第2部 調査の結果

第2章 イギリス

3 青少年のインターネット利用環境に関する制度、法及び政策とその背景

(3)制度、法および政策

ア ゲームのレイティング:PEGIに関する新たな法規制191192193194195
(ア)PEGI

ゲームの汎欧州レイティング制度として「PEGI (Pan European Game Information、以下PEGIという)」196がある。これはゲームのパッケージにコンテンツの対象年齢と特徴を表記するもので、欧州諸国の年齢レイティング制度に代わるものとして自主的に開発された、欧州共通のレイティング制度である

(イ)ゲームレイティング制度の一本化

イギリスには以前よりイギリス独自のレイティングシステム(BBFC)197があり、近年は上記PEGIとBBFCレイティングとの共存状態が続いていたが、2012年7月30日に導入された新規制「ビデオ記録(ラベリング)規制2012年(The Video Recordings (Labelling) Regulations 2012)」198(この規制については後述)により、複数のレイティングが共存していた状況に終止符が打たれ、すべてのビデオゲームにPEGIレイティングのみが表示されることとなった。この変更の結果、12、16、18歳以上とPEGI表記されているビデオゲームをその年齢未満の者に販売することは違法となった。

(ウ)罰則

指定の年齢に満たない者にゲームを販売すると、最高5,000ポンドの罰金および6年以下の懲役が科されるなど、厳しい処罰の対象となる。

(エ)当局に課された義務

この新規制のもと、ゲームレイティング局(Games Ratings Authority、以下GRAという)199には、PEGIのレイティング制度を用いてゲームのレイティング業務を行う義務が付与された。GRAはまた、必要に応じてゲームを禁止する権限を行使することも、特定のゲームが3歳以下、6歳以下の子どもに不適であると提言することもできる。GRAの決定に合意できない者は、その決定に対して不服を申し立てることができる。その不服申立ては独立した立場のGRAのゲーム不服審査委員会(GAP)で審議される。
GRAは ビデオ規格委員会(The Video Standards Council、以下VSCという)の別名である。VSCはビデオゲームの年齢レイティングに関する業務については、GRAとして活動を行う

(オ)制度変更の発表

上述のレイティング制度の一本化は、もともとバイロン・レビュー200で提言されたもので、それを受けて政府が2009年6月に発表した「デジタルブリテン報告書(Digital Britain Report)」201で発表されていた。

図2-3-1:PEGIのレイティング制度

PEGIのレイティング制度

(出典:PEGIホームページ)

イ ミュージックビデオへの規制導入に関する議論とコンサルテーション202
(ア)現時点での対応

現時点ではミュージックビデオには年齢レイティングが行われていないが、これは年齢レイティングをDVD やブルーレイなどの録画・録音商品に義務付けるビデオ記録法(Video Recording Act)203(3(3)「ウ ビデオ記録法について」参照) が、音楽、スポーツ、宗教や教育などに関する録画・録音商品を適用除外としているためである。これは1984 年にこの法律が制定されたときには現在のようなミュージックビデオの出現を予想できなかったことが原因である。

(イ)ビデオゲームの規制への動き

ビデオゲームも同法の適用対象外となっていたが、それがまず上述のバイロン・レビューで問題として提起され、法改正へとつながり、規制対象となった。

(ウ)音楽ビデオ規制適用に関する主張

ビデオゲームの年齢レイティングの国会討議の中で、音楽ビデオの問題も指摘され、その後まとめられたベイリー・レビューでも、音楽ビデオにはかなり性的で挑発的な歌詞や画像が含まれているため、音楽ビデオにも年齢レイティングを適用すべきとの主張がなされた。

(エ)音楽ビデオ規制適用に対する反論

これを受けて、政府は業界への自主規制を求めたが、業界は、オンライン音楽ビデオへの年齢制限制度の適用は困難である上、混乱を引き起こすとして強く反対。ユーザー、アーティスト、サービスプロバイダーにとっても大きな負担となり収益減につながると主張した。インターネット上にはこれより遥かに悪質なものがあふれており、子どもがオンラインで消費する音楽ビデオについては親の責任との反論を展開している204205

(オ)インターネット・コンテンツが規制されない理由

ビデオ記録法の一番の欠点は、これがハードコピーにしか効力を発揮しないことである。よってインターネット上のコンテンツには当法が適用されない。(テレビで放映されるコンテンツについては、通信法(Communications Act)206の規制対象)そうはいっても、DVDやビデオに年齢別レイティングが表示されていれば、放送局やインターネット会社もその事実を重視し、責任のある行動をとるはずだとベイリー・レビューでは主張している207

(カ)議論の終結

政府側は自主規制に合意できない場合には、より厳しい法規制を設けると威嚇的態度を示し、レビュー執筆者のベイリー氏も、政府が規制で締め付けるより、音楽業界が政府と協力姿勢を示した方が関係者全員にとって楽であろうとの意見を述べた208

