第4章 カナダ

4 青少年のインターネット利用環境(レイティング、ゾーニング)に関する民間機関の取組や現時点における青少年のインターネット利用環境に関する民間団体の取組の内容

(1)民間団体の取組

ア ICRA

(ア)組織概要

1994年に設立されたインターネット・コンテンツ・レイティング協会(Internet Content Rating Association、以下ICRAという)448 449は、デジタル・コンテンツの自由な普及を促進するとともに、青少年保護推進のための業界自主規制を促進している。以下で後述するが、ICRAとカナダの繋がりは密接であり、Intenet Explorerのような主要ブラウザで現在も使用されているだけでなく、ICRAのレイティングは、カナダにおいてもそのまま使用されたり、もしくはレイティングを作成する上で参考とされたりしいる。
2007年、ICRAは、より広い視点からインターネット上の安全の確保に取り組むため、同年の「家族のオンライン安全機関(Family Online Safety Institute、以下FOSI450という)」設立に伴い、FOSIの一部となった。このため、ICRAはFOSIの前身であるという見方もある。
ICRAは、オンラインコンテンツの評価及び格付けを行っていた。ICRAのレイティング方法とは、ウェブマスターやコンテンツ提供者に、自己のコンテンツ内容を評価判断させ、ICRAのシステムを利用してラベリングさせるものであった。評価カテゴリーには、<1>チャット、<2>言語、<3>ヌード及び性的なコンテンツ、<4>暴力、<5>ギャンブル、薬物、アルコール類の5種類あり、コンテンツの提供者がオンライン上のアンケートに回答し、その結果が格付けに反映されるのである。一方、未成年者を持つ保護者はフィルタリングソフトを使い、自分で設定したレベルのコンテンツのみを受信することができる仕組みになっていた。
ICRAは、オンラインコンテンツの評価及び格付けを行っていたが、レイティングは行わなかった。サイトのレイティングは、コンテンツプロバイダーが行う。2010年には資金不足のためにインターネットコンテンツのラベリングサポートから撤退した451が、同組織のラベリングは現在でも使用されている。事例としては、マイクロソフト社のブラウザソフトウェア製品Internet Explore 9での使用が挙げられる。「ツール」→「インターネットオプション」の「コンテンツ」タブの中にある「コンテンツアドバイザー」を有効にし、「ICRA3」の各規制カテゴリー452の規制レベルを設定できる。なお、ウェブデベロッパー向けには引き続きメタデータが公開されている。

図4-4-1:インターネットエクスプローラーのラベリングサポート

インターネットエクスプローラーのラベリングサポート

(出典:インターネットエクスプローラーの操作画面)

ICRAの創立メンバーにはカナダ最大の電気通信会社であるベル・カナダが含まれていた。さらに、ベル・カナダの規制部門責任者453であったシェリダン・スコット氏454が2004年までICRA の委員長を務めていた455

(イ)使命

ICRAの使命は、コンテンツプロバイダーの言論の自由を守ると同時に、青少年をインターネット上の有害コンテンツから保護することであった。
「ICRAでは、各国の政府に対してシステム使用の義務化を追及するのではなく、業界と協力し、コンテンツを評価するというポジティブな動機を生み出すように働きかけている。456」と、IRCAが述べていたように、同団体のシステムは任意で採用されるものであり、採用を強制するものではなかった。ICRAのレイティングはIntent Explore 9において現在でも採用されている。

(ウ)サービス内容
<1>コンテンツプロバイダー向けサービス

2010年のサービス撤退前までは、ICRAのウェブサイト457は、コンテンツプロバイダーに対し、自主レイティング(自身でレイティングする)およびセルフラベリング(自身でラベリングする)のための基準提供サービスを行っていた。

<2>保護者向けサービス

保護者へのサービスとして、Microsoft の Internet Explorerおよび Netscape の Navigatorといった2つの主要ブラウザを通じてフィルタリングサービスを無料提供していた。

