平成26年度アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアにおける青少年のインターネット環境整備状況等調査
平成27年3月 内閣府

第2部 調査の結果

第2章 イギリス

3 青少年のインターネット利用環境に関する公的機関及び民間企業の取組み

(1) 青少年のインターネット利用環境に関連する政策・規制(法律)並びに監督官庁
ア 青少年の個人情報保護

地方自治体での子供の個人情報流出事件が続いている。インフォーメーション・コミッショナー・オフィス(Information Commisonners Office:ICO)は、2013年に特別教育支援を受ける(Special education needs)数百人の児童個人情報のデータをなくしたノース・イースト・リンカンシャー・カウンシル(North East Lincolnshire Council)に、80,000ポンドの罰金の支払命令を出した438。また、2014年4月にはバークシャー(Berkshire)カウンシルにおいて、児童虐待の被害者として保護下にある児童の児童福祉課の記録が児童の家族へ配達される途中でなくなるという事件が発生した。この件では、配達した運転手には機密書類であることは通達されていなかった439

2012年1月には、ウルバー・ハンプトン・シティ・カウンシル(Wolverhampton City Council)の福祉担当者が作成した報告書の中に個人的機密情報が記載されていた。この担当者は、個人情報保護の訓練を受けていなかった。ICOは2011年12月に地方自治体は個人情報保護施策の普及を行うと共に、職員に個人情報保護の訓練を義務付ける通知を行なっていたが、職員訓練の義務を怠ったとして、ICOは2014年5月に、この地方自治体に警告通知を出した440

ICOは、2014年4月までの1年間での警告通知及び処分が行われた件数を発表しており、それによると、教育機関で38件、地方自治体で54件が違反している。地方自治体は、医療部門の次に処分件数が多かった。児童と一番接触しやすく、児童の個人情報を保持している医療機関、地方自治体、教育機関が個人情報の違反件数のトップスリーとなっている441

図 128 ICO データ違法件数(セクター別)(単位:件数)

(出典:ICO)

違反タイプ別にみると、誤りによる情報公開が一番多く、二番目に多い書類の紛失・盗難件数の2倍以上となる。

図 129 ICO データ違法件数(タイプ別)(単位:件数)

(出典:ICO)

個人情報保護に関する法律、規制及びその監督官庁、関係団体は以下のとおりである。

表 59 個人情報保護に関する法令・監督機関
法令/規制 監督官庁
998年データ保護法(Data Protection Act1998)
プライバシー電子通信規則(Privacy and Electronic Communications Regulations)
情報自由法(Freedom of Information Act)
2004 年環境情報規則(The Environmental Information Regulations 2004)
2009年INSPIRE規則(INSPIRE Regulations 2009)
情報コミッショナー事務局(Information Commissioner’s Office, ICO)

(出典:ICO )442

青少年の個人情報保護に対する政策・規制(法律)並びに監督官庁は以下のとおりである。

表 60青少年の個人情報保護に関する法令・監督機関及び詳細
法令/規制 監督官庁 内容
1998年データ保護法(Data Protection Act1998) 情報コミッショナー事務局(Information Commissioner’s Office; ICO) 学校等も含む公共機関や個人での利用以外の目的に使用される可能性のある児童の画像の作製及び保持の規制

(出典:NSPCC, IWF, CEOP等から作成)

青少年の個人情報保護に関するICOの取組みとして、

  • ICOは、地方自治体における個人情報保護の強化を求める文書を、イングランドの地方自治体協会であるLocal Government Association (LGA)と連名で、地方自治体に対して通知を行った443
  • ICOは、2013年12月に携帯電話のアプリとデータ保護法のガイダンスを発行444
  • ICOは、青少年の個人情報に対するアドバイスと相談窓口として、子供用情報ホームページを開設し、青少年が個人情報公開の手続きの他、困った経験等のコメントを送ることができるようにした。

また、個人情報保護に関する項目は、現在小学校から義務教育修了時まで学校の学習指導要領に含まれており、2014年9月まではこの個人情報保護の学習項目は市民(Citizenship)、保健(PHSE)及びICTの授業で取り上げられている445

