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イギリス・韓国における青少年のインターネット環境整備状況等調査

第II部 調査の結果

3 青少年のインターネット利用環境に関する制度、法及び政策とその背景

(10)児童ポルノに対する政策、規制及び取組 273

イギリスでは、1960年代後半までは、児童ポルノ製品の作成、頒布及び所持は、道徳上は認めがたい行為ではあったものの、法律による処罰対象ではなかった。
1970年代前半になると、イギリスに児童ポルノの商業化の波が押し寄せる。この時期にイギリスで児童ポルノが商業化され始めた理由は、イギリス以外の多くの欧米諸国で、児童ポルノも含むポルノ商品作成に対する規制が緩和されたためであると言われている。
多くの欧米諸国で児童ポルノ雑誌が入手可能となったことにより、児童ポルノ商品作成のために被害に遭う児童も急増した。このような状況を受け、被害児童の保護・救済などの必要性から、各国政府は児童ポルノ防止策を強化し始めた。
その後、1970年代後半から1990年代後半にかけては、コンピュータ技術やインターネットの発達とともに、児童ポルノ画像は、児童に性的興味を持つアマチュアコレクター向けの嗜好品として、主にインターネット上で伝播されるようになった。
そして、インターネット普及率が72パーセントにも達する今日のイギリス274においては、国内の至る所で児童ポルノ画像の交換、共有、販売が日々行われていると推測されている275
児童ポルノの頒布を禁止する「1978年児童保護法」(Protection of Children Act 1978)が成立したのは1978年である。当時、イギリスでは猥褻物と映画検閲法制を見直すためのウィリアムス委員会の調査が進行中であり、政府は同委員会の報告を待ってから児童ポルノの規制を考えるべきとしていたが、マスコミを巻き込んだキャンペーンによってこの法律は議会を通過した。当時、イギリスでは、立法が必要なほど実際に児童ポルノの問題が多数発生していたわけではなく、児童虐待といった誰もが反対しにくいテーマについて、このようなキャンペーンを行って法案を通すことに対しては強い批判があった。1979年に発表された上記のウィリアムス委員会の報告書でも、「このような目的の新たな立法の必要性については、常に何かしらの疑わしさがある。確かに言えることは、児童ポルノが大きくなりつつある問題であるという証拠が我々の前に出されていないことである。」として、イギリスに児童ポルノの問題が存在することに疑問を投げかけた。
しかし、その後の現実がこの法律に追いつくことになり、このような不要論は下火となっていったようである。1988年には、「1988年刑事司法法」(Criminal Justice Act 1988)が制定され、同法第160条において、児童ポルノの単純所持も禁止されることとなった。
イギリスでは、「1994年刑事司法及び公共秩序法」(Criminal Justice and Public Order Act 1994)の第84条第2項によって、1978年児童保護法及び1988年刑事司法法に「疑似写真(pseudo-photograph)」の概念が追加されるとともに、「写真(photograph)」の定義が「コンピュータ・ディスクその他電磁的装置に蓄積されている写真に変換可能なデータ」にまで拡張された。これにより、インターネット上の画像データについても「児童ポルノ」として、これらの法が適用されることとなった。
2003年になると、「2003年性犯罪法」(Sexual Offences Act 2003)が制定され、1978年児童保護法及び1988年刑事司法法第160条が定める「児童」の年齢が16歳未満から18歳未満へと引き上げになるとともに、第46条により、刑事訴訟や捜査におけるいかがわしい画像の閲覧に適用除外が定められた。


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