(キ)アンケート調査結果

その後ミュージックビデオの規制化に関して全英映像等級審査機構(British Board of Film Classification、以下 BBFCという)209が調査を実施。母親のオンラインネットワーク、マムズネット(Mumsnet)210の会員を対象にBBFCが2011年3月に実施したオンライン調査(サンプル数1,005)によれば、保護者は法律にそのような適用除外があることをほとんど認識していなかった。また現在年齢別レイティングの適用除外となっているDVDやビデオにも年齢レイティングを設けることを強く望んでいることが明らかになった。「現在適用除外となっているDVDやビデオで、子どもに不適切な内容が含まれているものに対して、BBFCの認定する年齢レイティングをつけることが提案されているが、それについてどう思うか」という質問に対する答えは、下記の図表で読み取れるように、「強く支持」が33%、「ある程度支持」が35%と、「支持する」が68%だったのに対し、「反対する」は5%であった(以下、図2-3-2参照)。

図2-3-2:BBFCが認定する年齢レイティングについての意見(%)211

BBFCが認定する年齢レイティングについての意見(%)

(出典:全英映像等級審査機構(British Board of Film Classificatio)「DVD・ビデオ等級に関する調査」より)

このアンケート調査から、親の80%が、青少年に不適切な内容を含むビデオで現在年齢レイティングの対象外となっているものは、法的な年齢レイティングの対象とすべきだと考えていること、また、人間への暴力や性的な内容のものは特に年齢レイティングの対象とすべきだと考えていることが明らかになった。

(ク)政府の示したオプション212

数ヵ月後の2012年5月に発表されたコンサルテーションペーパーで、政府は以下のオプションを提示した。

表2-3-2:オプションの種類
オプションの
種類
オプションの内容
オプション0 音楽、スポーツ、宗教や教育に関するコンテンツに関する現行の年齢レイティングの適用除外をそのまま維持する
オプション1 音楽、スポーツ、宗教や教育に関するコンテンツに関する年齢レイティングの適用除外を廃止する
オプション2 現行の適用除外の閾値を下げ、それによってより多くの商品が年齢レイティングの対象となるようにする
オプション3 現在BPIが音楽ビデオに実施しているPAS表示システムのような自主規制を他のジャンルにも導入する

(出典:文化・メディア・スポーツ省(Department for Culture, Media and Sports)
「ビデオ記録法の除外項目および映画館広告に関するコンサルテーション」より)

「オプション0」は、現在のまま何もしないというオプションであり、この主張をするには、適用除外を無くすことにより、業界に不必要かつ不相応な負担がかかるのだという論証が必要である。
「オプション1」を実行に移すには、議会で関連法案が可決される必要がある。適用除外を廃止すると、すべての映像の製作者はジャンルに関係なくBBFCに映像を提出し年齢レイティングの審査を受けることが必要になる。
「オプション2」を実行に移すには、行政レベルの法案制定が必要となる。
「オプション3」は業界の自主的な活動に依存するものである。音楽業界にはすでにPAS 表示システム213(4(4)「イ ミュージックビデオのレイティング制度:PAS」参照)が存在するので、その応用で対応可能であろう。スポーツ、宗教と教育のジャンルに関しては白紙からのスタートとなるが、PAS 表示システムを参考にして自主規範をまとめることは可能である。
政府としては、「オプション2」の適用除外の閾値を下げることが好ましいだろうとしている。このオプションを利用すれば、現在特に問題視されているような商品が法的な年齢レイティングの適用範囲に収まる一方、大多数の、無害なコンテンツには負担がかからないようにすることが可能である。
今後の動きとしては、このコンサルテーションには、多数の関係者から意見が寄せられ、現在政府はコンサルテーションの結果をまとめている。コンサルテーションの結果を受けて政府からどのオプションを最終的に選ぶのか、意思表示がなされることが予定されている。

ウ ビデオ記録法について214215

ビデオ記録法(Video Recording Act)は1984年に国会で可決されたイギリス国内法で、イギリス国内で販売若しくは貸し出される商用ビデオ-DVD、ブルーレイディスクその他のハードコピーのビデオ作品には、内務省が指名する機関によって定められた年齢レイティングが付されなければならないと定めるものである。この法律により、1912年より映画の認証を担当してきたBBFCが1985年よりイギリスの公式なレイティング機関に指定された。この法律によって一部の録画コンテンツやビデオゲームに年齢レイティングが義務付けられた一方、数種類のビデオ-主に音楽、スポーツ、宗教および教育に関するビデオは、特に過激な内容のものを除き同法適用の対象外とされた。また大半のビデオゲームも同法適用の対象外とされた。これは、20年以上前の当時は無難な内容の音楽ビデオやスポーツビデオしか存在せず、現在の状況が予見できなかったからに他ならない。
ビデオゲームについては、2012年7月30日に導入された新規制「ビデオ記録(ラベリング)規制2012年(The Video Recordings (Labelling) Regulations 2012)」によって、新たな管理機関が定められ、年齢レイティングが義務づけられた。ビデオゲームに関する国会審議のなかで、ビデオゲームに限らず、音楽やスポーツのビデオに関しても適用除外をなくすべきとの声が上がった上、ベイリー・レビューでも音楽ビデオの適応除外について政府の再考を求める意見が出されたことを受けて、現在、文化メディアスポーツ庁が関係者に、当法の適用除外項目に関してコンサルテーションを行い意見の取りまとめを行っているところである。