ICOは、青少年の保護対策として情報保護だけでなく、インターネット安全利用においての青少年保護の取組みも行っている。迷惑コール及び携帯メールのメッセージの対策としてICOは、Ofcomと連携したアクションプランを発表した他、2012年に、ICOは迷惑コール、メッセージに関するガイドを発行した。このガイドは、インターネット上で、250,000回以上閲覧された。また、2013年、2014年にもOfcomは、ガイドを発行しており、今後更に、ターゲットを広めるために動画によるガイドの配信を行う予定である446

(a) 「忘れられる権利(The Right to be Forgotten)」

2014年11月26日、欧州連合(EU)のデータ保護委員会は、「忘れられる権利(right to be forgotten)」の適用範囲におけるガイドラインを発行した447

背景として、すでに解決した差し押さえられた不動産の競売の情報が自分の名前を検索すると表示される事に対し、スペインの裁判所に、Google及びGoogleスペイン社を相手に、プライバシーの侵害として申し立てられた2010年の裁判ケースにおいて、2014年5月に出されたEU司法裁判所の判決により、検索エンジン提供者の検索サービス上における、その情報の責任を認めることとなった。そして、この判決により、個人がインターネット上の情報のリンクを、検索結果から削除することをサービス提供者に要求できる「忘れられる権利」が認められた448

■ 「忘れられる権利」の判決

2014年5月欧州連合(EU)司法裁判所によって以下の判決が出された。

  • EU圏内においては、EU以外にサーバーを持つデータにあっても、EU内に子会社をもつ場合、EU規制は検索エンジン提供者に適用する。
  • Googleにおいては、個人データの収集者として、ヨーロッパ法上での個人データの取扱の責任が適用される。ゆえに「忘れられる権利」が認められる。
  • 「忘れられる権利」において、情報が不正確、不適切、無関係及び必要以上の情報の場合、個人は情報の削除を検索エンジン提供者に要求できる。

この判決を受けGoogleは、個人のプライバシーにおいて申請があった場合は、検索結果から削除を行う対応を始めた。Googleは、削除要求の受付を始めた2014年5月からすでに 719,131リンクに関する197,926 件の削除要求を受けている。2015年1月11日までに、その内、39%のリンクを削除している449

また、この判決により、1995年にすでに発効されていた欧州圏での個人データ情報保護指令に対する新しい解釈の議論が求められた。Googleは、インターネット検索情報において個人情報の対策としてアドバイスグループによる公開討論会を開催し、Googleの削除対策における問題と改善策についての議論を行なっている。

国営放送局であるBBC及び欧州共同体(EU)は、Googleの削除要求に対する対応に懸念を示している。BBC経済編集者のロバート・ペストンのブログが削除されたことにおいて、Googleから記事の削除通知を受けたベストンが調査した結果、削除要求は記事の当事者でなくブログの下にコメントを行なった個人からと断定された。Googleの削除の基準が判決の解釈に合わないと疑問を投げかけている450

前自由党議員でメディアキャンペーングループ「Hacked Off」のメンバーであるエバン・ハリスは、現在の対応は、被害者に逆効果を与えているとして、Googleに対策の変更を提案している。検索サイトのリンクの削除を知った新聞社等のメディアによる「情報の自由」に対するキャンペーンが逆に行われることにより、削除される記事が改めて注目されることになる。Googleは、個人の承認を保護する契約を発行会社と行わない限り、リンクの削除の際に通知を行うべきでない。反対にGoogleが情報元に十分な通知を行なっていないといった意見が出ている。

2014年10月のロンドンでの討論会で国営放送局であるBBCの編集政策局長のデビッド・ジョーダンは、検索エンジン提供者によって(自社の)記事が間違って隠されていると指摘した。Googleは、公衆の知る権利のためにもリンクを残しておくべきで、要望があるから削除するというのは、一方的であるとしている。この討論会で、BBCとテレグラフ紙は、Googleが削除したウェブサイトのリストを2014年10月から発表するとした。Googleのアドバイザリー委員会の討論の後、2015年の初めにGoogleは奨励策を発表する予定である。

(b) EU個人データ保護法におけるガイドライン451

こういった背景下、2014年11月に発行されたEUガイドラインは、個人情報法の共通の解釈と共に、データ保護局が利用する共通の判断基準を示している。今後、EU加盟国での法令対策が行われていく。

