第2章 フランス

3 青少年のインターネット利用環境に関する制度、法及び政策とその背景

(2)インターネット上の違法・有害情報に対するフィルタリング等の閲覧防止策

ア フィルタリング

(ア)背景

EUレベルでは、1998年に「視聴覚及びオンライン情報サービス産業の競争に係る未成年者及び人間の尊厳の保護に関する1998年9月24日付欧州評議会勧告(Recommandation 98/560/CE du Conseil, du 24 septembre 1998, concernant le développement de la compétitivité de l'industrie européenne des services audiovisuels et d'information par la promotion de cadres nationaux à visant à assurer un niveau comparable et efficace de protection des mineurs et de la dignité humaine)」が採決された。これは、電子メディア(インターネット、デジタル放送、ビデオゲームなど)の著しい発展を受けて、EUレベルでインターネット上の視聴覚・情報サービスに言及した最初の文書であり、すべての電子メディアにおける青少年保護について、以下のように各国の自主規制を促した 372

  • 未成年者及び人間の尊厳の保護を目的に、関係者(利用者、消費者、企業及び政府)の参加を促進し、自主的な対策、特にサービスプロバイダによる自主規制の設定を奨励する。
  • テレビ放送事業者が、視聴者への情報提供や未成年者保護のための新しい施策を自主的に講じるよう奨励する。
  • オンラインサービスにおいて、違法コンテンツに関する苦情処理や国家当局への通報によって、人間の尊厳を侵害する違法コンテンツへの対策を講じる。また、国家間の協力体制を構築する。
  • 未成年者が自らの責任でインターネット上の情報・視聴覚サービスを利用できるように、特に保護者、教育者及び教師に対して未成年者保護の新しい手段やサービスに関する情報を提供することで、啓発活動を促進する。

2004年6月14日に、AFA(インターネットアクセスサービスプロバイダ協会)が「特殊コンテンツ対策におけるオンラインホスティングサービス及びインターネットアクセスサービス事業者憲章(Charte des prestataires de services d'hébergement en ligne et d'accès à Internet en matière de lutte contre certains contenus spécifiques 373)」を発表し、ICRA 374無料フィルタリングソフトウェアに加えて、ソフトウェア会社と提携して、ペアレンタルコントロールソフトウェアを有償又は無償でインターネット利用者に提供すること、各社ポータルサイトにAFAが運営する違法・有害コンテンツの通報ホットライン"Point de Contact"へのリンクを貼ることが規定された。

2004年に制定された「デジタル経済における信頼のための2004年6月21日法律第2004-575号(Loi n°2004-575 du 21 juin 2004 pour la confiance dans l'économie numérique:LCEN)」(以下、「デジタル経済(信頼)法」という。)第6条の規定にもとづき、2005年家族会議(Conférence de la famille 2005) 375が、ISPに対してフィルタリングソフトウェアの提供を義務付けたため、ペアレンタルコントロールソフトウェアが市場に出回っていた。しかし、大部分のソフトが有料である、契約料金に含まれているフィルタリングの品質に問題がある、簡単に設定を解除できる等、多くの問題点があった。

そこで、同年11月16日、AFAと家族担当省(Ministère de la Famille)との間で合意書 376が交わされ、2006年以降のペアレンタルコントロールソフトウェアの無償提供、アップデート及び性能評価、当該ソフトウェアの使用を促進する啓発活動の実施について規定された。

2006年には、「未成年者及び人間の尊厳の保護及び反論権に関する2006年12月20日付欧州評議会勧告(Recommandation 2006/952/CE du Parlement européen et du Conseil, du 20 décembre 2006, sur la protection des mineurs et de la dignité humaine et sur le droit de réponse en liaison avec la compétitivité de l'industrie européenne des services audiovisuels et d'information en ligne377」が採決され、児童のインターネット利用に対する教育とその振興のための施策を発展させる必要性や、児童がショッキングなコンテンツを閲覧することを回避できるシステムの設置に際してのインターネットプロバイダの関与が強調された。特に、インターネット事業者の自主的な対応として、<1>各加盟国規制機関と協力して、違法・有害情報に対するフィルタリングシステム等の提供を促進(最新かつ使いやすいフィルタリングシステムの提供、ウェブサイト内容の評価・分離システムの提供)、<2>レイティングシステムの利便性の向上が求められた。

2004年2月11日にインターネット権利フォーラム(Forum des droits sur l'Internet) 378が発表した勧告書 379では、未成年者がインターネットで閲覧することのできる有害コンテンツに対する法令の適用区分を明確にし(特に「刑法典」第227-24条)、関係者(サービスプロバイダ及び政府諸官庁)に対して必要な施策を提案した。携帯電話によるインターネット利用が普及しつつあったという状況を受けて、プロバイダ、携帯機器製造業者及びフィルタリングソフトウェア業者がモバイル媒体に適応した新しいペアレンタルコントロールツールを開発することを奨励した。

2005年1月25日に同フォーラムが発表した勧告書 380では、インターネットの児童ポルノサイトの氾濫や、未成年者に対する性的侵害を狙ったインターネットの利用が顕著である実態が明らかにされ、インターネットの利用に関する青少年教育及び関係者の啓発活動の重要性が強調された。

