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イギリス・韓国における青少年のインターネット環境整備状況等調査

第II部 調査の結果

第1章 イギリスにおける青少年のインターネット環境整備状況等

(2)青少年の閲覧が望ましくないとされている情報(有害情報)及び青少年の閲覧が違法とされている情報(違法情報)の現状

表1-1-2 違法、不適切/有害の区分け

違法 (illegal)

不適切 (inappropriate)/有害 (harmful)

児童ポルノ(child pornography)
過激ポルノ(extreme pornography)
テロリズム(terrorism)
差別(人種、宗教、性、政治的)
   (discrimination on race, religion, sex, politics)
ハッキング(hacking)
ウィルス送信(virus/malware)
ID(個人情報)窃盗 (identity theft)
オンライン・ショッピング詐欺(online fraud, phishing)

暴力(violence)
摂食障害(anorexia, eating disorder)
自殺関連(suicide, cult)
ネットいじめ(cyber bullying)
集団行動のプレッシャー(peer pressure)
賭け事 (gamble)
青少年を対象にしたセールス(sales targeting children)
薬物使用(drug use)
銃使用(gun use)

(出典:UK Cybercrime Report11 とOfcom's Submission to Byron Review12を参考に作成)

犯罪専門学者が作成したオンライン犯罪報告書13をもとに上記のとおり表に分けてみたものの、警察やインターネット監視財団(Internet Watch Foundation:以下「IWF」という。)などの関係者によると、明確な線引きは難しいとされている。実際、IWFによれば、上の項目で不適切又は有害となっているものも、その情報を使用したことによる結果によっては違法とみなされるケースもある。

ア 違法(illegal)

1959年及び1964年わいせつ刊行物法(Obscene Publications Act 1959 and 1964)により、児童ポルノ及び過激なポルノの所有は違法(犯罪)とされる。過激なポルノ画像とは、次のいずれかの定義に該当するものを指す。ただし、人が本物に見えなければならないため、アニメーション、絵などは取締り対象外となる。画像には、静止画、動画のいずれも該当し、データ形式で保存可能なものも含まれる。

・性的興奮を喚起することを唯一、又は主要な目的としているもの
・甚だしく不快、気分を害する、いかがわしいもの
・露骨、リアルであるもの
・人の生命を脅かす行為を描くもの。具体的には絞首、窒息、武器を用いた性的暴行など

イ 不適切(inapproapriate)/有害(harimful)
(ア)暴力行為に関する情報

人間に対する暴力行為のみならず、動物に対する暴力行為も含まれる。

(イ)摂食障害を招く情報

英国心理学協会(The British Psychological Society)の報告によれば、ダイエットに関する極端な情報は拒食症などの摂食障害を招く恐れがある。実際に多くの拒食症患者が、モデルや有名人のイメージにとらわれ、ネットから得た情報を基に急激なダイエットを実施し、結果的に拒食症に陥るケースが多い。こうしたことから、ダイエットに関する極端な情報も不適切又は有害とされている。この中には、本来なら児童や青少年のお手本となるべき芸能人や有名モデルなどによる情報も含まれている。拒食症患者は女性に多く、スリムなモデル(通称「サイズ・ゼロ」)を率先して採用するファッション業界やモデル・エージェンシーが批判されている。有名ブランドで活躍するモデルが仕事を獲得するために無理なダイエットを行い、その結果亡くなったケースもある。このため、わざとふくよかなモデルを採用したブランドや、「サイズ・ゼロ」モデルは採用しないと宣言したブランド等もあったが、最近のファッション・ショーや雑誌を見ても、依然としてスリムなモデルが多くのページを飾っている14

(ウ)自殺や自虐行為のカルト的なもの

日頃悩みを抱えている、家庭内に問題がある、学校で嫌なことがあって落ち込んでいるなど、情緒不安定なときに関連サイトの内容に惑わされる場合が多いことから、自殺や自虐行為を促す情報も不適切又は有害とされている。また、自殺を誘引するような内容があるものに関しては、場合によっては違法とみなされるケースもある。

(エ)集団行動のプレッシャー、ネットいじめ

携帯電話やPCのほか、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(Social Networking Service:以下「SNS」という。)も、これを利用していないと友人や仲間内の情報から置き去りにされる、または、仲間と行動を共にしないと自分自身がいじめの標的になることがあり、例え自分の意思に反する行動を友人がとったとしても、同じように行動するという状況があることから、集団行動のプレッシャーやいじめを誘引する情報は不適切又は有害であるとされている。

(オ)買物依存症及びネット詐欺

青少年のインターネット利用に関して問題となっているものの一つが、インターネットが青少年にオンラインで高額な買物をするきっかけをつくっていることである。未成年はオンライン上で決済をする際に親(保護者)の同意が必要であることがオンライン・ショッピングの利用規定や購入前の画面などに明記してあるものの、年齢を偽る、親(保護者)のクレジットカードを利用するなどして、物品を購入することが可能である。自身のデビットカード(debit card15)を持つ青少年も多く、デビットカードを取得できる年齢も低くなっている。大手銀行の一つであるロイズTSB銀行(Lloyds TSB Bank plc)は、2008年から11歳以上18歳未満を対象にしたVISAデビットカードのサービスを始めている16。そのため、PCやスマートフォンから、いつ、どこにいてもインターネットにアクセスできる状況の下、保護者や店員の同意なしにクリック一つで買物ができるのが現状である。また、本来未成年による購入が不可能(またまたは店が販売すると違法)であるアルコール類、タバコ、刃物などの危険物、ギャンブル、ポルノ一般、過激な内容(暴力を含む)のゲーム等が簡単に購入できるという問題がある。特定の携帯電話会社と契約していれば、オンラインで購入したものを毎月の携帯電話サービス利用料金の請求書に加算するという支払方法17もある。
 オンライン・ショッピングの安全利用を専門とするジョン・カー(John Carr)氏によると、2012年1月の調査段階では、オンライン・ショッピングの際に年齢を確認する堅実なメカニズムが開発されておらず、保護者が子どもの行動を常に見守り、把握することが大切であり、オンラインで物品を購入した際は、配達された商品を保護者が確認する必要があるとしている。これは、青少年による購入が違法である物品を青少年に販売をした販売者側の責任だけではなく、購入者側の管理責任を問う見解である18
 もう一つの問題は、ネット詐欺である。実際には存在しない商品がインターネット上で売られ、購入者が代金を支払ったにもかかわらず何も配達されないという被害が、子ども、大人を問わず多数報告されているほか、実際の支払金額をはるかに超えて請求される事例や、オンライン・ショッピングに使用したカード情報が盗まれる事例もある。
 セキュリティソフト会社のSymantec社による調査結果が示すように、インターネット利用に自信がある青少年ほど、オンライン・ショッピングの被害に遭っている19


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