第1章 アメリカ
1 青少年のインターネット利用環境に関する実態
(6)青少年によるセクスティングの実態
2008年に「ティーンの無計画な妊娠防止運動(National Campaign to Prevent Teen and Unplanned Pregnancy)」と雑誌『CosmoGirl』が共同で実施した調査で、「セクスティング(sexting)」と呼ばれる行為、すなわち自分のヌード又はセミヌードの画像や動画、若しくは性的なことを想像させるメッセージをSMS、電子メール又はインスタント・メッセージで送受信することを行っているティーン(13~19歳)やヤングアダルト(20~26歳)の割合が高いことが報告され、問題となった。同調査による結果は、表10のとおりである。
ティーン 男子 |
ティーン 女子 |
ヤングアダルト 男子 |
ヤングアダルト 女子 |
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自分のヌードやセミヌードの映像を送信したことがある | 18% |
22% |
31% |
36% |
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性的なメッセージを送信したことがある | 40% |
37% |
62% |
56% |
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内、そのようなメッセージを恋人に送信した | 67% |
71% |
75% |
83% |
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内、そのようなメッセージを交際したい相手に送信した | 39% |
21% |
30% |
21% |
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内、そのようなメッセージをインターネット上でのみ知っている相手に送信した | 15% (ティーン全体) |
23% |
15% |
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内、深刻な否定的結果を招く可能性があると分かっていながら当該行為を行った | 75% (ティーン全体) |
71% (ヤングアダルト全体) |
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性的なメッセージを受信したことがある | 48% (ティーン全体) |
64% (ヤングアダルト全体) |
出典:「ティーンの無計画な妊娠防止運動」と雑誌『コスモガール』の調査報告書 57をもとに作成。
2011年にMTVがAP通信社(The Associated Press)と共同で、14~24歳のティーン及びヤングアダルトを対象に実施した調査の結果は、図9のとおりである。「セクスティング」を行ったうちの10%は、オンラインでのみ知っている人に対して行っているが、2009年の29%からかなり減少していた。また、「セクスティング」を行ったヤングアダルト(18~24歳)の割合は19%であり、ティーン(14~17歳)の7%と比べて高い 58。
図9 アメリカの青少年のセクスティングの経験(2011年)
出典:MTVの報告書 59をもとに作成。
成人の「セクスティング」については、2012年のピュー研究所の調査によると、携帯電話を所有する18~24歳の27%、25~34歳の31%が「性的な画像や動画の入ったメッセージ」を受信したことがあり、そのようなメッセージを送信したことがあるのはそれぞれ9%、14%である 60。
デジタルの映像は共有される可能性が高いうえ、ネット上で匿名性を守ることが難しいことを考えると、「セクスティング」は深刻な社会問題であり、ティーンへの教育が必要であるとする声が高まっている。これを受けて、各州は「セクスティング」に関する法律を整備してきた 61。ただし、実際に当該行為を行って法的トラブルに遭うティーンの割合は低いともいわれている。
(7)青少年の間のネットいじめ
2000年・2005年・2010年に10~17歳の約4,500人を対象として実施された"Youth Internet Safety Survey"の報告書が2013年に発表されている。同報告書によると、最近10年間に「オンラインでのいやがらせ(online harassment)」は6%から11%に増加し、特に被害者が女子である割合が48%から69%へと増加している。また、学校の友達や知り合いにより、SNS上で被害に遭う割合が増加している。この背景として、女子のSNS利用が増加したことがあると分析し、教育現場で友人関係を改善していじめ防止につなげていく方法が効果的であるだろう、と結論づけている 62。
マイクロソフト(Microsoft)社が実施した国際調査においても、8~17歳の児童の54%がインターネット上でいじめられることを恐れていると報告されており、特にSNS利用率が高い中高生の心配事の一つとなっている。
最近では、2013年10月16日に、Facebook上でいじめを受けていたフロリダ州の12歳の少女レベッカ・セドウィック(Rebecca Sedwick)を自殺に追い込んだとされる12歳と14歳の少女らが刑事責任を問われて逮捕されるという事件が発生した 63。この2人の加害者は未成年ではあるが、ストーカー行為などの重罪に問われ、氏名及び顔写真が一般に公開された。同事件により、2009年のハーバード大学のバークマン・センターの報告書が示した「ティーンに対してインターネット上で脅威を与えているのは見知らぬ性犯罪者よりも身近な友達である」という結論が実証されることとなった。同事件の両加害者の家庭環境には問題があったと報道されており、内1人の加害者の母親は児童虐待を行っていたことが判明して逮捕された。以上のような事情のため、一般的なネットいじめとは言いがたい面もあり、あらゆるネットいじめに対して包括的な対策を求める世論が高まるかどうかは不明である。その後2013年11月末に、ストーカー行為などの重罪での起訴は取り下げられたと、加害者2人の弁護士により発表された。