1EUデータ保護指令内のデータ収集者に、検索エンジンを含める。
2個人データ保護と公衆の知る権利との公正なバランスを考慮する。公人の場合は、削除されない場合もある。
3リストから削除される影響を考慮する。個人情報が公衆の知る権利の情報として必要とされる場合は、削除されない。
4情報源のデータは、削除されない。
5情報内の当事者は、サイト元に検索エンジンからの削除についての承認を取る必要はない。
6ヨーロッパ法では個人データ保護は全ての個人に適用されるが、実際はEU圏内の住人であることが明確とされることが必要となる。
7リンク削除においての地域的な解釈として、EU法で適用されるデータ削除は最大の効用を持たせるために圏外においても普及されるべきである。「.com」のサイトにおいても効用があることが必要となる。
8削除が行われなかったデータにおいて、その結果を検索エンジンサービス利用者に通知する必要はない。
9検索エンジンは、データ削除の際にサイトの所有者にその通知を行わなくても良い。

この指令の拡大により、EU圏外の国やアメリカの検索エンジン提供会社にも対応が求められる事となる。特にGoogleは「.com」のウェブサイトでも同じ削除要求を求められることとなり、国際的な対応が今後必要となる。また、削除されたサイトのリスト及び削除通告においては、Googleは削除されるリストをBBC等の情報元に通知しており、BBCやテレグラフ紙は、それらのリストを発表すると10月の公開討論会で発言した452

Googleは、日に1,000ほどの削除要求を受け取っており、ケースごとに審査・削除等の対策に追われている。コンサルティング会社のHISのディレクターであるダニエル・ナップは、「欧州や特にドイツでは、アメリカよりプライバシーの保護について慎重である。国際的対策を強いられるGoogleは忘れられる権利の審査のために膨大な負担がかかる。Googleからの反抗がある場合は、規制の見直しを行う必要が出てくるだろう」と述べている。

情報コミッション局(ICO)の次長であるデビッド・スミスは、「このガイドラインを今後の判断の普及基準として利用していく。国内のデータ保護法内での特別な要求を反映するだろう。数週間後にはイギリスにおけるガイドラインが発行となる。インターネット検索サイト上で削除された個人情報への理解を助けることになるだろう」と語っている。また、インターネットは、国際的な要素を持つため、個人情報の保護の上でも「co.uk」のURLだけの削除はできても、イギリス内で簡単にアクセスできる「.com」のサイトは削除できない規制では充分でないとしている。

イ ネットいじめ
ネットいじめが要因となった自殺が2013年に続き、青少年のインターネットの利用方法が問題として取り上げられている。17歳のダニエル・ペリーはオンラインで知り合った相手から脅迫されて事により自殺に至った。同年代の女子を装ったギャングによる犯行で、大金を要求された数時間後に被害者は自殺をした。自殺する3ヶ月前にも、SNSでネットいじめの対象となっていたことが事件後判明した。また、14歳のハナ・スミスは数ヶ月に及ぶネットいじめに遭い首つりにより自殺を図った453

ネットいじめに対して、メディアで批判的な公言をしてきた歴史学者のメリー・ベアード(Mary Beard)は、トロール(Troll)と呼ばれるTwitterによる攻撃を受けた。しかし、暴言を送った加害者である青年に向けて、多くの批判のツイートが送られたことで、青年はすぐに謝罪を申し込んだが、相手が著名人ということで、その後も彼の名前とネットいじめの関連のニュースが多く流れてしまった。被害者であったベアードは、2014年に発行されたアメリカの雑誌でのインタビューでこの加害者の青年の就職活動に協力したと語った。「若い青年が犯したマナーの問題である。たった一回のソーシャルメディアの間違った使い方で、彼が社会的制裁を受けないようにしたい。検索エンジンに彼の名前を入力すると(ネットいじめ)と出てきてしまう」とその理由を語った454

ネットいじめに関する法律、規制及びその監督官庁、関係団体は以下のとおりである。

表 61 ネットいじめに関する法令・規制及び監督機関・関係団体
法令/規制 監督官庁 関係団体
1978年児童法
国際テロリスト法
2006年宗教的憎悪禁止法
1961年自殺法
1997年ハラスメント防止法
THE EQUALITY ACT 2010
悪意のある通信法(Marious Communication Act)
コンピュータ不正使用法(Computer Misuse Act 1990)
教育省
司法省
CEOP
IWF
NSPCC

(出典:NSPCC, IWF, CEOP等から作成)

