第1章 アメリカ

3 青少年のインターネット利用環境(レイティング、ゾーニング)に関する 制度、法及び政策とその背景

(4)民間企業や業界団体による自主規制

以上、連邦や州による取組事例を見てきたが、上記以外の一般的なオンライン規制は、民間企業や業界団体による自主規制がほとんどである。具体的には、コンテンツのレイティングとラベリングによるフィルタリングが、現在、児童に有害なコンテンツへの対抗策として主流となっており、情報サービスのプロバイダーに対し、未成年者へのアクセス制限を課したり、保護者や学校等にフィルタリングツールを使用することを要請または指導したりするなどの方策がとられている。

(5)ウェブサイト運営者等が青少年による有害情報の閲覧を制限する措置などを取った場合における民事責任の制限

米国では、児童インターネット保護法(CIPA)に抵触するという理由から、子どもにとって有害と判断されるポルノ等のオンラインコンテンツへのアクセス遮断を政府が要請できるのは、政府からE-Rateとよばれる補助金を受給する学校または図書館の閲覧サイトに限られている。このため本項目に該当する訴訟ケースも学校または図書館に関するものしかなく、民間の企業、組織等におけるフィルタリングが原因の訴訟は見られなかった。

●事例1:
ミゾーリー州キャムデントン学校区とACLU(American Civil Liberties Union、米自由人権協会)67の事例
2011年5月、ACLUは、ミゾーリー州キャムデントン学校区で使用しているフィルタリングソフトが、同性愛者、両性愛者、性転換者関連サイトへのアクセスを遮断しているとして訴訟を起こした。訴えの内容は、同学校区で使われているフィルタリングソフトは、「性的」内容のコンテンツはすべて遮断するため、同性愛者、両性愛者、性転換者を支援する関連サイトも阻止されるが、それらのグループを非難する反同性愛者などのサイトにはアクセスするため、差別的であるというものである。ACLUは、学校区に対し、差別的フィルタリングの使用を停止する、もしくは、より中立的なフィルタリングソフトと交換するよう要請。この訴えに対し、2012年2月、連邦地裁は同学校区に差別的フィルタリングソフトの使用停止を命じた。同学校区は、同性愛者、両性愛者、性転換者支援サイトへのアクセス遮断を停止し、12.5万ドルの裁判費用の支払いに応じた。
●事例2:
イリノイ州アボカ学校区とACLU68の事例
2012年5月、ACLUがイリノイ州の学校区(Avoca School District 37)に対しても同じ理由で訴訟を示唆したところ、学校区側が譲歩し、フィルタリングソフトの内容を変更して、同性愛等のサイトへのアクセスを許可したため、訴えを取り下げた。結果として、この変更により少なくとも30件ものポルノサイトへのアクセスを認めることとなった。
●事例3:
コネチカット州セーラム公立図書館と一般女性利用者69の事例
2010年7月、コネチカット州セントルイス市郊外のセーラムにある公立図書館のコンピューターで、一般女性利用者がアメリカ原住民の宗教について調べようとしたところ、それらのサイトは「カルト」として扱われ、アクセスができなかった。女性はACLUの協力のもと図書館を相手取り訴訟を起しており、現在も係争中である。