平成26年度アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアにおける青少年のインターネット環境整備状況等調査
平成27年3月 内閣府

第2部 調査の結果

第2章 イギリス

1 青少年のインターネット利用環境に関する実態

(4) インターネット経由等による犯罪等
ア インターネット(ウェブサイト、SNS等)を利用した児童買春等の犯罪被害の実態

近年、児童買春等の性的児童虐待の事件が発生しており、その中にはインターネット等のテクノロジーの利用による犯罪も多く含まれ、事件の範囲及び被害者の数が大規模となる場合がある。

(a) 性的児童虐待者の大規模な逮捕

2014年7月に、国家犯罪局(NCA)による660人にのぼる児童性愛者の大規模逮捕が行われた。これは6ヶ月の捜査によるもので、400人以上の児童を保護する結果となった。この事件の特徴としては、逮捕者で性的犯罪の前科のある者はわずか39名で、加害者の多くは犯罪歴もなく、また、元警察官、福祉局局員、ボーイスカウトのリーダー、医師等と児童と接触する職に携わる者も含まれていた。更に、中には、祖父からの性的虐待を受けていた孫2名や養父による虐待もあった。この捜査にはイングランド、ウェールズ、北アイルランドの45の警察署が連携して行い、833件の物件を捜査し、9,172個のコンピュータ、携帯、ハードドライブを押収した285

(b) ウェブカメラを利用した国際的な性的児童虐待の事例

CEOPは、2013年年次報告書の中で、2013年に起きた性的児童虐待のケースとして、ウェブカメラを利用した性的児童虐待を挙げている。これはクウェートに在住する男性2名による12歳?16歳をターゲットにした性的児童虐待で、13カ国に渡って被害者が点在していた。犯人は、SNSサイトやインスタントメッセージのソフトを利用し、被害者となった子供に知り合いのふりをして接近し、リンクを通して被害者からオンラインのパスワードを取得した後、ウェブカメラを使用して性的行為を強要していた。児童への性的虐待は、有害なレベルのものまでを含み、イギリス在住の78人を含む110人の子供が被害者となった。2012年の12月に男性らは5年の刑罰で刑務所へ拘置された286

(c) 性的児童虐待の写真を所有した犯罪者逮捕例

2012年6月に行われた重大組織犯罪局(Serious Organised Crime Agency)と、40の警察署による性的児童虐待犯罪捜査(Operation Tharsley)により、78人が逮捕され、80人の児童が保護された。これは、CEOPからの通知と各地での捜査機関の協力の結果によってもたらされたものである287

  これらの事件の特徴として、以下のことがあげられる。

  ■ 隠れたウェブサイト(ダーク・ネットのウェブサイト)を利用した商業的児童虐待事件

インターネットを利用した性的児童虐待のケースにおいて、これらの多くのウェブサイトは、海外でホスティングされているサイトであり、ダーク・ネット(dark net)と呼ばれるコンテンツの投稿者を隠したウェブサイトを利用しているところに特徴がある。ダーク・ネットは通常の検索エンジンでは検索しても表示されない。NCAによるとこれらのウェブサイトは、ほとんどが海外でホスティングされており、イギリス内でホスティングされているウェブサイトは1%未満であるといわれている288

  ■ 国際化している児童虐待犯罪

イギリスではNCAを中心とした大規模な捜査が行われている。多くの逮捕者は前科がないが、容疑は、児童の猥褻イメージの所有から、深刻な性的暴行までを含んでいる。また、これらの違法ウェブサイトは海外からのホスティングサイトがほとんどである289

  ■ ウェブカメラを利用した犯罪の国際化

ウェブカメラのライブストリーミングを利用し、海外の子供に対して、性的児童虐待が行われている。この商業的性的児童虐待は、犯罪者から被害者の家族への支払いが行われるため、被害者となる子供は、家族のために売春行為を行なっていることになる。イギリスでの被害者も含むこのタイプの犯罪は、その性的犯罪レベルは多様である。ライブストリーミングを利用した性的児童虐待のファイルの作成・配布は、2012年から急速に発生している290

  ■ 性的児童虐待事件の加害者/被害者の数が大規模である。

2014年7月に行われた性的児童虐待犯罪捜査(Operation Notarise)の一括逮捕だけでも660名の逮捕者があり、被害者数は431人となった。その中で最も緊急保護を必要とした子供の数は127人であった291

