本編目次へ前ページへ次ページへ

イギリス・韓国における青少年のインターネット環境整備状況等調査

第II部 調査の結果

3 青少年のインターネット利用環境に関する制度、法及び政策とその背景

(8)ネットいじめに対する取組

2007年に英国政府は「ネットいじめ」の防止キャンペーンを立ち上げた。以来、いじめ防止のためのガイダンスを作成し広範囲に配布するなど、様々な取組を行っている264。イギリスでネットいじめ撲滅のために活動する団体の一つとして、1999年の設立以来、チャリティで青少年のいじめ撲滅運動を行うBeatbullyingが挙げられる。同団体は、学校でのいじめを平均して39%減らすとするいじめ予防モデル(bullying prevention model)を提案している265。この他にも同団体は「Cybermentors266」という名のプロジェクトを行っており、いじめを受けた又は受けている青少年に対してきめ細かな指導を行っている。
 テクノロジーの進化とともに、いじめの内容も大幅に変化してきている。従来のいじめは学校や遊び場を中心として起こっていたため、帰宅することによっていじめ行為から逃れることができたが、インターネットや携帯の使用が24時間可能であるため、子どもたちは自宅で家族と一緒にいても、自室にいてもネットいじめから逃れることができなくなってしまった。携帯電話に脅迫めいたメッセージを送信したり、SNSに相手が傷つくようなコメントを載せたり、オンライン・ゲームでは、マルチプレイヤータイプのゲームで特定人物を無視したり、参加拒否したり、オンラインに偽のプロフィールを掲載してチャット・ルームで特定人物をからかったりと、ネットいじめの内容は多様である。ネットいじめが加速する理由の一つに、これらメディアを通じて匿名でのいじめを行うことが可能となることが挙げられる。本来のいじめ同様、ネットいじめを受けた子どもたちは自信を失くし、安心感を持てず、登校拒否や、最悪の場合は自殺まで追いつめられる。Beatbullyingの最高責任者エマ・ジェーン・クロス(Emma Jane Cross)によれば、ネットいじめを原因とする若者の自殺は既に何件も起きている267。同社によるイギリスにおける11~18歳を対象にした調査結果では、ネットいじめの現状は下記のとおりである268


・61%がネットいじめを目撃したことがある。
・10人中7人がネットいじめを行った人物を知っている。
・ネットいじめの約3分の1はオンライン以外で始まったものである。
・約4分の1が、誰かがいじめられている内容のビデオや画像を送られた経験がある。
・ネットいじめの被害者も、いじめを行う側も、女子である割合が高い。


また、Ofcomによるイギリスの8~15歳を対象とした調査結果を図1-3-11及び図1-3-12に示す。

図1-3-11 ネットいじめの経験(2011年/年齢/性別)269

(単位:%)

図1-3-11 ネットいじめの経験(2011年/年齢/性別)

(出典:Ofcom)

図1-3-12 オンライン又は携帯電話利用時の不快な経験(2011年)270

(単位:%)

図1-3-12 オンライン又は携帯電話利用時の不快な経験(2011年)

※対象は12~15歳の子どもである。
(出典:Ofcom)

ネットいじめに対する取組の1つとして、政府機関、チャリティ団体、産業界を通じての呼びかけも行われている。具体的な呼びかけの内容は下記のとおり。


・ネットいじめを含むいじめについて子どもと話し合う機会を持つ。
・保護者用規制ツールやプライバシー設定などのツールを有効活用する。
・もし自分の子どもがネットいじめの被害に遭っていたら、PC設定等の技術的なサポートだけでなく、精神面でのサポートを行う。ネットいじめの証拠と思われるコメントやメールを収集し、ISPや携帯電話会社に連絡する。
・自分の子どもが、同級生や上級生からのネットいじめにあっていたら、必ず学校へ連絡し、対応してもらう。
・自分の子どもがネットいじめをしていると知ったら、いじめをしてはいけないこと、そしてなぜいけないのかを説明する。
・子どもがネットいじめやいじめを目撃したら、見過ごすことなく必ず保護者や教師に連絡するよう奨励する。


インディアナ州立大学(Indiana State University)でカウンセリングを教えるブリジッド・ロバーツ・ピットマン(Bridget Roberts-Pittman)助教授は、イギリス大手携帯電話会社Vodafoneが発行するデジタル・ペアレンティング・マガジンにて、「はっきりと言えることは、ネットいじめの場合も、従来のオフライン型いじめの場合も、対応の仕方はほとんど変わらないということである。ネットいじめには技術面でブロック機能をPCにインストールするなどの作業を伴うが、いじめはどんな形であれ行ってはならず、また目撃した場合には黙認することは許されない。いずれの場合にも青少年は大人に聞いてもらえ、分かってもらえる、と感じることが最も重要であり、大人たちがいじめを恐れて何もせずにいるべきではない」と述べ、イギリスでも注目されている271
 また、ガーディアン紙(The Guardian)のジョン・ヘンリー(Jon Henley)氏によると、自身のブログやSNSの人気を大切にするあまり、友人や他人を傷つけてしまう結果を招くケースも増加しているという。10代のある少女は、知り合いがその少女と一緒に撮影した写真をブログに投稿した際、写りがあまりにも悪かったためにブログから削除するように依頼したが、断られてしまった。知り合いが削除を断った理由は、その写真によってブログのビューアー数が一気に400%上昇したために削除したくない(人気率を下げたくない)ということであった272


▲このページのTOPへ