平成26年度アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアにおける青少年のインターネット環境整備状況等調査
平成27年3月 内閣府

第1章 アメリカ

2 青少年のインターネット利用環境に関する世論

(1) 青少年のインターネット利用に関しての最近のトピック

10代の青少年の間では、FacebookよりInstagramの方が使いやすいといったこともあり人気が高い。それは世界中で10億人のユーザーがいるFacebookの設立者であるマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)自らが、Instagramを買収して傘下に置きながら、ライバル視していることからも見て取れる64。Facebookはディジタル・ネイティブである今の10代の青少年にとっては、友達等と好きに使い、自由を(親等から)感じられ、自分の居場所という心地よい場所ではなくなっているという感覚をもっていることも一因となっている。正確なデータはないが、Instagramは2014年3月時点で約2億人のユーザー65を持っており、一日あたり約7,500万人が利用している。また、一定時間の後に自動的に削除される機能を持つSnapshotも同様に10代の青少年には人気がある。

2014年5月の欧州連合(EU)司法裁判所における「忘れられる権利 (Right to be forgotten)」の裁定以降、Googleは、約14.4万件の削除依頼(約50万のウェブサイトに関係)を受け66、それらの41.8%を削除している(残りは削除を拒否)。国別でみると、フランスからの依頼が28,912件、ドイツが24,979件、イギリスが18,403件となっている67。ウェブサイト別では、Facebookが3,332件と最も多く、次にprofileengine.comの3,289件、そしてYou Tubeの2,392件となっている。

その実施にあたって、Googleは削除依頼があった情報を判断するために有識者等を交えた専門チームを立ち上げ、実行にあたっているが、何が個人に害をもたらす情報で、何が公的に有効な情報なのかの判断等を巡って非常に難しい運営を強いられているのが現状である。これまでGoogleは明らかに、違法、個人の口座情報等は削除してきているが、今回のEU査定では、個人にとって「不適切」な情報を削除することを求めている。その判断をどう設定するのかによって、不適切にも、公的には「適切」にもなり得る。例えば、政治家が以前の自分の主張の削除を依頼することや、更正した犯罪者が過去の犯罪記録の削除依頼をするような場合である。その一方で、削除されることで自分に関しての情報が検索されなくなり不利益を被る(例えば、ジャーナリスト等)人から、それに対しての疑問の声が上がっていることも事実である。20014年11月には、EUとしてのガイドライン68を策定したが、その中で、EU圏内のみならず「.com」も対象となるとの方針が打ち出されたこともあり、今後のアメリカにおける動向が注目される。

2014年2月頃から夏にかけて、テキサス州オースティン郊外の街でネットいじめがエスカレートしストーカーに近い、しかし非常に奇妙なケースが発生している。

12歳のメロディ(Melody)とジュリア(Julia)は、学校の友達であったダニエル(Danielle)と呼ばれる子供と、一時仲が良かったが、その後疎遠になった。それからいじめとも脅しも思われるメッセージが届くようになった。メロディ等の親が、ダニエルの親等に連絡したところ、ダニエルはやっておらず自分のInstagram等のアカウントが乗っ取られて誰かが自分の名前を使ってやっていると主張した。メッセージは更にエスカレートしていったが、その内に、メロディ達が何をしているのかリアルタイムで監視できているといったメッセージがくるようになり、事態はオンラインのみならずストーカー的な事にまで発展していった。メッセージでは、屋根裏部屋にダニエルの知り合いの男がいて、常に何をやっているか監視しているといった内容にまで及び実際にメロディ達が屋根裏をチェックしたが、男はいなかった。しかしながら、彼女たちの部屋でそれを見ていないと分からないようなポーズを取ったところ、あたかもそれを見ていたかのような内容のメッセージが返ってきた。メロディ達の親は、インターネット等の技術企業にも相談し、家のネットワークや携帯電話自体を交換したりしたが(費用として総額約6,500ドル近くかかっている)、その後もメッセージは引き続き届いている。またメロディのSNSアカウントも乗っ取られ、写真が全部削除され、幽霊の写真のみが残っているという状態になってしまった。彼女らは、地元警察やFBIにも相談したが、技術的なことに詳しい捜査官等もおらず、未だに容疑者も、なぜそういったことができたのかということも不明のままである69

ミネソタ州の小学6年生であったリレー・ストラットン(Riley Stratton)は、Facebookに教師が嫌いであるといった投稿を、学校が貸与しているコンピュータではなく、自分のコンピュータから学校の時間以外の時に行った70。しかし、学校側は、これを問題視し、彼女に居残りや謝罪文の提出等を求めた。更にFacebookのパスワードを教えるようにも尋問されたことで、アメリカ・市民自由権ユニオン(The American Civil Liberties Union)が、言論の自由の侵害と感情的なストレスを与えたという事で、学校区に対して訴訟を起こした。その結果、学校区は70,000ドルの和解金を支払う命令を受けることとなり、SNS等の扱いに関するポリシーを変更することとなった。