イ Media Smarts

(ア)組織概要

Media Smarts458は、青少年のデジタル・リテラシー、メディア・リテラシーを促進するカナダの慈善事業団体である。
1994年に国立映画制作庁の主催によって創設され、1996年459に独立機関となった同組織は、青少年が必要な情報を入手し、賢明なデジタル市民としてデジタルメディアと向き合い、批判的思考を獲得できるよう青少年育成を支援している。

(イ)活動概要

Media Smarts は1996年の機関独立当初から、家庭、学校、コミュニティのためのデジタルメディア・リテラシープログラムの開発・普及促進を行っているが、具体的な活動内容は、

<1>教育
<2>社会認識向上支援
<3>調査研究
<4>規制研究

の4領域に大別される。それぞれの詳細について以下に述べる。

<1>教育

従来のメディア460に加え、K-12 (小学校) に対するさまざまなオンラインに関する教材を用意している461。その大半が無料で提供されており、教育現場にすぐに取り込めるようにデザインされている。例えば、インターネットの基本的な利用方法や用語、その危険性や利便性を教える基本的なプログラム、6~7歳向けのオンラインゲーム形式によるプライバシー教育用プログラム462、ネットいじめに関する背景・現状・回避方法などを児童に指導するプログラム、ライセンス提供されている小学生から大学生までの各年齢層向け有償オンラインリテラシープログラムまで、多種多様な教材が用意されている463。また、教師や司書向けのワークショップも用意されている。

<2>社会認識向上支援

「青少年がこれからの時代に対応していくためには、メディアに精通していることが非常に重要である」という認識を社会に広めるため、子どもを持つ保護者や青少年の教育現場に携わる人々を対象とした意識啓発キャンペーンやオンラインリソースを用意している。
また、子どもたちの保護者、警察、ガールガイズカナダ(Girl Guides of Canada464)、カナダ小児科学会、図書館などと協力して、コミュニティーベースのメディア認識プログラムを開発・実施している。主な活動として、毎年恒例のメディアウィーク465がある。カナダ教師連盟との提携で実施されるメディアウィークの開催中は、国内各地で先に述べたようなメディア リテラシー向上支援活動が行われている。

<3>調査研究

青少年のインターネット利用に関するカナダで最も包括的な調査結果報告書 『Young Canadian in a Wired World466』を発行している。さらに、プライバシー教育、オンライン市民運動、デジタル・リテラシー、インターネット規制など、広範囲におよぶメディア問題に関するレポートやディスカッションペーパーを、Media Smartsが独自で、もしくは他の団体と協力して発行している。

<4>規制研究

規制に関する調査研究を継続的に実施し、国家および民間セクターにおける政策・方針の現状を把握しておくことで、Media Smarts のプログラムが常にカナダの現状を反映したものとなるよう努めている。
規制研究は、調査研究の中でもとりわけ重要度が高いため別途項目を設け説明を行った。

ウ Bell Canada(ベル・カナダ)を含む各インターネット・サービス・プロバイダー

Bell Canada(ベル・カナダ)を含む各インターネット・サービス・プロバイダーは、対象はウェブサイト運営者を含む、すべてのインターネット利用者に対して、利用規則(Acceptable Use Policy)を設定している。
その一例として、ここではBell Canada(ベル・カナダ)の利用規則467を挙げる。

  • (I)権利所有者から承認を得ていない著作権情報、またはその他の知的所有権で保護された情報、または
  • (II)中傷的、わいせつ、子どものポルノグラフィーまたは憎悪の文書、または
  • (III)プライバシー侵害、人格権の横領、または無認可のリンクやフレーミングを引き起こす、情報、ソフトウェア、ファイル、その他のマテリアルのアップロード、ダウンロード、転送、投稿、発行、普及、保存、または複製、配布、あるいはアクセスを提供することは禁止されている。468

エ カナダ放送基準委員会

業界基金によって運営される自主規制団体であるカナダ放送基準委員会(Canadian Broadcast Standards Council、以下CBSCという)は、インターネット上の情報の分類(レイティング、ゾーニングなど)を、「英語版分類(Ratings Classification for Canadian English-Language)469」の発表を通じて行っている。
カナダではインターネットコンテンツに関する法規制は行われていないが、放送コンテンツ(インターネット上のテレビプログラムも含む)については、CBSC による分類が採用されている。以下の図4-4-2に示されているように、カナダのメープルリーフが模られたアイコンで、分類の内容は、以下の表4-4-1のとおりである。