(a) ネットいじめの犯罪取締り

政治家に対するTwitterで暴力的な発言をした2人が刑を言い渡された。イザベラ・ソーリー(Isabella Sorley)は、女性キャンペーン支援者キャロライン・クリアド・ペレ(Caroline Criado-Perez)をターゲットとしたいじめで12週間の処罰、もう1人のジョン・ニンモ(John Nimmo)は、労働党議員ステラ・クリージー(Stella Creasy)への攻撃で8週間の刑を言い渡された455

(b) ネットいじめの犯罪規制法案

司法大臣は、刑事司法及び裁判所法案(Criminal Courts and Justice Bill)の改正を支援している。法令改正により、イングランド及びウェールズではインターネットあるいは携帯電話での性的嫌がらせや暴言による虐待が新しく規制される。ネットいじめ及び携帯メールのメッセージによる暴言によって、2年の懲役刑になる場合もある。現在の悪意のある通信法下では、インターネットトローリングによる犯罪は、治安判事裁判所(magistrates’court)において裁かれる。法案を提出する保守党議員ブレイ(Bray)は、地元選挙区の14歳の女子が、有罪を逃れた成人男性から2,000にものぼる猥褻な言葉による「口頭でのレイプ」を受けたと証言している456

Ofcomの報告によると、子供のインターネット利用上で保護者が懸念する項目で、一番懸念するという回答が多かったのがネットいじめである。また、「ネットいじめと自分の子供の関係を懸念しているか」という質問においては5歳から15歳の保護者の約4人に1人(24%)がとても懸念していると回答している457。懸念する保護者の割合は年齢層が上がると共に、増加しており、12歳から15歳の保護者ではその割合が32%となる。2011年からの年比較では、その割合にあまり変化はない。また、2012年から保護者が自分の子供がネットいじめの加害者になる事を懸念する質問が加えられたが、2013年では14%の保護者が自分の子供がネットいじめの加害者になる事を懸念すると回答している。この項目でも年齢層が上がるほど懸念する保護者の割合が増えている458

スマートフォン等で携帯電話によるオンラインアクセスが増えることから、携帯電話によって自分の子供がネットいじめの被害者になっていることを懸念する保護者の割合は2011年から増加している。「通話、テキスト、メールによって自分の子供がいじめの被害になっていることを懸念するか」という質問に8歳から11歳の保護者の20%と、12歳から15歳の保護者の26%が子供の携帯電話の利用に懸念を感じていると回答している。子供が被害者であることを懸念したとする割合は、2013年では8歳から11歳の子供の保護者は20%、12歳から15歳では26%となった。携帯電話によるネットいじめの被害者あるいは加害者になることを懸念している保護者は、12歳~15歳の保護者の割合は、8歳~11歳に比べてどちらも高い。

図 130 「携帯で通話/テキスト/メールによるいじめにあっている」あるいは「自分の子
供が他人をいじめる、もしくは他人の悪口を言っている可能性」を懸念する保護者の割合 (単位:%)459

(出典:Ofcom)

携帯電話と同様に、ネットいじめのプラットフォームとなるSNS活動においては、子供の活動をチェックしている保護者も多い。その割合は、2009年から4年間あまり変わず70%台である。また、Facebook、MySpace、Beboにプロファイルを持っている子供の保護者の方が、2011年から2013年まで90%前後と監視している割合が高い。

図 131 年齢別子供のSNS活動をチェックしている保護者の割合(2011年~2013年)(単位:%)460

(出典:Ofcom)

ウ 児童売春等の青少年を性的行為に誘引する行為

多数の児童に対するグルーミング、レイプ、売春行為を含んだ集団による犯行が発覚している。2014年8月26日に報告されたロサナン性的児童虐待報告書(Rotherham child exploitation report)によると、ロサナン地方自治体において過去16年間で性的児童虐待の被害者の数は1,400人であった。ロサナン自治体も性的児童虐待の被害者となった青少年の保護の失敗につき自治体及び関連機関に責任があると認めた。1997年から2013年までの16年間に、11歳の女子も含むレイプ、グルーミング、売春行為が、犯罪集団及び商業的目的で行われていた。これらの性的児童虐待は自治体及び警察等関連機関の間では認知されていたが、これらの犯罪への対策が行われなかった。この調査は2010年の性的児童虐待により5人が刑罰処分を受けたことに基づき、自治体の委託により行われた461。現在も事件の調査が行われているが、事件当時担当大臣であったブリッタン(Lord Brittan)と調査委員会の責任者のフィオーナ・ウールフ(Fiona Woolf)が知り合いであることから、被害者支援団体から大きな懸念の声がでている462

