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(7)ネットいじめに対する取組

ネットいじめの直訳語は、韓国にはない。ただし、内容が好ましくない書き込みという意味で、「アップル(악플、Akpeul)」という言葉が存在する。「악」は漢字で「悪」であり、「플」は英語の「Reply(返答)」に由来する。「악플」を漢字で表現すれば「悪答」となる。以下、本調査ではこの言葉を用いる。
一方、その反対の言葉としては「ソンプル(선플、Seonpeul)」がある。ソンプルに翻訳として定着したものはないが、「선」が漢字の「善」にあたることから、ここでは「善答」と訳する。

ア 社会問題としての悪答

韓国ではここ数年、ネット上で特定の個人を対象に展開される悪答が社会問題となっており、メディアでも継続的に取り上げられている。更に、その悪答を苦に自殺した芸能人もいる。
2009年12月に情報通信政策研究院がまとめた「韓国インターネット文化の特性と発展方案の研究 総括報告書」473では、ネット上での書き込み経験者を対象としてネットいじめをした経験の有無について統計をとっている。書き込みのなかで論点からはみ出した発言(悪答)は、全体の14.3%であり、悪答を書き込んだ者の上位5%が悪答全体の44.2%を書き込んでいた。すなわち、悪答は少数の書き込み者によってそのほとんどが書き込まれていることが分かった。
2010年10月に放送通信委員会がまとめた「ツイッターのソーシャルシステムと制限的本人確認制に関する研究」においても、悪答が増加しており、いわゆる「悪答文化」を形成するまでになっているという指摘がなされている474

イ 悪答防止への取組

2009年8月、韓国公法学会がまとめた「インターネット上の侮辱的発言、悪答等、サイバー暴力解消のための法制度改善方案の研究」(放送通信政策研究)475は、悪答に対する取組に関して、以下のよう記述にしている。


「インターネット利用者は潜在的にサイバー暴力の加害者や被害者となり得るため、被害者や加害者にならないための対策を講じることが必要である。
加害者となることを防ぐ方法としては、情報通信倫理教育、善答推進運動等が挙げられ、悪答、名誉毀損等によってサイバー暴力の被害者になったとき、対処方法に関する知識を持つことが重要である。例えば、ネットいじめによって社会生活の侵害や名誉毀損といった不利益を被る場合、積極的に権利を行使することで潜在的な加害者に対して一種の警告を行う等の処置が効果的である。」


韓国社会では、実際に悪答を防止していくためには教育的手段が有効であると認識されていることが、新聞記事等から窺える。例えば、2011年1月19日付クリスチャン・トゥデイでは、キャンペーン等を通じて悪答等を青少年が行わないよう啓蒙していく必要があると説いている476。また、2011年10月20日付市民日報には、悪答をNOとするフォーラムが善答運動の一環として行われたことが報道されている477
また、2011年4月5日付YTNニュースでは、悪答を書き込む者のうちそのほとんどが10代の青少年であることを受け、インターネット倫理教育を幼稚園から強化することを政府が決定したということが報道された478。更に地方自治体にも悪答をなくす教育を展開していこうという動きが現れている479
このように、悪答、すなわちネットいじめに関する取組は、韓国においてはある程度の指針が政府機関や外郭団体、その他有識者から出されており、それらを今後民間へ浸透させて実行に移そうとしつつある状態にあると言える。


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