図4-4-2:CBSCによるレイティングの分類を示したアイコン
(カナダの英語圏における分類)

CBSCによるレイティングの分類を示したアイコン

(出典:CBSCサイト)

表4-4-1:CBSCによるレイティングの分類と内容
分類名 内容
E(Exempt:
レイティング適用なし)
E分類にはニュース、スポーツ、ドキュメンタリーその他の情報番組、トークショー、ミュージックビデオなどが含まれる。
分類が「E」であるプログラムは、画面上に分類アイコンを表示する必要がない。また、放送者は放送信号に分類をエンコードする必要もない。

C(Children:
子ども向け)
C分類の子ども向けプログラムは、カナダ商業放送事業者協会(Canadian Association of Broadcasters、以下CABという)の「暴力に関する規約(Violence Code)」の「Children(子ども向け)」項の条項に準拠する必要がある。
C分類は8歳未満の幼児を対象とするため、幼児の安全および幸福を守るために、そのテーマに十分な配慮が必要である。子ども向けプログラムでは、暴力の表現に特に細心の注意が必要とされるため、現実的・写実的な暴力シーンは一切含めてはならない。攻撃的な言動はごく低頻度に保ち、その表現は明白に想像上のもの・非現実的なものとする。
<1>暴力に関するガイドライン
・コメディのような面白おかしい非現実的な描写での暴力を低頻度で含み得る。
<2>その他のガイドライン
・言葉について
不快な(offensive)言葉は一切使用しない
・性的描写・ヌードについて
一切含まない。

C8(Children Over 8Years:
8歳以上の子ども向け)
C8分類は一般的に8歳の子どもが一人で見ても問題がないと考えられる子ども向けプログラムに適用される。8歳未満の子どもに不適切と考えられるテーマが含まれ得るため、8歳未満の子どもがC8指定の番組を見る場合には、両親または保護者が一緒に観るよう推奨されている。
C8分類のプログラムはカナダ商業放送事業者協会(Canadian Association of Broadcasters:以下 CABという)の「暴力に関する規約(Violence Code)」 の「Children(子ども向け)」セクションの条項に準拠しなくてはならない。この条項では、暴力を、好ましいもの、または許容できるものとして描写したり、対立を解決するための唯一の方法として描写したり、あるいは危険な行為を真似ることを助長するような扱いをしてはならないとされている。
<1>暴力に関するガイドライン
・現実的な描写はごく低頻度で控えめにし、暴力がどのような結果をもたらすかを示す。
・描写される暴力は、ストーリー展開の流れに沿った、または登場人物の性格形成の一部として描写する。
・ごく軽度の肉体的暴力、コメディ的な暴力、漫画的なホラー、特殊効果、ファンタジー、超自然、面白おかしく表現された暴力を含み得る。
<2>その他のガイドライン
・言葉について
みだらな言葉や過激な言葉は使用しない。ただし、社会的に侮辱的または差別的であると、一部の視聴者によって捉えられる可能性がある言葉遣いがごくたまに含まれることがある。そのようなケースは、ストーリー展開または登場人物の性格形成の一部としてのみ描写されるものとする。
・性的描写・ヌードについて
一切含まない。

G(General:
一般向け)
G分類は、あらゆる年齢グループに適切であると考えられる分類であり、家族全員での視聴に適している。
G類のプログラムは広範囲の一般視聴者を対象としている。子どもを対象として特別にデザインされたものではないが、視聴者に子どもが含まれる可能性を考慮している。
肉体的または精神的、あるいは言葉によるものかを問わず、暴力はほとんど含まれない。子どもに不安をもたらすようなテーマに関しては慎重に扱うものとしている。また、暴力行為の影響を軽々しく扱ったり、ごまかしたりするような、現実的な暴力シーンは一切描写されていない。
<1>暴力に関するガイドライン
・最低限及び低頻度
・コメディ的な、非現実的な描写を含み得る。
・ストーリー展開に必要のない不気味な特別効果を含まない。
<2>その他のガイドライン
・言葉について
不快なスラングを含み得る。冒涜するような言葉やみだらな言葉は含まない。
・性的描写・ヌードについて
一切含まない。