児童売春等の青少年を性的行為に誘引する行為に関する法律、規制及びその監督官庁、関係団体は以下のとおりである。

表 62 児童買春等の法令・規制と監督機関・関係団体
法令/規制 監督官庁 関係団体
2003年性犯罪法
児童法
1960年わいせつに関する児童法
2003年性犯罪法:
主要改正点
2006年警察司法法
内務省
司法省
CEOP
IWF
NSPCC

(出典:NSPCC, IWF, CEOP等から作成)

児童への性的犯罪行為においてインターネット上での犯罪の調査を促進するための取組みが行われている。

2014年7月17日に政府は、データ保持及び捜査権限法(Data Retention and Investigation Powers Act)を制定した。この法令により通信サービス事業者は、顧客のインターネット・通信のデータを保持することとなり、捜査機関はこのデータへのアクセス権を持つこととなった。これにより警察は有害情報等の捜査が行い易くなり、また通信事業者にとっても明確な法制化により警察との協力関係を助ける事となる463

児童買春等から子供を守るには、保護者の役目が重要となると全ての関係者が同意している。また、NSPCCのクレア・リレイ(Claire Lilley)は、政府のオンライン安全委員会にて「保護者が(オンライン上での安全の)問題へ取り組むにあたり自信や権限を持つ必要がある」との発言したと、Ofcomは2014年の報告書で述べている464

子供の性的行為への誘引を含む安全対策として、政府や関連機関は、保護者へのインターネットの安全利用の情報を発信しているが、Ofcomによると、多くの保護者も子供のインターネット安全利用についての情報を探すことや、アドバイスを受ける等の取組みをしていると報告している465

2013年の聞き取り調査では、48%の5歳から15歳の保護者及び69%の3歳から4歳の保護者は、自分の子供のインターネットの安全利用において十分な知識があると信じており、53%は子供のインターネット安全利用についての情報及びアドバイスを受け取っていた。

図 132 子供の安全なインターネット利用法について情報/アドバイスを探した/受けとっ
た保護者の割合(2013年)(単位:%)466

(出典:Ofcom)

エ 児童ポルノ

国家犯罪局(NCA)による660人にのぼる児童性愛者の大規模な逮捕が2014年7月に行われた。これは6ヶ月の捜査によるもので、400人以上の児童を保護する結果となった。逮捕者の特徴としては、性的犯罪の前科のある者はわずか39名で、犯罪歴もなく、また、元警察官、福祉局局員、ボーイスカウトのリーダー、医師等子供と接触する職に携わる者も含まれていた。この捜査には、イングランド、ウェールズ、北アイルランドの45の警察署が連携して行い、833件を捜査し、9,172台のコンピュータ、携帯電話、ハードドライブを押収した467

CEOPは、2013年にウェブカメラを利用した性的児童虐待のケースを報告した。クウェートに在住する男性2名が、12歳から16歳をターゲットにした性的児童虐待のケースでは、13カ国に渡って被害者が点在していた。犯人は、SNSやインスタントメッセージのソフトを利用し、被害者となった子供の知り合いのふりをして接近した後、リンクを通して被害者からオンラインのパスワードを取得、ウェブカメラを使用して性的行為を強要していた。児童への性的虐は有害なものを含み、イギリス在住の78人を含む110人の子供が被害者となった。2012年12月に犯人らは、5年の刑罰で刑務所へ拘置された。また、2012年6月に行われた重大組織犯罪局(Serious Organised Crime Agency)と40の警察署によって行われた児童への性的犯罪捜査も報告されている。性的児童虐待犯罪捜査(Operation Tharsley) により児童ポルノとされる写真の所有により78人が逮捕され、80人の児童が保護された468

2013年12月に、イギリスとアメリカの警察機関の間で児童ポルノに関するタスクフォースの設立、NCAの設立により、児童ポルノの作製・所有・配布等の犯罪者の逮捕が続いている。2014年7月には、逮捕者が660名にものぼる大規模な捜査が行われた469

