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イギリス・韓国における青少年のインターネット環境整備状況等調査

第II部 調査の結果

4 青少年のインターネット利用環境に関する民間機関の取組

(1)青少年のリテラシー能力向上のための活動

ア 英国児童インターネット安全協議会(UKCCIS)

英国児童インターネット安全協議会(The UK Council for Child Internet Safety:以下「UKCCIS」という。)は「バイロン報告書」がきっかけとなり設立された官民共同機関である。バイロン博士が同報告書で提唱した「子どもが安全にプールで泳げる環境を整えることと、泳ぎ方の教育276」を基本的な考えとし、自主規制を基に幅広く活動を続けている。また、2009年より毎年サミットを開催し、産業界、関連団体、教育機関、保護者等への呼びかけを続けている277。2011年10月の時点で、180以上の企業、機関がUKCCISに会員登録しており、運営を支援している278。参加団体は公的機関から民間、企業分野としても、メディア、教育、製造分野等、多岐にわたる(表1-3-10)。

イ インターネット監視財団(IWF)

「安全インターネットの日(Safer Internet Day)」を促進し、青少年が安心してインターネットを利用できる環境づくりを呼びかけている。2011年は2月8日に実施され、ラジオ生中継マラソンの形式で、あらゆる年齢層の子ども、保護者、教師が、有識者や専門家で形成されたパネリストと生中継で討論を行った。参加者はコンタクト方法として電話、メール、SNSといった様々なメディアを使用するよう奨励された279

ウ レース・オンライン2012(Race Online 2012) 280

レース・オンライン2012は、国民が誰一人としてデジタル世界から置き去りにされないようにと、少しでも利用しやすい環境を整えるための運動である。イギリスにおけるインターネット利用者数は約4千万人である。しかし、それと同時に、インターネットの利用経験がない人も約1千万人おり、全人口のおよそ5分の1に当たる281。その多くが65歳以上(39%)であるものの、16~24歳でインターネット利用経験がない人の割合は10%で、ほとんどが無職である。小さな子どもがいる家庭は19%がインターネットを利用した経験がなく、学校や地域の活動、参加の面において不利であるとされている。

エ 賢くクリック、安全なクリック(Click Clever, Click Safe) 282

「賢くクリック、安全なクリック」は、インターネットの安全に関する意識向上のためのキャンペーンである。バイロン報告書において提案され、立ち上げられた英国児童インターネット安全協議会(UKCCIS)が主体となり、具体的な行動規範を掲げて幅広く呼びかけを行っている。
イギリスでは2009年より、「インターネット安全教育(The Internet Safety Lessons)」は中学校の必須科目となっており、2011年9月からは小学校においても必須科目となり、5歳以上全員が対象となった283

オ その他の取組

バーチャル・ゲームなどには反射神経と視覚能力を高め、自閉症改善に役立つ284といった効果があることから、テクノロジーやオンライン・ゲームを擁護する声もある反面、子どもの知的発達に悪影響が生じたり、将来の創造性が損なわれたりすることを懸念する声も強まっている。研究者や教育者の間では、インターネットを含む昨今の娯楽の影響により、想像力を使った遊びが減っていると指摘している。授業中にコンピュータ・ゲームの音声やセリフをそのまま口にする子どももおり、そうした子どもたちは主体的な遊びをする能力が低いという。子どもの頃に想像力を発達させられないと、その影響は後々に様々な形で及ぶとされることから、専門家は子どもたちの将来を不安視している。しかし、ハイテクを活用したゲームや娯楽が近い将来消えてなくなる可能性は低く、利用の仕方によってはプラスとマイナスのどちらにも作用し得ることからも、その利用方法に関する教育がますます必要とされる。アメリカのノースウェスタン大学(Northwestern University)では、テクノロジーと空想の世界を融合する研究が行われ、イギリスでも注目されている。開発が進められているのは、バーチャル・ゲーム内の遊び友達「サム」で、スクリーン上のサムが子どもたちと会話しながら一緒に物語を作っていくという内容である。想像力を使った遊びを通じて、子どもの言語能力を育むことをねらいとしている。研究は徐々に進んでいるが、実用化されるのはまだ先の見通しである。

カ 通報用ウェブサイトの設立

2011年10月11日、英国政府は、性的描写などの有害・不適切情報から子どもを守ることを目的とし、新たなウェブサイトを立ち上げることを発表した。「Parent Port285」と呼ばれるこのサイトは通信庁(Ofcom)、報道苦情委員会(Press Complaints Commission)、広告基準審査協会(Advertising Standards Authority)の3つからなり、テレビ、広告、オンライン上のものすべての有害情報に関して通報することができる。オンライン上の不適切なイメージだけでなく、学校近辺の看板広告やポスターなどもすべて対象に含まれる。イギリス大手ISPの4社であるスカイ(Sky)、BT、 トークトーク(Talk Talk)、ヴァージン・メディア(Virgin Media)も一連の活動に賛同し、不適切とされるイメージを含む広告を放送する際は、事前に通報するようにするという。4社は既にフィルタリングサービスを行っているものの、今回は新たに各社と契約を結ぶ際に、アダルトコンテンツを含むサービスの提供について選択する必要が生じる。イギリスでは、5歳以下の約3分の1がメディアを通じて何らかの「不適切なイメージ」を目にした経験を持つと報道されており、今回のウェブサイト立ち上げの決定も母親たちの組合(Mothers Union)からの圧力によって実現した286。しかし、野党のクレア・ペリー(Claire Perry)議員によれば、「非常によい対策であることは間違いないが、実際には新規契約者のみが対象となり、イギリス家庭の約77%が既にインターネット契約をしている事実から見ると、今回の対策はあまり意味がないのでは」という疑問も残るとされる287

キ 安全インターネットの日(Safer Internet Day)

「安全インターネットの日」は、1999年に欧州委員会が策定した安全インターネットプログラム(Safer Internet Programme)に基づき、毎年2月に計画されている。インターネットの安全利用を世界規模で呼びかけることを目的とする。2011年で3周年を迎えたが、既に全世界65か国に活動が広まっている(開催イベント数500件)。2011年2月8日には、12時間に及ぶラジオ生中継マラソンがイギリスで行われ、あらゆる年齢層の子ども、保護者、教師が、有識者や専門家で形成されたパネリストと生中継で討論を行った288。2011年のスローガンは「単なるゲームではない、あなたの自身の人生なのです」であった。2013年までの実施を最初の目標とし、学校におけるオンライン教育、ソーシャルネットワーク会社や携帯電話会社などのさらなる自主規制の導入を促進する289


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