さらに、2008年10月に同フォーラムが発表した勧告書 381では、ISPが児童ポルノサイトのフィルタリングを設定する際の必要条件に関する考察を取りまとめた。

2012年3月にCSA(視聴覚最高評議会)が発表した『視聴覚メディアとインターネットが融合する時代の未成年者保護報告書(La protection des mineurs à l'heure de la convergence des medias audiovisuels et d'Internet)』 382では、複数の媒体(テレビ、ビデオゲーム、インターネット、モバイルネットワークなど)にコンテンツが併存する現在のメディア環境において、現行の仕組みでは同一のコンテンツであっても媒体によって規制を受ける場合と受けない場合があるため、青少年保護の観点からも異なる媒体で一貫した施策を適用できるような国家機関を創設することが推奨された。


(イ)経緯 383

1996年に、「電気通信規制1996年7月26日法律第96-659号(Loi n°96-659 du 26 juillet 1996 de réglementation des télécommunications)」第15条によって、「視聴覚法」が改正(第43-1条、第43-2条、第43-3条の追加)された。第43-1条では、「通信サービス又は視聴覚通信サービスを提供する者(プロバイダ)は、アクセスを制限又は選択できる技術的手段を顧客に提案しなければならない」と規定され、フィルタリングソフトウェアの導入が義務付けられた。

しかし、同法第43-2条がCSAに対して倫理遵守勧告や検察への通告を行う「データ通信最高委員会(Comité supérieur de la télématique)」の設置、第43-3条が違法コンテンツに対するプロバイダの免責を規定したが、両条項は「1996年7月23日憲法評議会決議第96-378号(Décision n°96-378 DC du 23 juillet 1996 384)」第25項により違憲と判断され、フィルタリングソフトの実際の普及には至らなかった。

「視聴覚法」を改正する「2000年8月1日法律第2000-719号(Loi n°2000-719 du 1er aout 2000 modifiant la loi n°86-1067 du 30 septembre 1986 relative à la liberté de communication)」第1条 及び 2004年制定の「デジタル経済(信頼)法」第6条は、「公衆向けオンライン通信サービス接続提供事業者(personnes dont l'activité est d'offrir un accèsa des services de communication au public en ligne)」、いわゆるISP 385は、接続を制限又は選択できる技術的手段をインターネット利用者に通知し、少なくともその一つを提案しなければならないと規定し、フィルタリングソフトウェアの提供が義務付けられた


(ウ)インターネット接続可能端末ごとのフィルタリング状況等
a PC
(a)ISPによるフィルタリングサービス

2013年12月現在、各ISPが無料のフィルタリングソフトウェアを提供している。ソフトウェアの基本機能は、2005年11月16日にAFAと家族担当省との間で締結された合意書の規定に準拠している。その規定は、以下のとおりである。

  • フィルタ基準として「児童」「青少年」「大人」の3種類を設定すること。
  • 「児童」向けは、ホワイトリストのウェブサイトのみアクセスが可能である。
  • 「青少年」向けは、意味解析検索(有害語彙の検出機能)を伴うブラックリストにもとづいて違法・有害とされるウェブサイトを除き、すべてのコンテンツにアクセスが可能である。
  • 「大人」向けは、ペアレンタルコントロールを一切機能させない。
  • ホワイトリスト及びブラックリストの追加・削除を可能とすること。
  • 利用管理ソフトウェア(ウェブサイト閲覧履歴、個人情報送信ブロッキング、接続時間数制限、接続時間帯設定など)も無償で提供すること。

また、フィルタリングソフトウェアは、チャット、フォーラム及びビデオや音楽のダウンロードのフィルタリングも可能である。

ISPは検索エンジン(MSN、Yahoo!、Google)におけるポルノサイトのフィルタリングも提供している。

フランスにおける主要ISPは、Orange(2013年3月31日時点、市場シェア41.1%、契約者数990万人)、Free(同、22.5%、546万人)、SFR(同、21.2%、513万人)、Bouygues(同、7.8%、189万人)である 386

以下、上記ISP等が提供しているPC用フィルタリングソフトウェアについて、個別に紹介する。

Orange

Orangeのフィルタリングソフトソフトウェアは無償で提供されており、ウェブページのコンテンツをフィルタリングし、青少年の閲覧が望ましくないウェブサイトへの接続をブロックすることができる。ブロッキングは、禁止サイトリストをもとに自動的に行われ、親(保護者)の判断でリストへの追加・削除が可能である。また、子供のインターネット接続時間や接続可能時間帯を設定したり、子供の閲覧履歴を確認したりできる。

フィルタリングソフトウェアが有効であるときには、画面のタスクバーにアイコンが表示される。また、マルチユーザーモードに設定して各利用者がアカウントを作成すると、アカウント別にフィルタリング基準の設定が可能となる。