PG(Parental Guidance:
保護者の監督下)
PG分類のプログラムは、一般視聴者を対象としているが、8歳未満の子どもに適さない可能性がある。また、この分類のプログラムには、8~13歳の子どもたちが保護者の監督下外で視聴するには不適当であると特定の人々が考える可能性のあるコンテンツ要素が含まれ得ることを両親や保護者は認識している必要がある。
PG分類のプログラムは、論議を醸し出すようなテーマや問題に触れる可能性がある。プレティーン期(13歳未満の子どもたち)やティーン期前半期(13歳~15歳位)の子どもたちがこの視聴者グループに含まれる可能性があることを認識し、暴力の模倣を助長することがないよう細心の注意が払われている。さらに、暴力行為が及ぼす結果・影響を過小評価しないよう配慮されている。
<1>暴力のガイドライン
・対立や攻撃性の描写は制限し、ほどほどに抑える。
・肉体的、ファンタジー的、または超自然的な暴力が含まれることがある
・前述のような暴力をプログラム全体に配置してはならない。また、そのような暴力はテーマの文脈
ストーリー展開、または登場人物の性格形成の一部として正当化できるものでなければならない。
<2>その他のガイドライン
・言葉について
低い頻度で、軽度のみだらな言葉や冒涜するような言葉が使用されることがある。軽度の挑発的な
または際どい言葉が含まれる可能性がある。
・性的描写・ヌードについて
非常に短い時間のヌードシーンが含まれる可能性がある。また、ストーリー展開やテーマに妥当で
ある場合に、ごく限定的に控えめな性的引用や性的コンテンツが含まれることがある。

14+(Over 14 Years:
14歳以上)
14+分類のプログラムには、14歳未満の視聴者には適切ではない可能性のあるテーマやコンテンツ要素が含まれる。
14+分類のプログラムでは、成人向けテーマや社会問題が現実的な様式で取り扱われる可能性があるため、両親や保護者の監視下外でプレティーンやティーン前半期の子どもたちがこの分類のプログラムを視聴することに関して、CBSCでは、両親や保護者に対し、慎重に自由裁量権を行使することを強く警告している。
<1>暴力のガイドライン
・暴力がストーリー展開の主要素である可能性があるが、その暴力は物語の筋や登場人物の性格形成に不可欠な要素として扱わなければならない。
・激しい暴力シーンを含み得る。
<2>その他のガイドライン
・言葉について
激しい、みだらな、または冒涜するような言葉が頻繁に使用されることがある。
・性的描写・ヌードについて
ヌードシーンや性行為シーンが、テーマまたは物語の文脈の流れとして含まれることがある。

18 +(Adults - 成人)
18+分類は18歳以上の視聴者を対象とする。
18+分類は、以下のコンテンツ要素のいずれかまたはすべてを含む可能性があるため、18歳未満の視聴者には不適当である。
<1>暴力のガイドライン
・暴力の描写が含まれることがある。
これは、物語、登場人物、またはテーマの展開に不可欠な要素として描写されるが、成人の視聴者を対象とするものであり、よって18歳未満の視聴者には適していない。
<2>その他のガイドライン
・言葉
あからさまな生生しい描写が含まれ得る。
・性的描写・ヌードについて
性行為やヌードが露骨に描写される。

(出典:CBSCサイト)

オ ESRB

娯楽用ソフトレイティング理事会(Entertainment Software Rating Board、ESRB)は、カナダと合衆国の両方に本部を置く1994年に設立されたビデオ ゲームのレイティングを行う団体である。1997年にはオンライン用のレイティングもESRBによって確立されたが、予算など諸々の理由から2003年に廃止された。レイティングは自主的なものであり、ゲーム会社はレイティングを受けるためにゲームを提出することを義務付けられているわけではない。
レイティングは、以下の7種類である470