イギリスでは、インターネット監視財団(Internet Watch Fundation:IWF 292)により、インターネット上での性的児童虐待ケースの監視が行われており、性的児童虐待ケースの報告が行われている。

  IWFによる近年の児童虐待の犯罪統計は以下のとおりである。

  ■ 2012年の犯罪統計

2012年にIWFが通報を受けたウェブサイトの中で9,550件は、IWFの専門家により分析され、実際に性的児童虐待のケースであるとみなされた。IWFはこれら有害、違法ウェブサイトの対策としてこれらのウェブサイトに通報を行なっている。2012年にIWFによる分析結果は以下とおりである293

  • 81%の児童虐待被害者は10歳未満である。
  • 75%の被害者は女子である。
  • 53%の全ての性的児童虐待のウェブサイトは大人と子供による性的行為を表現している。

  ■ 2013年の犯罪統計294

タイプ別通報件数でみると、2013年にIWFに有害ウェブサイトとして報告された件数は、2012年と比べて31%増加している。

図 104 IWFに報告されたウェブサイト数と性犯罪ウェブサイトと認識されたウェブサイトのタイプ別比較(2013年)(単位:件)295

(出典:IWF報告書)

  • 通報情報の詳細として、違法情報が含まれた件数:51,186報告件数中13,343件 (26%)。
  • 性的児童虐待ウェブサイトとして報告された件数:47,809件。
  • 性的児童虐待ウェブサイトとして認識された件数:13,330件(ウェッブサイト、ニュースグループを含む)であった。

性的児童虐待ケースの割合として、以下の表は、2011年から2013年の間にIWFに通報された性的児童虐待の件数をIWFによって分析、性的虐待ケースと認識された割合を示している。

表 46 性的児童虐待ウェブサイト報告数(2011年~2013年)296
性的児童虐待通報件数の内容と割合 2013年 2012年 2011年
性的児童虐待の通報 93% 91% 90%
IWFの分析による性的児童虐待ケース 28% 27% 35%

(出典:IWF)

次表は、2011年から2013年の間に、IWFに通報された性的児童虐待のイメージの内容と割合である。

表 47 被害者年齢及び性別における性的児童虐待ウェブサイト報告数
性的児童虐待通報件数の内容と割合 2013年 2012年 2011年
10歳以下の児童 81% 81% 74%
2歳以下の児童 3% 4% 3%
成人と子供によるレイプ・性的拷問を含む性行為 51% 53% 64%
被害者が女子の場合 76% 75% 65%
被害者が男子の場合 10% 10% 26%
被害者が両方の性別 9% 11% 8%

注)性別が明確にできない割合もある。(出典:IWF)

更に、IWFは、有害ウェブサイトのドメイン及びホスティング国の分析・報告を行なっており、性的児童虐待イメージを含んだウェブサイト数は、13,182件(2013年)で、これらウェブサイトのホスティング国は43カ国にのぼる(2012年では38カ国であった)。

下図は、2006年以降の性的児童虐待のコンテンツをホスティングしたドメイン数である。2006年と比較すると、2013年には、その数は約半数となっている。

図 105 性的児童虐待ウェブサイトを含んだドメイン数(2006年~2013年)(単位:個)297

(出典:IWF)

IWFは、性的児童虐待コンテンツのウェブサイトが2012年と比較すると、2013年に増えたことに注目している。2013年には、「サイバーロッカーズ(cyber lockers)」と呼ばれるファイルホスティングサイト及びSNSサイトにおいて性的児童虐待のイメージが増加する傾向であるとしている。また、10,695件のウェブサイトは、無料ホスティングサービスであり、2,445件のウェブサイトは、有料ホスティングサービスである。その他は、ダーク・ウェブサイトと呼ばれる隠れたホスティングサービスに含まれる298

図 106 上位10位インターネット・サービスタイプ別性的児童虐待ウェブサイト件数(2012年, 2013年比)(単位:件) 299

(出典:IWF)

IWFは、性的児童虐待ウェブサイトの対策として、削除することが一番的確な対応と見ており、イギリス内における性的児童虐待ウェブサイトについては、サービスプロバイダーに対して通告を行う「通告・排除サービス(notice and takedown service)」を警察との提携により行っている。2013年にIWFは、43件の性的児童虐待ウェブサイトへこの「通告排除」対策を行なった300

