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(3)青少年、その保護者及びその他一般に対する教育・啓発

【デジタルコード】
2008年のバイロン報告書の中で、バイロン博士は、インターネット安全利用のためのキャンペーンを提案した。同様に同報告書によって提案、設立された英国児童インターネット安全協議会(UKCCIS)は、「Click Clever, Click Safe(賢く、安全にクリック)」のスローガンの下、「Zip it, Block it, Flag it」という、図1-3-1に挙げるデジタルコードを作成した。子どもだけでなく、保護者にとっても、シンプルで覚えやすく、かつ、すべきことを明確に示す名称とデザインは好評であり、バイロン博士も2010年の青少年のインターネット利用環境検証報告書の中でこの結果を評価している。

図1-3-1 「Zip it, Block it, Flag it」ロゴ

図1-3-1 「Zip it, Block it, Flag it」ロゴ

(出典:教育省(The Department for Education)ホームページ)

表1-3-1 デジタルコードの意味154
Zip it

「口を閉じる」=個人情報を提供しない。個人情報とは、通っている学校名や、普段遊びに行くような場所も含む。写真も載せない。友人とチャットしたい場合は、本名でなくニックネームを使用する。アカウントのパスワードは必ず秘密にし、頻繁に変える。

Block it

「ブロックする」=匿名からのメッセージや不快な内容のものを遮断する。送られてくるものは未開封のまますべて削除する。怪しいと思われるリンクやファイルはむやみに開かない。

Flag it

「旗を立てる」=注意を求める。何かあったら、保護者(信頼できる大人)に伝える。保護者に言いづらい場合は、児童相談専用ダイアル(Childline 0800 1111) に電話する。ネットで知り合った人に実際に会いに行くことは大変危険である。どうしてもという場合は、必ず保護者同伴にする。また、知人(友人)が他人にオンラインで不快なメッセージを送られている(または送っている)場合も、保護者に伝える。

(出典:Directgovウェブサイト)155

【年齢規制】
ビデオゲームを含む、イギリスにおけるすべての映画、ビデオ、DVDには全英映像等級審査機構(British Board of Film Classification)(公的機関)管轄の下、年齢別制限が設定されていたが、汎欧州ゲーム情報156(Pan European Game Information:以下「PEGI」(公的機関)という。)による規制と混在していたため、明確ではなかった。保護者の中には、年齢規制の表示をゲームの難易度と勘違いしていた者も多くいたという157。2008年のバイロン報告書を受け、2009年6月にPEGIにおいて規制の統一がなされた。PEGIにおいては、法律で規定されている内容と保護者の意見などの世論の両方から捉えて各年齢に適したコンテンツの年齢制限を定めている。特に、ゲームには楽しみながら学習するという要素もあるが、不適切な素材や有害情報などから青少年を守ることも課題である158。また、PEGIの規制統一を受け、テレビによるゲーム広告にもこの年齢制限が表示されるようになった。

表1-3-2 ゲームの年齢制限159

年齢

内容

3

ほとんどの年齢に適する。「トムとジェリー」などのアニメに代表されるような多少の乱暴なシーンはあるが、コミカルに表現されており、悪影響は少ないとされる。

7

多少の乱闘シーンや部分的なヌード描写があるが、性描写としてではない。

12

ファンタジー系の内容で、暴力シーンがグラフィック化されたり、ほぼ生身の人間と見受けられる登場人物に対する暴力が出てくる。ヌード描写もグラフィック化されている。言葉遣いは穏やかであるべきで、ののしり言葉等も最小限。

16

暴力または性的行為が実生活とほぼ同じような表現でなされている。言葉遣いが荒く、登場人物による、犯罪行為(薬物使用など)がある。

18

暴力行為がリアルに表現され、行為自体が特殊である。個人的に捉え方が異なるために、線引きが難しいとされるが、多くは、ユーザーに不快感を与えるか、与えないかで位置付けられる。

(出典:PEGI)

年齢制限以外にも、ゲーム内容を判断する表示が決められており、ゲーム購入、利用の際の判断材料として利用されている(表1-3-3)。

表1-3-3 年齢制限以外のゲーム内容を判断する際の表示160

表示

意味

好ましくない言語が使われている。

差別に関する用語が使われている。

薬物(麻薬)に関する内容が使われている。

子どもに不適切な恐怖を引き起こす内容を含む。

賭け事に関する内容を含む。

ヌード描写や性行為に関する内容を含む。

暴力行為の描写がある。

オンライン・ゲームが可能。

(出典:PEGI)

