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2.3.8 児童買春等の青少年を性的行為に誘引する行為に対する取組

 青少年保護法に違反した者には、1年以下の自由刑または罰金刑が課せられる(青少年保護法27条)。罰金の最高額は50,000ユーロとなっている。
 刑法典も青少年保護を目的として改正されている。例えば、2003年12月27日に刑法典が改正され、児童ポルノの定義が拡大されることとなった376。刑法131条はそれまで「人」に対する暴力のみが言及されていたが、「人に類するもの」に定義が拡大され、アニメやCGも含まれることになった。また刑法184条も整理され、一般ポルノが184条、暴力ポルノ、動物との性行為が184a条、児童ポルノを184b条として個別に定めることとなった。なお児童ポルノについては、現実の出来事または現実に近い出来事を表現するものの単純所持も禁止されている(184b条4項2文)。さらには、刑罰の内容も強化され、児童に対する性的暴力や保護義務のある者に対する性的暴力に関しては、罰金刑が廃止され全て自由刑となった(刑法176条、176a条、179条5項、174条、174a条、174b条、174c条) 。
 また、2005年2月11日の刑法典の第37回改正によって、人身売買に関する刑罰規定が変更された。これにより性的搾取を目的とした人身売買(刑法232条)と、労働搾取を目的とした人身売買(刑法233条)が加えられた。また人身売買の斡旋(刑法233a条)も刑罰の対象となった377
 他方、2008年には、EU児童の性的搾取と児童ポルノに対抗する枠組み決定に合わせる形で、刑法典も改正され、少年ポルノが新たに制作・所持禁止の対象となった(刑法184c条)。ドイツではこれまで184b条に規定する児童ポルノの対象が14歳未満であったが、欧州基準に合わせて未成年者(18歳未満)に拡大されることになり、その解決のために14歳以上18歳未満の青少年が描かれるポルノグラフィーを「少年ポルノ」と名づけて付け加えたものである。ドイツでは、14歳未満の児童に対しての性的行為の意図、及びその実行は刑法176及び176a条に抵触する。また刑法182条1項は、18歳以上の成人による18歳未満の青少年に対しての同様の行為が刑罰の対象となる。2008年10月30日よりドイツでは、16〜17歳を対象とした買春は、例え青少年の自由意思によるものであっても刑罰の対象となった。


 なお、先述のとおり、von der Leyen連邦家族相(当時)は、児童ポルノに対して明確な措置をとるために、ブロッキングを実施することを明らかにしていた378。2009年4月17日、Ursula von der Leyen連邦家族相はプロバイダの代表者と共同声明にサインし379、連邦家族省とインターネット・プロバイダが共に児童ポルノ撲滅のために協力し、児童ポルノを含んだサイトのブロッキングを実施する協定に同意した。この協定には五つのドイツ大手プロバイダードイツテレコム、Vodafoneドイツ、Arcor、Alice、Kabelドイツ、O2380と連邦刑事局が署名した。von der Leyen連邦家族相は、これをWolfgang Schäuble連邦内務相、zu Guttenberg連邦経済相(いずれも当時)と協力して成し遂げたと言われている。この協定の中身は、協定署名後遅くとも6ヶ月後には児童ポルノを含むURLへのアクセスが遮断され、遮断されたURLにアクセスを試みると停止標識が表示されることになっていた。遮断されるURLのリストは関係者間で共有され、連邦刑事局が管理の責任をもつ。また、プロバイダはブロッキングに関してのみ責任を有し、提供される内容には関与しない、というものであった。
 連邦内閣は同時にインターネット上の児童ポルノ対抗措置に関して基本案(通称児童ポルノアクセス防止法)をまとめた。これにより、すべてのサービス・プロバイダは、児童ポルノを提供するサービス全てに対してブロッキングを行う義務を負うことになっていた。また遮断対象となるURLのリストは連邦刑事局が管理し、欧州基準との一致を図ることとなった。
 同基本案では、ドイツ国内のプロバイダは(欧州基準に合わせて)、1)自己の提供するウェブサイトに違法な内容が含まれているかどうかを検査する義務は負わなくなる、また、2)法的基準を満たす限り損害賠償請求の対象とはならない、3)予防的な理由から利用者は、なぜ目的のURLへのアクセスを拒否されたのかを知る権利がある(遮断されたURLにアクセスした際には、交通標識の停止標識が表示され、同時になぜこのURLが遮断されているのかの説明が与えられる)などの他に、有害サイトの通報機関を政府が設置すること、などが取り決められた。2009年10月から共同声明参加企業による自主的なブロッキングが開始される予定であったが381、この共同声明の実施を目前にして、児童ポルノアクセス防止法によるブロッキングの導入(遮断リストの導入)が見送られたことにより、こちらも実施が延期された。
 これは国民の反対が多かったことに加え、ブロッキングという手法そのものの実効性に疑問が残るものだったからである。連邦政府内には有害サイトの遮断ではなく削除を求める声も多く、CDU/CSUとFDPの新連立内閣も、削除を推進する方向で同意した382。これは、あるURLへのアクセスを遮断しても、そのアドレス以外でもオンライン上に同様のコンテンツを掲載することが可能であり、コンテンツそのものを削除する方が効果的である、遮断リストの導入はオーバーブロッキングの原因となりうる、などの理由による383





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