第2部 調査の結果

第1章 アメリカ

4 青少年のインターネット利用環境(レイティング、ゾーニング)に関する民間機関の取組や現時点における青少年のインターネット利用環境に関する民間団体の取組の内容

(1)青少年のリテラシー能力向上のための活動

ここでは、連邦政府と民間団体が提携した全国レベルでの取組、カリファルニア州とニューヨーク州における、州政府と民間団体が提携した州レベルの活動、企業による取組、民間団体による取組について記述する。

ア 連邦政府及び連邦政府と民間団体の提携による全国レベルでの取組
表1-4-1:連邦政府と各機関による取組
FBI-SOS
(Safety On line Surfing)70
子ども達に安全なオンライン利用を教育、啓蒙するためFBIが2012年10月より始めた新しいオンラインプログラム。3年生から8年生を対象に、各学年に応じたゲーム、ビデオ、その他メディアで、子ども達が楽しみながら携帯電話、ソーシャルメディア、チャットルーム等に関連したオンラインの安全性を学べるように工夫されている。子ども達がコースを修了すると終了テストを受けFBIによって採点される。各教室や学校で登録した場合、参加生徒数に応じて、ランク付けされ、上位の学校は、表彰及び地方のFBIエージェントの訪問を受ける。また生徒をサイバー安全性コースに登録した教員または学校は授業ガイド等へのアクセスができる。
i-SAFE Inc.71 未成年の安全なインターネット利用を目指し1998年に創立された非営利団体。全米50州のほか国防省も支援しており、同省管轄下の海外における米国の全学校にも普及している。
小学校から高校までインタラクティブな授業の指導、地域の警察等と提携した生徒への指導、及び家庭、地域への啓発活動を推進している。
The National
Cyber Security
Alliance (NCSA)72
国土安全保障省(The Department of Homeland Security)とMicrosoft, CISCOなどの民間企業とが提携し、家庭、中小企業、小学、中学、高校を対象に、オンラインの安全利用を推進する官民による非営利団体。主な活動に、サイバーの安全意識月間(National Cyber Security Awareness Month)の主催や「ストップ、シンク、コネクト(Stop. Think. Connect)」 キャンペーン等がある。その他、オンラインでは、学年別に、授業でオンラインの安全な使用等を取り上げる際のアドバイス、教材を提供する。
イ 州政府と民間団体の提携による州レベルでの取組

全米50州から、西・東海岸で、政治的、経済的、文化的に重要な州であるカリフォルニア州とニューヨーク州を取り上げてみた。

(ア)ニューヨーク州における活動

同州政府の国土安全緊急サービス課のウェブサイトには、児童のオンラインの安全に関するページがあり、保護者、教育者等に、児童をオンラインの有害なコンテンツや犯罪から守る方法や関連サイトのリンクを掲載している。また、子ども達にインターネットの持つ危険性を自覚させる目的で、毎年オンラインの安全な活用を呼び掛けるポスター(Kids Safe NYS Online Posters)を小学校から高校までの児童を対象に募集し、コンテストを開催している73

(イ)カリフォルニア州における活動

同州政府のウェブサイトであるCyber Safety for Children74は、プライバシー保護カリフォルニア事務局(the California Office of Privacy Protection )と市民団体が集結してできた「児童のインターネット安全のためのカリフォルニア連合(the California Coalition on Children's Internet Safety)」とが協力して、同州の児童を有害なオンラインコンテンツから守ることを目的に2006年に立ち上げたものである。 同市民連合には、州政府機関、学校、図書館、PTA、マイクロソフト等のコンピューター関連企業、フェイスブック等のオンライン企業、非営利団体などが参加。教育者、保護者の啓蒙及び教育を行い、インターネットにはフィルタリングソフトを利用することを奨励する。

ウ 企業による取組:Facebook社とTime Warner社によるネットいじめ防止への取組

2011年10月、Facebook社は、Time Warner社と共同で、オンライン上でのいじめ撲滅を目的とするサイト、「The Stop Bullying: Speak Up Social Pledge App」75を立ち上げた。ユーザーがサイト上で「いじめをしません、させません」といった誓い立てることができるもので、これまでに137,660人が参加している(2013年1月22日現在)。誓いをたてたユーザーがそれぞれのFacebookにこのキャンペーンの広告バナーを掲載したり、友人を誘ったりすることで輪が広がりつつある。Time Warner社のネットワーク各社、CNN、Cartoon Network、出版業界のTimes社などもこのキャンペーンに協力しており、複数のメディアプラットフォームがプロモーションを展開している76

