第2部 調査の結果
第1章 アメリカ
4 青少年のインターネット利用環境(レイティング、ゾーニング)に関する民間機関の取組や現時点における青少年のインターネット利用環境に関する民間団体の取組の内容
(3)インターネット上の情報の分類(レイティング、ゾーニングなど)
現時点におけるインターネットの安全使用のための情報の分類方法としては、コンテンツをレイティング(評価)し、有害であるとレイティング(評価)されたコンテンツについては、消費者側がフィルタリングソフトを使って排除する、という方法が最も普及している。
インターネット・コンテンツのレイティング基準には、ゲームソフト、テレビ、映画などの伝統的なメディアコンテンツの世界ですでに普及浸透しているMPAA、TV Networks、ESRBらのレイティングシステムを導入している。しかし、映画やテレビ番組などのメディアコンテンツ以外で、インターネット上で公開されているウェッブサイト、動画、ブログ等の一般ユーザー作成コンテンツの場合には、その量の膨大さゆえ、すべてのコンテンツについてレイティングを行うことは難しい。
そのため、ユーザー同士でお互いのコンテンツをモニターし合い、それらの安全性・有害性を表示するタグや旗等を付与するラベリングという情報分類方法の使用が、多くのウェブサイトで奨励されている。
ア ESRBレイティング
ESRB106レイティングとは、親たちにテレビゲーム、アプリケーションなどのコンテンツについて、簡潔かつ客観的な評価情報を提供するレイティングシステムである。
ESRBレイティングの特徴として、コンテンツの想定対象を年齢層別に区切った分類基準に基づくレイティング・カテゴリー(Rating Categories)という分類方法が挙げられる。
レイティング・カテゴリーの分類107を以下にまとめた。
分類種類 | 分類基準 |
---|---|
EARLY CHILDHOOD | 幼い子ども向け(for young children)コンテンツ。 |
EVERYONE | すべての年齢層向けコンテンツ。 最小限の風刺漫画(minimal cartoon)、空想的内容(fantasy)、軽度の暴力(mild violence)、緩やかな言葉遣い(mild language)の低頻度使用を含む。 |
EVERYONE 10+ | 10歳以上の子ども向けコンテンツ。 より多くの風刺漫画、空想的内容、軽度の暴力、緩やかな言葉遣い、最小限の挑発的テーマ(suggestive theme)を含む。 |
TEEN | 13歳以上向けコンテンツ。 暴力、挑発的テーマ、下品なユーモア(crude humor)、最小限の流血(minimal blood)、仮想ギャンブル(simulated gambling)、乱暴な言葉遣い(strong language)を含む。 |
MATURE | 17歳以上向けコンテンツ。 激しい暴力(intense violence)、流血(blood and gore)、性的内容(sexual content)、乱暴な言葉遣いを含む。 |
ADULTS ONLY | 成人向けコンテンツ。18歳以上の成人のみにふさわしい。 長時間に渡る激しい暴力(prolonged scenes of intense violence)、あからさまな性的内容(graphic sexual content)、現金通貨を用いたギャンブル(gambling with real currency)を含む。 |
RATING PENDING | 審査予定。ESRBレイティングの最終評価を受けていない段階。 ゲームに関連した広告、マーケティング、プロモーション用の素材にのみ現れるコンテンツ。 |
(出典:ESRBレイティングガイド)
図1-4-1:ESRBレイティング
(出典:ESRB サイト)
※略語説明: E:6歳以上の全年齢対象、EC:3~10歳、E10:10歳以上、 T:13~17歳、M:17歳以上、AO:18未満提供禁止、RP:審査予定
イ コンピューターソフト会社によるオンラインレイティング
マイクロソフト社のOSソフト、Windowsには、保護者用のアクセスコントロール(Parental Control)機能がついており、それによって子ども達のオンライン活動をモニター、管理することができる。セットアップの方法は同社のウェッブサイト上でビデオでも説明されている。
