第4章 韓国

3 青少年のインターネット利用環境に関する制度、法及び政策とその背景

(2)青少年、その保護者及びその他一般に対する教育・啓発

グリーンi-Net

放送通信審議委員会は、青少年がインターネット有害情報に晒されることを防止するために、2009年4月から教育科学技術部、各市・道教育庁とともに「青少年インターネット安全網グリーン i-Net」を構築した。その後、青少年が放送・通信等の多様な媒体を通じて有害情報に晒される機会を最小化し、より健全で正しい情報を利用できるように、従来の「青少年インターネット安全網」から「青少年情報利用安全網」としてグリーンi-Netを拡大構築することとした。

グリーンi-Netは、親や教師といった青少年の保護者がフィルタリングソフトウェアの機能を比較して、適切なソフトウェアをダウンロードすることができるように、さまざまな情報を提供している。ソフトウェアの種類とサービスの機能の選択は親自らが行うように誘導しており、企業間の市場競争の原理にもとづいてソフトウェアの品質が検証されるようなシステムを導入した 572

また、グリーンiキャンペーンファミリー支援奉仕団を設立して、フィルタリングソフトウェアの普及・拡散のためのボランティアプログラム及び予防教育観連プログラムを推進する団体であり、フィルタリングソフトウェアの普及及び拡散のための「グリーンiキャンペーン」を運営している。青少年に対しては放送とインターネット上の有害環境に晒されることによる危険性を知らせ、親に対しては青少年情報利用安全網の必要性を周知させるとともに、国民全般に対しては健全な放送通信情報利用環境を造成する必要性について幅広い同意を得ることを目指している。2009年4月に宣布式が開催された後、全国の16市・道教育庁を巡回するキャンペーンが実施された。

韓国コンテンツ新興院

コンテンツ全分野の総括振興機関であり、コンテンツ産業の育成のための総合支援体制を構築し、韓国をコンテンツ強国にすることを目的として、2009年5月17日に設立された。

2013年11月23日に施行された「ゲーム産業振興に関する法律」第12条2のゲーム過剰没入の予防に関する条文にもとづき、ゲームリテラシー教材・指導書の開発やリテラシー教育効果に関する研究を行っている 573


(3)インターネット上の違法・有害情報に対するフィルタリング

ア フィルタリング

(ア)インターネット接続可能端末ごとのフィルタリング状況等
a PC

2012年時点で、韓国においてフィルタリングソフトウェアには、「コムサヨンチキム(컴사용지킴)」「iアンシム(i안심)」「iNoon」「マムアイ(맘아이:momi)」「iセーファー(아이세이퍼:iSAFER)」「エクスキーパー(엑스키퍼:XKeeper)」「チキミ(지키미)」「グリーンウェアホーム(그린웨어홈:Green Ware Home)」「モハニ(모하니)」の9種類があった 574。これらのソフトウェアは自主的なフィルタリング方法で、個人のコンピューターにインストールして使用するものである。

エクスキーパー

ジランジギョソフト社が販売している「エクスキーパー」は、子供のPCの使用時間の制御、有害物の遮断、モニタリングを通じて、インターネット依存を予防するソフトウェアである。2005年に韓国で初めて有害動画遮断特許を取得し、公共機関優先購買対象製品"GS(Good Software)"認証を受けた。また、わいせつ物遮断ソフトウェア評価サイトでは最高評価を記録しており、ソウル市教育庁や大韓民国空軍といった公的機関のほか、セキュリティソフトウェア会社のアンラボ(AhnLab)社や検索ポータルサイト運営会社のダウム・コミュニケーションズ(Daum Communications)社など、多数の機関に導入されている 575

また、分期別に『青少年PC&スマートフォン利用実態報告書』を発行し、有害物の遮断に関連する各種統計及び主要遮断キーワードを紹介している。2013年6~8月に「エクスキーパー」が遮断したPCプログラムの回数とスマートフォンアプリケーションの遮断回数は、表51のとおりである。

表51 韓国においてエクスキーパーが遮断したPCプログラム及びスマートフォンアプリケーションの遮断回数(2013年6~8月)
順位 PC有害プログラム 遮断回数
リーグ・オブ・レジェンド
1,948回
カスパスキー
1,057回
ゲーム
1,047回
エクスキーパー無力化プログラム(Kernel Detective.exe)
1,009回
エクスキーパー無力化プログラム
858回

