平成26年度アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアにおける青少年のインターネット環境整備状況等調査
平成27年3月 内閣府

第2部 調査の結果

第2章 イギリス

1 青少年のインターネット利用環境に関する実態

(1)青少年の定義

グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)(以下、イギリスと呼ぶ)は、イングランド、ウェールズ及びスコットランド、北アイルランドの4つの国で行政及び法体制が異なる場合がある。

全英児童虐待防止協会(The National Society for Prevention of Cluelty to Children:NSPCC)によると、イギリスでは、青少年の定義について、一つの法令により定義が決められていない。児童保護的な意味では全国で18歳の誕生日までと一致しているが、各法令によって定義が異なる。また、各国で青少年の安全に対するガイダンスを発行している。1991年にイギリス政府が批准した国連「子供の権利に関する条約(The UN Convention on the Rights of the Child)」により適用されている場合以外は、子供(Child)とは18歳未満の人間である、としている127

表 22 青少年の保護に関するガイダンス一覧
イングランド HM Government (2013) Working together to safeguard children: A guide to inter-agency working to safeguard and promote the welfare of children 128. London: Department for Education (DfE)
ウェールズ Welsh Assembly Government (2007) Safeguarding children: working together under the Children Act 2004 129Cardiff: Welsh Assembly Government.
北アイルランド Department of Health, Social Services and Public Safety (DHSSPS) (2003)Co-operating to safeguard children. 130Belfast: DHSSPS. (Paragraph 2.1)
スコットランド Scottish Government (2010)  National guidance for child protection in Scotland 131[Edinburgh]: Scottish Government.

(出典:NSPCC報告書132)

表 23 犯罪認定年齢
項目 法令・規制 年齢
承諾年齢 2003年性犯罪法(イングランド・ウェールズ) 16 歳 注)
2008年性犯罪(北アイルランド)命令 16歳
2009年(スコットランド)性犯罪法 (The Sexual Offences (Scotland) Act 2009 ) 16 歳
犯罪責任年齢 (イングランド・ウェールズ)1998年犯罪及び秩序違反法第34条(section 34 of the Crime and Disorder Act 1998) 10歳
(スコットランド)2010年刑事司法特許法第52条(section 52 of the Criminal Justice and Licensing (Scotland)Act 2010) 8歳
刑事起訴年齢は8歳から12歳へ引き上げられたが、犯罪責任年齢は8歳となる。
(スコットランド)1995年刑事起訴法第42条(Section 42 of the Criminal Procedure (Scotland) Act 1995), 法務総裁の指示なしに16歳以下の刑事起訴は行われるべきでないとされている。
(北アイルランド)1998年刑事司法命令第3条(section 3 of the Criminal Justice (Northern Ireland) Order 1998) 10歳

注1)性犯罪法は、性的虐待の場合以外の16未満同士による性行為承諾の規制を目的としてない。児童保護の視点から、法令は13未満の承諾は法的効用を持たないとしている。ゆえに12歳以下の自動との性的行為はもっとも重度な刑法が適応する。2)16歳以上でも18歳未満はいかがわしい写真の作成、公開、配布、性行為への支払いは違法となり、更に教師、ケアーワーカーという信頼される立場である者との18歳未満の性行為承諾は違法となる。

(出典:NSPCC報告書133

表 24 その根拠法令(又は規制等)
法令/団体名 年齢
国連 United Nations(UN 134 18歳未満
1978年児童保護法(The Protection of Children Act 1978) 18歳未満
2003年性犯罪法(The Sexual Offences Act 2003) 18歳未満
2008年(北アイルランド)性犯罪法(The Sexual Offences (Northern Ireland) Order 2008) 16歳未満
(17歳から16歳へと引き下げられた)
2005年(スコットランド)児童保護及び性犯罪防止法(The Protection of Children and Prevention of Sexual Offences (Scotland) Act 2005 135 18歳未満
1995年(スコットランド)犯罪法(The Criminal Law (Consolidation) (Scotland) Act 1995) 18歳未満
2009年(スコットランド)性犯罪法 (The Sexual Offences (Scotland) Act 2009 ) 18歳未満
2000年児童法Children (Leaving Care) Act 2000(イングランド・ウェールズ136 18歳未満 (21歳未満)
注)イギリスでは法令及び一般的に18歳未満までの保護を青少年の保護としてみなしているが、社会的養護を必要とする青少年には2000年児童法等により青少年保護の範囲を18歳以上まで広げている
児童保護ガイダンス137 18歳未満

