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第2章 ドイツにおける調査

2.1 青少年のインターネット利用環境に関する実態

2.1.1 青少年の閲覧が望ましくないとされている情報(有害情報)及び違法とされている情報(違法情報)の現状

 本章では、ドイツ法の一般的用法に従い、「児童」を14歳未満、「青少年」を14歳以上18歳未満とし、「未成年者」は児童と青少年の両方を指すものとする(特に指定がなければこれには男子、女子ともに含まれる)。「子ども」は未成年者と同義であり、主には親との関連で使用する。ただし、意味としては未成年者全体を指すが、ドイツ語による正式名称が「青少年」という用語を用いている場合(青少年保護、青少年に有害なメディアなど)は、「青少年」と訳出した。また、未成年者に係るポルノグラフィーは日本語の用法に従い、児童ポルノとした。
 この節ではドイツで青少年メディア保護に携わっている様々な機関の提供する統計データを中心とし、ドイツにおける有害・違法情報の現状を概観する。まずは連邦レベルの機関である青少年有害メディア審査会の統計データ、ついで州の中央機関である青少年保護ネット、自主規制機関であるFSMの統計を紹介する。なお、ここでも各機関、法令等について簡単に触れてはいるが、より詳細な説明については「2.3 青少年のインターネット利用環境に関する制度、法及び政策とその背景」を参照のこと。


青少年有害メディア審査会
 ドイツでは青少年保護法212によって、未成年者にとって「有害なメディア」と「著しく有害なメディア」が定められており、これらは「青少年有害メディアリスト(Liste der jugendgefährdenden Medien)」へ記載されることとされている213
 まず、「有害なメディア」については、青少年保護法18条1項が、連邦青少年有害メディア審査会が定める青少年有害メディアリストに記載する内容として、「未成年者の発展、自己責任を持ち社会性を持った個人となるための教育を害する不道徳で荒んだテレメディア及び携帯メディア」と定めている。その内訳は「1.暴力的な描写、特に殺人や傷害がそれ自体を目的として詳細に描写されているもの、2.擬似的な公正の確立のため唯一の手段として描かれる自力制裁214」である。これらは青少年有害メディアリストへの記載を経て、未成年者への提供が禁止される。次に、「著しく有害なメディア」は青少年保護法15条2項に定められており、例えば刑法典の条項に違反するもの、戦争を賛美するもの、暴力的な行為の不適切な描写、児童ポルノなどである。「著しく有害なメディア」は審査会の決定からリストへの記載の過程を経なくとも、青少年への提供が禁止されている。「有害なメディア」及び「著しく有害なメディア」が記載される青少年有害メディアリストの対象媒体は多岐にわたり、映画、音楽、CD、DVD、ゲームなども記載対象となる。
 連邦青少年有害メディア審査会(Bundesprüfstelle für jugendgefä hrdende Medien:BPjM)は「青少年有害メディアリスト(Liste der jugendgefä hrdenden Medien)」を管理する権限を有しており215216、様々な機関から申請(Antrag)・提案(Anregung)のあったメディアの違法性を審査し、違法であると判断すれば青少年有害メディアリストに記載し、また申請に応じてリストに記載されたメディアの削除などを決定する。申請と提案の違いは、それを行う機関の違いであり217 、提案はリスト掲載の提案のみであるのに対して、申請には削除の要請、リストへの記載の確認も含まれる。BPjMの2009年度版218の統計を見ると、リストに関する申請件数は総数416件あり、うち連邦家族・高齢者・女性・青少年省(Bundesministerium für Familie, Senioren, Frauen und Jugend: BMFSFJ 以下、連邦家族省)の申請は78件で、そのうちオンラインサービスに関するものが31件であった。州の中央機関である青少年メディア保護委員会(Kommission für Jugendmedienschutz:KJM。活動の詳細についてはウ(21ページ)参照)の申請は140件で、全てオンラインサービスに関するものである。申請数の多かったその他機関は、バーデン・ヴュルテンベルグ州ハイデルベルグ青少年福祉事務所(Kreisjugendamt)の82件で、すべてオンラインサービスに関するものであった。総計では315件がオンラインサービスに関する申請であった。



図表 23 申請機関別通報数の内訳
申請機関別通報数の内訳
出所:BPjM(2009)を基に作成

 他方、同リスト掲載の提案件数は462件あるが、そのうち、連邦憲法擁護庁が19件(うちオンラインサービス2件)、連邦刑事局は15件(うち14件がオンラインサービス)、連邦青少年保護ワーキンググループが2件(詳細は後述参照。オンラインサービスは無し)、各州の担当機関が426件(うち5件がオンラインサービス)であった(図表24)。全体としてオンラインサービスに関する提案は21件であった。総計で338件のオンラインサービスが提案、または申請を受け、このうち248件がリストに掲載された。その他、連邦青少年有害メディア審査会が自己の職権により審査したのが439件あった(うちオンラインサービス2件)。