図1-4-2:Window Vista 保護者用アクセスコントロールセットアップ画面
(出典:Windows Vista保護者用アクセスコントロールセットアップ画面)
- <1>保護者用アクセスコントロールをオンにし、監視状態にする。
- <2>モニターする未成年のアカウントのオンライン使用状況についての情報報告を受け取るか、受け取らないかを選択する。
- <3>アクセス制限の度合いを選択する。
‐高: アクセスは子ども対象のプログラムに限定されグーグル等の検索エンジンにもアクセスできない。
‐中:未成年に有害な成人用コンテンツ、暴力、麻薬といったサイトへのアクセスに制限がある。
‐なし:制限がまったくない。
‐カスタマイズ:アクセスを制限したい項目を以下の選択肢より選ぶ。
ポルノ、成人向きコンテンツ、差別的言葉、性教育、爆弾製造、武器、麻薬、アルコール、煙草、ギャンブル、レイティングされていないコンテンツ - <4>タイムリミット:子どもがオンライン使用する時間を月曜から日曜まであらかじめセットすることができる。
- <5>オンライン上のゲームの種類をレイティング、内容、またはタイトル別にフィルターできるように設定できる。ESRBのレイティング方式が使用されている。
- <6>上記のフィルタリングで削除またはアクセス許可されるものの中で、例外的に許可または削除したいサイト名などを指定でき、フィルタリングをカスタマイズできる。
マイクロソフト社が2012年10月末にリリースした新型OSソフト、Window8には、さらに充実した保護者用アクセスコントロール機能が搭載されている。
Windows8は、旧版に備わっていたアクセス制限機能に加え、下記の機能が追加されている108。
・フィルタリング:フィルタリングレベルが増え、保護者の選択肢が拡大した。
・子どものアカウントの設定をする前に、保護者が、"Family Safety"機能をオンにしておくと、子どものオンライン活動に関するレポートが毎週送られてくる(以下、図1-4-3参照)。それによって、保護者は、子どものオンライン行為の傾向を把握でき、フィルタリングを設定する際、より現実的で効果的なものにすることができる。
・セーフサーチ(SafeSearch):フィルタリング機能がオンになっている場合にグーグルやヤフーなどの探索エンジンを利用すると、"SafeSearch"機能により、自動的に、アクセス制限レベルが厳しいレベルにかわり、有害なコンテンツを排除する。
・ウィンドウストア:ウィンドウストアにおけるダウンロードの履歴についての報告書が送られてくる。
また、Windows8では、子どもたちのユーザーアカウントを作成し「Family Safety」機能を有効にすることによって、子どもたちのPC上・インターネット上での活動を知らせるウィークリー・レポートを両親が受信できる機能も追加されている。
ウィークリー・レポートでは、1週間に最も頻繁にアクセスしたウェッブサイト、インターネット活動に費やした時間、1週間のオンライン滞在時間を一覧できる109。
図1-4-3:子どものオンライン活動に関するウィークリー・レポートのサンプル
(出典:CNET News、5/12/2012)
ウ モバイル携帯におけるESRBレイティング
モバイル携帯におけるESRBレイティングの例として、CTIAによるワイヤレスアプリケーションのESRBレイティングについて説明する。
◎CTIAによるワイヤレスアプリケーションのESRBレイティング110
2011年、CTIA は、内容によって対象年齢が格付けされる、ビデオゲーム用のレイティングシステムに類似した、ワイヤレスアプリケーションに対する、自主的なレイティングシステムを開発するため、ESRB と提携した。これには、 AT&T、Microsoft、Sprint、 T-Mobile USA、U.S. Cellular、Verizon Wirelessが参加している。上記の企業が、各自のコンテントフィルターにそれらレイティングを配置すると、保護者は子どもの年齢に適切なアプリケーションを選択することができるようになる。CTIAは、この新レイティングシステムを、子どものワイヤレス環境を安全なものにすることを目的に推進中のイニシアティブ、「家族ルール(Family Rule)」の一環として、ウェブサイト上で推奨している。