児童支援団体であるNSPCCの依頼による調査で、ロンドンの教育機関が行なった10代の35人に対する聞き取り調査によると、11歳の女子も含め、知っている男子に「特別な(いかがわしい)写真」を送るように頼まれた経験をしていた。その中には体の一部に特定の男子の名前をマーカーペンで書いて「この身体が男子の持ち物である」と示した場合もある。男子からセクスティングや性的行為を求めるメッセージは10代の女子に毎日のように送られてきていると報告されている。NSPCCの性的虐待プログラムの責任者であるジョン・ブラウン(Jon Brown)は、「この調査で一番気になることは多くの青少年がこれらセクスティングの要求を生活の一部として認めていることである。性的虐待という可能性もあるかもしれない。それ以上に違法行為だということを青少年たちは気がついていない」と語っている。また、この聞き取り調査を行なったロンドン大学のインスティチュート・オブ・エデュケーションのリサーチャーであるジェシカ・リングローズ(Jessica Ringrose)は「男子からの性的要求やセクスティングの要求のメールが大量に送られてきていた。インタビューをしている間でもこれらのメールが届いていた」と報告している470

児童ポルノに関する法律、規制及びその監督官庁、関係団体は以下のとおりである。

表 63 児童ポルノに関する法令・規制と監督機関・関係団体
法令/規制 監督官庁 関係団体
1978年児童保護法
1959年及び1964年猥褻刊行物法
1988年刑事司法
1994年刑事司法及び公共秩序法
2002年電子商取引施行規則
2003年性犯罪法
2009 年検死官及び刑事司法改革法
1996年名誉毀損法
2000年捜査権限規制法471(Regulation of Investigatory Powers Act 2000)
内務省
文化・メディア・スポーツ省
司法省
CEOP
IWF
NSPCC

(出典:NSPCC, IWF, CEOP等から作成)

NCAによると、性的犯罪者はトーア・ブラウザー(Tor Browser)等の技術を活用した匿名ウェブサイトを利用している場合がある。これら匿名ウェブサイトと暗号の技術により、サイト利用者を探し出すのは難しいため、犯罪者に利用されやすいとされている。BBCの聞き取り捜査によると、2014年5月まで有害ウェブサイトを運営していた男性は、このウェブサイトに40,000人の利用者がいて、1秒に500ページビューが登録される時もあったと証言した。2013年11月のインターネット・セーフティ・サミットにてキャメロン首相は、政府通信本部(Government Communications Headquarters:GCHQ)及び情報機関は、技術的な面で警察と協力することを期待すると発言した472

オ リベンジポルノ

リベンジポルノの被害者ホリー・ジェイコブス(Holly Jacobs)が、アメリカで始めたキャンペーンに続き、サイバー市民権イニシアティブ(Cyber Civil Rights Initiative)は、エンド・リベンジ・ポルノ(End Revenge Porn)チャリティー団体を設立した。これらのキャンペーンにより、アメリカではリベンジポルノ法がカリフォルニア州等で法令となった。イギリスでも、このアメリカの動きに続き、リベンジポルノの被害者を友人に持つヒーサー・ロバートソン(Heather Robertson)により、バン・リベンジ・ポルノ(Ban Revenge Porn )というキャンペーン団体が設立され、家庭内暴力被害者の支援を行なっているチャリティー団体であるウーマンズエイド(Women’s Aid )もリベンジポルノの問題を政策及び犯罪法に含むよう働きかけた。民主党及び元文化大臣である保守党のマリア・ミラー(Maria Miller)もこのキャンペーンの支援をすることを発表した473

リベンジポルノに関する法律、規制及びその監督官庁、関係団体は以下のとおりである。

表 64 リベンジポルノに関する法令・規制と監督機関・関係団体
法令/規制 監督官庁 関係団体
2003年通信法
1997年ハラスメント防止法
1988年悪意のある通信法
(Malicious Communications Act)
内務省
文化・メディア・スポーツ省
司法省
CEOP
IWF
通信局
BBFC

(出典:House of Loard 474

(a) リベンジポルノキャンペーン

イギリスのリベンジポルノキャンペーン団体「Ban Revenge Porn」によるリベンジポルノの法令成立に向けての署名運動が行われている。2014年8月までに4,000人以上の署名が集まった475