イングランドの地方自治体協会であるLocal Government Association(LGA)には青少年委員会(The Children and Young People Board)が設置されて、青少年の教育・保護を含む生活全般の対策を行なっており、対象年齢は0歳から19歳までとなる。

イギリスでの選挙権の年令を18歳から16歳に引き下げる法案について、議会で審議が行われてきている。2010年の政党マニュフェストにて選挙権年齢の引き下げを取り上げた民主党とそれを押す労働党により下院議会では賛成が通ったが、連立政党のマニュフェストにはこの引き下げ案は取り込まれていなく、連立政党のパートナーである保守党の反対で改正は難しいと見られている138

また、児童法も含みイギリスで統一されていない青少年の定義を統一することが必要だと児童虐待を取り上げるチャリティー団体のチルドレン・ソサイエティー(The Children’s Society)は法律の改正を求めている。重大犯罪法案(Serious Crime Bill)により1933年児童法(Children and Young Persons Act 1933)が改正し、児童虐待の被害者となる子供の年齢が現在の16歳未満から18歳未満に引き上げられて、この法令により初めて全ての未成年者の保護ができると訴えている139

表 25 喫煙、飲酒、選挙権、運転免許取得の下限年齢
禁煙 児童少年法及びたばこ保護規則により18歳未満へのタバコの販売は規制されている140
飲酒 飲酒については法令及び規制が細かく分かれている。家庭内での飲酒の下限年齢は5歳である。 その他にアルコール飲料の販売の年齢規制がある。18歳未満にアルコール飲料の販売及び購入、18歳未満のアルコール飲料の購入及び未成年者だけでの飲食店での飲酒は規制されている。ただし、18歳未満でも.大人の同伴があれば食事と一緒に飲酒は許される。ただし、アルコール飲料の購入はできない141
選挙権 1969 年国民代表法(Representation of the People Act 1969)及び 1969 年家族法改正法(Family Law Reform Act 1969)により、選挙権年齢と成人年齢は共に、18 歳である。また、 2006年選挙管理法(Electoral Administration Act 2006)により、被選挙権年齢は18 歳となる。142 スコットランドで2014年9月に行われるスコットランド独立住民投票(Scottish Independence Referendum)の選挙権は16歳となる 。143
運転免許 自動二輪車の運転免許は16歳から、自動車の運転免許は17歳から取得できる144
(2) 青少年の閲覧が望ましくないとされている情報(有害情報)及び違法とされている情報(違法情報)の現状
ア 有害情報

全国地方自治体ネットワークである市民助言局(Citizens Advice Bureau)によると、青少年の閲覧が望ましくないとされているインターネット情報及び活動は以下となり、警察及び関連機関への通告を促している。また、政府は有害と取られる内容の中には違法なものも含まれるとして「暴力(violence)あるいは攻撃(assault)」「盗み(theft)」「度重なる嫌がらせ・脅し(repeated harassment or intimidation)」「偏見に基づく犯罪(hate crime)」を挙げている。また、「度重なる嫌がらせ/脅し」には、言葉による中傷(name calling)、脅迫(threats)、脅迫的な電話、メール、携帯メールのメッセージ(abusive phone calls, emails or text messages)を例として挙げている145

表 26 有害情報
ポルノ(Pornography) 成人コンテンツとして称されている。猥褻(obscene)あるいは過激(extreme)な内容と思われるポルノの国内での公表は違法となる。18歳以上であると確認せずにオンラインでのポルノの販売も違法となる。
児童ポルノ(Child pornography) 公表・配布だけでなく所持することも違法となる。インターネットからのダウンロード及び印刷・ファイル保存を行うことも違法となる。
グルーミング(Grooming) 成人が性的行為を目的として青少年に接触し親しくなる行為はグルーミングと呼ばれ、違法となる。
猥褻的な内容(Obscene content) レイプや拷問等の画像は猥褻的と認識できるとされている。これらの内容は違法となる。
人種差別(Racist material) 人種、国籍、肌の色等による差別行為は違法となる。
邪悪なウェブサイト(Morbid website) 首切り等の邪悪な素材を発表しているウェブサイト。
チャットルーム(Chat room) 個人情報の安全対策を考慮する必要があるとされている。
ネットいじめ・嫌がらせ、サイバーストーカー(Online bullying, harassment, cyber-stalking) いじめや嫌がらせによっては犯罪になる。
オンライン上の賭け事(Online gambling) 18歳未満によってオンラインギャンブリングの提供を行う場合、あるいは18歳未満の金銭を伴うオンラインギャンブリングは違法となる。

