第2部 調査の結果

第2章 イギリス

4 青少年のインターネット利用環境に関する民間機関の取組や現時点における青少年のインターネット利用環境に関する民間団体の取組の内容

(4)インターネット上の情報の分類(レイティング、ゾーニングなど)

ア コンテンツのレイティング制度:BBFCオンライン259260261

BBFCオンライン262は2008年5月にホームエンターテイメント業界とのパートナーシップのもと立ち上げられた、全英映像等級審査機構(British Board of Film Classification、以下BBFCという)263による任意のオンライン年齢別レイティング制度で、自主規制の代表的なものと称されている。
これは映画やDVDで一般化している、U、15、18等というレイティング(後述)を、デジタルのダウンロードやビデオゲームにも広げて適用するというものである。
BBFCは1909年成立の映画法に基づいて設立された全英映画検閲機構を前身とするが、戦後政府より独立して民間団体となった。1884年以降、劇場映画だけでなく、ビデオソフトも審査対象に追加。現在では、映画、ビデオ、DVD、ビデオゲーム、広告、映画広告の審査格付けを行っている。
映画のダウンロードやストリーミングに限らず、インターネットやゲーム機、携帯電話などありとあらゆるプラットフォームを通じて消費されるものに適用される。BBFCオンラインは、バイロン・レビューの提言を受けて設立されたものであるが、市場調査会社TNS264が導入に先駆けて行った調査でも、成人の84%が、BBFCの年齢レイティングを映画以外のデジタルメディアにも拡大して適用していくことを望んでいることが明らかになっている。
BBFCオンラインは、あらゆる種類の動画に対応している。BBFCの認証を受けるとコンテンツファイルの最初に表示する「電子ブラックカード」が配布されるが、これは映画館でBBFC認証が表示されるのと同じ仕組みである。BBFCによれば、これによって消費者は信頼と安心感が得られる。参加費用は、コンテンツ・プロバイダーの場合年間£100、プラットホームホルダーの場合は£1,000からとなっている。
また、2010年12月から導入されているBBFCの「視聴格付け(Watch&Rate)サービス」を利用すれば、手数料£20プラス、コンテンツの長さに応じて£2.50/分で年齢レイティングが得られる。判定基準はDVDやブルーレイのビデオに適用される基準とまったく同じである。2012年1月までにBBFCオンラインの認証は21万4千件行われた。BBFCオンラインは広く利用されている一方、大手がすべてこれを利用しているわけでもなく、例えば、会員制映画DVDクラブであるラブフィルム(LoveFilm)やメディアライブラリアプリのアイチューン(iTunes)などは独自の年齢レイティングを適用し、BBFCオンラインを利用していない。特に音楽ビデオについては、音楽ビデオ業界独自のPAS表示システムが一般的に利用されている265

図2-4-5:全英映像等級審査機構(BBFC)のレイティング

全英映像等級審査機構(BBFC)のレイティング

(出典:全英映像等級審査機構のサイトより)

表2-4-2:格付け一覧
▲U 全年齢対象
▲PG 保護者同伴による視聴またはプレイが好ましい
●12 12歳未満視聴非推奨
●12A 12歳以上推奨、視聴の際は保護者の指導が必要
●15 15歳未満視聴非推奨
●18 18歳未満視聴非推奨
■R18 18歳未満視聴禁止。映画・ビデオソフトのみに適用されるレイティングで、ビデオソフトの場合は、未成年者立ち入り禁止の営業認可店のみで販売可能

(出典:全英映像等級審査機構のサイトより)

イ ミュージックビデオのレイティング制度: PAS266

ペアレンタル・アドバイザリー制度(the Parental Advisory Scheme、以下PASという)267は、英国録音音楽業界を代表する組織BPI(British Photographic Industry、以下BPIという)268が運営する、1995年から音楽CDやDVDに適用されている自主規制制度である。PAS基準に基づいてコンテンツが青少年に適切かどうかを判定し、不適なコンテンツについては「EXPLICIT」と表示する。このPASシステムは無料で利用できる。BPIは1973年に正式に設立された、英国の録音業界を代表する業界団体である。ワーナー・ミュージック・グループ、ソニー・ミュージックエンタテイメント、ユニバーサル・ミュージックグループなど3大手を含む数百社の企業が会員となっている。
大手市場調査会社の実施した調査によれば、子どもを持つ親の56%がこのPASシステムについて認知している。PASシステムはイギリスだけのものではなく、イギリスの消費者向けに大量の音楽コンテンツが発行されるアメリカでもよく知られているシステムである。
現在大半のオンライン販売業者およびデジタルサービスプロバイダがPASシステムを採用しているが、音楽ビデオコンテンツを提供している大手プラットフォームで当システムを採用していないところもいくつか存在し、100%とは言えない。
2011年には、BPIは制度の改訂を行い、デジタル音楽の販売会社やストリーミングサービス業者も明確にPASのロゴ、若しくは「EXPLICIT(性的に露骨の意)」の文字を明記して、子どもに不適切なコンテンツが含まれることを周知するよう働きかけを行った。
PASの基準によれば、以下の内容を一つ以上含む商品には「EXPLICIT」のロゴを表示する。

