第1章 アメリカ

4 青少年のインターネット利用環境(レイティング、ゾーニング)に関する民間機関の取組や現時点における青少年のインターネット利用環境に関する民間団体の取組の内容

(2)ウェブサイト運営者に対するガイドライン策定

前述のように、米国では、憲法修正第一条の言論・出版における表現の自由との関係上、政府によるオンライン規制が難しいため、ガイドライン策定は、民間の各オンライン業者や非営利団体などの裁量に委ねられている。FCCは、児童に安全なインターネット環境を整えるよう、オンライン産業界に要請しており、各業界でも自主的にガイドラインが作られている。その中でも、後述のCTIAによるESRB等の既存のレイティングシステムを利用した、ワイヤレスコンテンツ及びレイティングのガイドラインが最も新しく有力である。その他、マイクロソフト、アップルなど、主要なコンピューターソフト企業は、保護者が使用を判断することのできるフィルタリング機能を提供している他さまざまな非営利団体に協力し、保護者の啓発、教育を行っている。

ア Family Online Safety Institute (FOSI) 95によるオンラインコンテンツレイティングの試みと挫折

FOSIは、インターネットの安全な利用環境の促進のために米国で2007年に発足した国際的な非営利団体である。FOSIは、憲法修正第一条の言論・出版における表現の自由を守りながら、ネットコミュニティの安全性向上を目指し、特に子どもと家族のオンライン上の安全確保を目的とする活動を行っている。具体的には、一般市民対象の啓発活動やコンテンツのラベリング、コンテンツまたはウェッブに関する技術的なアドバイスを行っている。主なメンバーには、マイクロソフト、シスコシステム、フェイスブック、AT&T、AOLなどのインターネット関連企業がある。
FOSIの前身は、1994年に設立されたインターネットコンテンツレイティング協会(The Internet Content Rating Association (ICRA))であり、オンラインコンテンツの評価及び格付けを行っていた。ICRAのレイティング方法とは、ウェブマスターやコンテンツ提供者に、自己のコンテンツ内容を評価判断させ、ICRAのシステムを利用してラベリングさせるものであった。評価カテゴリーには、<1>チャット、<2>言語、<3>ヌード及び性的なコンテンツ、<4>暴力、<5>ギャンブル、薬物、アルコール類の5種類あり、コンテンツの提供者がオンライン上のアンケートに回答し、その結果が格付けに反映されるのである。一方、未成年者を持つ保護者はフィルタリングソフトを使い、自分で設定したレベルのコンテンツのみを受信することができる仕組みになっていた。しかし、ICRAに加盟しているコンテンツ企業は全体のほんの一握りであるうえ、そのほとんどが自己のサイトのレイティングを行っていない。オンライン上の膨大な量の情報1つ1つにICRAがレイティングを付けることはまず不可能であるため、レイティングされたコンテンツが僅かであれば、このフィルタリングシステムの存在自体無意味といえる。その他、保護者への啓発活動も不十分で、フィルタリングソフトを積極的に利用する人口は少なく、ICRAレイティングは結局当初の計画通りには普及浸透しなかった。その結果、2010年にはICRAレイティングは完全に停止された96
現在、ICRAレイティングに取って代わるようなガイドラインは新たに作成されていない。FOSIのオンラインの安全性に関する基本的な考え方は、オンラインの危険より児童及び家族を守るためは、適度な政府による監視及び援助と民間による自主規制が両方不可欠である、というものである97

イ CTIA (Cable Telecommunications & Internet Association)

1984年に発足した、ワシントンDCに本部のある、ケーブル電話通信・インターネット協会(以下CTIA)は、国際的非営利通信業界団体である。CTIAは、2004年、FCCの要請により、スマートフォン等の、モバイル端末コンテンツに関する自主規制指針である「ワイヤレスコンテンツ及びレイティング指針(Guidelines for App Content Classification and Ratings)」を作成した。この指針においては、ワイヤレス事業者は以下にあげる内容を実施することが奨励されている。

(ア)ワイヤレスコンテンツ及びレイティングのガイドライン98

2010年ワイヤレスコンテンツ及びレイティングのガイドラインについて、以下のとおりまとめた。

・コンテンツのレイティング基準の開発(ただし、コンテンツ・レイティングを採用実施するかどうかは、個々の事業者の裁量によるものとする。)