表30 Orangeの年齢別フィルタリング基準(デフォルト設定)
年齢 設定内容
3歳以上6歳未満
すべての自由検索がブロッキングされる。子供は、親が作成したリストのウェブサイトのみ閲覧できる。
6歳以上9歳未満
検索が可能なカテゴリー(検索エンジン、ポータルサイト、芸術、ゲーム、スポーツ、情報処理・テクノロジー、宗教及び教育)に限定される。親の判断で検索可能なカテゴリーの内容を変更できる。
9歳以上13歳未満
禁止カテゴリー(危険な行動、ポルノ、悪質、暴力、SNS及びインスタントメッセージ)を除き、自由にインターネットを利用できる。
13歳以上18歳未満
禁止カテゴリー(危険な行動、ポルノ、悪質及び暴力)を除き、自由にインターネットを利用できる。
18歳以上
自由にインターネットを利用できる。禁止カテゴリーの設定は親の判断による。

出典:Orangeのウェブサイト 387をもとに作成。

Free

Freeは、"Free Angel"というフィルタリングソフトウェアを無償で提供している。同ソフトウェアは、「児童(enfant)」と「青少年(adolescent)」の2つのプロフィールを設定すると、対応するフィルター基準に従って、子供が有害なウェブサイトを閲覧してしまうリスクを低減する。また、インターネット接続可能時間帯を設定することによって子供の利用時間を制限したり、個人情報フィルタを設定することによって名前、住所及び電話番号などの個人情報の通信を防止したりすることができる。さらに、子供が閲覧したサイトの履歴を参照することも可能である。

表31 Freeのプロフィール別フィルタリング基準(デフォルト設定)
プロフィール 設定内容
児童(enfant)
子供向け検索エンジンを利用してホワイトリストのみにアクセスする検索を可能とする。
青少年(adolescent)
ショッキングなコンテンツなどを含む禁止リストを除き、インターネットで提供されるすべてのコンテンツにアクセスできる。

出典:Freeのウェブサイト 388をもとに作成。

SFR

SFRはフィルタリングソフトウェアを無償で提供しており、プロフィール別のフィルタリング基準を設定できる。また、親(保護者)はフィルタリングカテゴリーの選択、プロトコルフィルタ(P2P、チャットなど)の設定、ファイルフィルタリングの設定、ブラックリスト及びホワイトリストのカスタマイズが可能である。さらに、インターネット接続可能時間帯を設定することもできるが、公衆Wi-Fiによる接続には対応していない。389

表32 SFRのプロフィール別フィルタリング基準(デフォルト設定)
プロフィール 設定内容
児童(enfant)
児童向けポータルサイトのホワイトリストコンテンツのみにアクセスできる。
青少年(adolescent)
ブラックリストのコンテンツを除き、自由にアクセスできる。
パーソナライズ(personnalise)
個人に合わせたフィルタ基準を作成する。
成人(adulte)
フィルタリングを一切行わない。

出典:SFRのウェブサイト 390をもとに作成。

Numéricable

ケーブル通信事業者であるNuméricableは、インターネット上の児童保護を専門とするXooloo社が設計したフィルタリングソフトウェア"Xooloo"を無償で提供している 391。「児童(enfant)」「青少年(adolescent)」「成人(adulte)」の年齢層別のフィルタ基準が設けられている。

2010年1月に、フランス規格協会(Association françaisede normalisation:AFNOR)が「インターネットアクセスプロバイダによって提供されたペアレンタルコントロールソリューション成果(Performance des solutions de contrôle parental proposéespar les FAI)」と題する実験にもとづく規格を発表した。同規格は、関係するパートナーとの協議を経て、担当省の主導により策定され、ユーザーのプロフィールに応じてペアレンタルコントロールが満たさなければならない客観的基準を定めており、ペアレンタルコントロールソフトウェアの定期的試験の際の評価に利用されている。

ただし、同規格が適用されるのは、有線インターネット接続のみである 392。したがって、ブラウザ以外のクライアントソフトウェアを必要とするインターネットアプリケーションのほか、電子メール、インスタントメッセンジャー、その他アプリケーション(オンラインゲーム)には適用されない。また、携帯電話によるインターネットアクセスコントロールについては、技術的制約を受けるため、同規格の適用範囲内ではない。

e-Enfanceは公的援助を受けて、インターネットプロバイダが無償で提供するペアレンタルコントロールソフトウェアの品質検査を実施している。最新のものでは、2008年に実施した結果がウェブサイトに公表されている(表33参照)。

表33 e-Enfanceによるペアレンタルコントロールソフトウェアの品質検査の結果(2008年)
プロバイダ 青少年向けフィルタンリグ(ブラックリスト)の品質 児童向けフィルタリング(ホワイトリスト)の品質 ペアレンタルコントロールの利便性及び機能性 評価
(10点満点)
備考
Numéricable
良い
良い
大変良い
8.9
ペアレンタルコントロールソフトウェア評価で顕著な改善が見られ、前回の最下位から最高位にランクアップ。
Orange
ふつう
悪い
大変良い
7.6
Orangeのフィルタリングはポルノサイト及びオンラインギャンブルサイトでは有効であるが、麻薬や暴力サイトには不十分である。児童向けフィルタリング(ホワイトリスト)は悪化している。
SFR
ふつう
悪い
大変良い
7.2
教育的観点(保護者への情報提供、使いやすさ)からは優れたソフトであるが、青少年向け・児童向けともにフィルタリングの品質を改善する必要がある。
Alice
ふつう以下
悪い
大変良い
7.0
オンラインゲーム及び麻薬においては、青少年向けフィルタリング(ブラックリスト)の改善がみられるが、全体的に不十分である。児童向けフィルタリング(ホワイトリスト)の品質は期待を下回っている。
Free
ふつう
大変悪い
良い
6.7
青少年向けフィルタリング(ブラックリスト)のオンラインゲーム及びポルトサイトに対する品質は大きく改善されたが、児童向けフィルタリング(ホワイトリスト)のBabyGoには大きな問題がある。

