行っているが、そこでは公立の学校にコンピューター・ルームを創設し、それによって青少年のコンピューター・アクセスを増加させ、また、コンピューターとインターネットの技能を教える活動も行っている。Net Literacyは、このような活動により、インターネットに関するリテラシーを普及させている。
 同団体は、ある中学校生徒が図書館で高齢者や小学生等にコンピューターとインターネット技能を教えるボランティア活動をしたことをきっかけに設立された非営利団体(501(c)(3)組織)である。
 ことの始まりは、設立者の中学生がボランティアで教えていたワークショップに参加していた高齢者が、「自分達以外にも同様の教育を希望する高齢者は他にも多くいるが、身動きができずに参加できない」といった現状を訴え、そういった声を受けその中学生が地元組織や政府機関の協力を得て、高齢者施設などに公立のコンピューター・ルームを設置し、自分から行動することが困難な子どもや高齢者などに対してコンピューターとインターネットの技能を教える活動を行うようになった。
 特に青少年に対してのみの活動ではないが、米国での非営利団体の設立の背景として、顕著な例である。


マイクロソフト社161によるStay Safe Online162
 企業の取組163としては、大手のインターネット関連企業が、コミュニティーへの啓発活動を行っている。例えば、マイクロソフト社は、安全なインターネットの利用やセキュリティーに関する活動を行っている。
 マイクロソフト社は、Boys and Girls of Americaという取組の一環として、Stay Safe Onlineというウェブサイトを運営している。同サイト内では、子どもがインターネットの利用に関して正しい選択ができるよう、チャット・ルームやメールの利用などに関して、分かりやすく説明している。
 同サイトではNational Cyber Security Alliance(以下、NCSA)が後援し、インターネットを安全に利用する上で必要な情報や、そういった安全情報に関しての自覚テスト、また、教育用教材などを提供している。


AOL164
 大手インターネット・プロバイダのAOLは、創業時より、インターネットを安全に利用する上で必要な情報を提供してきた。
 AOLはSafetyClicksというブログを運営し、インターネットを安全に利用する上で必要な情報の取得を補助するために、保護者、10代の青少年、子どもに対して必要なツールを提供している。
 同ブログでは、インターネットを安全に利用する上で必要な情報に関することから、SNS、ネットいじめ、セックスティング165、インターネット上での情報共有など、さまざまな話題を網羅している。同時に、AOLはコンピューターのセキュリティー教育の教材とツールを提供する「AOL Internet Security Center」を運営しており、インターネットの安全な利用の促進に取り組んでいる。


AT&T166
 テキサス州ダラス市に本部がある大手電気通信会社のAT&T社の「Stay Connected, Stay Safe site」では、有線・無線電信サービスの安全な利用に関する助言と対話式のゲームを提供している167
 また、同社ではWireless Smartという部署を設立して、保護者が子どもの通話を管理ができるようにプログラム情報を提供している。例えば、a parents'guide to textingは保護者向けのテキスト・メッセージに関するガイドであるが、このようなプログラムはPDFファイルでダウンロードができるようになっている。


GetNetWise.org168
 このサイトでは、フィルタリング・ツールに関するデータベースや、子ども用のブラウザー、コンピューターの使用時間に制限をかけるツール、スパム・フィルタリング・ツールなどを家庭に提供している。また、MySpaceとFaceBookのプライバシー設定の使用に関して、便利なビデオ・チュートリアルがある。


カリフォルニア州内の組織団体
Foundation for California Community Colleges169
 同財団は、インターネットが十分浸透していない地域におけるデジタル・リテラシーとインターネット利用の向上を目指し、「California Connects」というプログラムを立ち上げている。
 同州内でも特にインターネットが十分浸透されていない地域でのデジタル・リテラシーとブロードバンド・インターネット・アクセスを増やす目的で、同プログラムは、米国商務省の電気通信情報局のブロードバンド技術機会プログラム(Broadband Technology Opportunities Program、BTOP)から、1,090万ドルの助成金を受けている。このプログラムは3年の計画で、プログラムの中心となる地域に対して、奉仕活動やトレーニング、教育面での支援などを行い、カリフォルニア州の6万1,000人以上が新にインターネットへアクセスができることを目標に、ブロードバンドの提供やコミュニティー・カレッジへのラップトップの提供等を行っている。


カリフォルニア州コミュニティー・テクノロジー・ポリシー・グループ170
 カリフォルニア州コミュニティー・テクノロジー・ポリシー・グループ (The California Community Technology Policy Group。以下、CCTPG)は、様々な地域密着型団体のネットワークであり、コミュニティーの先進技術へのアクセス向上を目的として、公共政策を提案している。
 特に低所得者のメディア・リテラシーの向上を目指し、21世紀のツールとして欠かせないコンピューター、インターネット、ブロードバンドなど、デジタル社会の革新技術の恩恵をカリフォルニア州民全てが得られるよう努めている。このプロジェクトは、公共部門と民間部門が共同で取り組んでおり、学生が放課後に受けられる講習プログラム、コミュニティーの技術プログラム、その他の技術リソースなどを地域コミュニティーが州民向けに提供できるよう指導している。


California Advocacy Program
 非営利団体のThe Children's Partnership171が恵まれない地域の青少年とその家族へ技術提供を行うプログラムで、上述のCCTPGの200に参加し、州レベルでの政策提言も行っている。


テキサス州内の組織団体
オースティン市の児童保護施設172
 オースティン市の児童保護施設(Austin Children's Shelter)という団体では、虐待を受けたり放置されたりした子どもに対して、実の親に代わり一時的に代役を果たしている。
 同団体が実施している「Building Tomorrows Program」のプログラムは、デジタル・リテラシーの向上のために、保護施設へコンピューターを提供したり、インターネットの学術面における子どもへのサポート、また、家庭教師の提供などを行っている。このプログラムには、第1章1-3-3で述べた「オースティン市助成金テクノロジー機会プログラム」や地元の「デル財団173(The Dell Foundation)」なども協賛しており、その活動を支持している。
 また、このプログラムの1つとして実施している「Technology Learning Lab」では、3〜17歳の保護施設の子どもに、読書や数学、科学などの学習分野においてテクノロジー・ツールと教育を提供し、メディア・リテラシーの教育・啓発を行っている。


「Girlstart」、「リバー市青少年財団」
 また、デル財団自身は、保護施設への援助以外にも、オースティン市の他の青少年の教育活動を行っている各団体へも助成金「Connected Communities Grants」を提供するなどの活動支援を行っている174
 デル財団は、2年間で5万ドルの助成金を提供している。助成金を受けている非営利団体には、キャンプで実践的なテクノロジーの体験学習を行うプログラム「Girlstart」や、放課後や夏期講習会などを通じて、青少年のコンピューター・リテラシーの向上を行っている「リバー市青少年財団(River City Youth Foundation)」などが有り、この2つの団体は、共に「オースティン市助成金テクノロジー機会プログラム」からも助成金を受けている。



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