・乱暴な言葉

・暴力、肉体的・精神的虐待の画像や示唆

・性的行為への示唆や画像

・人種差別、同性愛嫌悪、女性嫌悪、その他差別的と見做される言葉やふるまい

・危険行為や犯罪行為を美化すること、またそのような行為の模倣を誘導するもの

コンテンツ製作者が自主的に、自らの作品をPAS基準に従って確認し、適宜EXPLICITの表示が必要か判断する。
BPIは現在、PASをフィルタリングのソリューションに組み込むことを目指して、ISPと作業を進めているところである。BPIは、同じ目的でインターネット・セキュリティソフト会社とも作業を行っている。オンラインセキュリティの商品をPASに対応させることができれば、PASラベル付きのコンテンツをブロックできるようにペアレンタルコントロールを設定できるようになる。

ウ 放送コンテンツのレイティングおよび取締り269

放送されるコンテンツは、法的義務を伴うOfcom放送規約(Ofcom Broadcasting Code)の制約を受ける。これは基本的にBBFCのレイティングをもとに、午後5時半から午後9時までの時間帯には、子どもに不適切な内容を放送しないという取決めである。これに関しては特に問題視されておらず、強い改正要求などもない。

エ オンラインゲームのレイティング制度:PEGI オンライン270

PEGIオンライン(PEGI Online)はオンラインゲーム用の規格で一般のPEGIとは少し異なる。オンラインゲームの場合、他のプレイヤーによって作られたコンテンツが青少年に及ぼすリスク、他のプレイヤーの言葉遣いや態度など、他のプレイヤーとの交流が青少年に及ぼすリスク、プライバシー侵害のリスク、他の不適切なサイトにリンクが張られるリスクなども発生するため、それも考慮したレイティングとなっている。PEGI オンライン はPEGIから派生したもので、若年者のオンラインゲーム環境の安全化を目指している。
オンラインでのみ入手可能なビデオゲームに関しても、通常のゲームと同様にGRAがレイティング作業を行い、PEGIの年齢レイティング制度に従って対象年齢が表示されるものの、法規制(ビデオ記録法(Video Recording Act)の適用範囲となっていないため、イギリスでの販売に関して、年齢別レイティングを実施する法的義務はない。

オ 携帯電話業界の自主規制
(ア)モバイル・ブロードバンド・グループ(MBG)の活動271272

モバイル・ブロードバンド・グループ(Mobile Broadband Group、以下 MBGという)は、携帯電話業界を代表し、また新しい法律や規制に関する政策開発や自主規制を行う業界団体であり、UKCCISおよびIWFの会員でもある。2004年1月にMBGが発表した自主規制行動規範では、携帯電話を介して販売されるコンテンツは、コンテンツ・プロバイダーが自主的にレイティングを行い、18歳以上とレイティングされたコンテンツについては、年齢検証の結果18歳以上であることが確認されたユーザーにのみ販売可能とするゾーニングを実施するとした。
すなわち、コンテンツのうち、違法なものはIWFのリストに基づき最初から除外される。さらに、18歳以上とレイティングされたコンテンツについては、「デフォルトON」でまずブロックされ、年齢検証の結果18歳以上と確認されてはじめて利用できる。さらに、希望者(親など)には必ずペアレンタルコントロールが用意され、年齢に合わせたフィルタリングが可能となっている273
この成人コンテンツのフィルタリングに関しては、問題ない内容が誤ってブロックされる「オーバーブロッキング」が発生している一方、問題のあるコンテンツがブロックされずにいたりと、問題が散見され、ORG274がオーバーフィルタリングに関する事例集めの活動を行い反対活動を行っている。これに関する詳しい内容については4(5)「ア オーバーブロッキングされた場合の手順」を参照されたい。

(イ)独立モバイル格付け団体 (IMCB) の活動275

上記の携帯電話業界の自主規制行動規範(IMCB Guide and Classification Framework)を開発したのが、携帯電話の商業コンテンツの枠組み設定を行う非営利の独立系機関、独立モバイル格付け団体(Independent Mobile Classification Body、以下IMCBという)である。2004年1月19日にイギリスの移動体通信事業者(ボーダフォン、オレンジ、Tモバイル、O2、3、バージン)は、携帯電話の不適切なコンテンツから子どもたちを守りつつ、責任ある携帯電話の利用を推進することを目指した携帯電話上コンテンツに関する自主規制行動規範を発表した。
行動規範の内容は以下のとおりである。

