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2.3.1.3 連邦青少年有害メディア審査会と青少年メディア保護委員会の関係

 2003年より、原則として連邦政府はオフラインコンテンツ(携帯メディア)を、州はオンラインコンテンツ(放送とテレメディア)を規制するとの合意が成立し、携帯メディアは青少年保護法によって、放送とテレメディアは青少年メディア保護州際協定によって規制されることになった(州際協定1条、2条1項)。州の所管であるテレメディアの有害指定に関しては、青少年メディア保護委員会によって行われることになった。一方で、連邦青少年有害メディア審査会はその権限を拡大し、携帯メディアとともにテレサービスとメディアサービスの全てを青少年有害メディアリストに記載する権限を有している。
 ゲーム、CD、DVD、インターネット上のコンテンツなどを含む青少年有害メディアリストの全国的な管轄権は連邦青少年有害メディア審査会が持っており、青少年有害メディアリストへの記載を通して同審査会はこれら有害メディアを規制している。CD、DVDなどの携帯メディアは連邦政府所管であるので問題はないが、テレメディアは州の管轄であるため、テレメディア(ウェブサイトなど)の有害性の審査は通常、青少年メディア保護委員会とその補佐機関である青少年保護ネットが行っている。その為、連邦青少年有害メディア審査会が、あるテレメディアを青少年有害メディアリストへ記載する際には、青少年メディア保護委員会の意見を聞く義務を負っている。同委員会が違法ではないと判断すればリストへの記載は許可されない。また、青少年メディア保護委員会は連邦青少年有害メディア審査会に、テレメディアのコンテンツの青少年有害メディアリストへの記載を提案することができることになっている。
 このように、インターネットを中心としたテレメディアの青少年有害メディア規制権限は、州政府の中央機関である青少年メディア保護委員会が持っている。青少年メディア保護委員会は2003年に設置されたために、それ以前からオンライン有害メディアコンテンツを監視していた青少年保護ネットは、同委員会を補佐する立場となった。同委員会は放送とオンラインコンテンツに関して違法性の判断を行っているが、実質的には同委員会は青少年メディア保護州際協定に従った判断基準を提供する立場であり、多くは自主規制機関が規制を行っている。連邦レベルでは連邦青少年有害メディア審査会があり、携帯メディアも含む青少年有害メディアリストを管理しているが、テレメディアの違法性に関しては青少年メディア保護委員会が行い、同審査会による有害メディアリストへの記載も委員会の判断が尊重される。


図表 30 法改正に係る主要事項年表
月日主な内容
1996年 電話ホットライン「Nummer gegen Kummer」の設置
1997年 マルチメディア法制
青少年保護ネット設立
FSM設立
1998年 MPFSがバーデン・ヴュルテンベルク州によって設立される
1999年6月18日連邦政府が「インターネットの技術発展に青少年保護法制は追いついてない」とする報告書を提出
2001年 連邦政府と諸州政府が青少年保護について協議を開始
2002年3月8日州首相会議において新青少年保護法についての同意を発表
4月ギムナジウムにおける未成年者での銃乱射事件
5月13日与党会派が青少年保護法案を連邦議会に提出
6月14日青少年保護法が連邦議会で可決
2003年4月1日青少年保護法と青少年メディア保護州際協定が施行
青少年メディア保護委員会設立
12月27日青少年法第1回改正
2004年11月連邦家族省がパンフレット「Ein Netz für Kinder」を発行
2005年 インターネットの規制をFSMをに委任
2006年11月28、29日連邦家族省が専門家会議を開催
2007年7月Deutschland Sicher im Netz設立
11月FSMがFragFinnを設置
2008年6月4日青少年法第6回改正
10月31日青少年保護法第7回改正置
2009年5月5日CDU/CSUとSPDの連立政権が児童ポルノアクセス防止法案を提出
6月18日児童ポルノアクセス防止法可決
10月日CDU/CSUとFDPの連立政権が児童ポルノアクセス防止法に関して、遮断から削除へと方針転換
2010年2月17日児童ポルノアクセス防止法施行
ただし、ブロッキングの義務化は見送られる
出所:各種資料を基に作成

