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イギリス・韓国における青少年のインターネット環境整備状況等調査

第II部 調査の結果

3 青少年のインターネット利用環境に関する制度、法及び政策とその背景

(7)青少年による携帯電話の所持・利用の制限

ア 一般家庭での携帯電話使用

 2008年のデータでは、15~45歳の携帯電話使用率は95%、45歳以上の使用率は79%となっている。半数以上の60%が月ごとに支払う契約を結んでおり、39%がプリペイドによる利用である236
調査会社On Device Researchによる携帯電話及びタブレット端末を用いた2010年の調査結果では、PCを使用せず、携帯電話を通じてのみインターネットを利用する家庭は22%を占める237
Ofcomによるイギリスのスマートフォン利用者を対象とした2011年の調査結果によると、成人では37%、12~15歳の青少年では60%が携帯電話への依存を自覚しているということが分かった。また、成人は「メール」や「インターネット・サーフィン」をスマートフォンの主な用途として挙げている一方、青少年によるスマートフォンの用途は「ソーシャル・ネットワーク」、「写真・動画撮影」、及び「音楽鑑賞」が挙げられている238
2011年9月にイギリスの保険会社Sheilas' WheelsのTech-iquette Reportによると、イギリス人の13%は、配偶者や恋人と過ごす時間よりも多くの時間をスマートフォンに費やしているという。成人の場合は男性の方が女性よりもスマートフォン利用率が高く、男性による所有率は58%、女性による所有率は42%となっている。スマートフォンを身辺に置いておく時間は1日17時間以上にも及び、18%の男性は夜も枕元に置いて寝るという。イギリス人の1日のスマートフォン利用時間を平均にした結果は以下のとおりである。


・通話48時間
・電子メール送信3件
・テキスト送信12件
・写真の送信2枚
・ブログへのメッセージ投稿3件
・ブログのプロフィール更新2回


また同調査によると、34%が、誰かと会っている最中にもメールやテキストを送ることがあると認めており、90%が他人といる最中でも電話には答えるとしている239


イ 青少年の携帯電話利用数・利用率

2010年秋にOfcomが、年齢が5~15歳である1,717名を対象に行った調査によれば、イギリス全体では約半数(52%)が携帯電話を利用していることが判明した240。また、初めて携帯電話を所有した年齢を尋ねたところ、65%が10歳までに携帯を所有していたことが分かった。特に女子の保護者は子どもに携帯電話を与える時期が男子の保護者よりも若干早く、29%が、子どもが8歳になるまでに携帯電話を持たせている。これに対して、男子の保護者が、子どもが8歳になるまでに携帯電話を持たせる割合は22%であった。利用率と用途の内訳は、下記のとおりである。

図1-3-5 携帯電話の所有を始めた年齢(2010年)241

(単位:%)

(出典:Ofcom)

図1-3-6 携帯電話とスマートフォン利用率(2011年/年齢、性別)242

(単位:%)


(出典:Ofcom)

スマートフォンについて確たる定義は存在せず、まだ曖昧であるが、イギリスでは一般的に「コンピュータとほぼ同じ機能(容量を除く)を持ち、インターネットにアクセスができる」携帯電話と理解されている243。イギリスで現在利用されているスマートフォンとは下記の表(表1-3-13)のとおりである。最も人気のある機種はアップル社のiPhone(所有率37%)であるが、10代に好評なのはRIM社のブラックベリー(BlackBerry)である(所有率37%)。Ofcomの調査によれば、スマートフォンの登場により、携帯端末からのインターネットアクセス件数が大幅に増えたという244。また、同庁が行ったアンケート対象者中、37%の成人、60%の10代の青少年が「スマートフォン中毒」であると認めている245。ある少女は、「携帯電話を無くしたら途方にくれてしまう。取り上げられるくらいなら、自分の肝臓を引き換えにした方がまし」と発言をしている246。イギリスで利用されているスマートフォンの種類については、以下の表のとおりである。