(参照:市民アドバイス局146

また、ゲームレイティング審査機関であるパン・ヨーロッパ・ゲーム・インフォメーション(Pan European Game Information:以下「PEGI」)は、イギリスを含める欧州のテレビゲーム及びコンピュータゲームに対して、以下のレイティングを設定している。これらの対象年齢は18歳までとなっている。

図 77 PEGIによる年齢レイティングの項目

暴力:暴力的なシーンを含むもの。


薬物:薬物使用を描く又は肯定しているもの。


恐怖:子供に恐怖を与えるかもしれないもの。


ギャンブル:賭博のシーンを含み、そのルールを教えているもの。


差別:差別を肯定しかねないイメージ、要素を含むもの。


悪い言葉:下品な言葉遣いやスラングを含むもの。


セックス:裸体描写又は/あるいは性的態度や暗示を含むもの。


オンライン:オンラインでゲームを使用できるもの147

(出典:PECI)

イギリスの通信・メディアの規制監督を行うイギリス情報通信庁(Office of Communications:Ofcom)が8歳~15歳までの子供を対象に行なった青少年のインターネット利用の調査で子供がインターネット及びメディアを利用して不快を感じたコンテンツの聞き取り調査を行なっており、「年齢に相応しくない」「悲しくなる、怖くなる、恥ずかしくなる」「心配になる」「他人にいじわる・ひどいことをする」等を項目として挙げている。また、フィルタリングについての典型的なカテゴリーとして「性行為」「暴力」「薬物に関する内容」「ギャンブル」「アルコール飲料」「たばこ」を挙げている148

インターネット監視財団(Internet Watch Foundation:IWF 149)は、ブラックリストとして子供のいかがわしい(indecent)画像及びこれらのコンテンツへのリンクや広告を記載したウェブサイトをリストアップしている。 このリストは通常500~800のウェブサイトをリストしており、日に2回アップデートされる。国内でホスティングされている性的児童虐待ウェブサイトは数時間以内に排除され、このリストには記載されない。また、IWFはリストに含めるコンテンツのタイプを広げる予定はないとしている。

政府はベイリー報告書(Bailey Review 150)の提言に基づき、2013年5月に、公共のWi-Fiの提供をする関係者(Wi-Fi事業者、小売店、販売店、飲食店)による子供にとって有害情報の削除の計画を発表した。それにより、イギリス青少年インターネット安全協議会(UK Council for Child Internet Safety :UKCCIS) とWi-Fi業者6社(Arqiva社、BT社、Nomad社、Sky社、Virgin社及びO2社)により承認マークあるいは業界行動規範の作成を計画した。BT社とSky社は、発表時までにすでにネットワーク上での成人向きコンテンツの自動フィルターを行なっており、全国18,000のWi-Fi拠点で同じ様な取組みが行われている151

表 27 有害情報対策の沿革
2010年5月 キャメロン連立政府政策「Programme for Government」に盛り込まれた児童の商業及び性的利用への対策152
2010年7月 キャメロン連立内閣によるインターネットのフィルタリングを含む安全規制の政策の発表153
2010年12月 Children’s MinisterであるSarah Teatherの要求によりReg Baileyの「Commercialisation and sexualisation of childhood」の報告書が2011年6月に発表(参照:Family and Parenting Institute Briefing Paper Commercialisation and Sexualisation of Childhood 154
2012年6月 UKCCISによる保護者及びインターネット事業者に対するコンサルテーション
2013年7月 キャメロン首相によるオンライン上の児童保護及びオンラインポルノに関するスピーチ
インターネット事業者におけるインターネット安全利用を含む(ポルノを含める画像の強制フィルタリング)を要求 155
2013年 Ofcomによる児童・保護者に関するインターネット利用の実態の報告書発表
2013年末 4大インターネット事業者(TalkTalk, Sky,BT, Virgin Media)によるフィルタリングの選択オプションの導入
2014年1月及び7月 Ofcomによるインターネット安全対策報告書の発表
現在 政府による18歳以下の性的虐待と見られるイメージに対する法的対策の強化・推進
政府によるレイティング及びフィルタリングの規制及び推進