エ 民間団体による取組

子どもの安全なオンライン使用を訴える市民団体を以下のとおりまとめた。

表1-4-2:子どもに安全なインターネット環境改善運動を行う主な民間団体
民間団体名 活動概要
Family Online Safety Institute (FOSI) インターネットの安全な利用を促すため、2007年に発足した国際的な非営利団体。現在3つのキャンペーンを実施している。
1:ブロードバンド責任認識キャンペーン(Broadband Responsibility Awareness Campaign、以下BRAC)77
  FOSIは、子どもにとって安全なインターネット環境を実現するには、以下の6方面からの自主的な努力及び協力が必要であると主張している。
<1> 政府の責任:適度な監視及び監督、サポート体制、リサーチ資金の提供、国民に対する啓蒙活動、適度な法律の立案。
<2> 法執行機関の責任:洗練された高度な技術を使った犯罪に対処できうる人材の育成、環境整備の拡充。
<3> インターネット業界の責任:より高度なプライバシーコントロール、ペアレンツコントロール等のソフトウェアの開発及び消費者への啓発活動。
<4> 教師の責任:子どもにオンラインの利用方法を学ばせるだけでなく、急速に進化するIT技術を効率的に授業に取り入れることのできるIT分野に精通した教師の必要性。
<5> 保護者の責任:子どものオンライン行動を熟知し、さまざまなオンライン携帯(ソーシャルメディア、テキストメッセージ、ビデオゲーム、携帯電話等)を利用したやり取りに関する基本的知識を身につけ、理解を図る。
<6> 子どもの責任:オンラインを利用するにあたって、賢明な選択と正しい判断が出来るよう心がける。
2:オンラインの安全に関する大統領夫人のイニシアティブ(The First Ladies Initiative for Online Safety)78
世界各国の大統領夫人が、子どもや家族のためにインターネット環境を改善させることを目的に結束し、各自国民の教育、啓蒙活動を推進しようとするもの。大統領夫人による宣誓写真や宣伝の掲載のほか、各国間による情報のやり取り等を通して、インターネット環境改善の重要性に関する認識を国内及びグローバルに向上させ、国際的な協力体制を構築することが狙いである。メキシコ、ドミニカ共和国の大統領夫人が参加している。
3:「運転中の携帯メールはあとで(Texting While Driving…It Can Wait)79 」キャンペーン   AT&Tなどによる運転中に携帯メールを操作するドライバーの習慣をなくそうとする運動、「運転中の携帯メールはあとで(Texting While Driving…It Can Wait)80 」に協力している。
CP80 Foundation81 現状のポルノサイト任意規制では不十分だとして、より強力な法的フィルタリング規制を求め、2006年にユタ州で設立された非営利団体。主な活動はC80インターネットゾーニングイニシアティブの推進。
内容は<1>ゾーニング技術適用の推奨、<2>インターネットコミュニティポート法(The Internet Community Ports Act(ICPA))の作成、推奨、宣伝、<3>規則の作成及び違反行為の取締りなどのインターネットガバナンスの推進82
Internet Education Foundation (IEF)83 市民及び立法関係者に対するインターネット促進を目的に設立されたインターネット業界団体によって運営される非営利団体。
理事会メンバーは、グーグル、コムキャスト、マイクロソフト、大学関係者等が占めている。児童の安全なオンライン利用を支援するGetNetWise84というウェブサイトを運営し、プライバシー保護、スパムメールへの対応、有害コンテンツのフィルタリングなどに関する啓蒙活動を行っている。
Morality in
Media (MIM)85
メディアにおけるわいせつや下品なコンテンツに抗議することを目的に1968年に設立された非営利団体。
そのモットーは「法を通して品位のある社会を推進する」することである。
MIMは、わいせつなメディアコンテンツに関する法の情報センターである、全国わいせつ法センターを管理運営主体でもある。
現在は、「違法ポルノとの戦争(War on illegal pornography)86」運動を推進中であり、オバマ大統領への嘆願を実現させるため、専用サイトではユーザーにオンラインでの参加を呼びかけている。
 この他にも、市民への教育プログラムも提供している。
National Center
for Missing and
ExploitedChildren (NCMEC)87
子ども誘拐及び性的搾取の防止を目的にする非営利団体。NCMECのNetSmartz Workshopサイトは、児童、保護者、教育者等にインターネットの安全な利用についてアドバイスしている。
The Tech Parenting Group 1999年にカリフォルニア州サンノゼ市で設立された非営利団体。保護者へのインターネットに関する教育、啓蒙を目的としたオンラインニュース、The Net Family News88の配信から始まった。
姉妹サイトである、ConnectSafely.com89は、保護者、教育者だけでなく、未成年がアクセスしやすい構成となっており、現在の多種多様なオンライン形態によるウェッブ2.0の安全に活用するための情報を掲載している。
その他姉妹サイトとして、SafeKids.com90、Safeteens.com91があり、子ども向け、10代の未成年者向けのリテラシー向上のための情報が掲載されている。
Net Literacy92 2003年に中学生によって設立された非営利団体であり、理事会メンバーの50%は現在も学生である。
地域の福祉プログラムなどを通して未成年者の慈善活動や地域活動を促進している他、公立学校へのコンピューターやインターネットの利用方法の普及やインターネットの安全利用に関する指導を行っている。
The Internet
Safety Technical
Force93
IT業界、技術開発企業、団体、ハーバード大学を中心とする学会によって結成された非営利研究調査団体。全米50州の司法長官によって組織されている「SNSに関するワーキンググループ」(the Attorneys General Multi-State Working Group on Social Networking and MySpace)の要請に基づき、未成年者のための安全なインターネット利用について研究することを目的に、2008年に設立された。
2009年の研究報告書では、IT業界、法執行機関等が提携して統一した政策を打ち出す必要があると主張している94