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 イギリス・韓国における青少年のインターネット環境整備状況等調査

第2章 韓国における青少年のインターネット環境整備状況

  

3 青少年のインターネット利用環境に関する制度、法及び政策とその背景

(10)インターネット中毒、オンラインゲーム中毒に対する取組

韓国では近年、インターネット中毒及びオンラインゲーム中毒が深刻化しており、大きな社会問題となっている。
インターネット中毒は法的には正式な疾病として認定されてはいないが、国家情報化基本法の第30条において「インターネット依存により身体、精神、社会的な機能障害を負った状態」と定義されている。
韓国で、各家庭における高速インターネット環境が整備されたのは2004年前後のことであったが、それに伴いインターネット中毒者が確認されるようになった。2011年5月25日付女性家族部のプレスリリースによると、政府は2005年からインターネット中毒を治療するための支援を始めている。同資料によれば、小4、中1、高1の学生を対象に調査を行ったところ、インターネット中毒危険群は調査対象者全体の4.94%にあたる8万9,000名に及ぶという。なお、危険群には高危険群と潜在的危険群の両方が含まれる。また高1では、この4.94%のうちで高危険群が0.97%、潜在的危険群が4.49%であり、更にこれらの危険群である学生とは別にインターネット中毒者が5.46%存在する490
2011年4月には「青少年に健全なインターネット文化形成のための青少年大討論会」が行われた491。これは青少年保護に関係する各機関の代表者が集い、発表及び討論を行ったものである。
同討論会で行われた基調講演では、政府がオンラインゲーム産業を強く推進してきた点が、オンラインゲーム中毒者増加の原因として指摘されている。そのため、政府及びゲーム業界が青少年によるオンラインゲームの利用を制限するような、シャットダウンや利用時間制限等の方策を打ち出し実現する必要があるのはもちろん、保護者においても、コンピュータ関連のソフトウェア活用に関する知識を身に着けて子どもへのモニタリングの効率性を高める必要があるとともに、学校においても生徒たちへの情報倫理教育を充実させることが必要であるとの指摘がなされた。
この講演後に行われた基調討論では、青少年のインターネット中毒問題への対処と方案について言及されている。まず、韓国の社会や政府が青少年のインターネット中毒が深刻な問題となっていることを認識しているにもかかわらず、その数が増加する一方である原因として、政府から対策のために捻出される予算の規模の少なさやインターネットにのめり込ませる先端技術の魅力を挙げている。その上で、インターネット中毒の予防に関する意識を国民全体で作り上げていくことが重要であり、そのためには教育が必要であると説かれている。また、中国やタイ等で導入されたインターネットへの長時間アクセスができないように設定するシステムの導入の必要性や、有害情報や不正情報等へアクセスをブロックする装置の開発についても言及している。
2011年3月4日付行政安全部プレスリリースによれば、インターネット中毒者数のうち青少年の割合は成人の2倍に及ぶ。全国民のうち満9歳以上40歳未満での中毒率は8.0%であるが、青少年の中毒率は12.4%に上る。今後の対応策としては、予防教育、カウンセリング治療、専門家養成、インターネット環境の改善の4つが挙げられている。特にインターネット環境を改善する手段としては、学校の長期休業期間や週末を利用したインターネットの利用方法を教育する学校の開設が検討されている。また、スマートフォンの利用が急速に拡大しているために、スマートフォン中毒診断基準の開発・採用が計画されていると発表した492
女性家族部は、プレスリリース中にこうした社会事情の中で模索されている具体的なインターネット中毒予防策を提示している。
2011年3月11日付プレスリリースでは、試験的に実施されたYP(Youth Patrol)プログラムの効果が報告されている。YPプログラムとは、青少年がインターネットの利用を自分でコントロールできるようにするため、学校、家庭、地域社会が一つになって進める教育プログラムである。そのコンセプトは、青少年が有害情報の持つ有害性を十分に認識し、本プログラムへの自発的な参加を通じて自らがインターネットの安全利用をコントロールできるように方向付けを行うものである。このプログラムの参加者のうちほぼ90%が有害情報に対処する能力が向上したと認識し、かつ、学習能力がついたと回答している493
また、深夜時間(0時~6時)における16歳未満の青少年に対するオンラインゲーム提供の禁止条項及び青少年インターネット中毒者への支援条項を盛り込んだ、青少年保護法一部改正案が2011年4月29日に国会本会議において可決された494
この青少年保護法一部改正案は、2012年1月17日改正された新青少年保護法(同年4月18日施行予定)に反映されている。該当部分は、第26条及び第27条である。

第26条
第1項:
インターネットゲームのプロバイダは16歳未満の青少年に午前0時から午前6時までインターネットゲームを提供してはならない。


第2項:
女性家族大臣は文化体育観光大臣と協議し、第1項による深夜時間帯におけるインターネットゲームの提供時間制限対象ゲーム物の範囲が適切であるのかを、大統領令に定めるところにより2年ごとに評価し、改善などの処置を行なわねばならない。


第3項:
第2項による評価の方法及び進行などに必要な事項は、「ゲーム産業振興に関する法律」に定めるところによる。


第27条 
第1項:
女性家族部長官は関連中央行政機関の長と協議し、インターネットゲーム中毒(インターネットゲームの過度の利用によりインターネットゲームの利用者が日常生活において容易に回復することのできない身体的・精神的・社会的機能障害を負っていることをいう)など、媒体物の誤用、乱用により身体的・精神的・社会的被害を受けた青少年に対し、予防・相談及び治療とインターネットゲーム中毒の克服などのサービスを支援することができる。


第2項:
第1項による支援に関し、具体的な事項は大統領令に定める。

上記「大統領令」とは「青少年保護法施行令」に当たるが、新しい施行令の内容については、確認できなかった。


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