第2部 調査の結果

第4章 カナダ

1 青少年のインターネット利用環境に関する実態

(2)有害なインターネットコンテンツについて

カナダでは、違法でない限りにおいて、2012年現在、インターネットコンテンツは法律では規制されていないが、さまざまな政府・民間団体が青少年をオンラインの危険から守るための資料を作成・提供したり、対策を打ち立てたりしている。その一例として王立カナダ騎馬警察(Royal Canadian Mounted Police、400ロイヤルカナディアン・マウンテド・ポリス、以下RCMP という)の国家安全犯罪調査部門の資料『Youth online and at Risk(オンラインの青少年とその危険)401』にここで触れる。
『Youth online and at Risk(オンラインの青少年とその危険)』:RCMPによって編纂された『Youth online and at Risk』は、カナダの青少年の生活とインターネットの密接な関係とその危険、そしてその対処についての文献である。その中でRCMPは、「カナダの青少年の生活は、これまでに例のないほどオンライン漬けである。インターネットは、子どもたち、ティーン前の子どもたち、ティーンたちによって、リサーチ、学習、娯楽、ソーシャルネットワーキング、そして暇つぶしにさえ利用されている。この広範囲に及ぶウェブの使用は、あらゆる場所でインターネットへのアクセスが得られることによって促進されている。教室や図書館にあるコンピュータだけでなく、さらに子どもたちは寝室においてまで携帯を通じインターネットにアクセスすることが可能になっている(この現象はごく一般的になりつつある)。」と、インターネットがどれだけカナダの青少年の生活に入り込んでいるかについて述べている。
実際、青少年のオンライン習慣に関する包括的調査(前述のCIP調査)において、「ほぼ全員(カナダ英語圏の12~17歳の97%、フランス語圏でも93%402)がインターネットにアクセスできる。」ことが判明している。
しかし、青少年が常にインターネットにアクセスしているからといって、彼らがオンラインにおける危険を十分に認識しているとはいえない。RCMPは本資料において、暴力の先鋭化、チャットルームなどで子どもを誘惑しようとする犯罪者、過激なゲームやイメージなどさまざまな危険を挙げている。以下はその一例の過激なゲーム例である。

ア 危険な考え方を助長するオンラインゲーム

図4-1-4は、RCMP の『Youth online and at Risk(オンラインの青少年とその危険)』に示されている『Ethnic Cleansing(民族浄化)』というタイトルのオンラインゲームのスクリーンショットである。

図4-1-4:『Ethnic Cleansing(民族浄化)』というタイトルのオンラインゲーム

『Ethnic Cleansing(民族浄化)』というタイトルのオンラインゲーム

(出典:RCMPの『Youth online and at Risk(オンラインの青少年とその危険)』)

電子掲示板やチャットルームなどで過激派組織が青少年を誘い込もうとすることがあるが、そのようなことはごく氷山の一角である。多数の大きな組織が、暴力を美化するオンラインゲーム通じ青少年の興味を引こうとしている。
暴力や論議を醸し出すようなビデオゲームは何も今に始まったことではないが、小売店で購入できる多くのゲームには、青少年には不適切であることを示すレイティングが付いており、小売店は大人にのみ販売する。しかし、インターネット上では、ゲーム製品情報は子どもにも共有され、配布され、プレイされるため、大人のみがアクセスできるという状態にはない。
あるネオナチ組織では、子どもたちをひきつけるためにシンプルなクロスワードパズルを使った。人種差別的なヒントや回答を使用したもので、その目的は「白人の若者に我々の戦いを理解してもらうため」であると、そのネオナチのグループは説明している。
その他のゲームでは、視覚的に暴力的なメッセージを示したもので、プレイヤーはそのグループの目標を仮想世界の中で達成する。
例えば、オーストリアの右翼政治党員によって投稿されたオンラインゲームでは、プレイヤーはイスラム教寺院の建築を阻止しようとする。
このゲームは、『Bye Bye Mosque』というタイトルで、その目的を「イスラム教寺院の問題を若者に認識してもらうため」としている。
白人至上主義の音楽会社、Resistance Records(レジスタンスレコード)は、『Ethnic Cleansing(人種洗浄)』(前記の図4)というタイトルのゲームを配布した。Ku Klux Klan(KKK403)のメンバーもしくはスキンヘッドのプレイヤーとして、「下等な人間」を殺すことがゲームの目的である。

イ マルチメディアを通じたメッセージ(画像、オーディオ、ビデオ)