  • ・EC(Early Childhood:幼児期早期)
  • ・E (Everyone:誰でも)
  • ・E10+ (Everyone 10+:10歳以上の誰でも)
  • ・T (Teen:10 代)
  • ・M (Mature:成人)
  • ・AO (Adult Only:アダルトのみ)
  • ・RP (Rating Pending:レイティング保留)

カナダでは、ほとんどの大手販売店において M レイティングのビデオゲームを購入する場合には身分照明書の提示が求められる。
ESRBの設立から発展の経緯を表す年表を以下に示す。設立当初から2000年ごろまでは、レイティングのシステムやガイドラインの設計・発表に注力していたが、その後2005年ごろからは教育にも注力し始め、最近では、スマートフォンをはじめとするモバイル向けレイティングの発展にも注力している。

表4-4-2:ESRBの歴史
ESRBの歴史
1994 ・Interactive Digital Software Association(IDSA は2004年にEntertainment Software Associationという名称になる)によってESRBが設立される。
・5つのレイティングと17種類のコンテンツの記述子から構成されたESRB レイティング システムが発表される。
1997 ・インターネット用のESRBi レイティングシステムが確立される。5つのレイティングと22種類のコンテンツの説明用の用語から構成されていた。
・オンラインゲームやウェブサイトにおける、ユーザーによって作成されたコンテンツをカスタマーに警告するための「Online Rating Notice」が確立された。
・ESRBレイティング システムに、「Instructional(指導的)」および「Edutainment(エデュテインメント、教育的であると同時に娯楽的)」というコンテンツ説明用語が追加される。
1998 ・K-A (Kids to Adults:子どもから大人まで) というレイティング カテゴリーが E (全員) に変更される。
2000 ・ESRB の規則やガイドラインに従わない会社に対して制裁措置の実施、罰金、是正処置などを行う ESRB Enforcement System(施行システム)が確立される。
2001 ・成人向けゲームのターゲット マーケティングに関するガイドラインが導入される。
2002 ・“Partial Nudity”(一部ヌード)、“Nudity”(ヌード)、“Reference to Drugs”(麻薬に関する引用)、“Reference to Alcohol”(アルコールに関する引用)、“Reference to Tobacco”(タバコに関する引用)、“Mature Humor”(成人向けユーモア)などのコンテンツ説明が導入される。
2003 ・予算などの諸々の理由からインターネット用のESRBiレイティング システムが廃止される。
・“Cartoon Violence”(漫画的な暴力)、“Fantasy Violence”(ファンタジーでの暴力)、“Intense Violence”(激しい暴力)、“Sexual Violence”(性的暴力)、“Crude Humor”(下品なユーモア)のコンテンツ説明が導入される。
2004 ・“Mature Sexual Themes” (成人向け性的テーマ)が “Sexual Themes”(性的テーマ)に変更され、“Simulated Gambling” (擬似ギャンブル)および “Real Gambling” (実際のギャンブル) がコンテンツ説明用語に追加される。
2005 ・10歳以上に適していると考えられるゲーム用に、E10+ レイティングカテゴリが導入される。
・Canadian Advisory Committee (カナダ諮問委員会)が設立される。
2006 ・ESRB は、関連内容の不開示に対する罰金の上限をミリオンドルに増額する。
・ESRB は、PTAと協力し、レイティング教育を開始。
2007 ・ESRBは、人気雑誌『グッド・ハウスキーピング471 』と提携し、同誌でのレイティング教育を開始。
2008 ・ESRB、レイティング検索用の "widget" を発表。
・合衆国の連邦取引委員会(Federal Trade Commission:以下FTCという)の調査によれば、ESRBレイティングが「成人」のゲームを成人未満の子どもが購入した場合に、10人のうち8人までが販売店で断られていることが判明する(よってESRBレイティングが功を奏していることが判明する)。
・PTA と ESRB により、『Parents Guide to Video Games, Parental Controls and Online Safety』(ビデオ ゲーム、ペアレンタル コントロール、そしてオンライン セーフティに関する保護者のためのガイド)が発行される
・ESRB のモバイルサイト(m.esrb.org)と当時にレイティング・サマリーが発表される。
・ESRB、子どもを持つ保護者対象の人気雑誌『ペアレンティング(Parenting472)』と提携する。
2009 ・ESRB、iPhone 用のレイティング検索無料アプリを提供。
・ESRB が Facebook および Twitter に参加。
2010 ・ゲーム ファンのサイトが完全なレイティング情報を記載すること、そして、M や AO レートのゲームのトレーラーへの」アクセスにエイジゲート(年齢で振り分けるゲート)を設けるように推進するための ESRB Website Council (EWC) (ESRB ウェブサイト委員会)が設立される。
・(iPhone に加え)Android用の新しいバージョン ESRB の無料モバイルアプリの配布開始。いずれのバージョンでも、ゲーム パッケージの写真を撮るだけで、レイティングが自動的に検索される。
2011 ・ESRB、Windows Phone 用のモバイルアプリを発表。ボイス検索を追加し、検索をさらに簡単に行えるようにする。
2012 ・ESRB は、デジタル形式で配布されるゲームのために無料でレイティングを提供するDigital Rating Service (デジタル レイティング サービス)を開始する。