図表 24 提案機関別通報数の内訳
提案機関別通報数の内訳
出所:BPjM(2009)を基に作成

青少年保護ネット
 連邦青少年有害メディア審査会は連邦レベルで多岐にわたる青少年に有害なメディアを管轄している。ウェブサイトについては諸州政府が管轄権を持っている。1997年に青少年保護上問題のあるテレメディアを審査する機関として諸州政府によって設立された青少年保護ネット(Jugendschutz.net219が、州中央機関である青少年メディア保護委員会を補佐し、主に、様々なウェブサイトの青少年への有害性を判断し、有害と判断されたウェブサイトの削除・変更などについて各コンテンツ提供者への要請や実施などをしている。
 青少年保護ネット220の報告「Jugendschutz im Internet -Ergebnisse der Recherchen und Kontrollen Jahresbericht 2006」によると、青少年保護ネットが2006年に5,427件のウェブサイトの有害性を審査した。そのうち4,013件が新規に審査したものであり、残りの1,414件は前年から引き続き審査を行っていたものである。未成年者にチャットサービスを提供しているもののうち、最も人気の高い50のサービスについては継続的な監視が行われている。
 2006年に青少年保護ネットが有害と判断したウェブサイトは2,625件であった221。これは2005年に比べて35%の増加である。このうちドイツ国内から配信されていると確認できたコンテンツは1,235件で、2005年の874件から増加している。この増加原因を青少年保護ネットは二つあると考えており、一つは児童ポルノグラフィーを含むURLについて通報する人数が増えたこと、もう一つは青少年保護ネットの監視能力が向上したことである。2006年に違法と判断したサイトのうち、3分の2については、インターネット・プロバイダが同意し、インターネットネット上から削除することができた。プロバイダの同意が得られない場合は、上位機関である青少年メディア保護委員会に送られ、同委員会によるウェブサイトコンテンツの審査手続きに入る。青少年メディア保護委員会は、青少年メディア保護州際協定に従い有害かどうかを審査する222。2006年に、プロバイダの同意が得られず、青少年メディア保護委員会223による審査手続きに入ったものは140件であった。また、外国から提供された違法なウェブサイトは1,390件であり、2005年より29%増加している。連邦刑事局が介入して削除した国内サイトは341件にのぼる。
 2006年に青少年保護ネットが違法と判断したドイツ国内のウェブサイト(1,235件)の内訳をみると、3分の2がポルノグラフィーであり、極右的なプロパガンダが占める割合は13%に減少したものの、絶対数(166件)としては2005年件より増加している。その他に、未成年者に性を強調する不自然なポーズを強要する内容は2005年度の13%から4%に減少した。
 他方、2006年に青少年保護法違反の疑いで通報されたウェブサイトの件数は5,500件にのぼり、前年の3,500件から大きく数字を伸ばしている。青少年保護ネットはその理由を公衆の感度、通報システムの認知度の向上であると分析している。また、青少年保護ネットは、学校や青少年局、州または連邦の所管の省庁、産業・メディア代表機関等から2,000件の照会を受け調査を行っている。これら照会の内容は主に、青少年保護の技術的な手法や、法的な規制についてなどである。
 なお、青少年保護ネットでは、青少年に有益と思われる1,400件のウェブサイトを審査し、その中でも特に優れている130件のサイトをKlick−Tipps224として選定した。


 他方、同報告の2009年版225「Jugendschutz im Internet -Ergebnisse der Recherchen und Kontrollen Jahresbericht 2009」では、違法と判断されたサイトの内訳をみると、依然としてポルノグラフィー(成人のポルノグラフィー)が高く、その割合は全体の42%と報告している。加えて、拒食症を賛美するウェブサイトが大幅に増えており、全体の22%を占めている。また、児童ポルノを公開するサイトは3%から9%へと増加している。国外から提供されている違法ウェブサイトのうち、その半分以上がアメリカ合衆国からの発信であり、うち42%がポルノグラフィーで、24%が極右的な内容を含むものであった。なお、海外から提供された違法ウェブサイトの17%はオランダからのものであるが、そのうち86%がポルノグラフィーまたは児童を性的な対象とみなすものであった。
 2009年、青少年保護ネットに寄せられた通報数は全体で8,000件であり、また、照会が3,250件あった。2009年に新たに青少年保護ネットによって違法と判断されたウェブサイトは2,407件であり、2008年より20%の減少となった。これは青少年保護がより進んだことを意味するものではなく、より多くの違法サイトがWEB-2.0のサービスやウェブサイトで提供されていることを示している。これら違法サイトのうち75%はプロバイダの同意の上で、削除もしくは内容の変更がなされた。
 青少年保護ネットは200件におよぶ未成年者に人気の高い重要なサービスを継続的に監視しているが、これらは主にサーチエンジン、オンラインコミュニティ、ゲームポータル、児童向けサービスなどである。


■FSM
 ドイツでは青少年保護法18条にのっとり、オンラインコンテンツの有害性の判断を一部、マルチメディア・サービス・プロバイダ自主規制委員会(Freiwillige Selbstkontrolle Multimedia Dinestanbieter e.V. : FSM)に委任している。FSMに加盟する事業者のオンラインコンテンツは上記の連邦青少年有害メディア審査会と青少年保護ネットの審査の対象外となる。2009年の統計によると、FSMとドイツインターネット経済連盟(Verband der deutschen Internetwirtschaft e.V.: eco)が共同で運営するオンラインホットライン(www.internet-beschwerdestelle.de)226に寄せられた通報数は、2008年では1,835件で、2009年では2,180件であった。その内訳は以下の図表25のとおりである227
 なお、未成年者による性的な表現とは、ポルノグラフィーには当たらないが、未成年者に性を強調するような姿勢をとらせた状態を指す。ポルノグラフィー全般とは成年によるポルノグラフィーを指し、未成年者への提供のみが禁止されているものである。また、児童ポルノは製造、成年への提供も禁止されている。



図表 25 ホットラインに寄せられた通報の内訳
ホットラインに寄せられた通報の内訳
出所:FSM(2009年)を基に作成

 また、通報に対するFSMの対処に関しては以下の図表のとおりである。



図表 26 寄せられた通報に対するFSMの処置
寄せられた通報に対するFSMの処置
出所:FSM(2009年)を基に作成


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