出典:e-Enfanceのウェブサイト 393をもとに作成。

(b)ソフトウェアによるフィルタリング

非営利団体Action Innocence 394が、市販のフィルタリングソフトウェアの品質検査を実施し、ウェブサイト 395で結果を公開している。検査対象基準は、個人向けであること、ブラックリストが所有者のリンクから100%又は複数のブラックリストから構成されていること、インターネットブラウザで表示されるコンテンツをフィルタリングできることである。公表されている最新の検査結果(2013年12月)は、表34のとおりである。

b スマートフォン

2004年制定の「デジタル経済(信頼)法」第6条の規定を受けて、2006年1月10日にAFOM(現 AFA)が、違法コンテンツ対策を目的とする「モバイルマルチメディアコンテンツに関する取組憲章(Charte d'engagements des Opérateurs sur le contenu multimédia mobile 396)」を締結した。主な規定内容は、以下のとおりである。

  • 携帯電話事業者は、携帯電話加入者に対して青少年用のフィルタリングツールを無償提供する。
  • 携帯電話事業者は、携帯電話利用者が青少年の場合にはフィルタリングサービスの利用を奨励する。
  • 携帯電話事業者は、関係者(行政機関、家族団体及び独立機関など)と協力して、モバイルマルチメディアコンテンツのレイティング及び適用規則を定める。
  • 携帯電話事業者は、違法コンテンツ対策を強化するために通報システムを定期的に改善するよう努める。

また、同憲章は携帯電話事業者が提供するフィルタリングソフトウェアが最低限満たすべき機能について、以下のように規定している。

  • サービスセンターに電話するだけで機能が有効となる(特別な操作を必要としない)。
  • 青少年にとって有害となるコンテンツへのアクセスを制限する。
  • 出会い系サイトへのアクセスを制限する。
  • 携帯電話事業者とサービス編集者は、リンクの契約をしていないコンテンツへのアクセスを制限する。
表34 Action Innocenceによるフィルタリングソフトウェア品質検査の結果 上位4位(2013年12月)
ソフト名 評価(6点満点) 対応OS 対応機能
全体 フィルタリング 利便性 オプション
Parental Filter 2
5.4
5.3
6.0
6.0
Windows
iOS
Android
○プログラムブロッキング
○個人情報保護
○ホワイトリスト・ブラックリストの個人対応
○利用時間帯制限
○キーワードの個人対応
○閲覧履歴
AVG Family Safety
5.4
5.5
6.0
4.0
Windows
iOS
○プログラムブロッキング
×個人情報保護
○ホワイトリスト・ブラックリストの個人対応
○利用時間帯制限
×キーワードの個人対応
○閲覧履歴
Xooloo Controle Parental
5.3
5.2
6.0
5.0
Windows
Mac
Android
○プログラムブロッキング
×個人情報保護
○ホワイトリスト・ブラックリストの個人対応
○利用時間帯制限
○キーワードの個人対応
○閲覧履歴
ZoneAlarm Internet Security Suite
5.2
5.5
4.0
4.0
Windows ○プログラムブロッキング
○個人情報保護
○ホワイトリスト・ブラックリストの個人対応
×利用時間帯制限
×キーワードの個人対応
○閲覧履歴

出典:Filtraの資料 397をもとに作成。

(a)移動体通信事業者の提供するフィルタリングサービス

フランスにおける主要な移動体通信事業者は、Orange(2013年3月31日時点、市場シェア36.4%、契約者数2,680万人)、SFR(同、26.3%、1,682万人)、Bouygues Telecom(同、17.63%、1,127万人)、Free(同、9.5%、600万人)である 398

上位2社(Orange及びSFR)が提供している携帯電話用フィルタリングサービスについて、以下に記述する。なお、いずれのモバイルペアレンタルコントロールについても、Wi-FiネットワークやBlackberryでは機能しない。

Orange

Orangeが無料で提供しているモバイルペアレンタルコントロール(controle parental mobile)は、モバイルインターネット、TVコール(appels visio)、Orangeのモバイルテレビの利用に際して青少年に有害な情報を含むコンテンツへのアクセスを制限できる。

表35 フランスのOrangeの提供するペアレンタルコントロールサービス
コントロール対象 コントロール内容
モバイルインターネット
2G/3G回線で接続可能なセンシティブなウェブサイト(性的、チャット、ブログ、出会い系など)をブロックする。
TVコール
プレミアムレート番号や不適切なコンテンツへの発信をブロックする。
モバイルテレビ
午後10時30分から午前5時までのテレビへのアクセスをブロックする(ただし、Orangeが提供するアプリ以外でのアクセスについては対応していない)。

