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(4)青少年のインターネット利用に伴う生活等への影響

ア インターネット中毒:人格形成上の障害

リーズ大学(University of Leeds)の心理学部は、16~51歳の1,319人を対象にインターネット中毒と鬱との関係を調査した56。この調査では、調査対象者のうち1.2%がインターネット中毒にかかっているとされ、インターネットの長時間使用が鬱の症状を引き起こす可能性もあるとされている。ここでは、「インターネット中毒」とは、インターネットにアクセスしていないと不安になるため、ステイタスを常にオンラインにし続ける依存状態に陥ることと定義されている。極度の中毒になると、通常の生活を放棄してしまうケースもある。一般的な症状は、インターネットの長時間利用による睡眠不足、昼夜逆転、視力低下、腰痛などである57。実際の人間との関わりを、ネット上のチャット・ルームに置き換えてしまうなど、使用がエスカレートすればするほど、インターネットへの依存が高じ、結果的に精神状態へ大きな影響が及ぶことが指摘されている。
 インターネットの超過使用が鬱を招くのか、それとも鬱状態がインターネットの超過使用を引き起こすのか、どちらが先なのかという点についてはまだ明らかにされていない。
 2008年、ウェールズで起こった多くの10代の若者たちの自殺事件58は、警察も確固たる証拠は見つけていないものの、ネットによるカルト的な集団自殺だったとされている59。リーズ大学の調査によると、若者の方が、中高年よりもインターネット中毒にかかりやすく、その平均年齢は21歳とされる60
 チャットやSNSからインターネット中毒になるケースの他に、インターネット上のゲームのしすぎで中毒に陥ってしまうケースも多く見られる61

(ア)具体的な症状 62

・インターネットの過剰使用
 時間の感覚をなくし、寝食を忘れ、インターネットの利用を際限なく続ける。
・自閉的傾向
 怒り、緊張、落ち込みを感じる。
・忍耐力の欠如
 更に性能のよいコンピュータが欲しくなる。親とルールを決めている場合にはインターネット使用時間の延長を求める。
・否定
 何に対しても即座に否定する。口論やうそが多くなり、疲労や孤立感が増す。

(イ)対処法:

・明確なルールの設定
 保護者がインターネットの使用時間帯、ウェブサイトの閲覧やダウンロードできるものに関する範囲を決める。
・制御機能ツールの活用
 有害で不適切なサイトをフィルタリング、ブロックできるツールを、保護者が最大限に活用する。ただしツールも完全ではないため、監督は続ける。
・携帯電話の管理
 携帯電話の請求書の送付サイクルを最短の月ごとにするなど、使用頻度、通話相手を常にチェックする。
・コンピュータの設置場所を制限
 コンピュータ、携帯電話、ゲーム機などは子ども部屋や寝室に置かない。又はそれらを夜間は別の場所に移動する。
・問題や不安を抱えたままにしない
 後回しにすればするほど、手遅れになってしまうため、気づいたらすぐに子どもと話し合い、周りに相談するなど、実行に移す。


鬱などの重病とはいかないまでも、日常生活に少なからずの影響を与えるケースもある。イギリスにおいても注目されているオーストラリアの心理学者でもある、メルボルン大学(University of Melbourne)のマイケル・カー・グレッグ(Michael Carr-Gregg)教授の意見によると、イギリスにおいても注目されている。カー・グレッグ教授は、子どもに携帯電話を持たせる発想そのものが「異常である」としている。カー・グレッグ教授の調査63によれば、40%の子どもが睡眠不足で、学校の授業や活動に影響が出ているとしている。6~7歳の子どもでさえ、仲間はずれにされないために、そして情報から取り残されないために、就寝時間を過ぎても寝室で友人とメールのやりとりなどをしているケースが多いからとされる。

イ 身体的影響

インターネットの使用が、癌などの罹患リスクを高めることに直結しているという科学的根拠はない。しかし、2011年3月、国際癌研究所(International Agency for Research on Cancer)は、携帯電話の使用が、特に頭部の癌発生率を高める「何らかの」リスクとなっているとの報告を行っている64。自宅や職場のコンピュータだけでなく、携帯端末からのインターネット利用が増加しているため、身体への影響を考慮することは重要であるとされている。
 英国健康保護庁(Health Protection Agency)によれば、2012年1月時点では携帯電話使用中の運転の事故などを除けば、携帯電話を使用することで身体へ及ぼされる具体的な影響は明らかにされていない65。ただし、携帯電話の使用率が急激に伸びている2012年現在においてもまだ長期間の携帯電話使用を対象とした調査は行われておらず、科学的根拠も含め、これからも監視を続けるとしている。また、携帯電話を長時間利用した際に機体が熱を帯びることがあるが、この熱による脳や身体への悪影響はないと考えられている66
 一方、10代、又はそれ以下の児童に関しては、体の神経器官がまだ発育過程であるため、成長を完全に遂げた大人に比べると携帯電話などによる影響が大きいことが懸念されている。したがって、イギリスの医療関係者は、16歳以下の青少年及び子どもは、必要外の携帯電話使用、また特に長時間の使用を避けるべきだとしている。使用が必然の場合は、ハンズフリーや、メールなどのテキスト機能を活用した方がよいとしている67
 英国政府に対して、携帯電話利用の安全性に関する調査を進めるよう要請したノッティンガム大学(University of Nottingham)の物理学名誉教授、ローレンス・チャリス(Lawrence Challis)氏68によれば、青少年の健康と携帯電話利用の関係についてまだ完全には明確でないがゆえに、注意が必要だとしている。チャリス教授は、少なくとも12歳になるまでは、携帯電話を使わせるべきではなく、12歳を過ぎても、通話よりメールを使うようにするべきだとしている。これは、メールの方が電磁波数値が低いためとしている。教授はまた、同じレベルの紫外線にさらされた場合の、大人と子どもの皮膚がん発生率が異なるように、電磁波や放射線から受ける影響も、子どもの方が大きいと考えるべきだとしている。
 また、スウェーデンのオレブロ大学病院(University Hospital Orebro)のレナート・ハーデル(Lennart Hardell)免疫学教授の調査69では、20歳未満で携帯電話を使い始めた場合、中枢神経を支えるグリア細胞の癌である神経膠腫(グリオーマ)を発症するリスクが5倍になるという結果が出た70。さらに、視聴覚神経を損なう腫瘍の罹患リスクもほぼ同等であると報告された。
 これまでに行われた、携帯電話と腫瘍発生の相関性に関する研究の中で最大規模のものは、デンマークで42万人を対象に行われた調査である71。2012年1月時点では、携帯電話の使用が、腫瘍や白血病の発症に直結するという根拠は見つかっていない。携帯電話の使用が腫瘍発生の原因の一つとなっているのではないかと考えられているのは、脳腫瘍患者が、携帯電話を当てる部分に脳腫瘍が発生する場合が多いとされているからであるが、このことを裏付ける研究結果は出されていない。英国癌研究所(Cancer Research UK:CRUK)はこれからも新しい証拠を突き止めるべく研究を続けていくとしている72 73


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