第1章 アメリカ

1 青少年のインターネット利用環境に関する実態

(10)青少年のインターネット利用に関する親子間の話し合い並びにルール設定の有無及び内容

2010年にカイザー・ファミリー財団(Kaiser Family Foundation)が、家庭でのPC等のメディアに関するルールについて子供(8~18歳)を対象に実施した調査によると、何らかのルールがある家庭の子供と、ルールのない家庭の子供では、ルールのある家庭の子供のほうがメディアに接している合計時間が短い。また、子供の年齢によってルールの内容にかなり差がある(表14・表15参照)。

表14 アメリカにおいてPCの利用内容及び時間に関するルールがある子供の割合(2010年)
  8~10歳 11~14歳 15~18歳 全体
PCの利用内容に関するルールがある
64%
60%
36%
52%
PCの利用時間に関するルールがある
36%

出典:カイザー・ファミリー財団の報告書 77をもとに作成

表15 アメリカにおいてメディアの利用時間に関するルールがある子供の割合(2010年)
  8~10歳 11~14歳 15~18歳 全体
メディアの利用時間に関するルールがあり、それをほとんどいつも実施している
38%
29%
36%
26%
メディアの利用時間に関するルールがあるが、実施するのはときどきである
43%
43%
16%
39%
メディアの利用時間に関するルールがない
3%
11%
30%
16%

出典:カイザー・ファミリー財団の報告書 78をもとに作成。

また、2011年にFamily Online Safety Institute(FOSI)が発表した、8~17歳の子供を持つ親702人を対象にした調査がある。同調査の結果は、表16のとおりである。

表16 アメリカのインターネットの利用に関する親子間のルール設定状況(2011年)
  割合
インターネット上でしてよいこと・してはいけないことに関して親子で話し合った
96%
インターネット上で子供がどのように振る舞うべきかについて、親の求めている基準やルールを設定し、家庭におけるインターネット利用契約書に子供が署名している
10%
何らかのペアレンタルコントロールを利用している*1
53%
PCのOS、検索エンジン、ISP、ビデオゲーム機器、スマートフォンで提供される計6種類のペアレンタルコントロールのうち、少なくとも一つを利用している*2
65%
子供がインターネットを利用する際に何らかのルールや制限を設けている
93%
子供が携帯電話(スマートフォンを含む)を所有している
53%
  内、携帯電話の利用に対して利用時間制限やルールを設けている
59%
子供がスマートフォンでインターネットを利用している
21%
  内、ペアレンタルコントロール設定を利用している
25%
  内、ペアレンタルコントロール・アプリケーションをダウンロードしている
16%
子供がビデオゲーム機器でインターネットを利用している
30%
  内、ペアレンタルコントロールを利用している
33%

注:*1と*2は異なる質問による項目のため、内容的には同じだが数値が異なる。
出典:FOSIの報告書 79をもとに作成。

以上のように、カイザー・ファミリー財団の2010年の統計とFOSIの2011年の統計との間には、数値にかなり開きがある。

2011年のピュー研究所の調査では、ティーンの親のほとんど全員(98%)がインターネット利用に関して子供と話をしたことがあると回答した。その内容の内訳は図10のとおりである 80


図10 アメリカの親子の間でインターネットの安全について話し合う内容(2011年)

注:回答者母数は12~17歳の子供と親の各799人であり、そのうち778人の子供と759人の親を抽出している。
出典:ピュー研究所の調査データをもとにした表 81から作成。

2012年のピュー研究所の調査では、SNSを利用するティーンを持つ親の59%が、(子供が)プロフィールやアカウント情報に記載した内容について心配し、子供と会話を持ったことがあるとしている。また、そのうちの39%は、子供のプライバシー設定(個人情報をどこまで公開するかの設定)を補佐している 82

インターネットをどこでも利用できるようになったことは、非常に大きな社会的変革である。家庭や社会がこの変化に対応するために果たすべき役割は大きく、自分たちが意識を変えていかなければならないという世論も高まっている。

クリントン第42代大統領の娘であるチェルシー・クリントン(Chelsea Clinton)氏は、コモンセンスメディアの運営委員として、同団体の会長及び設立者であるジェームズ・ステイヤー(James P. Steyer)氏と共同で、インターネットの影響についてCNNで論説を書いている。そこでは、「多重知能(Multiple Intelligence)」の提唱で有名なハワード・ガーデナー(Howard Gardener)博士も、インターネットによる変化を「新しい時代をもたらした変化(epochal change)と述べていると紹介し、インターネットが社会に与えた影響は非常に大きく、プライバシーの問題だけでなく、子供の思考、及び他者との関係の変化、並びに個人の裁量権の崩壊をもたらしたとしており、インターネットの危険を抑止し、良い面を享受するためには法律、社会規範、教育の変革が必要だとしている。また、ステイヤー氏は2012年に出版された『Facebookに言い返す(Talking Back to Facebook)』という著書において、子供をSNSから遮断するのではなく、親も参加して、より良いコミュニケーションや人間関係の発展に利用する方法を提唱している。

近年、インターネットやSNSが存在する時代における、子育ての指針となるような書籍の出版も増加している。例えば、以下のような本がある。

  • Nancy E. Willard, Cyber-Safe Kids, Cyber Savvy Teens: Helping Young People Learn To Use the Internet Safely and Reponsibly, (Jossey-Bass, 2007).
  • Mark Oestreicher and Adam McLane, A Parent's Guide to Understanding Social Media: Helping Your Teenager Navigate Life Online, (Group Publishing, 2012).
  • Brenda Hunter and Kristen Blair, From Santa to Sexting: Helping Your Child Safely Navigate Middle School and Shape the Choices that Last a Lifetime, (Leafwood Pub, 2012).
  • Kathryn Rose, The Parent's Guide to Facebook: Tips and Strategies to Protect Your Children on the World's Largest Social Network, (CreateSpace, 2011).
  • Matt Ivester, lol…OMG!: What Every Student Needs to Know About Online Reputation Management, Digital Citizenship and Cyberbullying, (CreateSpace, 2011).
  • Bob Waliszewski. Plugged-In Parenting: How to Raise Media-Savvy Kids with Love, Not War (Focus on the Family), (Focus on the Family, 2011).
  • Larry D. Rosen, Me, MySpace, and I: Parenting the Net Generation, (Palgrave Macmillan, 2007).