出典:Orangeのウェブサイト 399をもとに作成。

モバイルペアレンタルコントロールは、たえず更新されるブラックリストとそれを補完する意味解析エンジン(moteur d'analyse sémantique)によって機能する。意味解析エンジンとは、未成年者にとってセンシティブなキーワード(単語、単語グループ、表現)を標定し、それらを含むウェブページの表示を禁止することによって自動的にアクセスをブロックする。

SFR

SFRが無償で提供しているペアレンタルコントロールサービスは、移動体通信(GSM/EDGE/3G+)回線でアクセスできるセンシティブなコンテンツ(ポルノ、出会い系など)を含むウェブサイトへのアクセスをブロックできる。子供の年齢によってセンシティブなコンテンツが異なることから、2レベルのペアレンタルコントロールを用意している。

表36 フランスのSFRの提供するペアレンタルコントロールサービス
レベル 設定内容
ふつう

禁止サイトを除き、インターネットへのアクセスは制限されない。

禁止サイト:出会い系、性的、暴力、アダルトサイト

許可サイトのカテゴリー:チャット、インスタントメッセージ、ブログ、SNS、電子メール(Gmail、Yahoo!など)、ビデオ共有サイト、検索エンジン(Google、Bingなど)、マーケットプレイス(Google Play、iTunes Storeなど)、児童向けポータルサイト、TVサイト

強度

「年齢制限なし(tout public)」のコンテンツのみアクセスできる。

禁止サイト:出会い系、性的、暴力、アダルトサイト、チャット、インスタントメッセージ、ブログ、SNS、電子メール、ビデオ共有サイト、検索エンジン、マーケットプレイス

出典:SFRのウェブサイト 400をもとに作成。

なお、モバイルペアレンタルコントロールはWi-Fiネットワークでは機能しない。また、Blackberryの機種では機能しない。

(b)アプリケーションフィルタリング(アプリケーションにおける有害情報の閲覧を制限する措置)

e-Enfanceは、iPhone及びiPodに対応している市販のペアレンタルコントロールアプリケーションの品質検査を実施しており、利便性・信頼性の高いソフトをウェブサイトで紹介している。

表37 e-EnfanceによるiPhone・iPod Touchに対応しているペアレンタルコントロールアプリケーションの品質検査の結果(2010年3月18日時点)
アプリケーション名 料金 年齢別フィルタリング カテゴリー別フィルタリング 時間帯制限 閲覧履歴 フィルタリング品質(20点満点) ブラウジング品質(5点満点) コメント
mobicip Premium
年額
8.99ユーロ
×
18
5
管理用ページが便利。
iNet SafetyBubble
15.99ユーロ
×
×
12
5
有効だが画像をブロックしない。
Googleセーフサーチをオンにする必要がある。
mobicip
3.99ユーロ
×
×
×
18
5
快適で使いやすい。
小学生・中学生・高校生別のフィルタリングが可能。
iWonder Surf Pro
無料
×
×
×
×
5
2
複雑。
iWonder Surf Pro+ 年間契約
年額
21.99ユーロ
×
×
×
5
2
SmartWeb mobile
2.39ユーロ
×
1
1
有効でない。
5歳以上、12歳以上はすべてブロックするため、利用不可。
15歳以上は性的のみブロック。
bsecure
無料
×
×
×
×
5
3
ポルノのみブロック。
デフォルト設定では、Google画像検索は制限される。
B.O.B
5.49ユーロ
×
×
×
3
12歳未満のみ便利。
許可URLのみ接続可能。
B.O.B Junior
1.59ユーロ
×
×
×
3
B.O.B Lite
無料
×
×
×
3
weblinks
2.39ユーロ
×
×
×
×
4
許可リストの作成が必要。
webipot lite
無料
×
×
×
×
2
12歳未満に限定。
広告、検索エンジン、SNSをブロック。
webipot
0.79ユーロ
×
×
×
2

注:ソフトの使用言語はすべて英語。
出典:e-Enfanceの比較表 401をもとに作成。


(エ)新たなインターネット接続方法に対するフィルタリング状況
a 無線LAN

2013年に、調査会社のOlfeo社が、公衆無線LANを利用した際の、<1>利用者の接続情報の認証及び保存、<2>接続条件及び個人情報処理に関する利用者への情報提供、<3>青少年保護を目的とする違法コンテンツのフィルタリング状況等の実態調査を実施した。調査の対象となった公共の場は、行政機関、交通機関(空港、駅、地下鉄など)、美術館・博物館、ショッピングセンター、公共空間(公園、広場、庭園など)、イベント会場(会議)、観光地(ホテル、休暇宿泊所など)、図書館・マルチメディアライブラリー、飲食店(バー、喫茶店、レストランなど)である。

Olfeoは上述の公共の場で、違法コンテンツのフィルタリング状況を確認するために、種類別にそれぞれ10のウェブサイトで違法コンテンツの接続がブロックされるかどうかをテストした。結果として、公衆無線LAN提供者の平均48%が青少年に有害とされるポルノコンテンツをブロックするが、児童ポルノサイトのブロック率は9%であることが分かった。最も多くブロッキングがかかったコンテンツは、<1>ポルノコンテンツ、<2>薬物の促販、<3>身体的・精神的侵害であった(図98参照)。


