第4章 韓国

1 青少年のインターネット利用環境に関する実態

(4)青少年のインターネット利用に伴う生活等への影響

ア インターネット依存

(ア)具体的な兆候

インターネットの急速な普及に伴い、韓国国内においてもインターネット依存(以下、韓国語の인터넷 중독(インターネット中毒)にならって、本章では例外的に「インターネット中毒」という。)について研究が進められてきたが、診断基準が海外で開発されたものであることや、研究者によってその診断基準が異なることが問題視されてきた。例えば、ある論文はインターネット中毒について以下のように規定している。

  • (a) インターネットの使用行為が生活で最も重要な位置を占め、インターネットだけを考えてインターネットを続けられるように努力する。また、インターネットを使用していないときは、次のインターネット使用まで無気力状態となる。
  • (b) インターネットを使用する時間だけは満足感と幸福感を持つ。また、インターネットを社会生活と個人及び集団との問題を解決するための主体として利用する。
  • (c) インターネットの利用によるある種の快感が持続するよう使用時間を徐々に拡大する。
  • (d) インターネットの使用を中止したり減らしたりした場合に、不快感、不安、憂鬱、不眠などの精神医学的症状が現れる。
  • (e) インターネットを使用する他の使用者との関係のみを持続する場合、社会化が遅れたり、歪んだりする可能性がある。
  • (f) インターネット使用者が使用を調節した後にも、同様の形態に再発する可能性がある。

このようなインターネット中毒者には、特に成績の低下、対人関係の対立の助長、自己統制力の減少、両極性障害、アンガー・マネジメントの未熟、強迫症などが現れることがある 543

2013年9月23日に施行された青少年保護法(法律第11673号)においては、インターネットコンテンツ中のオンラインゲームに限定して中毒を定義しており、条文中に「インターネットゲームの過度な利用によりオンラインゲーム利用者が日常生活において容易に回復できない身体的・精神的・社会的機能損傷を負うこと」を「オンラインゲーム中毒」と規定している。


(イ)対処法

青少年保護法法第26条は、オンラインゲーム提供業者が16歳未満の青少年に午前0時~午前6時のオンラインゲームを提供することを違法とし、深夜時間帯のインターネットゲームの提供を制限している。

インターネット中毒に関して、2013年に法的に大きな変化が見られた。「インターネット問題に効果的に対応するためにインターネット中毒の予防などに必要な措置を取った情報通信サービスに対する認証制度を導入し、国家や地方自治団体がインターネット依存に関する相談と治療などのためにインターネット中毒対応センターを設置・運営できるように」することを改正理由として、「国家情報化基本法(국가정보화 기본법)」が一部改正された(法律第11764号、2013年5月22日一部改正、2013年11月23日施行) 544

同改正は、従来は第30条において定められていた「インターネット等の過度の利用によって、利用者が、身体・精神・社会的に回復し難い機能障害をきたすこと」というインターネット中毒の定義を第3条第9号に移したほか、第30条の内容を変更するとともに、第30条の2から第30条の8までを新設した。その主な内容は次のようなものである 545

  • (a) 未来創造科学部長官は3年ごとにインターネット中毒の予防及び解消のための総合計画を確立し、未来創造科学部長官と関係中央行政機関の長は毎年総合計画に従ってインターネット中毒の予防及び解消のための推進計画を確立して施行する。
  • (b) 未来創造科学部長官は、インターネット中毒の予防及び解消に必要な措置のための情報通信サービスについて認証し、その認証を受けた情報通信サービス提供者は該当情報通信サービス提供の際に認証の表示としてグリーンインターネット認証マークを表示することができるようにする。
  • (c) 国家や地方自治団体はインターネット中毒者への相談と治療などのためにインターネット中毒対応センターを設置・運営し、国家、地方自治団体及び各級学校の長などはインターネット中毒の予防と解消のために教育を行う。

ゲーム規制に対する世論は賛成派と反対派が拮抗しており、論争中である。青少年がゲーム規制に反対する一方、親は規制に賛成しているため、医学界は「ゲーム中毒」についての結論を留保している。概略的に見るならば、ゲームへの過度の没頭についての副作用を認めているが、これを規制するための法案は現実性に欠け、産業全体を滅ぼすほどに過度なものであるという雰囲気が支配的である。最近では、女性家族部は、シャットダウン制に実効性がないという点を認めつつも、中毒問題の解決が至急であることから豊富な研究を通じて青少年保護のための自律的なゲーム規制法案が必要であると述べた 546

2013年12月19日に韓国インターネット企業協会 547は、インターネット環境における青少年政策の改善を図るため、チェ・ミンヒ(최민희)国会議員と共同で国会議員会館において「インターネット環境と青少年政策改善のためのセミナー」を開催した 548。専門家たちは、インターネット環境における青少年の保護を法のみで強制することは難しいという立場を表明し、青少年の余暇を善用するための機会の準備と能動的戦略の重要性を述べた。また、無条件の規制ではなく、青少年に選択権を与える方向で政策が改善されなければならないという主張もなされた。政策の解釈の恣意的拡大を警戒し、有害物を明確に定義することを訴える声もあった 549


イ スマートフォン依存

(ア)具体的な兆候

韓国では近年スマートフォンが急速に普及したことから、スマートフォン依存が社会的問題として注目されている。

スマートフォンを利用する3,000人の中学生・高校生を対象に実施したアンケート調査によると、全回答者の64.6%は「スマートフォンの使用時間を自ら調節することができる」と答えている。一方で、回答者の59.1%はスマートフォンの使用に長時間を費やすことが習慣化していると答えている。また、回答者のほぼ半数(50.1%)はスマートフォンをいつも使用していると指摘されたことがあり、回答者の43.8%はスマートフォンを使用したため勉強や宿題がやりにくいと答えている。そして、回答者の3人に1人(32.8%)はスマートフォンの使用時間を減らそうと試みたが失敗したと答えている。さらに、回答者の43.9%はスマートフォンを使用することができなくなれば我慢できないという反応を示している(図132参照)。


図132 韓国のスマートフォンを利用する中学生・高校生の状況(2013年)

出典:韓国青少年政策研究院・育児政策研究所の報告書 550をもとに作成。


(イ)対処法

スマートフォン依存率が高まるにつれて、スマートフォンの使用時間を長引かせるようなアプリケーションを遮断する、監視サービス(モニタリングサービス)が増加してきている。最近では、スマートフォンの使用時間と内訳を確認しつつ、過度の使用を調節することができるサービス等が人気を得ている(後述)。