表 48 IWFの「通告排除システム」の対応件数(2012年, 2013年)
発行した排除通告数 国内のホスティングェブサイト数
2013年 43件 92件
2012年 35件 73件

(IWF報告書から作成)

IWFでは、海外からホスティングされている有害コンテンツにおいても、そのウェブサイトのホスティング場所を追跡している。性的児童虐待ウェブサイトのホスティング件数をエリア別にみると、北アメリカが7,133件(54%)と一番多く、ロシアを含むヨーロッパが5,610件(43%)、アジアが390件(3%)と続く。オーストラリア、ニュージーランド、ニューギニア島等を含むオセアニアが13件、「オニオンサイト」と呼ばれる隠されたホスティングサービスによるのが36件と報告されている。

図 107 エリア別性的児童虐待ウェブサイトとして分析されたウェブサイト件(単位:件)301

(出典:IWF)

2013年に、イギリス内で性的児童虐待コンテンツをホスティングしたウェブサイトとして、IWFの削除通知を受けた数は43件であった。その内、6件をホスティングしていた会社は、IWFの会員企業であり、IWFによるとこれら会員企業は、通知を受けてから削除までの時間が他のウェブサイトより早かったと報告している。以下の表は、イギリス国内での性的児童虐待ウェブサイトを内容別に年比較したものである302

表 49 イギリス内での性的児童虐待ウェブサイトのホスティング件数
性的児童虐待通報件数 2013年 2012年 2011年
10歳以下の児童 65% 79% 65%
成人と子供によるレイプ・性的拷問を含む性行為 50% 51% 62%

(出典:IWF)

IWFは、ニュースグループにより配布されているコンテンツを、システム的にモニターし、削除警告を行なっている。2013年に、IWFは性的児童虐待イメージ・ビデオを含むとして、237に及ぶニュースグループを、IWF会員に推奨をしないとしている。以下の表はニュースグループウェブサイトにおいて、2013年にIWFへの報告された数及びIWFによる警告削除数である303

表 50 ニュースグループにおける性的児童虐待ウェブサイトの報告と削除警告数(2013年)
IWFへの報告数 415件
削除警告数 148件

(出典:IWF)

イ 青少年によるセクスティングの実態

青少年のセクスティングにおいては、青少年の間で広まっているだけでなく、ネットいじめにつながり自殺者等も出たことから、2013年以来、社会的な課題となっている。

子供の虐待防止等の活動を行うチャリティー団体であるNSPCC 304の委託による調査で、ロンドンの教育機関が行なった10代の青少年35人への聞き取り調査によると、11歳の女子も含めて、知っている男子に「特別な(いかがわしい)写真」を送るように頼まれた経験をしていた。その中には体の一部に特定の男子の名前をマーカーペンで書いて「この身体が男子の持ち物である」と示した場合もある。男子からセクスティングや性的行為を求めるメッセージは10代の女子に毎日のように送られてきていると報告されている。NSPCCの性的虐待プログラムの責任者であるジョン・ブラウン(Jon Brown)は、「この調査で一番気になることは多くの青少年がこれらセクスティングの要求を生活の一部として認めていることである。性的虐待という可能性もあるかもしれない。それ以上に違法行為だということを青少年たちは気がついていない」と語っている。また、この聞き取り調査を行なったロンドン大学のインスティチュート・オブ・エデュケーションのリサーチャーであるジェシカ・リングローズ(Jessica Ringrose)は「男子からの性的要求やセクスティングの要求のメールが大量に送られてきていた。インタビューをしている間でもこれらのメールが届いていた」と報告している305

NSPCC及びチャイルドライン(Childline)により行われたセクスティングの調査によると、携帯電話やオンラインで自分の性的な画像や動画を交換するセクスティングは青少年の間で一般的な行為として受け取られている306。セクスティングに関する青少年及び事件の傾向として、青少年におけるセクスティングの常例化と青少年における犯罪性の認識が低い事があげられる。

セクスティングの傾向として、以下があげられる。

  • 性行為及びセクスティングを求めるメールが一般的な青少年の間で頻繁にかわされている307
  • セクスティングによる被害者の中には自殺を行う深刻なケースも出てきている。
  • セクスティングが犯罪かいたずらかの見分けが難しい。