図98 フランスの公衆無線LAN利用時のコンテンツ別ブロッキング状況(2013年)

出典:Olfeoの調査報告書 402をもとに作成。

また、公衆無線LAN提供者のフィルタリングシステムを設定した場合には、ポルノサイトの75%がブロックされるが、25%は不明ウェブサイトとして接続できた。このため、ブラックリストを使用したフィルタリングが完全ではなく、児童ポルノや著作権侵害に関してはブラックリストが機能しないことが明らかとなった(図99参照)。さらに、公衆無線LAN提供者の8%はフィルタリングの品質が低く、フィルタリング効果が低いことが確認された。


図99 フランスにおける公衆無線LAN利用時のフィルタリングシステム設定下のコンテンツ別ブロッキング状況(2013年)

出典:Olfeoの調査報告書 403をもとに作成。

利用場所別では、行政機関、美術館、飲食店(バー、喫茶、レストラン)のフィルタリング機能は高い一方、公共空間(公園、広場、庭園など)やイベント会場(会議)ではほとんど機能していなかった(図100参照)。


図100 フランスにおける公衆無線LAN利用時の利用場所別ブロッキング状況(2013年)

出典:Olfeoの調査報告書 404をもとに作成。

また、公衆無線LAN提供者の97%は、公衆無線LANに接続する際に利用者の年齢確認を実施していない 405。したがって、公衆無線LAN利用時の未成年者保護に対する認識は低いといえる。


イ ブロッキング

2000年に「視聴覚法」を改正する「2000年8月1日法律第2000-719号(Loi n°2000-719 du 1er août 2000 modifiant la loi 86-1067 du 30 septembre 1986 relative à la liberté de communication)」によって追加された第43-7条において、「私信以外のオンライン通信サービスへのアクセスを提供する個人又は法人(プロバイダ)は、アクセスを制限又は選択できる技術的手段を通知し、少なくとも一つは提案しなければならない」と規定された。

また、同様に追加された第43-8条において、「信号、文書、画像及びあらゆる性質のメッセージを公衆に提供するために、直接かつ永続的に有償又は無償で保管する個人又は法人(つまり、ホスティングサービス事業者)は、司法当局より命令を受けたにもかかわらず、画像や音声などの問題となるコンテンツへのアクセスを防止するために速やかに対処しなかった場合にかぎり、刑事・民事責任を負うものとする」と規定され、ホスティングサービス事業者の刑事・民事責任が制限された。

2004年に制定された「デジタル経済(信頼)法」第6条2において、「ホスティングサービス事業者が画像や音声等の違法性を知らなかった場合、又は違法性に気づいて速やかにそのデータを除去、又はアクセスを不可能にした場合、民事・刑事責任は問われないもとのとする」と規定し、プロバイダに通報措置を講じるように義務付けた。なお、同法は、EUの「域内市場における情報社会サービスの法的側面、特に電子商取引の法的側面に関する2000年6月8日欧州議会及び理事会指令2000/31/EC(Directive 2000/31/CE du Parlement européen et du Conseil du 8 juin 2000 relative à certains aspects juridiques des services de la société de l'information, et notamment du commerce électronique, dans le marché intérieur 406、通称「電子商取引指令」)及び「2002年電子通信プライバシー指令」を国内法化したものである

2011年には、「国内安全の成果のための方針及び計画の2011年3月14日法律第2011-267号(LOPPSI)」第4条によって「デジタル経済(信頼)法」第6条が改正され、外国にホスティングされている児童ポルノ対策として、プロバイダに対し児童ポルノサイトのブロッキングを義務付けた。ブロッキングは国家警察の「情報技術通信に関する犯罪対策中央局(Office central de lutte contre la criminalité liée aux technologies de l'information et de la communication:OCLCTIC)」からのブラックリストにもとづいて行われる。施行令については、別途規定されることになっている。

また、同改正により、外国のホスティングサーバーを含め、ISPを通じて、児童ポルノサイトをブロッキングできることが規定された。

「LOPPSI」第4条は、児童ポルノの性質を有する未成年者の画像及び描写からインターネット利用者を保護するための措置を導入するものである。ISPに対して、内務省(Ministère de l'Intérieur)によって指定される違法コンテンツを含むウェブサイトへのアクセスを遅滞なく防止することを義務付けている。

具体的な適用条件(ブロッキングの技術的条件及び追加費用補償など)については、デクレによって規定されることが同法同条に定められているが、2013年12月現在もまだ施行に至っていない。

内務省は、経済・財務省(Ministère de l'Économie et des Finances)及び生産再建省(Ministère du Redressement productif)・中小企業・イノベーション・デジタル経済担当と緊密な提携を図り、児童ポルノ画像からインターネット利用者を保護するための技術的・金銭的条件について、2011年後半に関係者(AFA、FAI協会、Orange、SFR、Free)との協議を開始した。国会の法案審議の際には、違法コンテンツの閲覧防止のために効率的な対策を講じる必要性に対して異議はないとしながらも、市民のインターネット活動の自由を擁護する観点から懸念が表明された。