表1-3-13 イギリスで利用されているスマートフォン

スマートフォン機種

会社名

iPhone

Apple

Blackberry

RIM

Galaxy

Samsung

Sensation

HTC

Xperia Arc

Sony Ericsson

N8

Nokia

(出典:複数のウェブサイトを参考に作成247

携帯電話利用目的は、メール(テキスト)送信と通話が多いが、1週間の利用頻度を見ると、電話という本来の機能よりも、メール(text)送信の方が圧倒的に多いことが分かっている(図1-3-7、図1-3-8)。

図1-3-7 1週間の通話数とメール送信数(2010年/年齢別)248

(単位:件)


(出典:Ofcom)

図1-3-8 携帯電話利用内容(従来の携帯電話のみ/2011年/年齢別)249

(単位:%)


※対象としたのは8~15歳の子どもである。
(出典:Ofcom)

インターネットに接続できるスマートフォンは多機能のため、従来の携帯電話に比べ、利用内容も多岐に渡り、「メール送受信」「通話」「音楽」「写真撮影」「ゲーム」「SNS」などのすべての項目の利用率が携帯電話を上回っている。特に「SNS」は、携帯電話の20%に比べ、スマートフォンは44%と倍以上の利用率となった(図1-3-9)。

図1-3-9 携帯電話利用内容(スマートフォン利用との比較/2011年)250

(単位:%)

※対象としたのは8~15歳の子どもである。
(出典:Ofcom)

イギリスの通信市場は、少しでも若い年齢層の心をつかもうと、4歳児から使用可能な子ども向け携帯電話を開発した。子どもの健康被害へのクレームを見越した販売側は、子ども向けに安全で分かりやすい商品だと売り込む。「ファイア・フライ(Firefly)」という名のこの携帯電話は、一見おもちゃのような携帯電話で、電源スイッチの他に、男性と女性のマークがついた大きなボタンがある。男性マークは父親にかける際、女性マークは母親にかける際にボタン1つで電話を掛けられる仕組みとなっている。両ボタンの上にある電話帳マークは、20件まで登録できる電話番号リストである。この番号登録には暗証番号が必要となるため、保護者なしでは設定できないようになっている。インターネット接続はできず、非通知番号はブロックすることができる251。アイルランドでは2009年の時点で既に7,000台が販売された252


5~15歳の年齢帯の子どもによる携帯電話利用率は約半数の52%である253。インターネットへのアクセスを目的とした携帯電話利用率は10%となっている。また、2010年のスマートフォンの所有率は、5~7歳が3%、8~11歳が13%、12~15歳が35%となっており、8~15歳の子ども全体で見ると1週間に15.1回程度の頻度で電話をかけている。成人とは逆に、10代のスマートフォン所有率は女子がやや多く52%で、男子は48%となっている。
8~15歳の子どもの保護者の70%は、携帯電話利用に関するルールを最低でも1つは取り決めている。しかし、そのルールの多くは利用料金に関するもので、有害、不適切情報に関する取り決めではない(表1-3-14)。男女別に見ると、男子の保護者の方が、女子の保護者よりも定期的に子どもの携帯電話の利用内容をチェックしており、女子の保護者の方が料金に関するルールに厳しい。

表1-3-14 携帯電話利用のルール(2010年)254

ルール内容

8-11歳

12-15歳

何らかのルールがある

70%

70%

プリペイド額の上限設定

38%

35%

割高(プレミアムレート)の番号にはかけない

18%

17%

携帯電話利用内容を定期的にチェックしている

21%

13%

子ども自身が料金の支払いをする

8%

21%

割高(プレミアムレート)にテキストを送らない

17%

15%

通話とテキストの送受信のみ

16%

13%

決められた人間のみへの電話とテキストに限る

20%

8%

インターネット利用禁止

11%

12%

(出典:Ofcom)

ウ 学校における携帯電話使用
(ア)概況

2010年9月と2011年2月の会議の後、欧州評議会(The Council of Europe)は、ハイテク技術が人体に影響を及ぼす可能性があると指摘し、加盟国に以下に挙げた5つの勧告を出した。欧州評議会は各加盟国に強制する権限はないものの、対策決定のプロセスや協定締結においては強い影響力を持つ。