内務省のサイバー犯罪の報告書によると、セクスティングの問題点は、イメージがただの悪ふざけでなのか、喧嘩によるものか、リベンジによるものか、あるいは性犯罪的内容のものか判断しづらいことであるとしている。どの部分が第三者による強要あるいは、脅迫によるグルーミング又は性的児童虐待なのかが曖昧であると、指摘している308。被害者以外の個人のイメージが配布されることにも懸念がある。例えば、Facebookでプロフィールやグループを作成して性的関係にあった女子のイメージが閲覧できるような場合もある309

オンラインでの児童犯罪を取り締まっている警察機構であるCEOPの報告書でセクスティングに関する統計が報告310されている。それによると、2011年~2012年にCEOPが受けた2,293件の通報中、22%はセクスティングに関係するものだったが、これらのほとんどが脅迫及び強制によるものでないとしている。また、これらのほとんどはビデオライブのチャットによりアップロードされたものか、インスタントメッセージによって行われたとしている。CEOPは、2013年にも、前年の120件の画像及び113件の動画と同様のレベルのセクスティングイメージが見つかったと報告している。更に、セクスティングの被写体は、80%以上が白人であり、性別で見ると女性が男性よりも被写体になる場合が多い。子供が被写体となっている写真では、10歳以上の場合が93%となっている。動画の場合は、50%が10歳以上で、30%位が10歳未満と報告されている311

表 51 セクスティングの被写体の性別の割合
性別 写真 動画
女性 82% 37%
男性 18% 55%

(CEOP報告書)

今では青少年の間でセクスティングは、一般的な行為であるとCEOPは報告している。19歳未満の40%は、自分や友人の性的イメージをテキストで交換している友人を知っているとしており、27%は、セクスティングを定期的に行っていると答えている。CEOPは、セクスティングは、性的虐待の被害者になるリスクもあり、青少年の生活に深刻な影響を与える可能性があると報告している。過去2年間でCEOPは、被害者がセクスティングの素材が犯罪者によって恐喝に利用された国内のケースが184件に上るとしており、これらの中には強制された被害者が自傷行為を行うのを犯罪者がライブカメラで閲覧したケースもある。184人の被害者の中、6人が深刻な自傷行為及び自殺行為をはかり、1名は自殺により命をなくしている312

青少年を支援しているチャリティー団体であるNSPCCとChildLineは、450名の10代の青少年を対象に調査を行い、その結果、40%がセクスティングの画像や動画を作成したことがあり、約25%がその画像を携帯メールのメッセージで誰かに送ったとしている。これらセクスティングを行なったとする58%が恋人に送ったとしているが、30%近くがオンライン上の知り合いで実際は会ったことのない者に送り、約15%が全く知らない者に送ったと答えている。調査した全体の53%は性的写真や動画を受け取った経験があり、その中の30%近くが知らない者から受け取ったと答えている313

ウ 青少年の間のネットいじめ

2013年からネットいじめによる10代青少年の自殺が相続いて起きている。17歳のダニエル・ペリー(Daniel Perry)は、オンラインで知り合った相手から脅迫された事により、自殺に至った。被害者は、オンラインで知り合った相手は、同じ年頃の女の子と思ってセクスティング等を行なっていたが、実はギャングによる犯行で、相手から何千ポンドという大金を振り込むように脅迫され、その数時間後に自殺した。被害者の少年は自殺する3ヶ月前に、SNSサイトのask.fmで、彼に自殺をするように提案したいじめのメッセージも受け取っていた。また、14歳のハナ・スミス(Hannah Smith)は、数ヶ月に及ぶネットいじめにあい、2013年8月に自宅で首つり自殺を行なった314

14歳のハナの自殺の場合は、Ask.fm(ラトビアでホスティングされている)という匿名で利用者が質問回答できるウェブサイトによるコンテンツが自殺の要因になったと被害者の父親は証言している。イギリス首相も、この事件において問題となったウェブサイトのボイコットを国民は行うべきだと発言し、コメント等にポストされる言葉の規制等がメディアで議論されている315

これらの事件の特徴として、匿名ウェブサイト及びSNSを利用したネットいじめの事件ということがいえる。TwitterやFacebook等、青少年に人気のSNSでの予防方法を求める声がでた。ハナ・スミスの事件が起きた当時も、Twitter及びFacebook等のウェブサイトでは「虐待ボタン(abuse button)」をコメントごとに用意していたが、これらの機能は充分でないという声もある316