「LOPPSI」第4条に関する2011年3月10日憲法評議会決議では、児童ポルノ画像が配信された場合には、インターネット利用者を保護するという目的で、当該のオンライン公衆通信サービスへのアクセスを制限する権力を行政当局にのみ与えるが、行政当局の決定に対して関係者は司法当局に提訴することができるという条項が加えられた。この条件によって、1789年の「人間と市民の権利の宣言(La Déclaration des droits de l'homme et du citoyen de 1789)」第11条の「伝達の自由の保護と公の秩序の保護」という、憲法的価値を有する目的との間に不均衡は認められないと判断された 407。なぜならば、フランスでは司法当局のみが自由を制限する措置を命じることができるためである。

AFAは、「LOPPSI」第4条によって児童ポルノサイトのブロッキングの義務が課せられたことに対して、「ISPが違法ウェブサイトをブロッキングするよりも、ホスティングサービス事業者が違法ウェブサイトを削除することが最も有効である」と指摘している。「コンテンツがブロッキングされても、インターネット上にコンテンツは存在し、一時的にアクセスが不可能になるにすぎず、ブロックされたコンテンツの著作者は、別のドメイン名又は別のURLでウェブサイトをホスティングすることができる。さらに、インターネット利用者は、"anonymiseur 408"を介して匿名でウェブサイトへのアクセスを要求して制限対象でないDNS(ドメインネーム)を使用することができるほか、インターネットのパラメーター設定を変更することによって、国外のISPのDNSを使用することも可能である。また、P2P 409ネットワークでは、ブロッキングによって児童ポルノコンテンツの配信を妨げることはできない。」という見解を示している 410

「"PHAROS(通報調整・分析・検証・方針プラットフォーム)"と称するシステムの創設に関する2009年6月16日アレテ(Délibération n°2013-223 du 18 juillet 2013 portant avis sur un projet d'arrêté modifiant l'arrêté du 16 juin 2009 portant création d'un système dénommé “PHAROS” (plate-forme d'harmonisation, d'analyse, de recoupement et d'orientation des signalements) 411)」を修正するアレテ案に関する答申をめぐって行われた、2013年7月18日審議 412の内容は以下のとおりである。

「「LOPPSI」第4条によって改正された「デジタル経済(信頼)法」第6条I-7において、インターネットサービスプロバイダに対して児童ポルノサイトへのアクセスを遅滞なく防止する義務が課せられた。OCLCTICがPHAROSシステムより受信した通報情報にもとづき、ブロッキングの電子アドレス(ブラックリスト)を作成し、ISPに通知することでブロッキングが実施されるが、具体的なブロッキングの条件及びブロッキングによって発生する追加費用の補償条件などを定める適用デクレがいまだに公布されていない。「デジタル経済(信頼)法」第6条I-7の規定では、児童ポルノに関してはISPのみがOCLCTICのブラックリストの受取人となっており、ホスティングサービス事業者はその対象ではない。しかし、ホスティングサービス事業者は第6条I-3の規定により、違法コンテンツを知らされた場合にコンテンツを削除することが義務付けられていることから、PHAROSデータの受取人の資格がある。

法案審議委員会は、ホスティングサービス事業者とISPに通知する情報を法令において区別することを内務省に提案するが、内務省では通知される情報の性質及び受取人について明確にする必要はないとの見解を示す。

また、インターネット詐欺において無料電子メッセンジャーサービスが利用されることから、電子アドレスに関する情報は「郵便電子通信法典」第L32条15に規定される電子通信事業者 413に対しても通知する必要性が明らかとなっている。したがって、PHAROSデータの受取人として電子通信事業者を規定するようにアレテ改正法案が審議中である。」


ウ 行政的措置

2004年に制定された「デジタル経済(信頼)法」は、EUの「電子商取引指令」を国内法化したものである。電子通信は自由であるが、この自由の行使は人間の尊厳を遵守するために必要な範囲に制限されることを規定している。

同法第6条Iの規定では、ISP及びホスティングサービス事業者に対して、伝送又は保存するコンテンツを監視すべき、また、違法行為を示す事実や状況を追及すべき一般的な義務を課さない。しかし、同条において、ISP及びホスティングサービス事業者は、「出版の自由に関する1881年7月29日法律」第24条、「刑法典」第227-23条及び第227-24条に該当する違反行為を防止するための対策に協力することが義務付けられている。したがって、インターネット利用者が違法行為を簡単に通報できるシステムを設置し、通報された違法行為を所轄当局に速やかに通知しなければならない。

「刑法典」第227-23条に該当する未成年者の画像又は描写の配信を防止する必要性が生じた場合には、行政当局が、違反対象となる公衆オンライン通信サービスの電子アドレスをISP及びホストサービス事業者に通知し、通知を受けたら遅延なくアクセスを防止することが義務付けられている。

また、インターネット利用者は、違法コンテンツを削除するために、裁判所に提訴することができる。


【ISP及びホスティング事業者に関する規定(第6条I)】

  • 違反・有害コンテンツの頒布を防止するための対策に協力する。
  • インターネット利用者が違反・有害コンテンツを通報できる仕組みの設定を行う。
  • 違反・有害コンテンツを所轄当局へ迅速に通知する。
  • インターネット上の違法活動に対する防止策の広報活動を行う。
  • 通報システムを設置することによって違法なオンラインギャンブルを防止するための対策に協力する。