(Ofcom2014年7月報告書及び内閣府平成25年前調査報告より作成)

表 28 法令及び規制の施行の背景・名称と監督官庁
法律 概要
1933年児童少年法156 最初に制定された児童保護法の一つで16歳未満に対する虐待の定義を与えている。
1978年児童保護法(イングランド及びウェールズ157 18歳以下の児童の「いかがわしい(indecent)」
映像の製造・頒布・陳列を処罰する法令
1988年刑事裁判法158 児童のいかがわしい映像の所持を処罰する
1989年児童法159 現在の児童保護制度の基本となる法令
子供の家庭での保護と保護者の責任について定義していると共に、地方自治体と法廷の児童保護に対する責任を設けている。また、第31条でNSPCCを当局と規定している。
児童法のガイダンス(Guidance under the Children Act 1989 160 1991年に発行された児童に接する職業における者のガイダンス
児童虐待の際に各担当機関の役割責任及び対応、また地方児童保護委員会の役割及び地方自治体への虐待のリスクがあると思われる児童の調査義務を規定している。
国連による子供の権利条約(United Nations Convention on the Rights of the Child 1989年161 1991年にイギリスは批准したが、イギリスの法令の一部にはなっていない。ウェールズはイギリスの中で一番早くこの条約の主旨を法令に取り入れることに賛同している。
1998 年人権法162 子供の個人及び家族生活の権利を定義している。
2001年子供の権利コミッショナーウェールズ法163
北アイルランド法164
スコットランド法165165
イングランド法166
子供の権利/福祉の保護と推進を行うことを主旨としている子供の権利コミッショナーをウェールズはイギリスで一番初めに設置した。
1959年及び1964年猥褻刊行物法167 「猥褻な(obscene)」表現物の規制をする法令で、 書物や絵画、録音、映像等を対象とする。処罰対象となる行為は、猥褻物の頒布と利益を得る目的での所持で、となる。
2002年教育法168 第175条において学校機関、地方教育委員会及び持続教育機関(further education institution)は子供の福祉の保護及び推進を求められている169
2002年養子と児童法第120条170 ドメスティック・バイオレンスにおける条例。これにより児童法における「有害」の定義にドメスティック・バイオレンスを目撃することが含まれる。
2004年児童法171 2000年におきた8歳のビクトリア・クリンビー(Victoria Climbié )の殺害について政府の要求によりラミング卿による調査が行われ、調査報告により政府は「Keeping children safe report (DfES, DH and Home Office, 2003)」及び緑書「どの子供も大切(Every Child Matters green paper (DfES, 2003)」を発行し、これにより児童保護制度を改正する必要な新しい法令「2004年児童法」が制定された。
2009年国境、市民権及び移民法172 イギリス国境局(UK Border Agency)による子供の福祉保護及び推進の義務を設定している。
2011年教育法173 学校における規律/規制における法令で、2010年教育省白書「教育の大切さ(The Importance of Teaching(CM-7980)」の主旨に基づいて制定された。これにより生徒の所有物の検査等学校の規律を守る教師の権力が拡大したと共に、子供の教育期間が延長された。
1996年名誉毀損法174 「名誉毀損法」(Defamation Act 1952)は、他人の名誉を毀損する行為が規制されるが、この法令で改正され、インターネット上での名誉毀損についても同法が適用されることになった。
2003年通信法175 通信/メディアにおいて利用者の保護を義務付けている。猥褻、又は攻撃的や脅し、嫌がらせ内容を公共の電子手段を用いて送ることを禁止する。
ビデオ記録法176 販売されているDVD、ビデオ、ビデオゲームには全英映像等級審査機構(British Board of Film Classification:BBFC)の年齢適応レイティングを義務付けている。これによって年齢レベルが表記されているゲーム・ビデオをその年齢未満の者に販売禁止されている。

