第2部 調査の結果

第2章 イギリス

3 青少年のインターネット利用環境に関する制度、法及び政策とその背景

(1)近年の政策の基礎となった2大調査

2007年以降、イギリス政府は青少年のインターネット利用環境に関する施策を講じるため、実態調査を実施。その結果、バイロン・レビュー(The Byron Reviews)およびベイリー・レビュー(The Bailey Reviews)などが発表され、これらの報告書の提言内容が、現在の諸施策の基礎となっている。

ア バイロン・レビュー(The Byron Reviews) 173

2007年、当時の労働党政権がタニヤ・バイロン教授(Professor Tanya Byron)に依頼して、青少年のインターネットやビデオゲーム利用によるリスクについての実態調査を実施した。バイロン教授(1967年生、サリー大学にて博士号取得)はテレビや新聞で活躍する児童心理学者で、子供のしつけに関するテレビ番組で広く知られている。子育てに関する著作も多い。バイロン教授がまとめた調査結果報告書「デジタル世界で子どもたちがより安全であるには」(Safer Children in a Digital World)」174は2008年に発表された。この報告書をもとに、以下<1>~<6>の内容のアクションプラン175がまとめられた。

<1>英国青少年インターネット安全協議会(UK Council for Child Internet Safety、以下「UKCCIS」という)の設立

<2>よりよい規制の制定

<3>一般市民への情報提供とインターネット上の安全確保の意識向上

<4>青少年とその家族への教育の強化

<5>ビデオゲームのレイティング制度の改正

<6>ビデオゲームに関する家庭への情報提供と支援

このバイロン・レビューの提言を受けてUKCCISが設立され、官民共同で数々の活動が実施された。さらに、活動の進捗状況を見直す第2回バイロン・レビュー176が2010年3月29日に発表された。この後政権が連立政権に変わった現在も、バイロン・レビューによって定められた方向性を変えることなくUKCCISの活動はさらに幅を広げて続けられている。
バイロン・レビューのうち、レイティング、ゾーニングに関連した提言内容は以下の<1>~<8>のとおりである。

<1>ビデオゲームに関して、イギリスに2つ存在する年齢別レイティング制度を1本化し、簡素化を図ること

<2>年齢別レイティングについて親に対する啓蒙活動を徹底すること

<3>12+PEGI、またはそれ以上のレイティング表示の商品を、対象年齢以下の者へ販売することを違法とすること

<4>ビデオゲームの広告は年齢別レイティングに適したものとすること

<5>ゲーム機のペアレンタルコントロールを初期設定でONに設定してしまうと親が無関心になるため、実施せず、より使いやすく、より明確な仕組みを提供すること

<6>初期設定の段階で必ずペアレンタルコントロールをONにするオプション(「アクティブチョイス(必須選択)」と呼ばれる)を設けること

<7>オンラインゲームの年齢別レイティングについて周知活動を徹底すること

<8>業界は年齢確認メカニズムの適正な実施方法を探求し、子どもが正しい年齢を登録するようなインセンティブを設けること

イ ベイリー・レビュー177

2010年12月6日に政府はレグ・ベイリー氏 (Reg Bailey:世界83カ国に400万人以上の会員を有するマザーズユニオン(Mothers’ Union)の最高責任者。2013年にはベイリー・レビューに関する功績が認められ大英勲章第3位受賞。) に、客観的な立場からメディアが青少年に与える影響に関する調査を実施するように委託。レグ・ベイリー氏による調査報告書「子どもが子どもらしくいられるようにするには(Letting Children be Children)」178が2011年6月6日に発表された。この報告書内では数々の提言がされているが、その主なものは以下の<1>~<5>のとおりである。

<1>雑誌や新聞の性的なイメージは隠し、すぐに子どもの目に付かないようにすること

<2>性的画像の街頭広告は、子どもが目にする可能性の高いところでは減らすこと

<3>放映時間制限付きのテレビ番組については、その内容が親の期待に沿うようにすること

<4>ミュージックビデオに年齢別レイティング制度を政府が導入すること

<5>インターネット上の成人向けや年齢制限付きコンテンツを、親が簡単に遮断できるような仕組みをUKCCISが作成すること

この報告書には各関係組織が好意的な反応を示した。4「ミュージックビデオへの年齢別レイティング制度の適用」については、政府が関係各者への打診を行い意見の取りまとめを行っている179
ベイリー・レビュー内のレイティング、ゾーニングに関連した提言内容は以下のとおりである。

<1>ミュージックビデオに年齢別レイティング制度を導入すること

<2>成人向けや年齢制限付きのインターネット・コンテンツに、子どもがアクセスできないよう、親によるフィルタリングを容易にすること