・テーマ、言葉遣い、性行為、ヌード、暴力、麻薬、恐怖、模倣可能な傷害行為から適性年齢レイティングを判定する。

・18歳以上に分類されたものは、アクセスコントロールの対象となり、18歳以上と認定されたユーザーのみにアクセスが許可される。

・18歳以上と分類されないものは、制限を受けない。しかし個々の適性については親が判断すること。

・自主規制は、コンテンツ・プロバイダーの所在地には関係なく、イギリス国内の消費者に向けた商業コンテンツを対象とする。ローミングが必要なものは対象外。

・静止画像、動画、視聴覚マテリアル、モバイルゲームを対象とする。

・テキスト/オーディオ/音声サービス、賭博、チャットルーム、位置情報サービス、ユーザー作成のコンテンツは対象外。

・コンテンツ・プロバイダーは自らが提供するコンテンツの合法性に責任を持つ。

・携帯電話でアクセスするインターネット上のコンテンツについては、当自主規制の対象外だが、子どもの安全を守るために、移動体通信事業者は親や保護者にできる限りフィルターを提供する。

・レイティングが不適切だと考える場合は苦情を申し立てることができる。

あるコンテンツが18歳以上とレイティングされるべきだとの一般消費者が苦情を申し立てる場合は、移動体通信事業者に連絡し、移動体通信事業者が規定期間内にそれに回答する。自社のコンテンツが18歳以上とレイティングされたが、それが間違っているとコンテンツ・プロバイダーが考える場合は、規定期間内にIMCBに苦情を申し立てる。IMCBの審査委員会は各関係者から事情を聞いた上で結論を出し、結果を関係者全員に伝える。

カ ビデオゲームの自主規制:UKIEの活動276

英国インタラクティブ・エンターテイメント協会 ( The association for UK Interactive Entertainment UKIE、以下 UKIEという)はビデオゲームとインタラクティブ・エンターテイメント業界を代表する業界組織である。大手ゲーム機メーカー、任天堂、マイクロソフト、ソニーが加盟しており、イギリス国内で販売されるゲーム機の大半(97%)がUKIEの管理下に含まれる。バイロン・レビューやベイリー・レビューの提言を受け、その実現に向けて活動を行い、その結果ゲーム機には必ずペアレンタルコントロールが搭載されることとなった。コントロールや機能の程度に差はあるが、この機能により、

・年齢レイティングに基づき、不適切なゲームをブロックする

・年齢レイティングに基づき、映画など視聴覚コンテンツをブロックする

・ウェブサイト閲覧やメッセージ送信などネットワーク機能へのアクセスを制限あるいは不作動にすることが可能である。

また、ベイリー・レビューでは、ペアレンタルコントロールには「アクティブチョイス」が不可欠だと説いていたが、これを受け、ゲーム機には最初のセットアップ時にペアレンタルコントロールの適用不適用を必ず選択させる「アクティブチョイス」を設けた。これは、子どものオンライン安全に積極的に親を参加させるには、デフォルト設定をONにすべきではないとUKIEが考えたための対策である。
UKIEは青少年の安全のために、ビデオゲーム業界の果たすべき役割について記述した方針書「ビデオゲーム業界:親と子どもに対する責任ある態度(The Video games industry ? A responsible attitude towards parents and children)」277を発表している。

図2-4-6:英国インタラクティブ・エンターテイメント協会(UKIE)

英国インタラクティブ・エンターテイメント協会(UKIE)

(出典:UKIEサイト)

キ オンラインゲームの安全規範:PEGIオンライン安全規範278

PEGIオンライン安全規範(PEGI Online Safety Code)はオンライン環境で青少年を保護する目的でまとめられたものである。この安全規範に準拠していると認められれば、PEGI Onlineのロゴが表示できる。
この安全規範の内容は以下のとおりである。

・PEGIその他公式のシステムによって適正年齢レイティングのあるゲームコンテンツのみ含めること

・望ましくないコンテンツについてプレイヤーが報告できる適切な報告メカニズムを設けること

・青少年の発育を妨げる不適切なコンテンツを削除すること

・EUおよび各国のデータ保護法に準拠し、プライバシーを保護すること

・オンラインプレイヤーの不適切な振る舞いを禁止すること

・対象者に適した、責任ある妥当な広告方針とすること

図2-4-7:PEGIオンライン安全規範(PEGI Online Safety Code)

PEGIオンライン安全規範(PEGI Online Safety Code)

(出典:PEGIオンライン サイト)

ク ゾーニング

ゾーニングに関しては、対象者によってコンテンツを変化させるのは、労力を要する割りに収益を上げにくく、商業的に極めて難しく、イギリスではほとんど実施されていないことがわかっている。
現在子ども用に用意されている検索エンジンは、以下のように少数である。

  • ・Yahoo! Kids
  • ・Ask Kids
  • ・KidsClick
  • ・AOL Kids

これらの検索エンジンからは、安全性が確認されたサイトにしか繋がらないようになっている上、ゲームその他の娯楽をふんだんに設けて子どもが楽しめるように作られている。279