第1章 アメリカ
1 青少年のインターネット利用環境に関する実態
(5)インターネット上のウェブサイトを利用して児童買春などの犯罪被害に遭った青少年の数・実態
インターネットを利用した児童に対する性的誘引は、チャットルーム内などで児童の警戒心を解き、手なづける「チャイルド・グルーミング(child grooming)」と呼ばれる心理的過程を経て行われる。誘引者は、自分が望むような行動をとってくれそうな児童や、自尊心が低い児童、家庭に問題のある児童を狙うとされる。
非営利団体の「全米失踪・被搾取児童センター(National Center for Missing & Exploited Children:NCMEC)」が開設する「サイバーチップライン(Cyber Tipline)」に寄せられた通報について、Cyber Tiplineが公開している2011年以降の統計データは見当たらない。
「児童に対するインターネット犯罪特別捜査班(Internet Crimes Against Children Task Force:ICAC Task Force)」(以下、「ICAC特捜班」という。)は、司法省 少年司法・非行防止事務局(Office of Juvenile Justice and Delinquency Prevention:OJJDP)の報告書の中で、2010年及び2011年の統計を発表している(表6・表7・表8参照)。
タイプ | 2010年 | 2011年 |
---|---|---|
旅行者(児童への接触などを目的にした) | 1,110件 |
1,354件 |
誘惑 | 5,482件 |
4,688件 |
未成年に宛てたわいせつ物 | 3,700件 |
3,455件 |
商業目的での児童の性的搾取 | 458件 |
1,493件 |
児童ポルノ制作 | 2,309件 |
3,975件 |
児童ポルノ配布 | 9,500件 |
11,341件 |
児童ポルノ所持 | 13,204件 |
14,892件 |
出典:ICAC特捜班の報告にもとづく司法省OJJDPの報告書 52をもとに作成。
2010年 | 2011年 | |
---|---|---|
連邦 | 1,156件 |
1,347件 |
州 | 2,741件 |
3,270件 |
地方 | 4,129件 |
5,234件 |
出典:ICAC特捜班の報告にもとづく司法省OJJDPの報告書 53をもとに作成。
2010年 | 2011年 | |
---|---|---|
申請された起訴件数 | 1,156件 |
1,347件 |
受理された起訴件数 | 2,741件 |
3,270件 |
出典:ICAC特捜班の報告にもとづく司法省OJJDPの報告書 54をもとに作成。
ただし、2005年と比較して、2010年には、10~17歳の子供がインターネットで自らが望まない性的誘惑を受けた割合が13%から9%に、自らが望まないインターネット・ポルノを受け取る割合が34%から23%に減少したという統計もある。同調査では、インターネット上のいやがらせは、上記と同じ時期の比較で9%から11%に増加している 55。
2011年以降のICAC特捜班の統計データは見当たらないが、2003年以降ほぼ毎年「イノセント・ロスト国家イニシアティブ(Innocence Lost National Initiative:ILNI)」が連邦捜査局の主導で行われ、児童買春の摘発で成果を上げている。その成果に関する最新データは、表9のとおりである。
2010年 | 2012年 | 2013年 | |
---|---|---|---|
保護児童数 | 69人 |
79人 |
105人 |
売春斡旋業者などの逮捕者数 | 885人 |
104人 |
150人 |
摘発捜査対象都市数 | 40都市 |
n/a |
76都市 |
出典:連邦捜査局のウェブサイト 56をもとに作成。