Ofcomの2013年10月報告書によると、過去1年間で、12歳から15歳では8%、8歳から11歳では4%のオンライン上でいじめにあった経験があった。年齢の高い12歳から15歳は、過去1年間に2倍近くいじめを経験している。また、「いじめられた友人を知っている」という回答も12歳?15歳の方が23%と、8歳?11歳より高い傾向にある。性別で比べると、女子の方が28%と男子(19%)より高い。携帯電話でのいじめも、女子は11%と男子(4%)より高い317

いじめの内容を見ると、12歳?15歳では、半数近くが「ネットいじめから恥ずかしい写真や噂を広められた経験」があるといっている。また、12から15歳の女子の33%は「携帯電話によるいじめにあった者を知っている」、12%は「自分自身がいじめにあった」といっており、女子は男子よりネットいじめの経験が多い傾向にある。更に、12歳?15歳の女子(6%)は、「オンライン上でも人気を持ちたい」あるいは、「魅力的に見られたい」傾向が男子(1%)より多く、オンラインや携帯メールのメッセージで噂を広められた経験も17%と男子(10%)より多い318

図 108 年齢層別性別オンライン上でいじめに合った割合(2013年)(単位:%)319

(出典:Ofcom)

8歳から15歳の子供で携帯電話によるいじめの経験がある割合は、比較的に少ない。8歳から11歳で5%、12歳から15歳で7%が過去1年間に「携帯電話によっていじめられた経験がある」と答えている。12歳から15歳の女子の方が「携帯によるいじめを経験した者を知っている」割合が33%と、男子(20%)より多い傾向にある。また、「いじめた経験がある」とするのも女子は12%と、男子(3%)より多い320

図 109 年齢層別性別携帯電話でいじめに合った割合(2013年)(単位:%)321

(出典:Ofcom)

12歳から15歳の子供に、過去1年間で「インターネット、携帯でいじめ等の嫌な経験をした友人を知っているか」という質問には約半数の45%が知っていると答え、19%は「自分が嫌な思いをした」と答えている。「噂を広められた」というのが一番多い経験(13%)であり、3%は「嫌な経験」として、「性的なものを見た」と答えている。2013年の調査では「メールによるチェーンレターのような怖がらせる内容のものを見たか」という質問に「経験がある人を知っている」と答えたのが8%、「実際に経験した」と答えた子供は2%であった。2013年には「嫌な経験」の項目は多様化し、12歳から15歳の女子の場合は、「オンラインや携帯メールのメッセージによる噂」「チェーンレターを見た/受け取った」「怖い経験をした」であった。男子はオンラインゲームでのいじめや質問に答えたくない傾向があるとOfcomは報告している322

図 110 オンライン上あるいは携帯電話でいじめに合った12歳~15歳(2013年)(単位:%) 323

(出典:Ofcom)

エ リベンジポルノ

2010年からリベンジポルノによる被害がアメリカやイギリスで起きていており、事件からリベンジポルノ撲滅へのキャンペーンや社会的動きが始まっている。

アメリカで、リベンジポルノの被害者としてホリー・ジェイコブス(Holly Jacobs)がキャンペーンを行なった事等をきっかけに、リベンジポルノを犯罪として法制化しようという動きが始まった。これらのリベンジポルノウェブサイトは2010年に始まったと言われている。イギリスでもリベンジポルノ被害者がでており、友人の写真をFacebookとリベンジポルノウェブサイト(www.myex.com)にて公開されたヒーサー・ロバートソン(Heather Robertson)は、アメリカのキャンペーン団体(End Revenge Porn)と同様、イギリスでのキャンペーンウェブサイト(Ban Revenge Porn)を設立した。イギリスでは著作権侵害でのみリベンジポルノの削除を求めることができないことから、政府に法制化を求めるインターネット上の署名運動を行なっている。イギリスでのキャンペーンが始まった頃に、アメリカでリベンジポルノウェブサイトを運営していたハンター・ムーア(Hunter Moore)の逮捕と共に、リベンジポルノウェブサイトの取り締まりが強まった324

イギリスではアメリカよりリベンジポルノについての動きが遅かったが、2014年6月にキャメロン首相の子供の世話役である女性が、リベンジポルノウェブサイトに裸の写真を載せられた事件が起こり、首相官邸におけるセキュリティ問題として取り上げられてリベンジポルノへの世論が大きくなった325

リベンジポルノにおける事件の傾向として、以下があげられる。

  • 2012年から被害が増加している。
  • アメリカでは、リベンジポルノ法の制定を目指して各州で審議が行われており、イギリスにおいても国内での事件を発端としたリベンジポルノキャンペーン団体が設立された。
  • イギリスでは主要政治家関係者にもリベンジポルノ被害が及んでいる。