(出典:ESRBサイト)

カ ESRB ウェブサイト委員会(ESRB Website Council )473

ESRB ウェブサイト委員会(EWC)は、責任を持ったマーケティングに対するビデオ ゲーム産業のコミットメントを高めるために2010年の10月に設立されたものである。アメリカ合衆国とカナダを発信地とするウェブサイトは EWC のガイドラインに従ってコンテンツを発信している。EWC は多くのゲームファンを対象とする有名なサイトで構成されており、それらのウェブサイトは ESRB レイティング情報を表示することや、M レイティングのゲームについてはそのトレーラーへの入り口にエイジゲート(年齢を確認するゲート)を設けるといったEWCのガイドラインに従う必要がある。

図4-4-3:EWCの団体ロゴ

EWCの団体ロゴ

(出典:EWCサイト)

EWCのガイドラインの大半は、ゲーム発行会社のウェブサイトに対して、過去にESRB's Advertising Review Council (ARC) によって要求されていた条件(この条件は合衆国の連邦取引委員会によって「最も厳しい自主規制コード」として賞賛された)とほぼ同様である。EWC の働きかけにより、各ゲームファンサイトは、ビデオ ゲームのマーケティングを適切に行い、M レイティングのコンテンツへのアクセスを制限する方法を採用するよう積極的に努力している。