(2) 青少年のインターネット利用環境の法的規制に対する世論の動向

2014年4月にラムッセン・レポート(Rasmussen Reports)が1,000人に対して実施したアンケート結果によると、51%は連邦通信委員会(Federal Communications Commission:FCC)がインターネットに対して規制をかけることに反対し、18%がラジオやTVの様に規制すべきと回答している。反対している理由としては、市場経済の中でインターネットユーザーは自由であるべきで、それが一番の保護にもなると考えている71

オバマ政権はインターネットを公共のインフラに近いと位置づけ、全ての人に中立で公平に活用できるインフラであるべきとの姿勢をとっている。FCCは「オープン・インターネット(The Open Internet)」という方針により、インターネットは、消費者が自ら自由に好きなコンテンツやアプリを使える環境にし、FCCはそれらを支えるというものであるとし72、そのためにISPに以下の三つの基本的なルールを求めている。

1透明性: ISPは消費者にネットワーク管理等の情報を透明にし、開示しなければならない。
2ブロックキングなし: 合法的なコンテンツはブロックされない。
3不当な差別なし: 商業的な利益から特定の会社等のトラフィックを優先させるといった不当な行為を行わない。

しかし、YouTubeやNetflex等のオンライン動画ウェブサイトのトラフィックが爆発的に増加していく中で、インターネット・インフラ提供会社は、それらを制限もしくは優先的に扱うための手数料等の導入を試みてきた。インターネット・インフラ提供会社側からみると、FCCのオープン・インターネット戦略は、連邦政府がインターネットを通信事業のように規制下におくということとなる。つまり、民間企業が手数料等の有料制を市場原理に従い導入しようとしているのを、政府が「公平性」を掲げて阻止するという構図である。この問題は2010年以来継続しており、2010年4月には、連邦D.C.巡回控訴裁判所は、コムキャスト社(ブロードバンド・プロバイダー)がFCCに対して起こした訴訟において、コムキャスト社側を支持し、FCCの命令を無効化する査定を出した。これにより、そもそもFCCがインターネットを規制する権限があるのかという点が大きく議論の対象となった。2014年1月に連邦控訴裁判所はFCC(ひいてはオバマ政権)のネット中立性規則を認めない査定を出し、FCCにはその権限がないとした。これらを受け、FCCは有料サービスを認める方針を出していたが、2014年11月10日に、オバマ大統領は、再度、インターネットの中立性は社会的基盤であると強調し、FCCに再考を求める演説を行っている73

(3) 青少年のインターネット利用環境に対する保護者の動向(懸念、反応等)

一方、未成年者の子供を持つ親たちは、インターネットの中立性等といった点より、やはり自分たちの子供がオープンなインターネットの世界で、何らかのトラブルに巻き込まれるのではないかということを心配している。

2012年4月にマイナー・モニター(Minor Monitor)が発表した調査74によると、Facebookが利用を許可している13歳以下でもそれらを活用しているのは、38%(1,000人中380人)にも達しており、6歳以下でも4%(1,000人中40人)が利用している。

図 47 Facebook活用年齢層(単位:%)

(出典:Minor Monitor)

こうした実態下、74%の親は、Facebookの利用について心配しており、一番の心配事は、性的犯罪に巻き込まれるのではないかとの懸念(56%)、次に必要以上の情報を共有しトラブルに巻き込まれないかとの懸念(49%)、そして知らない人とのコンタクトでトラブルに巻き込まれないかとの懸念(45%)となっており、やはり、オンラインで他の人とつながり、そこでトラブルに巻き込まれる可能性を心配している。

図 48 親の懸念事項(単位:%)

(出典:Minor Monitor)

その対策として、子供のFacebook IDパスワードを使ってアカウントにログインして内容をチェックしている親が51%、「友達」として登録して投稿内容等をモニタリングしている親が24%、モニタリングしていない親は17%と、直接アカウントにログインしてチェックしている親が半数を超えており、やはり、投稿内容のみならず、アカウント全てをチェックしたいとの意向の表れと思われる。

図 49 Facebookの内容確認(単位:%)

(出典:Minor Monitor)

少し古いデータとなるが、2011年夏に、ハリス・インタラクティブ社(Harris Interactive)が実施し、ジョン・ウィレー・サン(John Wiley & Sons)が公表した調査結果75によると、親の懸念事項として(5段階レベルでの平均値)、見知らぬ人との出会いが一番多く4.3、次にポルノの4.2、そして暴力的なコンテンツの3.7となっており、やはり、見知らぬ人とネット上で知り合いになり、何らかのトラブルに巻き込まれる可能性を一番懸念している。

図 50 親の懸念事項(単位:5段階レベル)

(出典:John Wiley & Sons)