(参照:NSPCC177, 国立国会図書館調査及び立法考査局178, 内閣府179

表 29 検討中の新しい規制や法律等
法令/規制名 内 容 現 況
データ保持及び捜査権限法
(Data Retention and Investigation Powers Act)
政府は欧州司法裁判所(European Court of Justice)による通信サービス事業者(Communications Service Provider)が通信データを法的執行目的のために12ヶ月保持するという規制を却下したことで、インターネット及び携帯電話事業者はこれらのデータを削除し始める可能性があるとしてこれを防止する法案を成立した180。また、いくつかの事業者は捜査機関への協力体制についての明瞭な規制枠組みを政府から求めていることも含め、緊急法としてデータ保持及び捜査権限法(Emergency Data Retention and Investigation Powers Act)を2014年7月17日に制定した181
この法は2016年までの消滅事項を持ち、政府は2016年までに捜査権限規制法(Regulation of Investigatory Powers Act)の改正を考慮した見直しを行うとしている。
また、アメリカと同じようなプライバシー・市民的自由監視会議(Privacy and Civil Liberties Oversight Board)を設立する予定である。また、いくつかの公共団体による携帯電話・ISPへの通信データの提供を要望することを禁止する予定。地方自治体がこれら団体の代理としてデータの提供の請求を行う機関となる182
2014年7月17日制定
イ 違法情報

オンラインの違法コンテンツ等の苦情及びISP業界・警察と連携してインターネットにおける犯罪取締りを目的として設立された自主規制団体のインターネット監視財団(IWF)は、以下の三つのカテゴリー183を違法ウェブサイトとしてあげ、これらのウェブサイトの発見・排除に力を尽くしている。

1 ウェブサイトのホスティング国を限らず性的児童虐待と思われるコンテンツ1
2 国内でホスティングされている犯罪的に猥褻な成人コンテンツ(極度なポルノ等
3 国内でホスティングされているポルノでない性的児童虐待画像

これらの内容を含む場合は、「違法コンテンツ」としてIWFに通知するよう警察当局は呼びかけている184

イギリスでは2002年からの児童性愛者の大規模な捜査に続き、2012年のジミー・サヴィル(Jimmy Savile)、ロルフ・ハリス(Rolf Harris)といった有名人・政治家を含む歴史的児童虐待犯罪やギャングによる青少年のグルーミング等が子供を取り巻く性的虐待の事件報道が絶えない。また、犯罪者のコンピュータに残った性的コンテンツのファイルや検索結果等から犯人逮捕につながるケースが多く、インターネットを利用した性的犯罪においても多くの報道が行われている185

(a) 商業的オンライン・グルーミング

警察機構である児童性的搾取対策オンライン保護局(Child Exploitation and Online Protection:CEOP)の調査により、国際的なオンライン性犯罪事件が摘発されている。イギリスに住む被害者から2012年にクウェートからイギリスを含める児童110人にオンライン上で性的行為を強要していた兄弟の逮捕につながった186 187

(b) 大規模な児童への性的犯罪者の取締り

マンチェスターでは、サイバー犯罪を取り締まる国家犯罪局(National Crime Agency)による660人の容疑者への6ヶ月の捜査の結果、46人の犯罪者を逮捕した。この捜査は全国45の警察機構が携わり、400人以上の子供の保護につながった188