順位 スマートフォン有害アプリ 遮断回数
カカオトーク
13,603回
Google Play ストア
11,806回
カカオストーリー
7,773回
インターネット
6,879回
環境設定
6,620回

出典:ジランジギョソフト社の報告書 576をもとに作成。

b スマートフォン

2010年12月10日付の「アイニュース24」の記事によれば、スマートフォンにおけるフィルタリングについて放送通信審議会は以下のように計画していたとされる 577

「放送通信審議委員会は、スマートフォンの流通に伴って青少年がスマートフォンを購入する際に『青少年保護フィルタリングシステム』(仮称)を設置することについて、青少年の父母が同意するか否かを決める法案を現在国会で審議中であることを明らかにした。これは日本では2009年から実施されているものだが、実効性を十分に発揮できていないことが指摘されている。これに対し、放送通信審議委員会は実効性を確保するために現実的な対策を準備する方針である。」

近年、韓国においてスマートフォンが普及したが、それ以前の携帯電話でもインターネットへの接続が可能であった。ただし、携帯電話の契約を行う段階で住民登録番号の登録が不可欠であり、青少年の場合は(国内の)有害情報にアクセスできないようになっている。放送通信審議委員会のバン・ウィファン(반의환)氏へのヒアリングによると、このようなシステムはスマートフォン導入以降も継続されているが、国外の有害サイトへのアクセス遮断は行われていないというのが現状である、という。

(a)移動体通信事業者の提供するフィルタリングサービス

韓国における3大移動体通信事業者の提供するフィルタリングについて、以下に紹介する。

SKテレコム(SK Telecom、ブランド名:T world)

子供がスマートフォンを通じてインターネットに接続する場合には、データベースにもとづいて200万件の有害サイトとコンテンツ、アプリケーション等を自動遮断する「T青少年安心サービス」を無料で提供している。子供のスマートフォンに受信されるメッセージやカカオトーク等のモバイルメッセンジャーのメッセージ内に校内暴力の疑いがある文面が発見された場合には、これを親に伝える「校内暴力守り」サービスも無料で提供している。また、「スマートアイコーチ」は子供のスマートフォン使用時間、アプリケーション・インターネット使用内訳などをレポート形式で確認することができる。

KT(ブランド名:olleh)

「オーレ子供フォン安心サービス」を月額2,000ウォンで提供している。国内最多とされる500万個以上の有害サイトとアプリ等を遮断する。特定のアプリケーションの使用時間を遠隔コントロールすることもできる。子供が一日に何回インターネットに接続したのか、有害サイトに接続しようと何回試みたのか、といった細かい情報を親が確認することができる。スマートフォンの合計使用時間や特定のアプリケーションの使用時間などに関する使用統計のほか、アプリケーションの削除記録や端末の初期化などの主なスマートフォン変更事項に関する情報についても親は電子メールで受け取ることができる。Android端末機を使用している親は当該のアプリケーションをダウンロードして使用することができ、iPhone又は一般の携帯電話を使用している親はPCでオーレ・ドットコムに接続した後、サービスを利用する。

LGテレコム(LG Uplus、ブランド名:LG U+)

「U+子供フォン守り」サービスを月額2,000ウォンで提供している。サービスの内容は他の移動通信社と類似している。有害サイト及びアプリケーションの遮断、インターネット接続時間の管理、子供が接続したウェブサイト及び接続時間の統計の確認などが提供される。また、子供のスマートフォンにインストールされたアプリケーションのリストを確認できるほか、接続可能なアプリケーション及び使用時間等も追加で設定することもできる。

各移動通信事業者は、政府の政策にもとづき、上記のような安心サービスの提供価格を大幅に下げる又は無料で提供する、スマートフォンの初期画面自体を安心サービス専用にするなど、サービスを改善していく計画である 578

(b)アプリケーションフィルタリング(アプリケーションで有害情報の閲覧を制限)

スマートフォン用のフィルタリングアプリケーションとしては、以下のものが代表的である。

エクスキーパー

ジランジギョソフト社は、「エクスキーパー」として、スマートフォン用のフィルタリングサービスも提供している。これは、PCとスマートフォンの両方に適用可能であり、一括管理も可能である。ただし、「エクスキーパー」のモバイルアプリケーションはAndroid端末でしか利用できない。

