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(5)インターネット上のウェブサイトを利用して児童買春等の犯罪被害に遭った青少年の数・実態

イギリスにおける児童の性的搾取や売春問題に関しては、保護団体等は存在するものの、これら問題を専門とする機関やケースを記録するシステムが確立しておらず、確実な被害件数や実態を把握することは困難である。また、子どもや青少年が「被害にあった」という自覚を持たずにいることも要因となっている。したがって、ここで述べる数や実態は、実際の被害件数より大幅に少ない可能性がある。


 英国児童性的搾取ワーキンググループ(National Working Group for Sexually Exploited Children and Young People)と児童性的搾取対策オンライン保護センター(Child Exploitation and Online Protection:以下「CEOP」という。)の報告によれば、2008、2009年に被害が報告された件数が5,411件だったのに対し、2009、2010年には16%増加の6,291件となっている。このうち4分の1はオンライン上での接触をきっかけとする被害であり、434件が子どもに対して性的な行為を要求し、135件は実際に会う約束をしている。CEOPは、手軽に子どもと接触できるインターネットが、被害件数の増加につながっていることを強調している。事実、実際の姿が見えず、意図的に隠すこともできるインターネット上のコミュニケーションにおいて、16歳以下の青少年に出会うことを目的とした性犯罪が最も多いとされる。インターネット犯罪フォーラムの報告書によれば、オンラインのチャット・ルームを利用している子どもの約20%が、オンライン上で児童性愛者などから接触を受けた経験を持つという。調査対象人数(5~15歳、約700万人)と、対象者のインターネット・アクセス件数(428万2,000件)から見積もると、およそ85万回、何らかの形で子どもたちが接触を受けた計算となる74。また、EUキッズ・オンライン75のプロジェクト調査によれば、インターネットで知り合った人物と実際に会う(又は約束をする)年齢層で最も多いのは9~16歳であり、23,000人を対象とした調査では12人中1人が、会うきっかけはインターネットだったとしている。


 オンライン上のものも含め、児童の性的搾取問題に関して、最も被害に遭いやすく、またターゲットとなりやすい年齢は15歳と言われている76が、10歳でも被害に遭うケースがある。通常、女子の方が被害に遭いやすく、男子の6倍に及ぶ数であるが、男子も被害に遭っている事実や、男子が狙われるケースもあるということは留意すべき点である77。以下、実際に被害にあった少年少女のケース・スタディー78を記載する。


《ケース・スタディー1》
チャットルームを利用していたある少女は、友人と好きなバンドについてチャットを楽しんでいた。すると見知らぬ男性が、彼女のプロフィールを見てコンタクトしてきた。関心事が同じで気が合ったので、男性がインスタント・メッセージのアドレスを聞いてきたとき、もっとプライベートな会話ができると思い彼女はすぐにアドレスを渡した。その後、男性が彼女のセクシーな写真を送るように言ってきたときも、躊躇しつつも送ってしまった。しかし、彼が実際に会うことを提案してきたとき、オンライン上で気があったとはいえ、見知らぬ人に会うことに不安を覚え、少女は断った。その途端、男性は態度を変え、言うことを聞かないと、例の写真をチャットルームの全員に送ると脅してきた。幸運なことに、少女の友人が関連機関79に通報することを提案したため、連絡を受けた機関は即座に警察へ通報した。


《ケース・スタディー2》
オンライン・ゲーム好きの13歳のある少女は、ゲームをクリアするための方法や様々なアドバイスを他のメンバーに聞くことができるため、あるゲーム内のチャット・ルームを非常に気に入っていた。ある日、チャット・ルーム内で見知らぬ人に、携帯番号などを聞かれた上に、猥褻な内容の質問もされたため、そのチャット・ルームの利用をやめることにした。しかし数日後、その人物が、ゲームを通じて少女のインスタント・メッセージのアカウントにコンタクトしてきた。関連機関に通報した少女は、その人間が34歳の男性であること、少女のアカウントがハッキングされたことを知らされた。ゲームのチャット・ルームを通じてハッキングされたことが分かったため、ゲーム提供会社にも通報され、関連機関によってそのゲームサイトが監視されることになり、他の利用者にもこのことが通知された。


《ケース・スタディー3》
学校生活に退屈していたある少年にとって、オンライン・ゲームが唯一の心のよりどころとなっていた。少年が利用していたゲームのほとんどはオンラインでメッセージを送受信できる種類で、ゲームの攻略法や、その他いろいろなことについて少年もこの機能を活用していた。ある日、少年はオンラインでポール(仮名)という少年と知り合った。ポールによると、彼も学校が嫌いでゲームが好きなので、少年と全く同じ気持ちであると語った。ポールはやや遠いところに住んでいるといい、もうすぐ学校も休暇に入るので会いにこないかと提案してきた。両親に伝えれば、行くことを認めてもらえないと思った少年は、荷物をまとめ人で空港に向かった。空港に着き、搭乗手続きを行おうとした少年のところに、ポールから、空港ではなく「父親と滞在している」ホテルで会おうという携帯メールが届いた。疑うこともなく、タクシーに乗り、ホテルに向かっていた少年だが、行き先も告げずにいなくなった少年を心配した両親が警察に届出を出していたために、タクシーは無線連絡を受けており、事なきを得た。後日、「ポール」は38歳の男性であることが分かった80


 2011年5月、警察当局による「アルパイン捜査(Operation Alpine)」と呼ばれる4年間に及ぶ捜査が終了した。同捜査はインターネット上の児童ポルノ画像を扱っていたグループを摘発した。その後も更に55名の容疑者が逮捕された。これまでに逮捕された容疑者のうちおよそ200名には、前科がなく、その多くが25~45歳の白人の納税者であり、これまで警察の注意をあまり引くことのなかった層であったという81。インターネット監視財団(Internet Watch Foundation:以下「IWF」という。)によると、2010年にはインターネット上で児童ポルノ画像の売買が行われていたとされるサイトは1万4千以上に及ぶ82。1日約59ページが新たにサイトに加えられているという。また、インターネット上の画像はコピー後に共有され、リサイクルされるため、警察当局や取締機関による対応は困難を極めている。アルパイン捜査だけでも100万以上の画像と約6千の動画が押収された。IWFの報告によると、違法の疑いがあるURL以外にも、外部からの通告を受けたもの、またIWF独自の調査によって有害と判断されたコンテンツの対処数は、年間で48,702件に上る(表1-1-10)。通告や削除といった対処を円滑に行えるよう、違法・有害コンテンツのホスト先に関しても、エリア別に判別し、迅速に対応している(図1-1-18)。

表1-1-10 違法・有害コンテンツ数83
 

対処済み

違法の疑いのあるURL

性的児童虐待コンテンツ

43,190

16,739

アダルト猥褻コンテンツ

2,732

12

性差別コンテンツ

982

0

写真以外の性的児童虐待コンテンツ

556

0

その他

1,242

0

(出典:IWF 2010年次報告書)

表1-1-11 性的児童虐待のURL及びドメイン数(2010年)84

URL

16,739

ドメイン

1,351

(出典:IWF 2010年次報告書)

図1-1-18 性的児童虐待サイトのホスト件数(エリア別)85

図1-1-18 性的児童虐待サイトのホスト件数(エリア別)

(出典:IWF 2010年次報告書)


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