表 30 法令及び規制の施行の背景/名称と監督官庁
項目 法令・規制名 詳細
性的児童虐待に対する規制 1978年児童保護法(イングランド及びウェールズ)The Protection of Children Act 1978) 18歳以下のいかがわしい写真の撮影、作成、頒布、所有の禁止
1982年市民行政(スコットランド)法Civic Government Act, 1982 (Scotland) 1978年児童保護法の範囲の規制と同様な規制を含むスコットランドでの法令189
2003年性犯罪法:主要改正点(イングランド及びウェールズ)(Sexual Offences Act 2003: Key Changes (England and Wales)
1997年性犯罪者法190
2003年性犯罪者法191
同(北アイルランド法)192
同(スコットランド法)193
2003年性犯罪法により第45条により、1978年児童保護法が定める「児童」16歳未満の年齢を18歳未満に引き上げ。1997年9月1日以後の性犯罪者には警察への住所登録が義務付けられた。これにより子供へのグルーミング及び信頼される立場を利用した虐待、人身売買、イギリス国民による海外での児童虐待犯罪等についての規制が改正された。海外での性犯罪者の監視が含まれ、1997年性犯罪者法が拡大された。
性犯罪者の登録に対してヨーロッパ人権条約に反するとした2010年の最高裁判所の判決後に2012年性犯罪者(2003年)法命令194が制定され、永久登録を義務付けられている場合はその見直しを要求できるとなった。
2003年性犯罪法の第46条に関連した検察庁とイギリス警察長協会間の覚書(Memorandum of Understanding: Section 46 Sexual Offences Act 2003)195 2003年性犯罪法の刑事訴訟、捜査における適用除外を定義して、性的犯罪の捜査/犯罪予防における警察機関及び関係者を司法的に保護するために制定さている。性的児童虐待対機関としてのIWFの役割を定義している。
2006年警察司法法(Police and Justice Act 2006) 1978年児童保護法を改正する法案。これにより裁判所の許可なしに警察機関が捜査を行える。児童のいかがわしい画像に関する取締り許可を定義している。
2008年刑事司法及び入国管理法(Criminal Justice and Immigration Act 2008) 2005年の「過激なポルノグラフィーの所有」の協議書にて児童ポルノ以外のポルノ所有する行為そのものを規制した。過激なポルノの所有、情報社会サービスプロバイダーに関わる特別規則、児童のいかがわしい写真、ポルノ全般を規制する。
犯罪的猥褻な成人コンテンツの規制 1959年及び1964年猥褻刊行物法(Obscene Publications Act 1959 and 1964 ) 1959年制定時は猥褻な表現を含む出版物の取締りを目的としていた。1978年児童保護法改正によりインターネット上での児童ポルノに関する情報及び児童を扱ったように見えるいかがわしい擬似写真(pseudo photographs)にも児童保護法が適用されることとなった。猥褻刊行物はそれを閲覧する者を堕落腐敗させるものと定義されている。
2010年刑事司法及び特許(スコットランド)法第42条:過激なポルノ(Criminal Justice and Licensing (Scotland) Act 2010: Section 42: Extreme Pornography) 2008年過激なポルノの所有を規制する法令。規制範囲は2008年(イングランド・ウェールズ)刑事司法及び入国管理法の第63条と同様であるが、この法令は全てのレイプ及び同意ない性行為を規制している196
写真以外の性的児童虐待の規制 2009 年検死官及び刑事司法改革法(Coroners and Justice Act 2009) 児童ポルノを定義している法令でコンピュータ等によって作成された写真以外の児童の性的な素材も規制している。
ISPの規制 電子商取引指令(ISP業者の責任(Directive 2000/31/EC (Liability of Intermediary Service Providers) 有害違法コンテンツに対するISPの民事責任に関する指令2002年よりイギリスで執行されている。
中傷及び人種や宗教による差別の規制 1997年ハラスメント防止法(Protection from Harassment Act 1997 ) 家族がストーカーの被害者となったエボン・レノラボンホーセン(Evonne Leonora Von Heussen)による1993年からの全国ストーキング・ハラスメント被害者協会(National Association for Victims of Stalking and Harassment :NASH)キャンペーンにより法案となった。
2006年宗教的憎悪禁止法(Racial and Religious Hatred Act 2006) 2001年9月11日のテロリスト事件に基づき労働党政党による2001年の耐テロリスト法案に含まれていた項目。その後2回の法案に含まれて、2006年に勅令された197
テロの誘発及び自殺を助長の規制 国際テロリスト法(Terrorism Act 2000 and 2006) 2000年 に従来のテロリスト対策の規制をまとめて「テロリズム法」が制定。2001年反テロリズム、犯罪及び安全保障法(Anti-Terrorism, Crime and Security Act 2001) 及び2005年 テロリズム防止法 (Prevention of Terrorism Act 2005)により補足される。2005年 欧州評議会(Council of Europe)のテロリズム防止条約に批准するために国内の法令が改正された198
自殺の強要・助長の規制 1961年自殺法(Suicide Act 1961) 他者への自殺の強要・助長・援助等を禁止する法令、自殺未遂者の刑罰の破棄を含む。オンライン上の自殺強要・助長は含まれない。
性的目的による16歳未満への接触の規制 1960年児童法と猥褻性(Indecency with Children Act 1960) 青少年を相手にいかがわしい行為を行うことを更に厳しく取り締まる法令。オンライン上も含み性的興味から16 歳未満の児童に接触することを規制している。
2005年重大組織犯罪及び警察法199 2004・2005年の安全保障及び「法と秩序」に重点が置かれた政府法案により制定した。CEOPの枠組みを設定しており、第163条により子供にリスクのある成人との接触を防止するための選抜システムが改正された200
2006年弱者保護法201 児童等の弱者保護を目的として、これら児童に接する仕事につく者あるいは日常的に接する立場にある者の犯歴照会及び登録監視の制度を規定している202 2002年の10歳のジェシカ・チャップマン(Jessica Chapman)とホリー・ウエル(Holly Wells)の殺人事件後に2004年の「ビチャード調査報告203」により児童に接触する職場にいる者に対して犯歴照会及び登録監視制度を整備した法令。2012年に自由保護法204の制定によりこの法令も改正された。 この法令はイングランド・ウェールズに限り、同じ内容の法令は以下になる。 北アイルランド法: Safeguarding Vulnerable Groups (NI) Order 2007 205 スコットランド法: Protection of Vulnerable Groups (Scotland) Act 2007 206

