平成26年度アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアにおける青少年のインターネット環境整備状況等調査
平成27年3月 内閣府

第1章 アメリカ

4 青少年のインターネット利用環境に関する保護者団体、民間団体及び事業者の取組み

(1) 行政によるインターネット利用環境の整備に対する支援策

ア 主要な関連公益法人並びに民間事業者

2000年児童インターネット保護法(Children’s Internet Protection Act of 2000)では、学校や図書館がE-Rateと呼ばれるフィルタリングに関しての認証を受けていれば、インターネット接続への補助が受けらるという制度があり、行政が行っているインターネット利用環境整備への支援として代表的なものである。それ以外に例は見当たらなかった。

(2) 関連公益法人並びに民間企業における青少年、その保護者及びその他一般に対する教育・啓発活動

ア 青少年のインターネット利用環境の整備に関する取組み

青少年に限定された取組みではないが、全米規模の活動の例として、国土安全保障省(Department of Homeland Security)が「全米サイバー安全認知月間2014(National Cyber Security Awareness Month 2014 114)」として、インターネット上のセキュリティや犯罪等に関しての認知・周知活動を行っている。内容としては、2014年10月から五週間の間、週単位でテーマを決め、各地でフォーラム等を開催し、一般、業界の人等の間での関心を高め、より良いものにするためにはどうすればいいかを議論していく場とした。

前述したネットいじめ撲滅を目的とした非営利団体であるTOMP Out Bullyingは、毎年10月頭にカナダ発祥のPink Shirt Dayのように、学校等で青色のシャツをきてネットいじめ等の撲滅をアピールするBlue Shirt day115運動を行っている。

Blue Shirt day 運動・青色のシャツの写真

イ 具体的な取組み例(活動事例と評価指標・効果測定)

(a) 保護者団体によるインターネット利用環境の整備に関する取組み

全米各地のPTAでは、ウェブサイト等によりネットいじめや児童ポルノ等、インターネットを通した犯罪や危険について周知するような啓発活動を行っている。例えば、ユタ州のPTA116では、「Internet Safety」というプレゼンテーションを作成し、ウェブで公開している。また、無料のフィルタリングソフトを紹介すること等もしている。

図 68 ユタ州PTAの「Internet Saety」プレゼンテーション

(出典:ユタPTA)

ウィスコンシン州117や、テキサス州118でも同様の活動を行っており、テキサス州では、イベントの際にインターネットの安全生について周知する活動も実施している。

(b) 民間団体によるインターネット利用環境の整備に関する取組み

民間団体においてネットいじめ等への取組みを行っている主要な団体には以下のようなところがある。

 ■サイバースマイル財団(Cybersmile Foundation: http://www.cybersmile.org)

2010年にネットいじめ等の撲滅活動のために設立された非営利団体。ネットいじめに関しての周知活動や情報提供を行っている。その一環として、Facebook、Twitter等のSNSを立ち上げ、情報交換ができる、更には24時間対応のオンラインヘルプ等を設置している。

 ■ネットいじめリサーチセンター(Cyberbullying Research Center:http://cyberbullying.us)

犯罪等の研究者であるフロリダ・アトランティック大学のサミャー・ヒンデュラ(Sameer Hinduja)とウィスコンシン大学のジャスティン・パッチン(Justin Patchin)によって始められたネットいじめに関しての情報ウェブサイト。ネットいじめに関する調査研究結果やワークショッププレゼンテーション等によって教育者や生徒に対して情報提供等を行っている。

 ■エンド・オブ・サイバーブリング(End to Cyber Bullying :ETCB: http://www.endcyberbullying.org)

2011年5月にネットいじめと戦うためにサミュエル・ラム(Samuel Lam)、デビット・ザオ(David Zhao)によって設立された非営利団体。活動内容として、親、子供、教育関係者等への情報提供、一般への周知活動等、ネットいじめを撲滅するための運動を行っている。

 ■STOMPアウト・ブリング(STOMP Out Bullying: http://www.stompoutbullying.org/)

1999年以来、子供への暴力や放置防止等の活動を行ってきていた「ブレイン・チャイルド・オブ・ラブ・アウア・チルドレン(The Brain child of Love Our Children USA)」は、2005年にいじめ(ネットいじめ含む)に関して何か対策を打つ必要があるとの認識から、「STOMP Out Bullying」を設立し、いじめの撲滅活動を行っている。活動の一環として、「ティーン大使(Teen Ambassador)」という10代の青少年のアドバイザーを任命し、各地での活動支援を行ったりしている。

(c) 事業者の保護者向け普及啓発活動

保護者向けではないが、事業者が行っている啓発活動の例として、2014年3月21日にGoogleがサンノゼの中学校で、インターネットの安全についての啓発イベントを実施ている119。子供たちに対し、ゲーム等を通じてどのようにインターネットを使えば安全か等の周知を行っている。

インターネットの安全な活用を目的として1994年に設立された非営利団体である「Enough is Enough」は、インターネット関連民間団体等と連携して多数の啓発イベントを開催している。例えば、ポルノに反対し、それらの周知を図るために「White Ribbon」という運動を行ったりしている120

図 69 White Ribbon運動のロゴ

(出典:Enough is enough)