イギリス・インターネット安全性向上センター(UK Safer Internet Centre)のヘルプライン担当者は、イギリスにおいては過去12ヶ月でリベンジポルノにおける相談が急増したと指摘している。イギリス・インターネット安全性向上センター 、全国ストーキングヘルプライン(The National Stalking Helpline)及びウーマンズエイド(Women's Aid)共に、リベンジポルノの被害は一般的に広まっているとしている326

オ その他、新たな動向

イギリスでは、この数年間の間に、オンライン、オフライン両方で、大規模な性的児童虐待事件が発覚している。グルーミングにおける犯罪事件は、2010年から取り上げられ始め、過去十数年と事件の犯罪期間が長い事件も発覚し、歴史的児童虐待事件として取り上げられている。

オンライン上での脅迫により児童の自傷行為や自殺の傾向があると、CEOPは報告している。2013年の報告によると、過去2年間で、CEOPは、児童に対する性的行為を目的とした脅迫の犯罪調査を12件行っており、その中で、424人の児童が、オンライン上の性的目的の脅迫の被害者となっており、その内184人はイギリス内であったと報告されている327

インターネット上でのグルーミングの通報が、2012年には1,145件あった。その内、実際に子供と会おうとしたという通報は7%で、前年の12%から減少している。2010年には、グルーミングの通報を受け、CEOPによるオペレーション・ハッティ(Operation Hattie)と呼ばれる国際的捜査が、12カ国において20ヶ月にわたって行われ、クウェートに住む兄弟の逮捕に繋がった。この件での児童の被害者数は110人に及んだが、実際に会って犯行にいたる意図は犯人になかったとされる328

ギャングによるグルーミングと大規模な性的児童虐待の例は以下のとおりである。

2010年に、イギリスの北部でのグルーミングによるギャングの児童買春を含めた大規模な性的虐待が報告された329

2011年に、タイム紙(the Times Newspapers)により、シェフィールド等イギリス北部で、16歳未満を含む青少年のグルーミング及び性的虐待が行われているという報道がされた。これを受けて内務省は調査報告書を発表し、加害者が主にアジア人であり、被害者が白人であることから人種的な問題かとも思われた。また、被害者の多くは地方自治体が運営する孤児院等に住んでいたため、行政の責任問題へと発展した。内務省の報告書によると、被害者は12歳?16歳で、逮捕された犯人5人は地元に住んでいたが、売春及びレイプに加担した者の数は、その他にも多かった。被害者の中には遠くの地域まで連れて行かれて売春行為の強要を受けた者や、レイプの被害者になった者もいる。報告書によると、これらの性的児童虐待のケースは、性的目的のグルーミングのみならず、売春、レイプ、監禁、人身取引といった犯罪行為を含むという。2011年に児童の支援団体であるバーナード(Barnardo’s)はグルーミングの方法は、ますます巧妙になっており、被害者が性的児童虐待を受けたと認識をしていない場合や、薬物等と引き換えに性行為を行なっている場合もあり、被害者が被害を訴えられない場合も多い。2012年にヘルプライン「チャイルドライン」への通報の60%がグルーミングによるものとNSPCCは報告している330

ロサナン性的児童虐待報告書(Rotherham child exploitation report)が2014年8月26日に発表された。その中で、ロサナン地方自治体においては、過去16年間で1,400人(実数)の性的児童虐待の被害者がいたと報告し、自治体は性的児童虐待の被害者となった青少年の保護の失敗につき自治体及び関連機関に責任があると認めた。1997年から2013年までの16年の間、11歳の女子も含むレイプ、グルーミング、売春行為が犯罪集団及び商業的目的によって行われていた。これらの性的児童虐待は、自治体及び警察等関連機関の間では認知されていたが、犯罪への対策及び予防対策が行われなかった。この調査は2010年の性的児童虐待により5人が刑処分を受けたことにより自治体が、委託し行われたものである331

政府の犯罪報告書332によると、グルーミングによる性的児童虐待においては、性的目的による児童への接触というグルーミングの犯罪だけでなく、更に深刻な児童のレイプという犯罪へ結びつく場合もある。その場合は警察及び司法機関ではグルーミング以外の犯罪として取り上げられる事が多いとしている。