(参照:IWF207、JETRO208、内閣府209

表 31 検討中の新しい規制や法律等
法令/規制名 内 容 現 況
重大犯罪法案
(Serious Crime Bill)
ギャング犯罪、サイバー犯罪及び性的児童犯罪に関わる法案2002年犯罪収益法(the Proceeds of Crime Act 2002)の改正と共に、児童法(Children and Young Persons Act 1933)、コンピュータ不正利用法(the Computer Misuse Act 1990)、(警察犯罪法(Policing and Crime Act 2009), 女性器切除法(Female Genital Mutilation Act 2003及びProhibition of Female Genital Mutilation (Scotland) Act 2005)、テロリスト法(Terrorism Act 2006)の改正となる。 2014年6月上院議会での読み上げ

内務省のサイバー犯罪報告書210によると、2006年から2012年の間に「児童のいかがわしい画像」に関して法令で裁判となった件数は以下のとおりである。画像の所有及び作成において裁判となった件数は、2010年、2011年をピークとし、その後減少している。

表 32 児童のいかがわしい画像に関する裁判件数(2006年~2012年)(単位:件)211
規制 刑罰 2006/07年 2007/08年 2008/09年 2009/10年 2010/11年 2011/12年 2012/13年
2009年検死官及び刑事司法改革法 第62条1項及び66条2項 児童の禁止された画像の所有 21 179 394
1988年犯罪司法法第160条1項、2A項及び3項 児童のいかがわしい画像の所有 2,768 3,079 4,241 4,117 4,543 3,885 3,849
1978年児童保護法第1条1項a及び6項 児童のいかがわしい画像の作成 10,761 11,209 13,824 13,975 16,289 15,266 14,033
1978年児童保護法第1条1項b及び6項 児童のいかがわしい画像の配布 714 700 949 824 684 743 836
1978年児童保護法第1条1項c及び6項 児童のいかがわしい画像の陳列 501 362 269 137 424 341 317
1978年児童保護法第1条1項d及び6項 児童のいかがわしい画像の掲載及び陳列の広告 5 19 16 2 3 1 1

(出典:Home Office)

2006年から2012年の間、司法省によって性的イメージに関する判決を受けた数はと次のとおりとなる。

表 33 性的イメージに関する有罪判決結果数(2006年~2012年)212
規制 刑罰 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年
2009 年検死官及び刑事司法改革法 62(1)条及び66(2)条 児童の禁止された画像の所有 訴訟 6 15
有罪 6 8
宣告 6 8
1988年刑事司法第160条 児童のいかがわしい画像の所有 訴訟 162 185 240 235 292 200 234
有罪 162 184 227 222 165 246 247
宣告 180 191 259 235 189 279 268
1978年児童保護法第1条 児童のいかがわしい画像及び擬似写真の撮影・撮影許可・掲載及び発行 訴訟 937 888 1,136 1,240 1,501 1,524 1,466
有罪 768 782 958 1,024 1,246 1,283 1,315
宣告 768 753 924 995 1,212 1,224 1,248

(出典:Home Office)

児童保護法により「児童のいかがわしい画像及び擬似写真の撮影・撮影許可・掲載及び発行」の有罪判決を受けた数が増加していると報告書は指摘している213