第1章 アメリカ

3 青少年のインターネット利用環境(レイティング、ゾーニング)に関する 制度、法及び政策とその背景

(1)連邦規制機関による規制

アメリカ国内における放送通信事業の規制・監督当局は、連邦通信委員会(以下、FCC)である。FCCは、1934年の通信法によって設立された独立連邦機関であり、本部はワシントンDCにある。FCCは、国内で発信する、ラジオ、テレビ、電信、電話、衛星、ケーブル、ワイヤレス、インターネットを含むすべての通信を規定、管理している他、事業者に対する免許交付、更新、または法律違反の罰則を下す裁定権、及び放送通信に関する規則を制定する準立法権を有する46
現在、米国には、インターネット配信に関する基本法は存在しない。過去にオンラインコンテンツ等を規制する法案や法律はいくつかあったが、憲法修正第一条の言論・出版における表現の自由に反するという理由等により、成立まで至らないか、または成立しても、その後、フリースピーチ(Free Speech)や米国市民自由連合(American Civil Liberties Union、以下ACLUという)47などの憲法修正第1条擁護団体や企業等から訴訟を受け、最高裁で違憲判決を受けて廃案になるなどしてきた。(以下、表1-3-1参照)
それゆえ、米国のインターネット関連法は、憲法修正第一条に反しない、猥褻・下品だと見なされるコンテンツの規制にとどまっている。
特に、下記に挙げるような児童に対する性的な虐待や児童ポルノ等に関するものには、刑法が適用され、連邦法や各州法が厳しく取り締まっている。したがって、現在米国でのインターネット規制は、FCCによる全般的な監督を中心として、オンラインプライバシー法を推進する連邦取引委員会(Federal Trade Commission、以下 FTCという)や違法児童ポルノ所持等を摘発する司法省犯罪課などが、各担当分野に対する取締りを行っている。
以下、児童に有害なオンライン情報に関する連邦規制法をまとめた。

表1-3-1:児童に有害なオンライン情報に関する連邦規制法48
法律名 概要
1996年児童ポルノ防止法
(Child Pornography Prevention Act of 1996)
児童ポルノの適用内容を実際の写真のみでなくコンピューターで作成された子どもの性的映像にまで拡大した。2002年に違憲判決を受ける。
1996年通信品位法
(Communication Decency Act of 1996)
18歳未満の未成年が、わいせつまたは、品位に欠ける内容のコンテンツにアクセスするのを遮断し、故意のそのようなコンテンツの配信、掲載を禁じたもの。しかし憲法第一条、言論の自由の侵害という訴えにより97年最高裁で違憲と判決された。
1998年児童オンライン保護法
(Child Online Protection Act of 1998)
96年品位法の内容を縮小したもの。インターネットの情報提供業者が、営利目的で17歳未満の未成年に有害な情報を配布することを禁じた。再び合憲性が問われ10年以上にわたる係争後、2009年同法は事実上消滅した49
1998年児童オンラインプライバシー保護法50
(The Children’s Online Privacy
Protection Act of 1998、COPPA)
児童向け商用サイトで13歳未満の児童の個人情報を収集する際,保護者の同意や情報漏洩
防止などを義務付けたもので、2000年より施行された。FTCの管轄。2012年5月、オバマ大統領とFTCは同法をさらに強化し、FTCの法執行権限を拡大する法案を議会に提出51。2012年12月、児童のプライバシー保護強化、保護者によるコントロール権限の拡充等を盛り込んだ同法の最終改訂版がFTC理事会で承認され、2013年7月1日より施行される52
児童インターネット保護法
(Children’s Internet Protection Act, CIPA
子どもたちをインターネットの有害なサイトから守ることを目的として2001年成立した連邦法。FCCが管理するユニバーサルサービス基金(Universal Service Fund)によるITなどの通信関連費用に対する補助(通称E-Rate53)を受給する学校や公立図書館が対象。E-Rateによってインターネット関連費用の補助を受給する条件として、施設内で使用されるインターネットでは、子どもたちがわいせつ、児童ポルノ、及びその他有害な内容のサイトにアクセスできないようにすること、未少年による使用状況の監視などを含む同法に則ったインターネット規則を作成することが要求される。公私立の小学校から高校80-90%が同優遇措置を利用している54
2002年ドット・キッズ法55
(Dot Kids Implementation and Efficiency Act of 2002)
13歳未満の児童に有害でないウェブサイト に、独自のドメイン名(.kids.us)を与えるこ とにより、子どもたちに安全なウェブサイトを明確にするのが狙い。
21世紀の児童保護法56
(Protecting Children in the 21st Century Act)2008年
インターネットのもつ危険を子どもたちに教育するため、保護者、教育関係者、インターネット業界の協力、各種プログラムの実行を 要請する法律。特に政府よりE-Rateの補助金を受ける公立学校及び図書館は、ネット上の有害サイトから児童を守るためのプログラムを実施することが義務付けられている。
同法は、2011年8月に改定されている。
2006年アダム・ウオルシュ児童安全法57
(Adam Walsh Child Protection and Safety Act of 2006)(別名「性虐待者登録・通知法」(The Sex Offender Registration and Notification Act.)
未成年を有害なサイトへ誘導するために、紛わしい言葉や画像を掲載することを犯罪と
みなす。性犯罪から子どもを守るための法の一部。

(出典:Mota, Sue Ann論文)

表1-3-2:児童ポルノ取締り機関58
取締り局 概要
司法省犯罪部、児童搾取及びわいせつ課
(Child Exploitation and Obscenity Section, CEOS)
ポルノ等、児童を対象にした搾取や猥褻行為の調査及び起訴。連邦、州、地方検察官や法取締り官へ訓練を施す。
http://www.justice.gov/criminal/ceos/
連邦関税サービス局、サイバー密輸センター
(Cyber Smuggling Center)
児童ポルノの国際的製造及び配給を主に規制する。
http://www.cbp.gov/xp/cgov/home.xml
サイバー・チップライン (Cyber Tipline)
The National Center for Missing & Exploited Children ,(NCMEC)、連邦郵便審査サービス局、関税局、FBI
インターネットによる児童搾取に関するオンライン情報サイト
http://www.cybertipline.com
イノセントイメージ
(Innocent Images)
オンラインによる児童搾取に関するケースについて、FBIによる調査を調整する中央運営及び管理システム。
http://www.fbi.gov/statsservices/publications/innocent-images-1/innocent-images-national-initiative
児童に対するインターネット犯罪
(Internet Crimes Against Children, ICAC)
司法省未成年侵犯防止局
未成年侵犯防止局によって始められたタスクフォース。州、地方の法執行機関に対し、オンライン児童搾取に関する犯罪調査の補佐をする。 http://www.ojjdp.gov/programs/ProgSummary.asp?pi=3
全米失踪・被搾取児童センター
(National Center for Missing & Exploited Children 、NCMEC)
サイバー・チップラインを運営する非営利団体。他のエージェンシーに対し技術的補佐や訓練を提供する。
http://www.missingkids.com
全国性犯罪者公的レジストリー
(National Sex Offender Public Registry)司法省
全米の性犯罪前科者の住所が記載されたレジストリー。
http://www.nsopr.gov
合衆国郵便検査サービス局
(U.S. Postal Inspection Service)
郵便による児童ポルノ配給の調査。オンラインでの違法行為は、郵便物で補われていることが多くある。