平成26年度アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアにおける青少年のインターネット環境整備状況等調査
平成27年3月 内閣府

第1章 アメリカ

3 青少年のインターネット利用環境に関する公的機関及び民間企業の取組み

(4) ウェブサイト運営者に対するガイドライン

ア ウェブサイト運営者に対するガイドラインの有無

インターネット上の活動(個人、商業)を管轄しているのは、主に 連邦取引委員会(Federal Trade Commission:FTC)と連邦通信委員会(Federal Communications Commission::FCC)である。

基本的なインターネット上での広告やマーケティングに関するルールとして、商品やサービスについて、真実を消費者に伝える必要があり、消費者に誤解を与えたりするような広告やマーケティングは不正であるとしている106。また、健康、安全もしくは性能に関する情報は確認されたものでなければならないとも規定している。商品・サービスの提供者はそれらに対して責任があることはもちろんであるが、それらをプロモートする広告代理店やウェブデザイン会社にも、それらの情報を確認する責任があるとしている。特に子供を直接的に対象とした広告等の場合は、誤解を与えないように特に注意が必要で、子供への広告検証チーム(Children’s Advertising Review Unit:CARU)がガイドラインを設定している。

そのガイドラインでは107、12歳以下の子供を対象にした広告等への基準として、

  • 子供の個人情報を扱うことに対して責任があること、
  • 不正や欺瞞があってはならないこと、
  • 子供にも分かるような説明をする必要があること、
  • 子供に対して不適切なコンテンツや商品を勧めないこと、
  • 子供のみならず、親に対してもガイドを提供すること

等を規定している。

また、FTCではインターネットプロバイダーに消費者のプライバシーには細心の注意を払うように規定しており、特に子供に関しては、「1998年児童オンライン・プライバシー保護法(The Children's Online Privacy Protection Act of 1998:COPPA)」の遵守を求めている。

現在、インターネットに関して議論となっているのは、前述したFCCによる「The Open Internet」という方針に対して、FCCの権限がインターネットでどこまで及ぶのか、といった議論で、2014年11月11日には、オバマ大統領が、「ネット中立性」を保つために、FCCに規制の強化を求める声明を出している。

イ ウェブサイト運営者とコンテンツ掲載者、フィルタリング提供事業者等に対する係争処理方法

アメリカの場合、児童ポルノ等といったような明らかに違法で法令に従って罰則規定が課せられるような事例でない場合(例えば、プライバシーの侵害)、被害者が訴訟を起こし、裁判所が裁定、被害者と加害者が和解(和解金の支払いを伴うことも多い)するといったケースが多い。

インターネットのコンテンツやサービス提供者が関係している係争108の場合も同様で、代表例としては、Facebookが集団訴訟を起こされた「スポンサード・ストーリー」等があげられる。このサービスはFacebookが、2011年より導入した広告サービスで、ユーザーが「いいね!」ボタンを押したり、レストランにチェックインしたりすると、友達のニュースフィードに顔写真付きで広告が表示されるという仕組みである。しかし、この機能は、ユーザーから承認していないにもかかわらず、顔写真付きで広告に利用され、プライバシーの侵害にあたるとして、集団訴訟に発展し、2013年8月に2,000万ドルの和解金を払うことで和解が成立した。Facebookはこの訴訟を受けて、プライバシー方針の改定と共に、同サービスを2014年4月に停止した。

図 61 Facebookのスポンサード・ストーリー概念図

(出典:http://allFacebook.com)

(5) 青少年に対して危険性があるインターネット上の情報についての相談や苦情受付(窓口)等

ア 関連するニュース、トピック

ネットいじめがエスカレートすると自殺にまで至ってしまうケースもあるが、それを如何に早い段階で察知し、対策を打つかが鍵となってくる。そのためには、早い段階でいじめ等が起こっていることを両親や学校教師、カウンセラー等が知ることが重要であるが、子供たちも、後で発覚したときの報復等を恐れて、それらを報告することには躊躇する傾向がある。そこで、サイバー・ブリー・ホットライン社(CyberBullyHotline109)は、子供たちがそれらを恐れることなく報告ができるように「匿名」で連絡できる仕組みを提供している。同社が提供するアプリ(番号)を通じて連絡すれば、システム側から連絡を受けた教師等には、連絡した実際の子供の番号やIDが分からないようになっている。これらにより、子供は報告がしやすくなり、より早い段階での情報収集が可能となる。もちろん、それらを受け取った後、教師たちが、コミュニケーションを取り、報告側の子供が同意すれば、自分が誰かを明かすことも可能である。同社のウェブでは全米で何校が活用しているかは公開していないが、新しくこのシステムを採用している学校の事例等が掲載されている。