・携帯電話の長時間利用によって及ぼされる人体への影響を段階別に表示
・携帯電話利用によって浴びる電磁波の量や、健康への悪影響の可能性をラベルに表示
・学校(教室)におけるすべての携帯電話とPC用ワイヤレス・ネットワークの利用を禁止
・子ども、青少年を対象として健康被害に関する情報の普及を目的としたキャンペーンの実施
・健康への被害が比較的少ないとされるアンテナや携帯電話に関する調査の実施


欧州評議会による5つの勧告のうちの1つである、学校における携帯電話の利用禁止を受け、携帯通信健康調査プログラム(Mobile Telecommunications and Health Research Programme)の副会長であるレス・バークレー(Les Barclay)教授は、「携帯電話が全国民に浸透してからまだそれほど経っておらず、関連調査全般、特に児童や青少年にかかわる調査は、まだほとんど行われていない。長時間使用した場合の、長期に渡る健康へのリスクはよく言われるが、学校での携帯電話やワイヤレス・ネットワークの利用禁止は過度な規定である。調査結果等が明らかになるまでは、現在の国のガイドラインに従い、長時間の使用を避けるようにアドバイスする必要がある。255」と述べている。
全国校長協会の事務総長であるラッセル・ホビー氏は、万が一、携帯電話やワイヤレス・ネットワークが学校で禁止されることになれば、多くの支障をきたすとコメントしている。ほとんどの学校にはWi-Fiが設備されており、生徒だけでなく教師も皆、携帯電話を持ち歩いている。多くの学校では、コンピュータを活用した学習を率先して進めており、生徒の家庭学習や宿題でもノートパソコンを使わせているため、携帯電話やワイヤレス・ネットワークの利用禁止は、これら学習活動に大きな影響を及ぼすこととなる。健康省(Department of Health)の報道官は、懸念される健康上のリスクについて、科学的根拠を得るため調査を継続していくとしている。また、根拠が明らかになるまでは、青少年は、携帯電話使用を必要最小限に留めておくべきだとしている256

(イ)スマートフォンの問題点

多機能で携帯できるスマートフォンは便利である反面、問題も指摘されている。


<1>盗難・紛失によるデータ流出
欧州ネットワーク情報安全庁 (The European Network and Information Security Agency)が発行したスマートフォン所有のリスクに関する報告書257によれば、個人情報を持ち歩いていると言ってもよいスマートフォンは多くのリスクを伴っている258。盗難や紛失による個人情報流出が最も大きなリスクであり、特にスマートフォンからのSNS使用が増加していることから、自身のみならず、友人、知人全員の個人情報が漏れる可能性も懸念される。仕事でスマートフォンを使うビジネスマンについても、重役レベルになると企業機密を扱っているケースも多く、暗証番号の設定や、不使用の際は自動的にロックがかかる設定にするなど、様々な観点からリスク軽減のために注意する必要がある。イギリスでは最近、警察がオフィスビルを訪れて希望者の携帯電話やノートパソコンの登録を行うといった新しいサービスが開始された259


<2>位置確認サービス260によるプライバシー問題
GPSを利用し、現在の位置情報を確認できるサービスは、SNSの利用者の中で人気が出てきている。SNSやブログを利用してリアルタイムで現在地を周囲と共有できるからである。保護者にとっては、外出している子どもの居場所を確認できる機能として利用される。しかし、子どものプライバシーを侵害すると懸念する保護者が多い(図1-3-10)。また、ボーダフォン(Vodafone)のグローバル・マーケティング担当のアニー・ムリンズ(Annie Mullins)氏は、本来であれば、仲間内で便利とされる機能が、悪いことに利用されてしまう可能性が十分にあると指摘している。セキュリティ対策ソフトウェアを提供するMcAfeeが行った調査によれば、13~17歳の69%がSNSの位置確認サービスを利用しているという261。ほとんどの位置確認サービスは18歳未満の登録を禁止しているが、英国通信庁(Ofcom)によると、年齢を偽って位置確認サービスを利用している子どもが多く、オフラインの世界とは違い、オンライン上では警戒心が低下することが指摘されている262

図1-3-10 位置確認サービスに対する保護者の考え(2010年)263

(単位:%)


※対象は5~15歳の年齢の子どもを持つ保護者である。
(出典:Ofcom)


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