・事業者は、18歳未満の未成年による適切でないコンテンツへのアクセスを制御すること。他の関連業界による基準を参考にし、コンテンツを最低限、全年齢対象のもの(Generally Accessible Carrier Content)と18歳以上対象のもの(Restricted Carrier Content)の2種類に分類する。

  

・既存のレイティングシステムの効果的活用。

  

・ユーザーへのレイティングによる効果を最大にするために、コンテンツが同指針に準じているかどうかをモニターし、ユーザーのフィードバックを評価するプロセスを作り上げる。また、ユーザーがコンテンツを購入または、ダウンロードする前に、そのレイティングについての説明がなされるようにし、レイティングによっては、アクセスコントロールを提供する。

  

・事業者は、未成年の保護に関する合衆国の法律に準じ、通報された違法とされる有害なコンテンツに関しては、法執行機関の指示に従い協力すること。

  

・情報とアプリケーションへのアクセスをコントロールするツールを消費者へ提供し、教育、啓発を推進する。

2011年11月には、国内の主要なワイアレスサービスプロバイダー6社(AT&T, Sprint, Microsoft, T-Mobile USA, U.S. Cellular, Verizon Wireless)と協力して開発したモバイル端末アプリケーション用レイティングシステムを発表した。このレイティングシステムは、上記の6社によるワイアレス端末で利用可能であるほか、CTIAは、その他のワイアレスサービスプロバイダーにも自主的な採用を奨励している。レイティングには、元来ビデオゲームのソフトウェア用の格付けであった、ESRBのレイティング方法を採用したが、これは、ESRB によるものが一般に最も普及し、信頼されるレイティング方法であるためだと説明している99

(イ)ワイヤレスキャリアコンテンツ分類ガイドライン100

子ども達の多くが携帯電話を単に通話とテキストメッセージ(メール)だけの目的で利用していた2004年に、CTIAはすでにインターネットなどのワイヤレスキャリアコンテンツの分類のためのガイドラインを策定していた。以下は、その内容である。

表1-4-3:CTIAワイヤレスキャリアコンテンツ分類ガイドライン101
携帯アクセス可能 (CA: Cellular Accessible) 携帯アクセス制限 (CR: Cellular Restricted)
●以下のレイティングのつくマテリアルはすべてアクセス可能なコンテンツである。
・TV-Y102
・TV-Y7
・TV-G
・TV-PG
・TV-14
・Edited TV-MA(制限コンテンツ識別子を含まない場合)
・MOVIE-G
・MOVIE-PG
・MOVIE-PG13(ヌード画像なし)
・Edited Movie-R (制限コンテンツ識 別子を含まない場合)を含まない場合)
・ESRB-EC103
・ESRB-E
・ESRB-10+
・ESRB-T
●以下のレイティングのつくコンテンツの編集されていない、または完全なバージョンは制限つきコンテンツである。
・MPAA104-R
・MPAA-NC 17
・Movies Unrated
・TV-MA
・TV-Adult or Unrated Adult
・ESRB-M
・ESRB-A
●MPAA、TV Networks、ESRBでレイティングされていないものでも、以下の内容を含まないコンテンツはアクセス可能である。
・汚い言葉、冒涜(Intense profanity)
・激しい暴力(Intense violence)
・性行為の画像(Graphic sexual activity or sexual behaviors) ・ヌード(Nudity)
・人種差別的発言(Hate speech)
・麻薬関連画像(Graphic depiction of illegal drug use)
●MPAA、TV Networks、ESRBでレイティグされているものでも、以下の内容を 含むコンテンツはアクセス制限つきコンテンツと見なされる。
・汚い言葉、冒涜(Intense profanity)
・激しい暴力(Intense violence)
・性行為の画像(Graphic sexual activity or sexual behaviors)
・ヌード(Nudity)
・人種差別的発言(Hate speech)
・麻薬関連画像(Graphic depiction of illegal drug use)
・ギャンブルなど未成年にとっては違法となる行為を含む画像

(出典:CTIA Content Class Criteria)

(ウ)消費者位置情報に関するガイドライン105

CTIAは、会員企業と協力し、消費者位置情報に関する自主的なガイドラインを策定した。これにより、消費者の所在位置に関する情報が利用される時には、緊急事態を除き、消費者にその旨の知らせが届き、それに同意することが奨励されている。