【ISPに関する規定】

  • ペアレンタルコントロールシステムについて契約者に通知し、その利用を提案する(第6条I-1)。
  • 行政当局から児童ポルノサイトの電子アドレスの通知を受けたとき、遅延なくそれへのアクセスを防止する(第6条I-7)。

【ホスティングサービス事業者に関する規定】

  • サービスの受取人の要請によって保存された情報の違法性を知った場合には、迅速にその情報を削除又はアクセスを不可能にする(「デジタル経済(信頼)法」第6条1-2、1-3)。

ホスティング事業者は通報によって、コンテンツの明らかな違法性及び正確な位置情報を知った時点で、コンテンツを速やかに削除しなければならない。

コンテンツに関わる係争に関しては、原則、「郵便電子通信法典」第L32-3-3条の規定により、電子通信ネットワーク上でコンテンツを伝送する者(ホスティングサービス業者)又は電子通信ネットワークへのアクセスを提供する者(インターネットサービスプロバイダ)は、コンテンツを自ら発信しないこと、コンテンツの受信者を選択しないこと、コンテンツを選択又は変更しないことを条件に、伝送されたコンテンツに対して民事責任又は刑事責任を問われない。

さらに、2004年制定の「デジタル経済(信頼)法」第6条I-7の規定により、ホスティングサービス事業者及びISPは、伝送又は保存する情報を監視したり、違法行為を示す事実や状況を追及したりすることを義務付けられていない。しかし、違反行為を防止するための対策に協力することが義務付けられる。ただし、同法第6条I-8により、司法当局は、急速審理又は申請にもとづいて、公衆オンライン通信サービスのコンテンツによって引き起こされる損害を予防したり停止したりするために適したあらゆる措置をホスティングサービス事業者又はISPに命じることができる。


エ その他法的措置、罰則

不正オンライン宝くじ・カジノ・ギャンブルサイトのブロッキング

不正なオンラインギャンブルは、「オンラインカジノ・ギャンブル部門の自由競争化及び調整に関する2010年5月12日法律第2010-476号」第61条及びその適用規定を定めた「無許可のオンライン宝くじ・カジノ・ギャンブルを提供する活動へのアクセス停止の条件に関する2011年12月30日デクレ第2011-2122号」によって規制されている。

パリ大審裁判所(Tribunal de grande instance de Paris)裁判長によって下される「無許可のオンラインカジノ・ギャンブルを提供するウェブサイトへのアクセスの停止命令」に従って、ISP及びホスティングサービス事業者は、DNSによるブロッキングを実施しなければならない。DNSブロッキングによって発生する追加費用(ブロッキング義務の遂行に必要な追加的なDNSサーバの取得など)については、オンライン規制局(Autorité de régulation des jeux en ligne:ARJEL)に費用の詳細を示す書類を提出すると、産業・エネルギー・技術審議会(Conseil général de l'industrie, de l'énergie et des technologies:CGIET)の書類審査の結果を受けて、ARJELが正当と認められた追加費用に相当する補償を支払うことになっている。

知的所有権を侵害するウェブサイトのブロッキング

「知的財産法典」第L336-2条によって規制されている。

大審裁判所は、オンラインによる公衆通信サービスのコンテンツによってもたらされる著作権又は著作隣接権の侵害に対して、急速審理の形式で、保護される著作物の権利所有者の要請にもとづき、著作権又は著作隣接権の侵害を防止したり停止したりするために適したあらゆる措置を命じることができる。

消費者保護にもとづくブロッキング

2014年3月現在、国会審議中の「消費に関する法案(Projet de relatif à la consommation)」第25条では、司法当局に対して、急速審理、若しくはホスティングサービス事業者又はISPに対する申請により、公衆オンライン通信サービスコンテンツによってもたらされる損害を防止したり停止したりするために適した措置を命じるように要求することができる。

また、同法案は、消費者保護に関わる命令を遵守しない場合には、フランス競争・消費・不正抑止総局(Direction Générale de la Concurrence, de la Consommation et de la Répression des Fraudes:DGCCRF)が行政罰を下すことができるように所掌権限を強化している。公衆オンライン通信サービスのコンテンツによって生じる損害を防止したり停止したりするために適したあらゆる措置を命じることを目的に、急速審理の形式も含めて、裁判所に提訴する権利を認めることによって、電子商取引分野における権限を強化する狙いもある。

売買春あっせんサイトのブロッキング(案)

2013年11月に国民議会で審議された「買春システム防止策を強化する法律案(Projet de loi renforçant la lutte contre le système prostitutionnnel)」では、ISPに対して、外国にホスティングされた売買春あっせんサイトをブロッキングする義務を課すことを規定する条項が含まれていた 414

この条項に対して、政府のデジタル部門における諮問機関である「国家デジタル審議会(Conseil National du Numérique:CNN)」は、表現及び通信の基本的権利に反していること、司法当局が介入せずに行政当局が講じる電子アドレスのフィルタリング措置は反生産的(contre-productif)であることを理由として、同条項に対して否定的な見解を表明した。これを受けて、最終的には同条項は法案から削除された。したがって、現状では当該サイトに対するブロッキングは実施されていない。