児童ポルノアクセス防止法
〔法制度の概要〕

 インターネット上の青少年保護規制を強化するため、ドイツキリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟(CDU/CSU)とドイツ社会民主党SPDの連立政権(当時)は2009年5月5日に、共同で新法案を提出した311。「児童ポルノサイトへのアクセスの防止に関する法律(以下、児童ポルノアクセス防止法)」と名づけられたこの法案は、テレメディア法、テレコミュニケーション法の改正とともにブロッキング義務化のための法律の制定を目的としたものであり、ドイツ国内または海外から提供される児童ポルノを含むコンテンツに対するアクセスを防止することであった。ここでは、特にアクセス・プロバイダに対して、連邦刑事局が管理するリスト(非公開)に基づき、オンライン上の児童ポルノを含むコンテンツへのアクセスを技術的に防止することを義務付けること(ブロッキングの義務化)が大きな目標として掲げられていた。この法案が提出された当初は、これより先にvon der Leyen連邦家族相(当時)と大手プロバイダ5社が結んだ自主的なブロッキングも法施行とともに実施される予定であった312
 しかしながら、ブロッキング義務化を念頭に入れた法制化は多数の反対を受けた。特に連邦刑事局が管理することになる非公開の遮断リストの存在には異論が多かった。先述のとおり、法案反対の署名には134,015人が署名しており313、ドイツの有力な雑誌Spiegelとのインタビューの中(2009年5月26日掲載)でvon der Leyen連邦家族相(当時)は、この結果を真摯に受け止めるとコメントした314。同氏は、児童ポルノ規制には3つの道があり、それは「犯罪者を見つけ出すこと、情報源を閉鎖すること、そしてアクセスを遮断することである」と述べている。はじめの2つについてはすでに既存の法律によって規制されており、今回の法改正はこの3つ目をターゲットにしたものである、と述べている。ただし、連邦刑事局の非公開のリストについては透明性を高める必要があり、今後は外部有識者による専門家委員会などを通じて透明性の確保に努めるとしていた。
 上述のように反対意見が多い中、2009年6月18日に、連邦議会は同法案を可決した。これにより「児童ポルノアクセス防止法(Zugangserschwerungsgesetz:ZugErschwG)」」が2010年2月23日より施行されることとなった315。しかし、2009年10月に新たに誕生したCDU/CSUと自由民主党(FDP)との連立政権は、連立協定の中で、児童ポルノを含むテレメディアへのアクセスの遮断に代えて、コンテンツを削除する方針に同意し、ブロッキングは少なくとも1年間凍結することで同意した316。また混乱を受けてHorst Köhler連邦大統領はこの法律に署名するには追加の情報が必要であるとし、当初署名を拒否した317。さらには連立政権下でCDU/CSUとともに法案を作成したSPDが意見を翻し、2009年12月にこの法案に反対する旨を公表した。SPDは「反対意見を吟味した上で、von der Leyen連邦家族相(当時)の法案は「大衆迎合的」で、連邦刑事局がプロバイダにブロッキングを義務付けることは法律違反であるという意見に至った」と述べた318
 こうした紆余曲折を経て、2010年2月17日にHorst Köhler大統領は最終的に法律に署名し319、児童ポルノアクセス防止法は施行されるに至ったが、以下のとおりブロッキングの義務化は実質的には見送られることとなった。


〔法制度の評価〕

 同法の内容を見ると、刑法184b条に違反し、児童ポルノコンテンツを含んでいるドメイン名、IPアドレス、URLのリスト(以下、遮断リスト)を連邦刑事局が管理することが柱となっている(第1条)。児童ポルノを含むテレメディアの情報が、適切な方法で適切な期間内に削除されない場合には、遮断リストに掲載されることとなる。また、顧客が1万件以上のアクセス・プロバイダは、遮断リストに記載された児童ポルノへの接続を妨害する技術的措置を導入することが義務付けられる(第8条)。また、アクセス・プロバイダは、遮断リストに登録されたサイトへの毎時間のアクセス回数を、匿名で毎週連邦刑事局に報告することを義務付ける(第6条)、遮断リスト及び第 6 条に基づく報告の形式、及び手続に関する技術的指針については、連邦刑事局とプロバイダとの協議の上で決定される(第10条)。なお、違反者には最大で50,000ユーロの罰金が科せられる(第13条)。この法の制定に合わせてテレコミュニケーション法も改正された320


 しかし、内務省指令により、連邦刑事局が作成する遮断リストに掲載されたウェブサイトのブロッキング義務化の実施は見送られ、児童ポルノサイトの削除に注力することになった321。これにより、連邦刑事局は、法の決定に従い遮断リストを作成するが企業への配布は行わないこととなった。したがって、アクセス・プロバイダはこのリストによるURLの遮断を実施する必要はなくなった。法が施行され、遮断リストも完全に廃止されたわけではないが、現状ブロッキングは機能していない322。また、この決定に応じてvon der Leyenと大手5大プロバイダによる自主的なブロッキングの実施も見送られた。なお、キリスト教民主同盟のThomas Strobl氏は、この法律による規制に殺人ゲームを加えることを主張している323





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