スマート保安官

青少年がスマートフォンを通じて有害情報に露出されることを最小化し、より健全で正しい情報を利用できるようにSKテレコム、KT、LGテレコムと韓国無線インターネット産業連合会(MOIBA)が共同開発したサービスである。同サービスは、子供のスマートフォンにインストールされている不法アプリケーション・有害アプリケーションを探知して遮断するものである。韓国無線インターネット産業連合会が提供しており、放送通信審議委員会や女性家族部などの不法・有害媒体物に関する情報を共有している 579

しかし、上記のようなフィルタリングアプリケーションは完全に効果的とはいえない状況である。例えば、フィルタリングアプリケーションは親が設定しておいたパスワードを入力しなければ削除することはできないように設計されているが、スマートフォンOSに対する一種のハッキングである「ルーティング(rooting)」を用いれば、容易に削除することができる。「ルーティング」は機器のシステムに対する最高管理権限を得ることによって、機器内のすべてのファイルとプログラムを変更できるようにする操作である。これはそれほど難しい操作ではなく、小学生でも簡単な説明書きさえ見れば、すぐにアプリケーションを削除することができるとされる。

放送通信委員会の関係者は「Android OSの製造者であるグーグル社が改善策を出すことが、現在としては最善である」と語っている。これに対し、業界は「ルーティングによるフィルタリングアプリケーションの削除を防ぐことはできないが、当該アプリケーションが削除されたという事実を親に通知することは可能である」としている。

また、韓国警察庁サイバーテロ対応センターは2012年9月に「児童・青少年のポルノ総合対策」を発表し、わいせつ物を配布するウェブサイトのアドレスがPC・スマートフォンのメッセージに現れた場合、メッセージ中の該当内容をメッセンジャー運営事業者が削除して転送するという対策を進めると明らかにした 580。しかし、この対策は通信・対話の秘密と自由に関する「通信秘密保護法」に妨げられ、実行できないでいるのが現状である 581


イ ブロッキングの現状とオーバーブロッキングの問題

放送通信委員会は「情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律」第44条の7に規定された「違法情報」の対象条項に従って有害サイトを遮断している。対象条項は以下のとおりである。

  • a.わいせつな電気通信:わいせつな符号・文言・音響・画像又は映像を配布・販売・賃貸したり、公然と展示したりする内容の情報
  • b.名誉毀損:人を誹謗する目的で公然と事実又は虚偽の事実を摘示して他人の名誉を毀損する内容の情報
  • c.サイバーストーキング:恐怖心や不安感を誘発する符号・文言・音響・画像又は映像を繰り返し相手に届くようにする内容の情報
  • d.ハッキング、ウイルスの流布:正当な事由なく情報通信システム、データ又はプログラム等を毀損・滅失・変更・偽造したり、その運用を妨害したりする内容の情報
  • e.青少年有害媒体物表示義務違反:青少年保護法による青少年有害媒体物であり、相手の年齢確認、表示義務等法令による義務を履行せずに営利を目的として提供する内容の情報
  • f.賭博等射幸行為:法令によって禁止される射幸行為に該当する内容の情報
  • g.国家機密の漏出:法令によって分類された秘密等国家機密を漏洩する内容の情報
  • h.国家保安法違反:国家保安法が禁止する行為を遂行する内容の情報
  • i.犯罪関連情報:犯罪を目的としたり、教唆又は幇助したりする内容の情報

上記の対象条項に該当するウェブサイトは、放送通信委員会の審議の後に上の「KCSC Warning」という案内文とともに遮断される。しかし、上記9項目に該当するウェブサイトを開こうとすると、すべて同一の案内文とともに遮断され、どのような基準により遮断されたのか表示されないという点が問題となっている(図136参照)。

また、インターネット掲示物削除や接続遮断措置が2008年の1万5,000件から2011年には5万3,000件と約3倍以上に増加していることから、ウェブサイトの閉鎖が正当な目的を超えており、インターネットを検閲しようとする政府の意図が見え隠れしているとみなす意見もある 582


図136 「KCSC Warning」のページの表示例