オンライン上での性的児童虐待の事件の特徴として、テクノロジーの利用があげられる。

  ■ ウェブカメラ、ライブストリーミングを利用する児童性的犯罪者の傾向

2012年にCEOPに通報された1,145件の中、10%がゲームのウェブサイトを利用したオンライン性的児童虐待である。19%がウェブカメラを使用して犯罪に至っている。CEOPはウェブカメラを利用した実際の犯行数はこの数字よりかなり高いと推測している。ウェブカメラは被害者の猥褻な画像を撮るのと共に、そのイメージの公布にも利用されている。2012年のウェブスター報告書(Webster et al. 2012)によると聞き取り調査を受けたオンライン・グルーミングの犯罪者は、時には一日に6時間以上もの時間をオンライン上で過ごしている。この調査でテクノロジーの利用により犯罪者は、子供や青少年に直接ターゲットを向けられるとしている333

  ■ 偽装メールによる有害ファイルの配布

IWFは、偽装メールを装った性的児童虐待商業ウェブサイトの再発に注目している。IWFは、2013年6月からハッキングされたウェッブウェブサイトに隠す形でファイルを配布する方法が増加傾向にあると発表し、この方法でのコンテンツの配布のケースが発覚したのは、2010年以来であるとしている334

内務省はグルーミングに関する性犯罪の統計をまとめて、2013年10月のサイバー犯罪報告書335にて発表している。それによると、グルーミングによる犯罪件数は他の性犯罪件数より少ないが、グルーミングが更に深刻な児童のレイプという犯罪へ結びつく場合もあり、その場合は警察及び司法機関ではグルーミング以外の犯罪として取り上げられる事が多いとしている336

2004年以降のグルーミングにおける性犯罪数は以下のとおりである。2004/05年から2012/13年の9年間で犯罪件数は毎年増加の傾向が見える。

表 52 グルーミングによる性的犯罪数(イングランド及びウェールズ)(2004/5年~2012/13年)(単位:件)337
2004/05 2005/06 2006/07 2007/08 2008/09 2009/10 2010/11 2011/12 2012/13
犯罪数 186 237 322 274 313 393 309 371 373

(出典:Home Office)

2010年にCEOPに通報された3,652件の犯罪件数の内、オンライン・グルーミングに関係する割合は10%、オンライン上でのイメージの配布に関する割合は16%である。オンライン、オフラインでの児童との犯罪的接触は14%となる。また、オフライン・グルーミングは32%となる338。2012年の司法省からのデータによると性的目的でグルーミング後に子供に実際接触した犯罪者は72人となる339

表 53 オンライン及びオフラインで知らない人物と接触した青少年の人数及び結果340
報告書名 参照/調査時期 サンプルサイズ 年齢層 オンライン上で知らない人と接触した割合 オフラインでの接触 接触に対して懸念を持った割合 接触後に性的コンタクトがあった割合
K Children Go Online (Livingstone andBober, 2005) 今までに行なわれたケース」調査時期:2004年1月-3月 イギリスでインターネットを週に1回以上利用する子供1,257 人 9?19 歳 30%(377人) 8%(101人) 0.5%(6 人)「接触した相手が予想したのと違った場合」 N/A
EU Kids Online, European sample(Livingstone et al., 2011) 「今までに行なわれたケース」調査時期:2010年5- 6月 欧州25カ国でインターネットを利用する子供25,142 人 9?16 歳 30%(7,543人) 9%(2,263人) 接触に対して懸念を持った割合1%(251 人) 0.1%以下11-16 歳 (28 人)
EU Kids Online, UK sample (Livingstone et al., 2010) 「今までに行なわれたケース」調査時期:2010年5月-6月 イギリスでインターネットを利用する子供1,032 人 9?16 歳 29%(299 人) 4%(41 人) N/A報告できない位少ない件数 N/A
Harnessing technology: The learner and their context (Eynon, 2009) 「今までに行なわれたケース」調査時期:2008年12月-2009年2月 イギリスでインターネットを利用する子供941 人 年齢:8,12, 14,17?19 歳 27%(254人) 7.6%(71人) N/A N/A
Bridging the digital divide(Bryce, 2008) 「今までに行なわれたケース」 イギリスでインターネットを利用する子供 941 人 8?18 歳 62%(403 人) 24%(156 人) N/A N/A

(出典:Home Office)

