平成26年度アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアにおける青少年のインターネット環境整備状況等調査
平成27年3月 内閣府

第2部 調査の結果

第1章 アメリカ

1 青少年のインターネット利用環境に関する実態

(1)青少年の定義

アメリカにおいて青少年を規定する場合、「未成年者 (Minor もしくは Juvenile)」「子供 (Child)」「青年(Youth)」といった言葉が使用されるが、これらの法的な定義は適用する法律や州によって異なる。一般的には、義務教育の終了する18歳まで、もしくは、飲酒等が許される21歳までとする、いずれかの場合が多い。

連邦政府の規定する「移民国籍法 (Immigration and Nationality Act: INA)」では、「子供 (Child)」とは、未婚の21歳未満と規定されている1。また、INAに関連する「児童地位保護法 (Child Status Protection Act: CSPA)2」でもINAと同様の規定となっている。

一方、ほとんどの州では、「未成年者 (Minor もしくは Juvenile)」を18歳未満としているが、コーネル大学法学部のまとめた各州の規定一覧によると、アラバマ州では19歳、ミシシッピ州では21歳、ネブラスカ州では19歳となっている。なお、選挙権は18歳で付与されるが、飲酒は21歳、運転免許の仮免許は16歳、通常免許は18歳が下限となっている。これらについてもすべて州法で規定されているため、州によって異なる場合がある。

表 1 各州の成年に関しての規定一覧
成年に関しての規定
Alabama アラバマ 19歳(Title 26, Chapter 1-1)
Alaska アラスカ 18歳(Title 25, Chapter 20, Section 10)
Arizona アリゾナ 18歳(Title 8, Chapter 2, Article 1)
Arkansas アーカンソー 18歳(Title 9, Subtitle 3, Chapter 25-101)
California カリフォルニア 18歳(Family Code Appendix, Division 1, Part1, 25.1)
Colorado コロラド 18歳(Title 19, Article 1-103)
Connecticut コネチカット 18歳(Title 1, Chapter 1-1d)
Delaware デラウエア 18歳(Title 1, Chapter 701)
District of Columbia ワシントンDC 18歳(Title 30, Chapter 4)
Florida フロリダ 18歳(Title I, Chapter 1)
Georgia ジョージア 18 歳(Title 39, Chapter 1, Article 1)
Hawaii ハワイ -
Idaho アイダホ 18歳(Title 32, Chapter 1)
Illinois イリノイ 18歳(Chapter 750, ILCS 30)
Indiana インディアナ -
Iowa アイオワ 18歳(Title 6, Subtitle 5, Chapter 232.2)
Kansas カンサス 18歳(Chapter 38, Article 1-01)
Kentucky ケンタッキー 18歳(Title 1, Chapter 2.015)
Louisiana ルイジアナ -
Maine メイン -
Maryland(Family Law) メリーランド 18歳(Article- Rules of Interpretation, Section 24)
Massachusetts マサチューセッツ 18歳(Part 1, Title 1, Chapter 4, Section 7-51)
Michigan ミシガン 18歳(Chapter 722.4)
Minnesota ミネソタ -
Mississippi ミシシッピ 21歳
Missouri ミズーリ 18歳(Section 211.44)
Montana モンタナ 18歳(Title 41, Chapter 1)
Nebraska ネブラスカ 19歳(Chapter 43-2101)
Nevada ネバダ 18歳(Title 11, Chapter 129)
New Hampshire ニューハンプシャー 18歳(Title 1, Chapter 21B)
New Jersey ニュージャージー -
New Mexico ニューメキシコ 18歳(Chapter 32A, Article 1-4)
New York ニューヨーク -
North Carolina ノースカロライナ 18歳(Chapter 7B, Subchapter 1 , Article 1, Definitions 14)
North Dakota ノースダコタ -
Ohio オハイオ -
Oklahoma オクラホマ 18歳(43-551-102)
Oregon オレゴン 18歳(Chapter 109.510 thru 109.520)
Pennsylvania ペンシルベニア -
Rhode Island ロードアイランド 18歳(Title 15, Chapter 12)
South Carolina サウスカロライナ 18歳(Title 20, Chapter 7, Article 1)
South Dakota サウスダコタ 18歳(Title 25, Chapter 25-5-25)
Tennessee テネシー 18歳(Title 37, Chapter 1 -102)
Texas テキサス 18歳(Civil Practice and Remedies Code, Title 5, Chapter 129)
Utah ユタ -
Vermon バーモント 18歳(Title 15, Article 3, Part 5)
Virginia バージニア 18歳(Title 1, Chapter 2, 1-13.42)
Washington ワシントン 18歳(RCW 26.28)
West Virginia ウェストバージニア 18歳(Chapter 49, Article 1-2)
Wisconsin ウィスコンシン 18歳(Chapter 115.807)