文字で書かれたマテリアルのみではなく、過激派のグループのウェブサイトでは文献に画像を添えて、グループの信念普及を推進している。
例えば、あるサイトでは、エルサレムで死傷者を出した、幼い女児の自爆者の写真を掲載した。被爆地域で撮影されたその写真には、幼い女児のバラバラに切断された死体が写っており、その子どもの行為を崇高なものとして賞賛するキャプションが付いている(RCMPの『Youth online and at Risk(オンラインの青少年とその危険)』より)。
例えば、“white power” というバンドの音楽は、暴力や人種差別メッセージを促進する「イスラエルに爆弾を」などといった歌詞を含むもので、何年にも渡りオンラインで配布されている(RCMPの『Youth online and at Risk(オンラインの青少年とその危険)』より)。
Media Awareness Network404(2012年にMedia Smartsに改名)の調査によれば、iTunes などのオンラインストアの成功は、多くの青少年にとって、音楽やオーディオファイルがオンライン経験の大きな部分を占めていることを示している。過激派は、長年に渡ってインターネットを使用して、暴力を奨励したり、過激な思想を支援したりしてきた。
また、当局(各国の政府機関。カナダではRCMPや地域警察など)やYouTubeで対処しているにも係わらず、アンワル・アウラキなどの過激派聖職者のスピーチはオンラインで広く利用されている。

ウ 1人1人ができること

インターネットは、青少年にとって多くの危険をはらんでいる。連邦政府とそのパートナーは、過激なメッセージを配布したり、暴力を奨励したり、過激派に若者を取り込もうとしたりするウェブサイトを監視している。しかし、当局によるサイ ト監視や、違法コンテンツの場合のサイト非表示処置は、ごく一時的な方法に過ぎない。そのようなコンテンツは簡単に別の場所にコピーできるからである。
これを踏まえ、インターネットの危険を軽減し、より安全なものとするため、保護者、教師、コミュニティーのリーダーができることが数多くある。
青少年の暴力の先鋭化は、突き詰めていくと特定のコミュニティー内で発生する。よってそのようなコミュニティーの大人は、その危険性をよく理解し、先鋭化に対処することが重要である。

エ 一般市民用に提供されている情報源

青少年のオンラインでの安全は長年に渡りますます懸念が高まっている問題であるため、カナダではオンラインでの青少年の安全保護や不適切なコンテンツのフィルタなどについて支援する多数のサイトが用意されている。以下にその例を挙げる。

表4-1-2:一般市民用情報源
サイト名 概要
Media Awareness Network405 調査を通じて知識を高めてきたMedia Awareness Network(2012年にMedia Smartsに名称変更)は、保護者が、子どもたちが「思慮深いサイバー市民になる」ための支援ができるようにと、このサイトを立ち上げた。
Common Sense Media406 さまざまなメディアコンテンツについてのレビューを提供している。非営利団体によって運営されるこのサイトは、さまざまな年代向けにレイティングされたサイトを掲載している。
Cyber Tip407
リソースリスト
サイバーティップは、インターネット上での児童への性的搾取を防止することを目的としているが、カナダ児童保護センター(Canadian Centre for Child Protection408:CCCPと略される)によって運営されるその他のサイトとも協力し、青少年がオンラインで直面し得る危険などについての情報提供も行っている。
RCMP青少年参画課409 RCMP410の青少年参画課およびRCMP犯罪予防サービスの国家青少年サービス支部によって運営されているサイト。インターネット上での安全性に関する項目も含まれている。国内の青少年から意見を募集し、サイトに反映させている。
Get Net Wise411 多様な提携企業および専門業界団体によって開発・運営されているサイトである。コンピューターセキュリティに関する一般知識を教育するためのツール、青少年がインターネット情報検索を行う際の保護ツールなどが提供されている。
RCMP Internet Safety Resources412 RCMPのサイト内に設置された、インターネット上の危険を回避するためのさまざまな資料が掲載されている。
提供されている情報の項目は、若者のためのインターネット安全性、ネットいじめ、児童搾取、オンライン詐欺、ソーシャルネットワーキング、インターネットセキュリティと多岐に渡る。
Safety Online413 合衆国国家サイバーセキュリティアライアンス(U.S. National Cyber Security Alliance)によって運営されている。
全体論的視野からコンピューターセキュリティおよびオンラインセーフティを取り扱っている。家庭、教室、企業に向けて、家族、生徒、従業員をサイバースペースの脅威から守るためのアドバイスを提供している。また、電子機器をサイバースペースの脅威から守るためのアドバイスも提供している。