2006年から2012年の間に、グルーミングを行なったとして逮捕され、犯罪法において起訴・有罪・判決を受けた事案の記録によると、2012年には 犯罪者72名は、性的グルーミング後に児童との接触を行なった罪により刑を受けている341

表 54 性犯罪法第15条(性的グルーミング後に児童と接触)により刑罰を受けた犯罪者数(2006年~2012年)(単位:人)342
規制 刑罰 結果 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年
2003年性犯罪法第15条 グルーミング後等に女子の被害者に会う 起訴 36 39 36 33 47 49 59
有罪 29 45 38 40 60 51 63
判決 30 46 36 41 62 48 64
2003年性犯罪法第15条 グルーミング後等に男子の被害者に会う 起訴 7 2 13 6 8 11 6
有罪 7 6 10 9 9 6 8
判決 7 6 10 9 9 6 8
注)被害者16歳未満、加害者18歳以上

(出典:Home Office)

その他、新たな動きとして、コミックス等における児童ポルノ規制があげられる。

2014年10月に、漫画を所持したことでの有罪判決がイギリス内で初めて下された。2012年7月に逮捕されたロブル・ホーク(Robul Hoque)39歳は、日本のアニメファンで、288枚の画像と99本のビデオをコンピュータに所持していた。これらイメージはすべて実際の人物は使用されていない漫画及びアニメであったが、中には制服を着た少女が肌を露わにしているものや、性行為を行なっているイメージがあり、これらは法に触れるという決定がなされたため、ホークは懲役9ヶ月の判決を受けた。

ホークは、2008年にも写真と似たアニメや漫画をダウンロードしたことで「地域社会奉仕命令」を受けていた。2008年の時は「トゥームレイダー(Tomb Raider)」をまねた児童のコンピュータイメージの画像を所持していたが、あまりにも写真に近い素材だったということで陪審員は6枚の画像に対して児童ポルノの擬似写真の作成と判決を出した。

ティーサイド最高裁判所(Teeside Crown Court)では、ホークがこれら少女の猥褻な画像をインターネット上で検索していたという証言があり、執行猶予を言い渡した最高裁判官は「これらの画像が実際の人物であれば、何年もの処罰となるところである。これらのイメージは社会に必要のないものである。児童との性的行為を助長するものである」と指摘した。

今回の判決に対して「2008年に続き2度目のテストケースとされた。イギリスにいる何千人もの漫画ファンに同じような逮捕及び刑罰が与えられる可能性を警告する判決となった」と弁護団は述べている343

児童ポルノの所持に禁止する法令として、2009年から執行された過激なポルノの所持を禁止する「2008年刑事司法及び入国管理法」及び児童ポルノの所持を禁止する「2009年検死官及び刑事司法改革法」があるが、実際に処罰されたケースは今回が初めてである。2008年の「地域社会奉仕命令」を受けていた際は、性的犯罪治療プログラムを受けることを命じられていたが、所持したこれらのイメージは2010年の法改正までは「違法」なものではなかった344

2010年から執行された「検死官及び刑事司法改革法第62条」では、児童保護法で禁止されている児童の写真及びイメージの所持を禁止している。条例の中では、写真以外のイメージも含めるとして、コンピュータグラフィック(CGI)、漫画、風刺漫画及びドローイングをあげており、違反者には、最大3年以内の刑務所収監又は罰金、それらの両方が刑罰とされる345

2009年には、写真以外のイメージおいても児童ポルノの所持を禁止するこれら改正法の執行において、漫画・コミックの規制を反対する団体から抗議の声が上がった。アニメファンのウェブサイトであるコミックショップボイスは、漫画を含めた禁止は行き過ぎではないかと発言していた。

2014年の今回のケースがイギリスでは児童ポルノとして、漫画を所持したことで有罪を受けた初めてのケースだが、スウェーデンでは、2010年に漫画の翻訳者が日本漫画を所持していたことで有罪判決を受けている。翻訳者の自宅から51の風刺漫画が押収され、その中39枚は児童ポルノとされた。39歳の翻訳者は、2010年の判決に対して、2012年に最高裁判所に取り消しを求めていた。更に「最高裁判所で取り消されなかったら、スウェーデンに住んでいられない。日本へ移住することも考えている」とコメントしていた。このケースを担当した検察官は「これらのイメージは実際の児童を性的犯罪者から保護しようとする警察の努力を妨害する。この判決で性的犯罪の被害者である児童が助かるだろう」と発言している346