キ Cleanfeedプロジェクト474

Cleanfeed プロジェクトは、2006 年、カナダ最大のインターネット・サービス・プロバイダー数社がCybertip475と協力して設立したプロジェクトである。これは、イギリスの類似イニシアティブを基にしたプロジェクトで、違法の児童搾取コンテンツをブロックするものである。このプロジェクトに参加するインターネット・サービス・プロバイダーの顧客は、カナダの法管轄外のサイトに存在する違法の児童性的・商業的搾取コンテンツを誤って表示してしまうケースを防ぐことができる。
Cybertip は、カナダ国内からの苦情に対応し、分析者によって苦情対象のサイトが分析される。2人の分析者によってサイトがブロッキング対象として承認されると、そのサイトはCleanfeed カナダの配布リストに加えられる。参加 インターネッ ト・サービス・プロバイダーは、リストに含まれたサイトやそれぞれのコンテンツに対する知識を持たずにそのリストを使用して自主的にブロックするため、ブロッキ ング対象のサイトの評価には一切関与しない。ブロックされたサイトは読み込まれない(表示されない)が、ユーザーがそのようなサイトにアクセスしようとしたと しても、その行為が監視されたり記録されたりすることはない。Cleanfeed カナダは自主参加のプログラムであるため、ブロッキング手法の選択は それぞれのインターネット・サービス・プロバイダーに任されている。Sasktel、BellCanada、Telus は、オーバーブロッキングを避けるため、IP アドレスではなく特定のURL を遮断している、と発表している。
オーバーブロッキングが実施されれば、当然一般市民から多大な抗議が発生するだけでなく、オーバーブロッキング自体が電気通信法(Telecommunications Act)の下 で違法と見なされる可能性もある。
カナダ刑法のセクション 163 に基づき、児童のポルノグラフィーを作成することやそれにアクセスすることは違法である。よって、そのようなコンテンツをフィルタリングすることは、カナダ憲法内のアクセスや言論に関する権利及び自由の憲章を侵害するものではない。さらに、プロジェクト Cleanfeed476への参加は インターネット・サービス・プロバイダー による自主的なものであるため、このプロジェク トを通じたブロッキングは国家主催によるものだとはいえない。しかしながら、カナダではこのプロジェクトはその他の理由から論争の的となっている。その第一の理由は、このプロジェクトが CRTC(カナダ・ラジオテレビ電気通信委員:Canadian Radio-television and Telecommunications Commission477)から認可を受けていないことである。第二の理由は、児童のポルノグラフィーのディレクトリを発行すること自体が違法であるため、Cybertip.ca によって維持されるブラックリストは秘密であることである。このような不透明な状況が必然的にリスト及びその編集プロセスに対する不信を招いている。第三の理由は、サイトのブロッキングに関する不服申し立ての手続に際し、匿名性が失われることである。コンテンツの所有者またはインターネット・サービス・プロバイダーの顧客は、インターネット・サービス・プロバイダーまたはCybertip.ca に直接不服申し立てをすることができ、Cybertip.ca はサイトを再度評価し、必要に応じて National Child Exploitation Coordination Centre から独立した拘束力のある判決を受けることができる。この手続によって申立人の身元が明らかになり、それによりその個人の権利が インターネット・サービス・プロバイダー や当局によって乱用される恐れがある。
カナダのオンラインのわいせつ物に対する対応及びフィルタリング イニシアティブは、合衆国における積極的な規制努力に比べ非常に最低限なものだと言える478

ク 関連民間団体に対する政府の支援

前述のように基本的にカナダでは、インターネット利用環境(レイティング、ゾーニングなど)に対する国家レベル、法律レベルでの規制は行われていない。あくまでも、業界の自主規制や教育施設、そして家庭での自主的な規制が求められてい る。よってカナダでは、カナダ産業省や、RCMP(Royal Canadian Mounted Police:カナダ騎馬警察)などを通じた自主規制推進キャンペーンなどが「支援」にあたると考えられる。
以下にその例を挙げる。

表4-4-3:政府の支援
活動名 概要
カナダ政府産業省による
自主規制キャンペーン
1999年には、カナダ産業省によって自主規制を呼びかけるキャンペーンが実施された。そのキャンペーン時に発表された文献に、ポール・A・ピエーロ氏の『Self-Regulation of Intern(インターネットコンテンツの自主規制:カナダの観点から)』479がある。
このキャンペーンでは、Media Awareness Network(後のMediaSmart(メディアスマート))、地方自治体、地域教育委員会等への援助を通じて自主規制の強化を図った。
カナダ政府産業省による
安全なインターネット使用キャンペーン
カナダ産業省による2000年の安全なインターネット使用の促進キャンペーン。慈善団体や地方自治体への援助支援を通じて一般市民に安全を呼びかけた。このときに『Illegal and Offensive Content on the Internet:The Canadian Strategy to Promote Safe, Wise and Responsible Internet Use』(インターネット上の違法ならびに有害なコンテンツ:安全で賢い、責任を持ったインターネットの使用を推進する)が発表されている。
RCMP(王立カナダ騎馬隊)による
「Cyber Security Awareness Month
(サイバーセキュリティを認識する月)480
RCMPではインターネットの安全な使用を呼びかける(その中で必然的に自主規制が推進される)キャンペーンを行っている。毎年10月がこのキャンペーン月に指定されており、インターネットに関わるあらゆる危険やその防衛策についてカナダ国民の認識を深め、市民の安全なインターネット使用を支援するためのキャンペーンである。