(出典: Laws of the Fifty States, District of Columbia and Puerto Rico Governing the Emancipation of Minors / Cornel University Law School3

(2) 青少年の閲覧が望ましくないとされている情報(有害情報)及び違法とされている情報(違法情報)の現状
ア 有害情報

アメリカにおいては、「アメリカ合衆国憲法 (Constitution of the United States)」修正第1条により「言論の自由」の立場が取られていることから、連邦が、有害情報を含めた情報そのものに対する規制を行ったりすることについては、非常に消極的な対応となっている。

過去に、「児童ポルノ防止法 (Child Pornography Prevention Act of 1996)」、「通信品位法 (Communication Decency Act of 1996)」、「児童オンライン保護法 (Child Online Protection Act of 1998)」等、オンラインコンテンツ等を規制しようとする法案や法律がいくつも提案されたが、表現の自由に反するという理由等により、成立に至らないか、成立しても訴訟等により違憲判決を受け廃案になったりしている4

現実的な方策としては、法規制においては原則のみを提示するにとどめ、通信行政所管の連邦通信委員会(Federal Communication Commission: FCC)の要請に基づき、業界団体が自主規制を行っているのが現状であり、未成年者によるインターネットやモバイルの有害情報へのアクセスをフィルタリングやTVのV-Chipで制限する手法が取られている。

公立の学校や図書館では、2000年に制定された「児童インターネット保護法 (Children’s Internet Protection Act: CIPA) 5」により、インターネット接続の補助を受ける場合は、有害・違法情報をブロックすることが義務付けられている。

一方で、それらに一石を投じる新しい動きの一つとして、2014年9月25日に、カリフォルニア州選出の上院議員であるマイク・ホンダ(Mike Honda)と13人の他の上院議員、更にLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、性転換者:Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender)の関係20団体が連名でFCCに対して、公立の学校や公共図書館におけるフィルタリングを緩和するように求める書面を提出している6。論点としては、LGBTは人間として自然で、権利を有していることであり、現在のフィルタリングは強すぎ、それらの情報が生徒等から閲覧できる機会が減ってしまっていることが、そういった傾向をもつ生徒等にとって差別的であると主張している。これらに対しての今後の動向が注目される。

イ 違法情報

合衆国憲法修正第1条は、「言論あるいは出版の自由を制限する法律を制定してはならない」と定めており、2つの例外を除き、ポルノ (pornography) と下品な表現 (indecency)にも適用される。2つの例外とは、猥褻 (obscenity) と児童ポルノ (child pornography) であり、これらは、修正第1条によって保護されないため、違法とされることがある。ただし、修正第1条により保護されるポルノと「下品な」情報・素材 (indecent materials) でも、未成年者のそれらへのアクセスを制限するため、規制の対象となることがある7

ポルノが法的に猥褻であるとされ、その結果として、合衆国憲法修正第一条の保護の対象から除かれるには、明らかに不快なハードコアの性的行為を描写又は記述していることが必要である。最高裁判所は、表現物が猥褻で、規制されうるかどうかの判断基準として、ミラー・テスト (Miller test) という三つの要件からなる基準を設けている。

1 平均的な人が、その所属する地域社会等のコミュニティのそのときの基準 (contemporary community standards) に照らしてその表現物を見た場合、全体として好色的な興味に訴えていると考えるか。
2 その表現物が、当該州法によって明確に定義された性的行為を、明らかに不快感を覚える方法で、描写又は記述しているか。
3 その表現物が、全体として見た場合、まじめな文学的、芸術的、政治的又は科学的価値を欠いているか。

次に、児童ポルノとは、「一定の年齢に満たない児童による性的行為を視覚的に(visually)描写した」情報・素材である8。ただし、児童ポルノは、猥褻でなくても(ミラー・テストの要件を満たさなくても)違法とされる。