図 62 CyberBullyHotline社の「匿名」報告アプリの画面例

(出典:同社ウェブ)

イ 相談、苦情の傾向

直接、青少年のインターネット犯罪ではないが、参考までにFBIのインターネット犯罪報告センター(Internet Crime Complaint Center:IC3)の「2013 インターネット犯罪レポート(Internet Crime Report)110」によると、2013年に報告された事案数(主に金銭に絡む詐欺等)としては262,813件(アメリカのみならず他国、また未成年のみならず大人も含む)、被害総額7億8,184万ドルにのぼっている。過去の推移をみると2009年が336,655件と最大で、その後は若干減少傾向にある。

図 63 IC3に報告された事案数(単位:件)

(出典:IC3)

報告者の年齢分布を見ると、20歳以下は8,796件(3.4%)であり、一番多いのは40歳~49歳の55,838件(21.2%)であった。

図 64 IC3に報告者の年齢分布(単位:件)

(出典:IC3)

国別でみると、アメリカが90.63%(238,187件)と圧倒的に多く、次にカナダの1.38%であった。

図 65 IC3に報告事案の国別分布

(出典:IC3)

次に、アメリカ国内で報告事案数が多かったのが、カリフォルニアの12.13%(28,892件)、二番目がフロリダの7.45%(17,744件)で、やはり人口の多い都市が存在する州が多く、トップ10が約49%を占めている。

図 66 IC3に報告事案数のアメリカ国内でのトップ10分布

(出典:IC3)

ウ 行政による受付窓口

(a) サイバー・チップライン(Cyber Tipline111

サイバー・チップライン(Cyber Tipline)は、1998年に連邦政府によって設立され、非営利団体である全米失踪・被搾取児童センター(National Center for Missing & Exploited Children)が運営しているインターネット上のコンテンツ等に関する苦情、相談のホットラインである。主な政府連携機関としては、国土安全保障省の入国移民管理局(Immigration and Customs Enforcement :ICE)、連邦捜査局(Federal Bureau of Investigation:FBI)、アメリカ郵便監察局(U.S. Postal Inspection Service :USPIS)、ICACタスクフォース、アメリカシークレットサービス局(U.S. Secret Service:USSS)、司法省の児童搾取・猥褻課(Child Exploitation and Obscenity Section :CEOS)、更には各州の法的執行機関等がある。

苦情、相談の対象は、児童ポルノの製造、配給、所持を含む性的搾取、オンラインでの児童誘惑、児童買春、未成年者との性行為を目的とする旅行、家庭外での児童に対する性的虐待、児童に対して送られる猥褻文書や紛らわしいドメイン名、言葉、デジタル画像等である。

図 67 サイバー・チップラインのウェブからの通報ページ並びに電話ホットラインの案内

(出典:National Center for Missing & Exploited Children)

その他、インターネット犯罪に関する苦情申立先112、は以下のとおりである。

(b) 連邦司法省( U.S. Department of Justice)

犯罪の種類等に応じて、連絡先が以下の様にウェブ上で公表されている。

表 21 インターネット犯罪の連絡先113
犯罪の種類 連邦関連機関連絡先
コンピュータハッキング FBI, U.S. Secret Service, Internet Crime Complain Center
パスワード不正 FBI, U.S. Secret Service, Internet Crime Complain Center
児童ポルノ、性的搾取 FBI, U.S. Immigration and Customs Enforcement, Internet Crime Center
インターネット・ハラスメント FBI

エ 民間、団体による受付窓口

(a) インターネット犯罪苦情センター(Internet Crime Complaint Center::IC3:http://www.ic3.gov)

連邦捜査局(FBI)と全国ホワイトカラー犯罪センター(NW3C)との連携により設立され、インターネット上の犯罪の受付、関係機関との共有等を行う機関。

(b) 犯罪被害者のための全国センター(National Center for Victims of Crime:http://www.victimsofcrime.org/)

犯罪被害者等の人権擁護、安全、生活保護、教育訓練等を連邦、州政府、関係団体等と連携して実施する非営利団体。

(c) 個人情報権利情報センター(Privacy Rights Clearinghouse:https://www.privacyrights.org/)

インターネット上でのプライバシー侵害に関する苦情の受付、消費者啓蒙のための周知活動等を行っている非営利団体。