【呼びかけ】
保護者や一般家庭向けには、全国児童虐待防止協会(National Society for the Prevention of Cruelty to Children:以下「NSPCC」という。)など、チャリティ団体がホームページ上にインターネット利用の際のガイドラインを設けて呼びかけている。青少年に対して「危険」とされる内容は、主に以下の4つである161


・不適切な情報や画像
・ウィルスの送信
・ネットいじめ
・性的な目的によるイベント等の勧誘


これらに対する保護者への呼びかけとしては、下記のとおりなるべく具体的なガイドラインを設定している。


・青少年が、不適切なものを発見した場合に、まずはどうしたらよいかを分かっているか確認すること。青少年に不適切な情報、又はそれらの送信者をブロックする方法を教え、違法と思われるもの、不適切な情報を速やかにインターネット監視財団(IWF)に通報する。子どもに不適切であったり、虐待の疑いなどがある場合は、児童搾取対策オンライン保護センター(CEOP)に通報する。
・心配事があったら親(保護者)に伝えることを積極的に促す。インターネットに関することのみならず、青少年は些細な事柄でも不安を抱えたりするものである。どんな些細なことでも、不審なことがあったら親(保護者)に伝えることができることを日頃から話しておく。
・保護者や他の家族の目に届くところにコンピュータを置く。子ども部屋や寝室などに置かない。
・フィルタリング機能付のソフトウェアを利用する。
・どのサイトが安全か、また安全でないかを青少年と話し、閲覧できるサイトを決定する。定期的にチェックし、青少年が定められた範囲内のサイトのみを閲覧しているか確認する。
・青少年に、個人情報をオンラインに載せないように伝える。写真やビデオを家族、友人、親しい知り合いの間で送受信したい場合は、それらの写真やビデオが誰によっても共有できたり、編集されてしまう可能性があることを教える。
・見知らぬ人からのメールや添付ファイルは削除するよう教える。絶対に信用しないことと、決して開いたり、返事をしたりしないことを教える。
・青少年がインターネット上で知り合った人物と接触すべきではない。やむを得ない場合は、必ず保護者にその旨を伝えること、また、インターネット上では身分などすべてを偽ることが可能であるため、インターネット上の友人は、あくまでもインターネット上の友人であるべきだと教える。
・青少年が、インターネット上でも、実世界と同じく「見知らぬ人」に対しては注意を払うべきであることを教える。青少年の間でも非常に人気のあるSNSは、友人を増やすことが目的の一つではあるが、悪用される可能性も大いにあることを教える。


【学校における取組162
2009年11月に発足した「360度の安全(360 degree Safe)」により、各学校がネット安全利用の取組に対する評価、他校との比較、今後の課題及び優先事項を見極めるきっかけを作ることに成功した。「360度の安全」とは、インターネット安全利用を評価するための様々な基準をもとに、他校や他機関と総合的に比較する自己評価ツールであり、2012年1月25日現在、無料で提供されている(図1-3-2)。

図1-3-2 「360度の安全」の構造163

図1-3-2 「360度の安全」の構造

(出典:360 Degree Safeウェブサイト)

イギリス国内の547の学校から提出されたデータをまとめた調査結果によると、データが回収された大半の学校におけるネット安全に対する取組に関して、以下のとおりインフラと方針はおおむねしっかりした基盤を備えていると認められた(各項目は1~5で評価されており、「1」が「最も優れている」、「5」が「改善する必要あり」であり、点数が低いほど評価が高い)。


・フィルタリング (2.57)
・対応可能な使用方針 (2.78)
・方針の今後の見通し (2.8)
・方針の改善 (3.02)


反対に、更なる改善や支援が必要と思われるエリアについては、下記の回答結果となった。


・コミュニティー、自治体の理解 (4.03)
・各学校がある市長/町長のトレーニング (4.03)
・方針とそれを実行に移した結果のモニタリング (3.96)
・Eセーフティー委員会 (3.94)
・教師のトレーニング (3.84)


同調査の結果に基づいて、プライマリー・スクール(Primary School)164及びセカンダリー・スクール(Secondary School)165を比較すると、プライマリー・スクールの方がより様々なエリアにおいて取組や改善が必要であることが分かった。また、都市部よりも地方の学校において取組が遅れており、インターネット安全利用に関する情報が少ない傾向にあることからも、今後は専門家の意見も取り入れていくべきとされている。各学校によって差があるものの、全体の調査結果としては、学校側はまだインターネット安全教育に対する万全な態勢に至っていないことが分かった。


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