(d) 教育機関におけるインターネット利用環境の整備に関する取組

ボストン教育区(Boston Public Schools)では、2006年以来、「Cyber Safety Campaign121」としてポスターを作成して、5,000人もの子供に配布することや(2009年に実施)、インターネット活用の講師を設置することといった活動を行っている。

図 70 ボストン学校区が作成したネットいじめに関してのポスター

(出典:同学校区ウェブ)

(e) 官民連携による全国レベルでのインターネット利用環境の整備に関する取組み

1998年にインターネットの安全活用の啓発活動等を目的に設立された非営利団体であるアイ・セーフ(i-SAFE:www.isafe.org)は、全米のK-12(小学校〜高校)の生徒、教師、親、行政関係者等へ様々な教育プログラムを提供している。例えば、i-LEARNと呼ばれているオンライン上の教育カリキュラムや、i-MENTORと呼ばれている教育リーダーとなる生徒の育成、更に、学校のクラス、親、コミュニティ等での教育を行うためのアウトリーチ(出張講演)プログラムも実施しており、これまでに全米、他国含め、合計(オンライン、アウトリーチ)約3,200万人のK-12の生徒に教育を提供してきている。

なかでも、「児童インターネット保護法(CIPA)」と「21世紀児童保護法(Protecting Children in the 21st Century Avct)」により、学校におけるインターネット接続で支援を受けるために「E-Rate」を取得しなければならないが、そのためには学校でネットいじめ等の教育を実施する必要がある。i-SAFEは、そのカリキュラムをCD-ROM等で提供し、評価の上、認定書(Certificate)を発行している。

図 71 i-SAFEのE-Rate認定書

(出典:同社ウェブ)

 ■アイキープ・セーフ(iKeepSafe 122

アイ・キープ・セーフ(iKeepSafe:Internet Keep Safe Coalition)は、2005年に設立された非営利団体で、連邦、州政府関係機関、教育関係機関、民間企業等100以上と連携しながら、子供がインターネットを安全に活用できるように、学習支援システムの提供やemailニュースの配信等の啓蒙活動を実施している。アメリカでは、連邦取引委員会(FTC)、連邦教育省(Department of Education:DOE)、連邦司法省(Department of Justice)等との連携はもとより、国連、オーストラリア、中国、エジプト等の関係団体ともパートナリングしている。また、民間企業のパートナーとしては、以下のような企業が参加している。

図 72 iKeepsafeのパートナー民間企業

(出典:同ウェブサイト)

連邦司法省(Department of Justice)の青少年非行防止・公正局(Office of Juvenile Justice and Delinquency Prevention)では、子供インターネット犯罪に対してのタスクフォースプログラム(Internet Crimes Against Children Task Force Program)を2003年以来実施している123。このプログラムは、インターネット上での子供の犯罪増加に伴い、全米で3万人以上におよぶ連邦、州、法執行関係機関関係者へのトレーニング等を実施している。年間予算として2013年度には2,500万ドルを計上しており、その成果の評価として「児童に対してのインターネット犯罪防止タスクフォース報告書(Review of the Internet Crimes Against Children Task Force Program 2010~2011)124」 という報告書を公開している。その中で、インターネット犯罪等の報告件数、逮捕者数件数、トレーニングをした行政関係者数等をプログラムの効果測定の指標として比較している。

図 73 タスクフォースの拠点マップ

(出典:http://www.ojjdp.gov/pubs/240146.pdf)

 ■国家サイバー安全同盟(National Cyber Security Alliance: NCSA)

2014年10月にNCSAは、国土安全保障省(Department of Homeland Security)と共催で第11回目の全米サイバーセキュリティ認知月間(National Cyber Security Awareness Month:NCSAM 125)を開催している。これは、インターネットを安全に使うという事の周知活動で、AT&T社、EMC社、Trend Micro社、VISA社といった民間企業はもとより、アリゾナ大学等の教育機関も含め約200に及ぶ団体が協力している。

(f)官民連携による地域レベルでのインターネット利用環境の整備に関する取組み

ネットいじめの犠牲者で2006年に自殺したメーガン・メイヤー(Megan Meier)の母親であるティナ・メイヤー(Tine Meier)によって2007年に設立された非営利団体であるメーガン・メイヤー財団(Megan Meier Foundation 126)は、メーガンのような事件を繰り返さないために、ネットいじめ等に関しての一般への周知、教育者や親等への情報提供、教育活動を行っている。ミズーリ州を中心に、2008年以来約13万人の子供たちにメーガンの話を伝えてきている。毎年10月17日のメーガン・デー、更にはワークショップ等、様々なコミュニティ周知活動を実施している。また、ウェブ上では、いじめに関しての自分の状況等をアップし、他の人と共有できるようにもなっている。

(g)国際展開を勧める企業(Facebook、Goolge、Twitter社等)によるインターネット利用環境整備に関する取りみ

GoogleやFacebookでは、子供や親に対して、安全にインターネットを活用してもらうために、Safety Centerという専用ページを設置し、一般、家族、親、子供が何に注意し、どのように活用していけばいいのかのアドバイスを提供している。

図 74 Goolge Safety Centerウェブサイト

(出典: 同社ウェブサイト)

図 75 Facebook Safety Centerウェブサイト

(出典: 同社ウェブサイト)

図 76 Twitter Safety Centerウェブサイト

(出典: 同社ウェブサイト)