(b) 政府によるリベンジポルノの対策

司法大臣のクリス・グレイリング(Chris Grayling)は、イギリスでのリベンジポルノ問題増加に対して対策を行う予定を発表した。2010年からリベンジポルノウェブサイトが取り上げられてから、現在までに30以上のウェブサイトが国内で認識されている。これらのリベンジポルノのウェブサイトは、性的画像・動画を、被写体の名前やSNSや個人情報の詳細を含めて公開している。2014年4月に、全国ストーキングヘルプライン(National Stalking Helpline)、ウーマンズエイド(Women's Aid)とイギリス・インターネット安全性向上センター(UK Safer Internet Centre) は、リベンジポルノが増加していると報告した476。上院議会通信委員会(House of Lords Communications Committee)は、ソーシャルメディアにおける犯罪の法令の見直しを行い、通信法(Communications Act 2003)やハラスメント防止法(Protection from Harassment Act 1997)を含む現在の法令は、十分にこれらの目的を満たしていると2014年7月末に発表した。しかし、それらがいつから適用されるのかを明確にする必要があると、公訴局長に委員会は求めている。また、Facebook及びTwitter等のSNSサイト事業者には法的機関による利用者の本人確認を早めることを要求した477

カ ウェブサイト運営者等が青少年による有害情報の閲覧を制限する措置等を取った場合における民事責任

ISPは、契約者との間で事業者のサーバー上にホスティングされるコンテンツにおいて利用規約(Acceptable Use Policies:AUP)を取り交わしている。通常は違法とされないウェブサイト・コンテンツでもISPにより削除される場合があると記述されている478

民事責任の定義及び規制措置の監督官庁は以下のとおりである。

表 65 民事責任の定義と監督機関
定義 監督官庁
オーバーブロッキングの問題において2014年3月の文化・メディア・スポーツ特別委員会(Culture, Media and Sport Select Committee)が政府に提出した報告書への政府回答479によるとISPによるオーバーブロッキングの可能性についてISPは利用者及びウェブサイト所有者にこの旨を通知すること。また、ウェブサイトがブロッキングされた場合はすぐに報告できる体制を設定しておく。 文化・メディア・スポーツ省

(出典:NSPCC, IWF, CEOP等から作成)

キ 現在検討中の青少年のネット利用環境に関する新しい政策・規制とその背景

検討中(立法過程にあるものも含む)の政策・規制の概要は以下のとおりである。

表 66 青少年のインターネット利用環境に関する検討中及び新法令・規制と概要
法令/規制 概 要 検討している機関
データ保持及び捜査権限法(Data Retention and Investigation Powers Act) 2014年7月17日制定
有害情報対策の沿革 現在の法令に記載
内務省
刑事司法及び裁判所法案(Criminal Justice and Courts Bill) 過激なポルノ画像の所有の犯罪刑法の改正案480
イングランド及びウェールズでレイプの画像を違法とする法案481
司法省
Serious Crime Bill(重大犯罪法案)482 2014年6月に上院議会に提出された。NCAも含む捜査機関の捜査を円滑に行う事を目的とされている。これにより以下の法令が改正される。
2002年犯罪収益法(Proceeds of Crime Act 2002)
1990年コンピュータ不正利用法(Computer Misuse Act 1990 )
1993年児童・青少年法第1条(section 1 of the Children and Young Persons Act 1933)
2003年女性器切除法(Female Genital Mutilation Act 2003)
2006年テロリズム法第5条(テロリスト行為の準備)及び第6条(テロリズムの訓練)(sections 5 (preparation of terrorism acts) or 6 (training for terrorism) of the Terrorism Act 2006 )
重大犯罪法により16歳以上も含め子供の精神的虐待を止めることができるだろうとエリザベス女王は2014年6月の国会開会式のスピーチを行なった。80年以上変わらない1933年児童法において21世紀の子供の精神的保護に足りないという議論もあり、このクイーンスピーチは、重大犯罪法により16歳以上の青少年の肉体的そして精神的保護ができると伝えた483
内務省
自殺法の改正 自殺法は自殺の強要・助長を規制しているが、オンライン上の自殺の強要・助長は含まれない。2013年に自殺の予防を支援している保護者団体PAPYRUSにより文化・メディア・スポーツ省に青少年の自殺防止に関する報告書が提出された484 文化・メディア・スポーツ省
オンライン安全法案(Online Safety Bill) 2014年6月に下院第1回読み上げが行われた。すでに2012年及び2013年と議会に提案されている485 文化・メディア・スポーツ省

(出典:司法省, 内務省等から作成)